なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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弥生と一夏の遭遇回。

一応、弥生視点でお送りします。






幕南名物『総理の焼きそば』

 な~んか見覚えのある顔がこっちに手を振ってくるから誰だと思ったら、何故か前に千葉県でバイトをしていた一夏クンじゃないですか。

 しかも、また塩田さん達も一緒にいるし。

 

「なんでアイツがいるんだ……」

 

 おっふ。箒さんや。気持ちは分かるけど、そこまで露骨に嫌な顔をしなくてもいいんでない?

 流石にほんのちょびっとだけ同情しちまったのぜい。

 

「……行くか?」

「一応……」

 

 ここで行かないと、向こうから走ってきそうだし。

 それはそれで目立つから嫌だ。

 だったら、自分から行った方がまだマシだ。

 

「ハァ~……折角、弥生と二人きりだというのに……」

「まぁ……まぁ……」

 

 私も、箒と二人でお祭りを回れたのは普通に楽しかったけど、最近は少しぐらい賑やかなのも嫌いじゃなくなってきてる。

 言っとくけど、あくまで『少しだけ』だからね?

 

 因みに、箒はさっきまで着ていた巫女服じゃなくて、彼女のおばさんが用意してくれた浴衣に着替えている。

 元々が『THE・ヤマトナデシコ』って感じだったのに、浴衣に着替えた事でよりそれが強調された感じ。

 簡単に言っちゃえば、絶対に私よりも浴衣が似合ってるって事ですよ。

 

「いや~驚いたよ。まさか、弥生もここに来てるなんてな」

「それはこっちのセリフだ。なんで一夏がここにいる」

「ちょっち夏祭りが恋しくなってな。ところで、箒が弥生の事を誘ったのか?」

「そうだが。それがどうした?」

「ナイス。浴衣姿の弥生を見れたから超大満足です」

「弥生。今すぐこの男から離れろ。妊娠してしまうぞ」

「しないよっ!? 箒は俺の事をどんな風に思ってるんだよっ!?」

「弥生の体を狙っている変態」

「ひでぇ!」

 

 遭遇して数秒でコント開始ですよ。

 やっぱ、この二人って相性いいんじゃね?

 

「なん……で……塩田さん達……も……いる……の……?」

「織斑がここの夏祭りに行きたいって言ったもんだからさ、ついでに俺等も一緒に行こうって話になったんだよ」

「へ……ぇ~……」

 

 もうさ、私に執着しないで塩田さん達の中から選べばいいんじゃない?

 あ、この人達って既にリア充だったっけ。

 桜井さんは……なんかダメ。私が許さない。

 

「んで、さっきから織斑とコントしてる美少女は誰よ?」

「私……のクラスメイト……の篠ノ之……箒……さんだよ……」

「篠ノ之箒ね。……ん? 篠ノ之?」

「もしかしてさ、この篠ノ之さんってこの神社の子だったり?」

「正解……」

「だよな。篠ノ之なんて名字、滅多に無いもんな」

 

 あれ? 名字繋がりで箒が束さんの妹だって気が付かなかったのかな?

 それとも、気付いていて敢えて無視してるとか?

 

「おい織斑。コントはその辺にしとけ」

「コントって……」

 

 傍から見たら立派なコントだよ。

 

「む? お前の周りにいる女子達は誰だ?」

「えっと、この人達はな……」

「あ~……自己紹介ぐらい自分でするよ」

 

 ここで塩田さん達と箒の自己紹介タイム。

 名前だけ名乗ってたので、すぐに終わったけど。

 

「成る程……千葉県からこっちにか……。遠かったろうに」

「特急で来たから大丈夫」

 

 特急って……。

 そこまでして来たかったの?

 

「それで、そこにいる桜井さんが、中学時代に弥生と同級生だったと」

「その通り。昔の弥生の事は一杯知ってるわよ~」

「ほ……本当かっ!?」

「その反応……そっか~。弥生はソッチでもやってるのね~」

 

 何がですか。別に私は何もやってないよ。

 

「後で色々と教えて……あ・げ・る♡」

「よろしく頼む……!」

 

 なんか妙な同盟が結成したし。

 なんじゃこりゃ。

 

「なんか一気に大所帯になってしまったな」

「しかも、織斑以外は全員が女子だしな」

「織斑に向けられる男共の視線、明らかに殺気と嫉妬が混じってるし」

 

 みたいね。当の本人は全く気が付いてないけど。

 こんな所でも鈍感スキルって発揮されるのね。

 

「早めに移動した方がよさそうだな」

「とっても、どこに?」

「あ……の……」

「どうした弥生?」

「おじいちゃん……も屋台……を出してる……みたい……だから……行かない……?」

「「「「「「「マジでっ!?」」」」」」」

 

 うぉうっ!? そこまで反応するっ!?

 

「総理の屋台って事は、勿論出してるのは……」

「焼きそば一択だな」

「すぐに行こうぜ!!」

 

 いきなりテンション上がったね~。

 でも、気持ちは分かるよ~。

 私もおじいちゃんの作る焼きそば、大好きだもん。

 

「あの話……本当だったんだ……」

「そ……総理の焼きそば?」

 

 行き先が決定したので、早速移動開始。

 え? 屋台の場所は分かるのかだって?

 そんなの、匂いで分かる!!

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

「さっきは言いそびれてたけどさ、浴衣姿の弥生も凄く可愛いぜ」

「それ……は……どう……も……」

 

 なんでそんなセリフを素面で言えるのか、マジで謎なんですけど。

 同じように浴衣を着てきた箒にも言ってあげなよ。

 勿論、私はちゃんと言いましたよ?

 そしたら、彼女の顔が急沸騰しちゃったけど。

 

「つーか弥生。オレ達と会うまで、どれぐらい食べた?」

「えっと……たこ焼き……綿飴……箸巻……焼きトウモロコシ……唐揚げ……林檎飴……アイス……焼き鳥……それから……」

「……もういい」

「聞いてるだけでお腹いっぱいだわ……」

「相も変わらず、弥生の大食いは健在だって事か」

「ガチで世界狙えるんじゃね?」

 

 いやいや。もっと食べる人なんて沢山いるから。

 私は好きで食べてるだけだしね。

 

「ところで、こっちで本当に合ってるのか?」

「間違い……ない……。ソース……の匂い……が漂って……くる……」

 

 この特製ソースの匂いは絶対に間違えない!

 だから、こっちで合ってる!

 

「見えて……きた……」

「ホントだ……」

 

 これまでに何度も見てきたカラフルな屋台。

 焼きそばの焼けるいい匂いがここまで来てる。

 

「いい匂い~♡」

「食欲がそそられるね~」

 

 匂いに釣られて少し早歩きに。

 すると、屋台の中にいたのはおじいちゃんだけじゃないのが分かった。

 

「お。やっと来たのう」

「いらっしゃい。弥生ちゃん」

「矢禿……さん……」

 

 吉六会ナンバー2の矢禿康介さん。

 アフロなカツラが特徴的な凄い人。

 まさか、おじいちゃんの手伝いをしてるとは思わなかった。

 

「お久し振りです、総理!」

「矢禿さんも来てたんだ」

「バイトですか?」

「似たようなもんかな?」

 

 この人はファミレスでも働いてるのに、立派な人だよ。

 

「ほ……本当に総理が屋台で焼きそば作ってる……」

「聞いた時は俄かには信じにくかったが……」

「それよりも、屋台に書いてあるのって……」

 

【幕南名物『総理の焼きそば』】

 

「「そのまんまだ―――――――――!!」」

 

 やっぱ息ピッタリじゃん。

 そのまま付き合っちゃいなよYOU達。

 

「おぉ! 君達も来とったのか!」

「ど……どうも。じゃなくて!」

「こんなストレートな名前でいんですか!?」

「構わんよ。誰もワシが本当の内閣総理大臣だとは思わんしの」

「「それでいいのか……」」

 

 それでいいんだよ。

 実際、今までもどうにかなってるしね。

 

「ところで総理。売り上げはどうッスか?」

「中々に順調じゃよ。じゃが、もう少し来てほしいのぅ……」

「だったら、弥生ちゃんに食べて貰えばいいんじゃないんですか? いつも美味しそうに食べてくれる彼女なら、普通に食べてるだけでも十分に客引きになると思いますけど」

「それが最善かもしれんの。弥生にサクラをさせるようで気が引けるが……」

「私……は別にいい……よ……?」

 

 美味しい焼きそばをタダで食べれるんだから、文句なんて言うわけがないでしょ。

 

「どうせなら、他の皆にも食べて貰おうかの」

「いいんですか?」

「なぁに。構わんよ。折角こうして来てくれたんじゃ。最初の一杯ぐらいは奢ってやるわい。二杯目からはちゃんと払ってもらうがの」

「よっしゃ!」

「態々来た甲斐があったな!」

「私的には助かるわ~。今月ちょっとお小遣いがピンチだったのよね」

 

 てなわけで、ここにいる皆の分の焼きそばが作られる事に。

 凄く手慣れてるから、あっという間に出来立てホカホカ焼きそばが皆の手に行き渡った。

 

「これが総理の焼きそば……」

「見た目はめっちゃ美味しそうだ……」

 

 割り箸を口に咥えて割ってから……。

 

「「「「「「「「いただきま~す♡」」」」」」」」

 

 ん~♡ いつ食べても本当に美味しい~♡

 

「「い……いただきます……」」

 

 一夏と箒も食べ始めたみたい。

 さぁ、おじいちゃんの焼きそばの前にひれ伏すがいい!

 

「「ん!?」」

(最初は総理の焼きそばと聞いて、少し不安を感じていたが……)

(一口食べたら取り越し苦労!!)

((止まらない! 食欲が!!))

 

 どうやら、一瞬で焼きそばの虜になったみたい。

 分かる。分かるよ~、その気持ち。

 私も最初に食べた時は同じ気持ちだったからね~。

 

「うめ~♡」

「これなら幾らでも食べられるわ~♡」

 

 塩田さん達も嬉々として食べ続けてる。

 あの人達もおじいちゃんの焼きそばが大好きだからね。

 

「総理! この焼きそば、めっちゃ美味しいです!! マジで尊敬します!!」

「こんなにも美味しい焼きそばを食べたのは生まれて初めてです!」

「はっはっはっ! そうじゃろう、そうじゃろう」

 

 そうして食べていると、早速効果が現れ始めてきた。

 道行く人たちが足を止めてこっちを見ているから。

 

「なぁ……あの美少女集団が食ってる焼きそば……ちょー美味そうじゃね?」

「凄く美味しそうに食ってるよな……ゴクリ……」

 

 最初の人達が立ち止まり、そこから徐々に人だかりができ始めた。

 

「焼きそばか~……美味しそうだな~……」

「お母さん~。あれ食べたい~」

「あれ……食うか?」

「うん。なんか急にお腹空いてきたかも」

 

 親子連れにカップルと、兎に角大勢の人達が集まってきた。

 もうそろそろ、私達の出番は終わりかな。

 

「よし。少し横に行こうぜ」

「ん」

 

 塩田さんの提案で、少しだけ横にずれた途端、急にお客さんが押し寄せてきた。

 

「あの! 焼きそば一つください!」

「こっちも一つ!」

「俺にも頼む!」

「はいはい! 押さないでくださいね!」

「すぐに作るから待っててほしいのじゃ!」

 

 本領発揮と言わんばかりに、凄まじい勢いで焼きそばを作っていき、それが次々と売れていく。

 まるで、早送りの映像を見ているみたい。

 

「うんまぁ~~い!!」

「こいつはうめぇ!! 最高に美味しい匂いがプンプンするぜぇ~!!」

「あぁぁぁ~~ん!! 美味しいぃぃぃぃぃ♡」

「この美味い焼きそばを作ったのは誰だぁ!!」

 

 多種多様な反応をするのね……。

 ユニークなお客さんがいるもんだ。

 

「忙しそうだし、私達はそろそろ行こうか」

「それがよさそうですね」

 

 行く前にちょっとだけおじいちゃん達に目配せをして、向こうに行く旨を伝える。

 すると、軽く頷いて返事をしてくれた。

 

 さて、今度はどこに行きますかね。

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 おじいちゃんの屋台から離れた、少し開けた場所にて焼きそばを食べ終えた私達は、これからどうするか話し合っていた。

 

「なんか腹が膨れてきたな」

「ちょっち限界かも……」

 

 そう? 私はまだまだ余裕ですけど。

 皆、小食なのね~。

 

「じゃあ……検索……する……?」

「検索?」

「ん。私……のスマホ……なら出来……る……」

「あ~。弥生のスマホって総理のお手製だったっけ」

「スマホまで手作りなのかよ……」

「あの総理、万能すぎないか?」

 

 私の自慢のおじいちゃんだからね。

 はい。そんな訳で検索開始っと。

 

「周辺……にある……食べ物系……の屋台……を教えて……」

「「やっぱりか」」

 

 そこの幼馴染コンビ。やっぱりとはなんだよ、やっぱりとは。

 

『検索中……完了』

「早っ!」

『検索結果。焼きそば一件。たこ焼き二件。焼き鳥一件。箸焼き一件。かき氷三件。アイス一件。林檎飴一件。綿飴一件。焼きトウモロコシ一件。イカ焼き一件。唐揚げ一件。ポップコーン一件。ハンバーガー一件』

「結構あるんだな……」

「つーか、ハンバーガーって……」

「最近じゃ割と珍しくは無いけどさ」

 

 まだまだ食べてないのがあるんだな~。

 なら、まずはまだ制覇してない屋台を中心に……。

 

『ラーメン一件』

 

 ……………は?

 

「ラ……ラーメンって言ったのか?」

「私にはそう聞こえたけど……」

「ほ……箒。篠ノ之神社の祭りって、ラーメンの屋台も出してたっけ?」

「いや……そんな記憶はないが……」

「それ以前に、夏祭りにラーメンの屋台って……」

 

 ラーメン……ラーメンだと……。

 

「それ……は豚骨……?」

『はい』

 

 とんこつ……とんこつラーメン……。

 

「食べる」

「え?」

「食べる。食べる。食べる」

「お……おう。分かったから、落ち着け。な?」

 

 夏祭りで食べるラーメン……中々に乙じゃないのさ。

 暑いからこそ熱い物を食う。

 そんな人間に私はなりたい。

 

「弥生の食欲エンジンに火が着いたな」

「こうなった時の弥生は止められない」

「大人しく従いましょ」

 

 早く行きたい! 早く行こう!

 

「あれ? もしかして……一夏さん?」

「蘭?」

 

 なんだかどっかで聞いた事のある声で、僅かにしょうきにもどった!

 でも、一夏の事を知ってる赤毛の女の子は誰?

 なんか見た事があるような……思い出せないな~……。

 

 

 

 

 

 

 




まだまだ続くよ夏祭り。

次回は意外な人物達が登場します。
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