早くも紫式部ゲットしちゃったのぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!
以上。魂の叫びでした。
弥生達が蘭と遭遇している頃。
絶賛、夏祭りの真っ最中の篠ノ之神社の片隅に、明らかに場違いな一台のラーメン屋台が強烈な存在感を放っていた。
その屋台で働いているのは、二人の見目麗しい女性達。
「ヘイらっしゃい!!」
「いらっしゃいませ~」
スコール・ミューゼルとオータム。
以前にも名前が出てきた二人が、どうしてこんな場所でラーメンを売っているのか。
それには、海よりも高く、山よりも深い(誤字に非ず)理由がある。
そもそも、二人は嘗て『
しかし、ある時突然やって来た姉妹『ラケシス』と『アトロポス』によって、あっという間に組織が掌握されていった。
二人共、歴戦の強者だったが故の勘の良さで、すぐに姉妹がかなりの危険人物だと察して、自分達の上の存在に掛けあおうとしたが、彼等も既に姉妹によって懐柔済みだった。
もうこの組織は終わりだ。
そう判断したスコールとオータムは、最悪の事態になる前にもう一人の仲間である少女と共に組織を離脱し、裏切り者の烙印を甘んじて受け入れた。
それから三人は、少女の本来の目的を手伝いながら、なんとか反撃をしようと試みたのだが、姉妹の行動は想像以上に早かった。
まず、銀行口座やカードなどを全て使用不能にし金銭面で追い詰め、更にはスコールが経営していたホテルまで買収し、自分達の支配下に。
完全に後ろ盾と金が乏しくなった彼女達は、辛うじて逃亡生活を続けながら金稼ぎに勤しんでいるわけなのだが……。
「なんで……よりにもよってラーメンなのよ……」
「別にいいじゃんか。夏祭りでラーメンの屋台を出して何が悪い!」
「いや……私が言いたい事はそんな事じゃなくて……いや、いいわ……」
今までも色んな仕事をしてきたが、まさかラーメンの屋台をする羽目になるとは。
スコール・ミューゼル。初めての屋台である。
そんな二人の屋台にお客さんがやって来た。
「お? ラーメン?」
「へい! 何にしましょー」
「何があるんだ?」
「これっす」
そう言って置いたのは、独特の香りが漂うとんこつラーメン。
「……他、無いの?」
「無いっけ?」
「バリエーションの事? 今出来る事って言ったら、精々が玉子を足すとか、チャーシューの増量程度だけど……」
「しまった。ちゃんとお品書きをプロデュースするのを忘れてたわ。なんせ、この店舗を確保する経緯がかなりドタバタだったからな~」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「え? ここに置いてトイレに行っている間に屋台が無くなっていた? 随分と大胆な泥棒やね~」
「うぅぅ……俺の屋台……どこに行っちまったんだよ……」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「まいど~! ありがとございやした~!」
ラーメンを食べ終わった客が満足そうに去っていく。
どうやら、味の方は大丈夫のようだ。
「なぁスコール。ラーメン屋の屋台ってそんなに珍しいかね?」
「知らないわよ。私、生粋のアメリカ人だし」
「それもそっか」
さっきの客が食べた器を洗いながら、麺の確認をするオータム。
その手つきは完全に熟練者のソレであり、もしかしたら昔、どこかでバイトでもしていた経験があるのかもしれない。
「夏の夜に響く祭りの音! 宴の声! むせ返すような豚骨臭!! いや~! マジで癒されるな~!」
「それは絶対に貴女だけよ」
アメリカ人にはとんこつラーメンの素晴らしさを理解するのは難しいかもしれない。
いつの日か、彼女もラーメン好きになるのを期待しよう。
なんて言ってると、またお客さんが。
「お~。二枚くれないか」
「へい! らっしゃーせー!」
最早、完全にプロと化したオータムは僅か一分足らずで見事なラーメンを作り上げた。
「ねーちゃん。中々にいい手並みだね~」
「はっはっはっ! これぐらい朝飯前だぜ!」
「お? 結構いけるな」
「こんな所にラーメン屋とはな」
「珍しいけれど、偶にはいいかもな」
「普通は見ないですよね。夏祭りの会場には」
「いやはや。何事も冒険が大事だよ」
言いたい放題であるが、これはこれで読者諸君の心の声を代弁しているのではなかろうか。
「スコール~……。なんか勝手に冒険呼ばわりされてるんだけど~」
「実際にかなりの冒険してるんだから、否定は出来ないじゃない」
「それはそうだけど……」
「そう言えば、買い出しに出かけたマドカはまだかしら?」
「この辺は初めてだから、迷ってるのかもな。ま、アイツなら大丈夫だろ」
「それもそうね」
なんて、呑気な事を話しながら、二人はラーメンを作り続けるのであった。
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・・・・
・・・
・・
・
「蘭? 来てたのか」
「お久し振りです。お兄から千葉県に合宿に行ってるって聞きましたけど」
「合宿ね……。ある意味、間違ってないけど」
合宿とな? そんな事をしてたの?
自主的に合宿なんて……なんて物好きな奴だ。
私には到底真似出来そうにないや。
つーか、この子って誰だったっけ?
どこかで見た事があるような気がするんだけど……。
「おい織斑。誰だよ、この子は」
「あ。この子は俺の親友の妹の……」
「あ~! もしかして、あの時ウチに来てた弥生さんですか!?」
「「え?」」
いきなりこっちに矛先が向きましたよっ!?
私、過去にこの子と会った事なんてあったっけ?
「………親友の妹の『五反田蘭』です」
「お前、一瞬でアウト・オブ・眼中になったな」
そこは言わないであげようよ、吉崎さん。
「弥生。知り合いか?」
「ううん……。会った事……は無い……と思う……よ……?」
「そっか。あの時はご飯を食べに来ただけでしたもんね。知らないのも無理はないか……」
なんか、相手だけが一方的に知ってるって変な感じ。
なんとも薄気味悪いね。
「ほら。前に弥生が外の食堂に食べに来た時があっただろ? 五反田食堂って……」
「あぁ……」
友情セットを食べたお店ね。
うんうん。よく覚えてるよ。すっごく美味しかったからね。
また食べに行きたいな~♡
「あそこの家の娘なんだよ。んで、この子の兄貴が俺の親友なんだ」
思い出した。確か名前は五反田弾って言ったっけ。
そんでもって、その妹の名前が確か……。
「初めまして! 五反田蘭と言います!」
「えっと……板垣弥生……です……」
「知ってます! 前に一夏さんとお兄に聞きましたから!」
え? そうなの? いつの間に。
「あはは……」
そこで苦笑いしてる男子。
勝手に人の事を言いふらさないでよね。
「五反田って……あの赤髪君の妹か。道理で似てると思った」
「なんだ。鷹橋はこの子の兄貴を知ってるのか?」
「前に塩田と織斑と一緒に買い出しに行った時に偶然会ってね。塩田の正体を知って愕然としてたよ」
「言うなっつーの。あれは向こうが勝手にイメージして、勝手に驚いただけだろうが」
あぁ~。きっと、塩田さんの『あの話』を聞いて、それで怖い妄想が膨らんでたけど、実際に見た塩田さんが相当な美少女だったもんでどんな反応していいか分からなかったんでしょ。
塩田さんの『伝説』を知ってる人って、大半が同じような反応するよね。
「こうして間近で見ると、本当に弥生さんって美人ですよね~。なんだか憧れちゃうな~」
「そ……う……?」
別に私は誰かに憧れるような人間じゃないと思うけど。
「ところで一夏さん。近くにいる美少女軍団はなんなんですか?」
「「「「「「専属コーチです」」」」」」
「私は単なる知り合い。んでもって、弥生の中学時代の親友」
「弥生さんの親友っ!?」
反応するのソッチ!?
「弾はどうしてるんだ? 一緒に来てるのか?」
「私が出る頃はまだ家にいましたけど」
「って事は来てないのか」
「多分」
お兄ちゃんの方はいないのね。
いい機会だから、一目ぐらい見ておきたかったけど。
「まやもや、私の知らない弥生の交友関係が……」
いや。今回のは向こうが一方的に知ってただけですからね?
「あれ? あの子達どこに行ったのかな?」
「どうしたんだ?」
「いえ。実は今日、学校の皆と来てたんですけど、どこにも見当たらなくて」
あらら。それは大変だ。
蘭ちゃんがはぐれたのか。もしくはお友達がいなくなったのか。
どちらにしても、すぐに探してあげなきゃ。
「あのさ……。それってもしかして、さっきからずっと物陰からこっち見てる、あの子達の事だったりする?」
「え?」
叶親さんが指差す場所には、浴衣を着た女の子達が物陰から頭だけを出してトーテムポール状態でこっちを見ていた。
「会長に百合の花が咲いてる……♡」
「これは大スクープだわ……」
「つーか、あの美少女だらけの空間は何よ……」
「あれ? 会長と話してるあの美少女、どこかで見た事があるような気が……」
…………探す必要は無かったみたいだね。
「アンタ達~! そんな所で何してんのよ~!」
「キャ~! 会長が怒った~!」
「逃げろ~!」
「ごゆっくり~!」
「お幸せに~!」
言いたい事だけ言って、走り去って行ってしまった……。
浴衣のまま走ったりして、こけたりしないのかな?
「はぁ……全く……」
「苦労してんだな」
「はい……別に悪い子達じゃないんですけど、ちょっとふざけ過ぎるのが玉にキズと言いますか……」
「中学の時なんて、そんなもんよ。実際、中学時代の弥生の取り巻きの子達も似たようなもんだったし」
「「取り巻きっ!?」」
懐かしいねぇ~。
名前は知らないんだけど、よく美味しいクッキーとかくれたから、割と印象には残ってるんだよね。
「そ……そう言えば、皆さんはどこに行こうとしてたんですか?」
「ラーメン屋」
「ラーメン屋っ!?」
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「いいのか? 一緒に行かなくても」
「構いませんよ。後でちゃんと落ち合うようにメールはしておきましたし。今は弥生さんと一緒にいたいんです」
「ストレートに言うなぁ……」
あの後、蘭ちゃんも私達に加わって、一緒にラーメン屋台へと行くことに。
道中でさっきみたいに自己紹介をしあっていたけど、何故か箒と蘭ちゃんの間で火花が散ってたような気がするのは気のせいかしら?
「あ。あれじゃないか?」
一夏の指した場所には、いい匂いを漂わせる屋台がぽつんと立っていた。
間違いない……! あれが私達の約束の場所だ!
「ヘイ! いらっしゃいま……」
これはまた珍しい。若い女性二人組の屋台とは。
それがラーメンともなれば、もっと珍しい。
なんか急に後ろ向いてコソコソとし出したけど。
(おい! なんでよりにもよって板垣弥生がここにいるんだよっ!?)
(知らないわよ! こっちが聞きたいぐらいよ!)
(よく見たら、一緒にいるのって例の織斑一夏に篠ノ之箒か?)
(みたいね。一緒のクラスらしいし、この神社も………あ)
(ど……どうした?)
(ここの名前……篠ノ之神社って言わなかったっけ?)
(そうだけど……あぁっ!?)
早くラーメン食べたいな~。
まだかな~。お腹空いたな~。
(全く気が付かなかった……)
(自分のアホさ加減に嫌気がさすわね……)
(どうする?)
(ここは普通を装って、何も知らない振りを通しましょう)
(賛成)
あ。やっとこっち向いた。
「いや~。悪かったな。ちょっと麺の在庫とか調べてたんだ」
「そうっすか……」
「それで、何にする?」
「弥生」
「ん。ラーメン……一つ……ください……」
「あいよ!」
おぉ! この女の人、かなりの腕前と見た!
手つきが凄く手慣れてる!
「ここって匂い的にとんこつラーメンですよね。他には何があるんですか?」
「何もねぇよ」
「へ?」
「ここはとんこつラーメン一つだけだ」
「な……なんで?」
「
「はぁ……」
なんか、変なルビが見えた気がしたけど。
「あら。そこにいるのは板垣さんですか?」
「小泉さん……?」
いきなりやって来たのは、私の食べ友である女の子の小泉さん。
長い髪を後ろで束ねて、ピンク色の可愛らしい浴衣を着ている。
うん。最高によく似合ってます。
「知り合いか?」
「ん」
「初めまして。板垣さんの食べ友の小泉と申します」
「あ……織斑です」
小泉さんの雰囲気に飲まれて、一夏も反射的に敬語になってるし。
「また新たなライバルが……」
箒は箒でどうしたの? ラーメンが食べたくなった?
「板垣さんならば、必ず来ると信じていました」
「この出……会い……は必……然……」
「そこの子も注文するのかしら?」
「はい。ラーメンを一つください」
「了解。少しだけ待っててね」
きっと、小泉さんもこの匂いに釣られてきたんだろう。
「この近辺のラーメン巡りをしていたら、この神社から凄く美味しそうな匂いが漂ってきたもので。まさかと思い来てみれば案の定でした」
やっぱりね。私達はラーメンで繋がった同志なのだ!
「またもや弥生さんのお知り合いが……。しかも、とんでもない美少女……」
蘭ちゃんは何を戦慄してるの?
もしかして、同じ食べ物系の店の子として、このラーメンの味が気になるとか?
「はいよ! ラーメン一丁お待ち!」
待ってました!
それじゃあ……いただきま~す♡
ここでまさかのオータム&スコールの本格登場。
しかも、小泉さん再登場。
本当なら蘭が注目される回なのに、最終的には空気に……。
だ……大丈夫! 次回こそはちゃんと出番を増やすから!……多分。