なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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今回は、前半と後半でお話が分かれます。

ちょっと、総理の元にある福音があれからどうなったかをちゃんと描いておこうと思いまして。

ネタは出来上がっていたんですけど、どのタイミングで投下しようか迷っていました。

それに加え、ここで次のイベントのフラグも建築しようと思います。










勉強会と福音の帰還

 まだまだ夏真っ盛りな八月中旬。

 少女達は再び板垣邸に集合していた。

 と言っても、今回は上級生組はいなくて、一年生だけの集まりになっている。

 

「うぐぐ……これはなんと読めばいいんだ……!」

「む…難しすぎて、さっぱり理解出来ん……!」

 

 テーブルに広げられたプリントと睨めっこをしながら悪戦苦闘しているのは、箒とラウラ。

 今回の集合の切っ掛けは、この二人だった。

 

 IS学園は非常に特殊な学校ではあるが、それでも便宜上は高等学校に分類される。

 となれば、当然のように生徒である彼女達は夏休みの宿題をしなくてはいけないのだが、箒は英語が、ラウラは古文が苦手科目だった。

 他の宿題は順調に進んでいても、これだけは全く進まず、最後の手段として二人は弥生に泣きついて教えを乞うた……まではよかったのだが、それを大人しく静観するような大人しい少女達は一人もおらず、結局は鈴の提案にて全員で勉強会でもしようと言う事になったのだ。

 しかも、この時の鈴は相当に狡猾な考えを持っていて、少しでもライバルを減らすために、上級生達が揃って用事で来れない日を見計らって計画した。

 結果、一年生だけの勉強会が開催される事となった。

 

「ひ…姫様……申し訳ないのですが、ここの問題を教えて貰えないでしょうか……」

「い…いよ……。どこ……?」

「ここです。この文章問題が……」

「ん。ここ……はね……」

 

 相変わらずの教え上手っぷりをいかんなく発揮し、弥生は懇切丁寧に教えていく。

 いつもは親子のような二人だが、この時ばかりはまるで家庭教師と生徒のように映った。

 

「仕方がない。箒には私が教えよう。ほら、どこが分からないのかな?」

「ここなのだが……」

「ふむ。この問題は……」

 

 そして、箒にはロランが付き添って勉強を教えている。

 普段のキザッぷりはなりを潜め、真面目に取り組んでいた。

 流石にこの時ばかりは空気でも読んだのだろうか。

 

(ふふ……ここで出来る女アピールをしておけば、弥生に惚れられる事間違いなし!)

 

 前言撤回。

 どんな状況でも、ロランはロランだった。

 

「にしても、箒とラウラにも苦手な物があったのね~」

「あ…当たり前だ。お前は私の事をどんな風に見てるんだ」

「なんでも力押しで解決しそうなイメージ?」

「鈴!!」

 

 テーブルに肘をついて明るい笑顔を見せる鈴。

 何故に彼女がこんなにも余裕の顔を見せるのか?

 その理由は単純明快で、とっくに夏休みの宿題を終わらせているから。

 しかも、それは鈴だけに限った話ではなく、弥生は当然のように、学年主席のセシリアに、早めに自由時間を確保して弥生と遊ぶ気満々なロランも宿題を終了させていた。

 逆に、シャルロットや本音や簪は、毎日少しずつ計画的に宿題を進めていて、今も箒とラウラの横で宿題を黙々と解いていた。

 

「~♪~♪」

「本音はスラスラと進めていくな……」

「しかも、鼻歌交じりで……」

「伊達にIS学園に入学出来たわけじゃない……って事だね」

「本音はこう見えても、意外と頭がいいから」

「こう見えては余計だよ~かんちゃ~ん」

「ふふ……」

 

 簪と本音のちょっとしたやり取りを見て、弥生が思わず笑みを浮かべる。

 それを間近で見てしまったラウラは、口を開けっ放しにて見惚れていた。

 

「ところでさ、弥生はいつ頃に宿題を終わらせたの?」

「七月中……に終わら…せた…よ……」

「マジでっ!?」

「と言う事は、私達が大掃除をお手伝いに来た時にはもう……」

「宿題を終わらせていた…って事になるね……」

「だから、あの時の弥生には余裕が感じられたのか……」

 

 IS学園の夏休みの宿題には、従来の学校にはある『自由研究』などの類の宿題は一切出されない。

 故に、その気になれば弥生のように八月に突入する前に宿題を終了させることも不可能ではない。

 その代わり、問題の難しさは群を抜いているが。

 

「皆さん、そろそろ休憩しませんこと? ずっと下ばかりを向いていては、肩が凝りますわ」

「それもそうだな……んん~……!」

 

 セシリアの提案に従って、上体を起こして体を伸ばす箒。

 その際に、15歳とは思えない程の豊満な胸が普段以上に強調されて、それを見た鈴と簪のこめかみがピクっとなったが、誰も気が付かなかった。

 

「お茶……のお替り…を持ってく…るね……?」

「わ…私も手伝うぞ!」

 

 弥生がお茶を持ってくるために立ちあがったと同時に、箒も慌てて立ち上がって弥生の後を追い、二人揃ってキッチンへと姿を消した。

 

「あ~……この畳の匂い……落ち着くわ~…♡」

「もう! 鈴さん! そんな風に寝転がってははしたないですわよ?」

「別にいいじゃない~。それに、フローリングの床とは違って、畳ってのは寝転がってナンボなのよ」

「リンリンの言うと~り~♡」

「ちょ……本音さんまで!」

 

 気持ちよさそうに畳の上に寝転がる鈴に釣られるように、本音も一緒に畳の上に体を投げ出した。

 それを見てセシリアは怪訝な表情を浮かべているが、実際、鈴と本音は今にも眠ってしまいそうな程にリラックスしている。

 

「でも、実際にこの…藺草…だっけ? この香りは僕は好きだな~♡」

「藺草にはリラックス効果があるらしいよ」

「成る程……。以前に来た時も思ったが、この畳の上にいると心が落ち着くのは、藺草の独特の香りが鎮静効果をもたらしていたからなのか……」

 

 心から感心しながら畳を擦るロラン。

 彼女も日本文化に多少なりとも興味を持ち始めたようだ。

 

 完全にまったりムードが漂い始めた時、縁側にて寝転んでいた財務大臣がトテトテと歩いて来て鈴の傍に座った。

 

「あら、アンタも来たの?」

「にゃあ」

 

 本当に言葉を理解しているかのように返事をして、前足を鈴の額に押し当てた。

 

「あぁ~……財務大臣のプニプニ肉球……癒されるわ~…♡」

 

 おでこから感じる冷たい肉球の柔らかい感触を堪能しつつ、鈴は完全に和んでいた。

 

「外務大臣ちゃんも、日陰でまったりしてるね~」

 

 本音の言う通り、柴犬の外務大臣も家の日蔭の下に体を横たえながら涼んでいる。

 その光景を見て、なんだか肩肘を張っている自分が馬鹿らしく思えてきたセシリアは、少しだけ体を楽にすることにした。

 

「はぁ……全く皆さんは……」

「な~んて言いながら、本当はセシリアも気持ちいいんでしょ?」

「まぁ……否定はしませんわ」

「素直じゃないな、セシリア」

「ラウラさんに言われると、少しグサッと来ますわね……」

「ラウラはピュアの塊みたいなものだし」

「それ、分かるな~」

「???」

 

 畳の上で女子トークをする彼女達の姿からは、国を背負っている代表候補生としての表情は無く、一人の少女としての表情を見せていた。

 この一時だけでも、少女達に安らげる時間があってもいいだろう。

 時には、見栄も外聞も捨てて、心のリフレッシュをする事も大事なのだから。

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 一方その頃。

 キッチンへと麦茶を淹れに行った弥生と箒は、二人並んで人数分のコップに麦茶を入れていた。

 

(こ…こうして一緒に台所に並んでいると、少しドキドキするな……)

 

 キッチンと言う狭い空間に好きな女の子と二人っきり。

 この状況でドキがムネムネしない箒ではない。

 

(い…言うなら今しかないのではないか? いや……このチャンスを見逃せば、もう二度とこんな機会は訪れないに違いない! ええい! 今こそ勇気を振り絞る時ではないのか! 篠ノ之箒!!)

 

 鮮やかに準備を進めていく弥生の横で、葛藤を続ける箒。

 覚悟を決めたのか、箒は決意を秘めた顔で弥生の方を見た。

 

「や…弥生。少しいいだろうか……?」

「ん……? どう…した…の…?」

「あ……その……だな……」

 

 決意をしたはずなのに、実際に弥生の顔を正面から見ると、途端にヘタれてしまう箒。

 普段の強気な君はどこへと行ってしまったのやら。

 

「じ…実は今度、私が住んでいる神社でな……夏祭りが開催されるんだが……よかったら来てみないか?」

「夏祭り……」

 

 和室にいる皆には聞こえないように、声を潜めてから弥生に夏祭りがある事を告げる。

 勿論、箒は単純に弥生を夏祭りに誘ったわけではなく、あわよくば一緒に夏祭りデートをしようという魂胆だ。

 最近になって劇的にライバルが増加し、箒もうかうかとはしていられなくなった。

 少し気恥ずかしいが、今はそんな事には目を瞑り、一歩でも前進することが最重要課題となっている。

 

(弥生が夏祭りに興味を示している? これは脈アリか?)

 

 弥生が箒の言葉を反芻した事で、これはいけると判断した箒だが、実際の弥生の心の中は全く違うことを考えていた。

 

(夏祭りと言えば屋台……。屋台と言えば粉もの三巨頭である焼きそばとたこ焼きとお好み焼き……! 他にも、焼トウモロコシにリンゴ飴にかき氷に綿飴もある……。最近じゃ、唐揚げや餃子の屋台もあるって言うし……)

 

 完全に脳内は屋台の食べ物で一杯だった。

 今からでも遅くないから、夏祭りにて食べ物系の屋台を出そうと思っている人達は、急いで大量の食材を調達する事を推奨する。

 

「べ…別に弥生が嫌ならば私は…「行く」……へ?」

「行く。絶対に行く」

「や…弥生……そうか……!」

 

 弥生が来ることを決めてくれたことに静かに歓喜する箒だったが、彼女が完全に捕食者の目になっている事だけには全く気が付かなかった。

 勿論、他の少女達にはこの事は内緒にされた。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 自宅に姿を見せなかった総理は、今は国内にはいなかった。

 というのも、今までずっと預かっていた福音をアメリカへと返還する為に、総理直々に米国へと足を運んでいたのだ。

 ホワイトハウスにて大統領と話をし、その後に福音の操縦者であるナターシャと、アメリカ代表のイーリスが入院している病院に来ていた。

 

「失礼するぞい」

 

 ちゃんとノックをしてから病室に入っていく。

 一応、護衛の名目で矢禿も一緒にいる。

 

「貴方は……ミスター板垣……」

「アンタが直に来たのかよ……」

「それが一番良いと思っての」

 

 体中に包帯を巻き、ベッドの上で寝ているナターシャとイーリスは、突然の訪問者に驚きを隠せない様子だった。

 日本の総理大臣が自分達の病室に訪れたのだから、当然の反応ではあるのだが。

 

「本来ならば、ラボに届けた方がいいんじゃろうが、その前にお主の手元に戻してやりたいと思ったんじゃ」

「これは……」

 

 ナターシャのベッドの上に置かれたのは、福音の待機形態である羽の形をしたペンダントだった。

 

「ちゃんと、こちらの倉持技研で応急処置だけはしておいた。話によれば、コアの方にも特に異常は見られなかったそうじゃ」

「本当ですか? あの時、確かにこの子は連中にクラッキングを受けたのに……」

「それ程までに鮮やかな手腕だった……と言う事じゃろうな。自分で相手をしておきながらなんじゃが、見事なもんじゃ」

 

 福音を受け取ったナターシャは、本当に嬉しそうにペンダントを両手で抱きしめた。

 

「ところで、二人が襲われた連中ってのは、どんな奴等だったんだ?」

「米軍でも屈指の手練れであるお主ら二人が、手も足も出ない相手とは、一体誰なんじゃ?」

「名前は分からねぇ…。けど、姿ならバッチリと覚えてるよ」

「私もよ…!」

 

 悔しさに顔を歪める二人。

 相手のいいようにやられてしまった事は、彼女達にとっては一生の不覚と言っても過言ではないのだろう。

 

「女の二人組で、片方は黒髪で両目を覆うような眼帯をしてやがった。そいつがゴスペルに乗って行きやがったんだ」

「そして、もう一人が褐色の肌に白い髪の女の子ね。その子がゴスペルのコアに何らかの方法で干渉して……」

「分かった。もう言わんでもいいぞい」

 

 二人の心境を考えて、これ以上思い出させないように促す。

 

「両目を覆う眼帯の女に褐色肌の白髪と言えば……」

「間違いない。ラケシスとアトロポスじゃ」

「ふ…二人共、彼女達の事を知ってるのっ!?」

 

 外見の情報を言っただけで名前が出てきたことに驚くナターシャ。

 怪我人を余り驚かせてはいけない。

 

「知ってるも何も……」

「あの二人は、ずっと俺等が追っている二人組なんだ」

「マジかよ……。一体何者なんだ?」

「ワシ等も詳しく知っているわけではない」

「こっちが掴んだ情報は、あの二人は実の姉妹であり、現在は亡国機業(ファントム・タスク)の幹部だって事だけだ」

「「なっ……!?」」

 

 二人の口から飛び出した衝撃の事実。

 自分達は、とんでもない連中を相手にしていたのだと実感させられた。

 

「ちょ…ちょっと待ってくれ! 機業の幹部は確か、スコール・ミューゼルとオータムの二人だった筈だぞ!」

「その二人ならば、少し前に組織を抜けておるよ。その理由もまた不明じゃがな」

「そして、裏切り者であるスコール達の粛清を、あの姉妹に任せているらしい」

「どういうことなの……」

「それはこっちのセリフだよ」

 

 肩を竦ませながら息を吐く矢禿。

 歴戦の勇士である彼もまた、姉妹にいいように踊らされている人間の一人だ。

 

「けどよ、そこまで情報を仕入れているって事は、いつかは必ず連中と全面対決するつもりって事なんだよな?」

「無論じゃ。このまま放置しておくには、あの姉妹と亡国機業はあまりにも危険すぎる」

「委員会やEUのお偉方も、最近になってようやく重い腰を上げ始めたからな」

 

 本当の意味で危機感を覚えないと動こうとしない。

 どこの国や組織でも、上にいる連中の思考は五十歩百歩のようだ。

 

「頼む! その時はあたし達も戦列に加えてくれ!」

「今回の借りをどうしても、あの姉妹に返さないと気が済まないわ」

「そう言うと思った」

「じゃな」

 

 顔を見合わせて苦笑いをする総理と矢禿。

 

「気持ちは分かるけどな」

「今は怪我の治療を一番に考えた方がいいぞい」

「んな事は分かってるって」

「私達だって、優先順位ぐらいは理解しているわ」

 

 力強く笑いかける彼女達にはもう、さっきまでの焦燥は微塵も無かった。

 二人に宿るのは、紛れもない闘志だった。

 

「怪我が治り次第、リハビリもしないとね」

「それならば、リハビリがてらに弥生の指導でもして貰おうかの」

「弥生って?」

「ワシの大事な大事な愛娘じゃ!」

 

 満面の笑みを浮かべながら、携帯に入っている弥生の写真を二人に見せる。

 

「あら可愛い」

「………ちょっと好みかも」

 

 小さく呟いたナタルだが、総理には聞こえていなかったようだ。

 

「今はIS学園にて勉学に励んでおる」

「それは丁度いいじゃねぇか」

「いずれはあそこにも行かないといけないでしょうから、その時にでも実際に会ってみようかしら?」

「そうしてくれると、こちらも嬉しい限りじゃ。IS操縦者として優れたお主らに教えて貰えると知れば、弥生もきっと喜ぶじゃろうて」

 

 なんとも微笑ましい親心だが、それを本当に弥生が喜ぶかはまた別問題である。

 

「そう言えば、お礼をまだ言えてなかったわね。この子を……ゴスペルを取り返してくれて、ありがとうございました」

「あたしからも礼を言わせてくれ。板垣総理、本当にありがとう」

「なに、ワシは唯、自分の国と民達を守ろうとしただけじゃよ」

「それを身を持って実行できる政治家は、そうそういないと思いますけど?」

「そ…そうかのう?」

 

 珍しく恥ずかしそうに頭を掻く総理。

 彼としては、本当に当然の事をしただけなのだから、照れくさくて仕方がないだろう。

 

 それから少しだけ話をした後に、総理と矢禿は病院を後にした。

 帰国してから、弥生にナターシャ達の事を話した時に、彼女は苦笑いをしながら頬をピクピクと引きつらせていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




そんな訳で、弥生が夏祭りに行くフラグが立ちました。

無事に箒は弥生と一緒に夏祭りデートを楽しめるのでしょうか?

それとも、また無粋な邪魔が入るのか?
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