でも、コンビニのお弁当のラインナップが少し早目に夏仕様になっているのは嬉しいですね。
今日のお昼はコンビニ弁当のざる蕎麦でしたし。
山葵が鼻に沁みました……。
ちょっとだけ、原作で山葵を丸ごと口にして悶絶していたシャルの気持ちが理解できた気がします……。
一夏とセシリアの試合は中盤に差しかかっているが、近接用ブレードしか装備していない…と言うよりは、それしか武装が無い一夏は思うように攻撃が出来ないでいた。
「どうやら、逃げ回る事だけは一人前のようですわね」
「お褒め頂いて光栄だよ……!」
「でも、それもここまでの話」
セシリアの顔が急に真剣みを帯びた瞬間、白式の左脚にレーザーが直撃した。
「なっ!?」
一夏は何が起きたのか理解できていなかった。
確かに視線はセシリアから離していない。
彼女の手にあるレーザーライフルの銃口はこちらに向いていないと言うのに、何故か攻撃が命中した。
「ん……? なにか後ろに浮いている物が少なくなっているような気が……」
「やっと気が付きましたの? ご自分の周囲を見てごらんなさい」
「こ…これは……!?」
一夏が自分の周りを見渡すと、そこにはブルー・ティアーズのフィン状のパーツが四つほど自立稼働していた。
「これこそが、私の専用機の第3世代兵装……『ブルー・ティアーズ』ですわ」
「機体と同じ名前の武器かよ……」
この時、一夏は弥生との勉強で教わった事を思い出した。
(これが弥生に前に教えて貰ったイギリスの十八番の『ビット兵器』ってヤツか……! 一撃の攻撃力が低い代わりに、機動性と命中性能は通常のISの比じゃないって言ってたっけ……!)
一夏の額に汗が流れる。
相手が切り札を投入してきたと言う事は、彼女がこちらにトドメを刺しに来たと言う事でもある。
(まだ……まだなのか……!)
白式は、原作同様に初期設定が未だに終了していない状態でいきなり実戦に駆り出された。
思わず焦ってしまうが、だからと言って時間が加速する訳でもない。
目の前に設定終了までの時間が表示されているが、まだ結構な時間があった。
「休憩は終了。さぁ……いきますわよ?」
(く…来るっ! 今はとにかく、設定が終わるまで回避に専念するしかない!)
セシリアが空いている左手を高々と掲げたと同時に、四基のビットが一斉に襲い掛かってくる。
青白いレーザーが空を裂き、次々と一夏に向かって殺到する。
その様子はまるで、レーザーの雨。
「くそっ!!」
「あらあら……逃げているだけでは勝負には勝てませんわよ?」
「んな事は俺だって分かってるよ!」
分かってはいても、それを行動に移せなければ意味が無い。
徐々に追い詰められていく中、一夏は自身の得意とする観察眼にて、よくセシリアの動きを観ていた。
(ビットを操作している時、なんでアイツは攻撃をしてこないんだ? ……まさか! ビットに命令を出している時はアイツ自身は身動きが取れないんじゃ……!)
ここに来て逆転のチャンス到来か?
SEは心許ないが、それでも自分の勘を信じてみる事にした。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
今の自分の技量では、飛び回るビットを剣で破壊するなんて絶対に不可能。
だったら、肉を切らせて骨を断つ戦法で、一気に自分の距離にする!
これが今の自分に出来る唯一の策!
「そんなっ!? 攻撃を受けながらもこちらに突貫してくるなんてっ!?」
まさかの行動にセシリアが目を見開いて驚愕する。
そして遂に、セシリアの懐に潜り込んだ!
「しまっ……!」
「もらったぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
攻撃を思った以上に受けてしまい、攻撃出来るのはこれが最後。
これが直撃しなければ、一夏の敗北は必至。
「……な~んて、私が言うとでも思いましたの?」
一夏の剣が命中する直前、セシリアの顔が笑顔に変わる。
明らかにおかしい事ではあるが、今の一夏にそんな事を気にしている余裕は無い。
この攻撃に全ての神経を集中させる!
………そんな簡単に攻撃を通らせるほど、代表候補生はそんなに甘くは無かった。
「ぐほっ!?」
突如として、一夏の腹部に衝撃が走る。
反射的に衝撃の原因を見てみると、そこにはセシリアの握っているレーザーライフルの銃身が突き刺さっている。
「これは……!」
「まさかとは思いますけど、私が射撃ばかりをしているからと言って、近接戦が不得手だと勝手に思い込んだんではありませんでしょうね?」
「…………!」
思い込んでました。
「代表候補生たる者、いついかなる時も、あらゆる状況を想定して訓練を行うもの。自分が射撃型のISを授かった時から、相手が必ず機体の弱点である接近戦を行ってくることは予想済み」
ですよね~。
「大体、私が本国でどれだけの同胞達と汗水流して訓練をしてきたと思いますの? 自身の弱点である近接戦を補う技術ぐらい、身に付けて然るべきだと思うのが当然ではなくて?」
御尤も。
セシリアはレーザーライフル『スターライトMk-Ⅲ』を棒術使いのように振り回し、一夏の顔を強く殴打して吹っ飛ばした。
「はぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
体を回転させながら派手に吹っ飛ぶ一夏。
更に、そこに追い打ちをかけるようにライフルとビットの標準を合わせた。
「それともう一つ。私がいつ、ビットと自分との連携が出来ないと言いました?」
「ま……さか……!」
「その通り。ビットしか動かさなかったのは、貴方にそう思わせるため。まさか、ここまで見事に引っかかるとは思いませんでしたけど……ね!」
ライフルの引き金が引かれ、同時に各ビットからもレーザーが発射される。
それらが全て一夏に命中し、そのまま地面に激突した。
「………………」
傍から見ると、これで決着はついたかのように見える。
だが、セシリアの顔は未だに真剣なまま、一夏の落下地点に広がる土煙を見つめていた。
すると、突如として周囲を覆っていた煙が吹き飛んで、そこから純白の機体が姿を現した。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「あれがセシリアの実力か……。悔しいが、見事としか言いようがないな……」
「イギリスの代表候補生は伊達じゃない」
「別にせっしーは隕石を一人で押し戻したりはしないよ?」
そう言う簪だって、栄えある日本の代表候補生でしょうが。
一夏とオルコットの試合は、終始オルコットの優勢だった。
これはある意味で当然だ。
機体性能が幾ら上でも、操縦者の実力と経験に天と地ほどの差がある。
いくら知識を植え付けても、いくら体を鍛えても、経験の差だけは覆しようがない。
「しかし……あんな風に銃を扱って、本当に大丈夫なのか?」
「ISの武装は多少乱暴に扱ったぐらいじゃビクともしないよ。あの程度で壊れていたら、とてもじゃないけど実戦じゃ使い物にならないし。だよね? 弥生」
「う……うん……」
そこで私に振られても困りますよ? 簪ちゃんや。
(それにしても、まさかライフルをあんな風に利用するなんてな~。あれじゃ、スナイパーと言うよりは、まるで中国の映画に登場する棒術使いだ)
簪も言っていたけど、伊達に国の旗を背負ってはいないって事か。
懐に飛び込まれた程度で危機に陥ったり、狼狽えたりしたら、代表候補生なんてやってられないってか?
でも……原作じゃ思いっきりビビってたし、ビットと一緒には動けなかった筈……。
もしかして、私が知らない所でオルコットが成長している……?
「む……? あの光は……」
「や…っと……終わった……みた…い……だね……」
「「「???」」」
三人揃ってハテナマークを浮かべない。
ステージを見ていれば嫌でも分かるから。
「あ…あれはっ!?」
「まさか……」
「ほぇ~……」
あの真っ白な装甲……あれこそが白式の真の姿か。
さて、ここから原作のように負けてしまうのか。
それとも、奇跡の逆転勝利でもしてくれるのか?
普段は両者揃って忌み嫌っているけど、試合の時ぐらいは応援してやってもいいか。
別に私の事なんて見てないだろうし。
「がん……ばれ……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「矢張りでしたか……」
一人だけ納得したような顔で復活した一夏を見つめるセシリア。
その顔には一切の油断は無い。
「
「分かってたのかよ……」
「えぇ。幾ら素人が乗っているにしても、専用機にしてはどうも動きに精彩が欠けていたように思いましたから」
「それなのに、あの猛攻撃をしてたのか……」
「獅子は兎を狩るのにも全力を尽くすものでしてよ?」
得意気に微笑むセシリアではあったが、すぐに笑みが消えて真剣モードに。
「これで勝負は分からなくなったな」
「本当にそうだといいですわね」
「……どういう意味だ?」
「さぁ?」
肩をすくめるセシリアの姿にカチンときそうになったが、ギリギリの所で踏みとどまる。
(待て待て。ここで熱くなったら、それこそ相手の思う壺だ。弥生がアドバイスしてくれたことをよ~く思い出せ!)
一夏の脳裏に、弥生の言葉が蘇る。
『ど…んな時も冷静……にならなきゃ駄目……だよ? 冷静さ……を欠いたら……勝てる勝負……も勝てなく…なる…から……。一番いい…のは……頭はクール…に……心はホットに……する事……』
ほんの少しだけ目を閉じて心を落ち着かせる。
(頭はクールに……心はホットに………よし!)
カッ!と目を開いて、手元にある剣…『雪片弐型』をしっかりと握りしめる。
(雪片……千冬姉が現役の時に使っていた愛刀……。それ以外にも、俺には弥生から沢山の事を教わった……。俺は今、千冬姉と弥生…二人の想いを背負ってここにいるんだ!)
腰を低くして、いつでも飛び出せる態勢を取る。
「この勝負……絶対に勝つ! 千冬姉の為にも……弥生の為にも!!」
「それはこちらのセリフですわ!!」
二人の戦意が高まり、今まで以上にアリーナが盛り上がった。
その時だった。二人の機体のハイパーセンサーが、ある姿を捉えた。
「「あ…あれは……!?」」
それは、弥生がこちらに向かって何かを言っている姿。
遠距離故に声までは拾えなかったが、弥生の姿を見つけた時点で二人はセブンセンシズに覚醒しているため、その口の動きだけで彼女が何を言っているのかを理解した。
(弥生が……)
(弥生さんが……)
(俺に!)
(私に!)
((頑張れと言ってくれている!!!))
弥生の何気ないエールが、二人に精神コマンド『愛』を発動させた。
「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!! いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」
「今度こそ完全に息の根を止めて差し上げますわっ!!!!」
こらこら。殺してどうする。
先に飛び上がったのは一夏。
雪片の刀身が展開し、そこから白い光の刃が出現した。
本能と勘で、その刃が危険だと判断したセシリアは、即座にビットに命令を下すと同時に自分も攻撃に参加する。
「そこっ!!」
「当たってたまるかっ!!」
弥生のアドバイスの通り、頭を冷静に保つ事でビットの動きだけでも読むようになっていった。
(オルコットの攻撃は位置的にも正面からしか来ない。今の俺なら避ける事もなんとか可能だ。だから、ビットの動きだけに意識を集中させれば!)
流石に被弾率0とまではいかないものの、確実に回避率は向上していた。
「やりますわね……! ですが!」
(迂闊に近づいても、あの銃身を使った攻撃が待っている! 理想なのは銃身ごと相手を斬る事だけど、そう簡単に上手くいくとは思えない……。どうする……!?)
残念な事実ではあるが、体術に置いてもセシリアの方が何枚も上手であり、武術に対して長いブランクがある一夏では現状、手も足も出ない。
回避をしながら接近を試みてはいるが、こちらの距離に入っても直撃させられなければ意味が無い。
そうして悩んでいる間にも、徐々に二人の距離は近づいていく。
「こうなったら!!」
「…………!!」
あと少しと言う所で、レーザーの包囲網を掻い潜りながら、一夏が加速を掛けて一気に接近する。
先程と同様に剣が届く場所まで近づく事に成功するが、今回の一夏は少し構えが違った。
「これでどうだぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
「なぁっ……!?」
下段から弾き上げるようにして雪片を振るい、セシリアが持っていたライフルを遠くに吹っ飛ばした!
「チャンスッ!! 今度こそっ!!」
そのまま流れるように上段からの唐竹割り!……となればカッコよかったのだが……。
「…………え?」
「私が先程言った事……もう忘れてしまったんですの?」
「それって……」
「数分前に確かに言いましたわよね?『あらゆる状況を想定して訓練をしている』と。ならば、何らかの理由で武器が手元に無い場合の訓練もしているに決まっている…とは少しも思いませんでしたの?」
振り下ろそうとしていた一夏の両腕は、セシリアの両手に掴まれてビクともしなかった。
勿論、雪片は彼女の体に触れてもいない。
更に言うと、この時の一夏は白式のSEがリアルタイムで減少している事に全くもって気が付いていなかった。
「ここまでの奮闘は称賛に値しますけど……」
一夏の目の前で、二基のミサイルビットが自分の方に向けて発射態勢になっているのが見えた。
(ミ…ミサイルっ!? この距離じゃ避けられないっ!)
「これで……
超至近距離でミサイルが直撃、爆発した。
この距離ならばセシリアにも多少のダメージが入ってしまうが、それでも直撃するよりは遥かに損害は少ない。
黒煙に包まれながら落下していくが、その目はまだ諦めていない。
「まだだ……!」
顔だけをセシリアの方に向かせて、そこから体も無理矢理方向転換。
「まだ終われないんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
その状態から三度の突貫。
セシリアもそれに応戦すべく、近接用ショートブレード『インター・セプター』を逆手に持って構える……が、彼女の警戒は杞憂で終わる。
【試合終了! 勝者……セシリア・オルコット!】
「「…………は?」」
二人とも全く状況が飲み込めないまま、決着が付いてしまった。
雪片から放出されている光の刃が静かに消滅し、その装甲もゆっくりと閉じていった。
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
試合が終了し、観客席にいた生徒達はそれぞれに戻り始めていた。
私も席から立って帰ろうと思ったが、その前に少しだけ寄り道をしようと思った。
三人には適当に誤魔化して、私は先程までいたAピットに足を運んだ。
自分で指導した手前、顔ぐらいは見せないと後で怖いような気がしたから。
ピットに入ると、そこでは落ち込んだ一夏に教師二人が何か話しかけていた。
多分、原作のように『馬鹿』とか『訓練しろ』とか言われてるんだろう。
彼の手には分厚い本まであったし。
あれって多分、専用機の使用に関する規則が書かれた本だよね?
私も持ってるよ。今では普通に部屋のオブジェクトと化してますけど。
「あ……弥生……」
「板垣か……」
私の存在に気が付いた女教師二人は、顔を見合わせてから頷いて、静かにピットから去っていった……って! なんで出て行くのっ!?
いや……別にここにいて欲しいとも思ってないけど、それでもこいつと二人っきりでここにいるのはちょっと……。
「……ゴメン……弥生……俺…勝てなかった……」
「一……夏……」
どうやら、人並みには落ち込んでいるようだ。
もうちょっと普通にしていると思ったけど、そんなにもこの試合に意気込んでたのか?
「折角……弥生に勉強を教えて貰ったのに……俺……俺……!」
ちょ…ちょっと! なんでここで泣き出すのさっ!?
お前は私に何を求めてるんだ!
「………………」
あ~……もうっ!
顔だけを見るつもりだったのに…目の前で泣かれちゃ、私だって何もしないわけにはいかないじゃないか……。
「一…夏……」
「弥生……?」
少しだけ背伸びして、一夏の頭をそっと撫でる。
「一夏…は……頑張った…と思う…よ? 初めて…で…代表…候補生…と……あれだけ…渡り合え…れば……充分…に凄い……方だよ……」
「けど俺……試合に負けて……」
こいつって、こんなにもウジウジトしたキャラだったっけ?
はぁ~……仕方が無い奴……。
「負け……を知らずに……一人前…になった人は……いない……。誰…だって……最初から上手くいく……ことなんて……無い……」
「弥生もか?」
「う…ん……。失敗は…成功の母……とも言うし……この負けを……次に生かせばいい……。そうすれ……ば……一夏は……もっと強くなれる……よ……」
「弥生……」
涙をISスーツの袖で拭ってから、一夏は目を赤くしながら私の顔を真っ直ぐに見つめた。
「俺……次は負けないから……! 絶対に勝ってみせるから……! だから…見ててくれよな……!」
やっとらしくなったか。
ったく……どうして私がこいつを慰めなくちゃいけないのやら。
「ん……頑張れ……男の子……」
でも……ずっとこのままでいられるよりは……少しマシかもしれないな。
この後、一夏と別れてからオルコットの様子も見に行ったのだが、私の顔を見た途端に物凄く興奮して、幼い子供のようにはしゃぎながら私に抱き着いてきて、ちょっとだけウザかった。
試合に勝って嬉しいのは理解出来るけど、だからと言って私に抱き着くのだけは勘弁願いたい。
試合直後の汗が制服について汚れるだろうが。
予備の制服があって本当によかった……。
その時の篠ノ之の顔がいつも以上に怖かったのが忘れられなかったな……。
割と本気でちびりそうになった……。
後で本音と簪に癒して貰おう……。
か…勘違い要素が消えたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?
試合中心だから、仕方が無い……のかな?
予告ですが、そろそろ例の生徒会長様の出番を考えてます。