今回は割とマジで反省しました。
午前とは違い、午後からはグラウンドでの実技となった。
という事は、今回は模擬戦的な内容じゃないって事か。
「よし、全員揃っているな」
「「「「「はい!」」」」」
「よろしい。では授業を始める」
ジャージを着た千冬さんが相変わらずの威厳を見せつけていて、その隣ではISスーツ姿の山田先生がニコニコ顔で立っていた。
うん。いつ見ても男殺しのナイスバディですな。
原作では楯無さんに絡まれて遅刻をしていた一夏だが、今回はちゃんと間に合っている。
まぁ、二人はもう既に会っているから、今になって改めて接触する必要性は無いって事か。
「今回の授業もISの操縦訓練の予定だが、その前にある武器の説明を行おうと思う」
おやまた珍しい。
一体何の説明をするのやら。
「デュノア。それから板垣も前に出てくれ」
「はい」
「は……はい……」
シャルロットはともかく、私をご指名とはまた意外な人選ですこと。
私達二人に何か共通する事ってあるかな?
それこそ、『性別が女』ってぐらいしか思いつかないけど?
「お前達は『パイルバンカー』と呼ばれる武器を知っているか?」
「えっと……それって、なんか釘打ち機みたいなやつですよね?」
「そうだな。その認識は間違ってない」
バンカーの話をする気なのね。
それなら私達がチョイスされたのも納得かも。
なんか原作のイメージから『シャルロット=バンカー』ってなってるし。
「これは実際に見ながら説明した方が分かりやすいだろう。二人共、ISを展開してから装備してくれ」
「「はい」」
言われるがままに、私はアーキテクトを、シャルロットはリヴァイヴ・カスタムを展開した。
何気にISを纏うのって久し振りだな~。
「少しよろしいでしょうか。きょ……織斑先生」
「なんだ、ボーデヴィッヒ」
「シャルロットがバンカー系である『
「む? 板垣、まだ話してなかったのか?」
「あ………」
すっかり忘れてた。
いやさ、私が自分からISの話をする機会なんて滅多に無いし。
「この際だから板垣の『インパクトナックル』についても説明しておくか」
「それがよさそうですね」
教師二人により、急遽、もう一つ説明する項目が加わってしまった。
別に私は構わないんだけどさ。
「取り敢えず、さっき言った通りに装備してくれ」
リヴァイヴの椀部に鈍く光る銀色の杭とリボルバーが付いている武器が展開されて、それに合わせて私も自分の両腕に十八番の武器であるインパクトナックルを装備した。
「お前達も既に知っているとは思うが、この巨大な拳である『インパクトナックル』は典型的な格闘専用の武装になる。近距離戦でこの巨大な拳の一撃を受ければ、相手はただでは済まないだろう」
「でも、この武器の真価はそれだけじゃないんです」
「インパクトナックルには二つの換装武器が存在し、状況に応じて現場で即座に拳の部分を変化させることが出来る」
「それが……パイルバンカーであると?」
「そうだ。板垣」
「はい……」
千冬さんに目で合図されて、私は拡張領域内に収納してある換装武器の一つである『インパクト・バンカー』を装備した。
「出来ま……した……」
「ありがとう。この通り、完全に別の用途の武器へと早変わりする。まだ配備数は少ないが、このインパクトナックル自体は他にも存在していて、リヴァイヴや打鉄にも装着は可能だ。その代わり、扱いは相当にシビアだがな」
換装可能と言っても、その全てが近接武器だからね。
自分から相手に接近するのは、普通の女の子にはかなり勇気がいることだと思うし、それ以前に相手の弾幕を潜り抜けてから近接戦に持ち込むこと自体がかなり難しい。
「もしかして……私達が知らなかっただけで、板垣さんって本当は凄い子だったり?」
「あんな難しい武器を軽々と扱ってるしね……」
「弥生さん……素敵……♡」
あれれ? なんか妙に評価が上がってる?
まぁ……照れくさいけど、ちょっと嬉しいかな。
でも、最後の人はマジで誰?
「他には何があるんですか?」
「斬撃に特化した『インパクトネイル』だ。板垣、左手だけ換装できるか?」
「なん…とか……」
左のバンカーをネイルに変更っと。
これってまだ実戦で使った事ないんだよね~。
「四本の鋭い爪……!」
「思ったよりも強力そうだな……」
「つまり、弥生さんは一つの武器で『打撃』『貫通』『斬撃』と、三種類の攻撃が可能であると……」
「オルコットの言った通りだ。近接戦だけに着目すれば、かなりの汎用性があるといえる」
「「「「おぉ~!」」」」
これは……素直に喜んでいいのかな?
う~ん……なんとも微妙な気持ち。
「ここでバンカーの説明に戻るが、パイルバンカーはよく『前時代的』とか『浪漫武器』とか『釘打ち機』などと揶揄される事が多いが、決してそれだけの武器ではない」
皆にもよく見えるように、私達はそれぞれのバンカーを前に出す。
「一言にパイルバンカーと言っても、今あるように複数の種類が存在している。まずはデュノアの装備しているタイプだが、これはインパクトの瞬間にリボルバーが回転し中にある弾丸を破裂させ、相手の装甲を貫き、その内部に直接的に衝撃を叩き込む仕様になっている。これの最大のメリットは、隙さえあれば最大で6発の連続攻撃が可能な点にある」
「その代り、一発ごとに薬莢を排出する必要があり、銃火器と同様に弾数制限と使用後には補給が必須になります」
まさに漢の浪漫を体現したかのような武器だよね。
これを考えついた人は間違いなく、スパロボ好きだと言える。
「対して板垣の持つタイプは、弾数制限が無い代わりに攻撃力が少しだけ下がっている。更に、攻撃の瞬間には杭が少しだけ伸びて貫通力が向上している」
つまり、私は射程が上で、シャルロットのは威力が上って事ね。
「どちらにしても一長一短と言うわけだな。だが、どちらにも共通しているのは『射程が極端に短く』『重量が故に取り回しが最悪』で『命中率が絶望的』という点だな」
「正直、デメリットの方が多い武器なんですけど、その代わり一発でも直撃すれば、その威力はまさに『一撃必殺』なんです。当たり所さえ良ければ、量産型のISならば文字通り一撃で仕留められる可能性も秘めています」
ほんと、聞けば聞くほどトンデモ武器だよね。
だからこそマニアに愛されて、今でも採用され続けているんだろうけど。
「最後に、実際に威力を確かめてみよう」
「どうやってですか?」
「勿論、ISに向かって放つんだ」
あ~……千冬さんの目が一夏の方に向いてる~。
はい、生贄決定~。
「織斑。こっちに来てISを展開しろ」
「だと思ったよ……」
本人もなんとなく予想してたのね。
ま、諦めな。ある意味で男の子の宿命だよ。
溜息交じりでこっちに来て白式を展開した一夏。
巻き添えをくらった白式も可哀想に。
「本当はどっちも試したいのだが、時間も無いしSEの問題もあるからな。ここは板垣のバンカーだけを試すとするか」
「弥生のパイルバンカーっ!?」
おいこらそこ。変な言い方すんな。
言葉だけ聞いたら読者の皆が誤解するだろうが。
「おっしゃぁぁぁぁあぁぁぁぁぁっ!!! さぁ弥生!! どんと来てくれ!!」
「えぇ~……」
夏休みで特訓しても、一夏の変態性は治ってないんですけど~。
塩田さ~ん。実力だけじゃなくて、ちゃんとここも矯正しておいてよ~。
私がマジでドン引きしていると、千冬さんがそっと耳打ちしてきた。
「弥生、遠慮はいらん。全力で叩き込んでやれ」
「でも……」
「なぁに。アイツなら喜んで喰らってくれるさ」
いや、それが一番の問題なんですけど。
「はぁ~……」
やるっきゃないか。皆も期待の目で見てるし。
「い……くよ……?」
「おう!」
腰を低くしてから、右腕を大きく後ろに振りかぶる。
そして、仁王立ちしている一夏の腹に向かって……突き刺す!!
「はあぁあぁぁぁああぁあぁああぁぁぁぁぁぁああぁぁぁあぁっ!!!!!」
「ぐぼはぁっ!?」
私の攻撃を受けてド派手に吹っ飛ぶ一夏だったけど、何故かその顔は満面の笑みだった。
ガチで気持ち悪い……。
「うむ。流石は弥生だ。見事な一撃だな」
「あの~……大丈夫ですかね?」
「気にするな。夏の間に相当に鍛えてきたらしいからな。この程度ではビクともせんだろうさ」
「あひゃ~……」
反応に困る余り、山田先生が変な声出しちゃった。
数秒間に渡り空中に放り出されていた一夏は、そのままの格好で地面に叩きつけられた。
「織斑君……変な顔で笑ってる……」
……本当に大丈夫だろうね? 二重の意味で。
「弥生さん……もう素敵すぎ!! ブシャ~~~!!」
「キャァァァァ~~!? 四十院さんが鼻血を出して気絶した~!?」
四十院さんって誰?
・・・・・
・・・・
・・・
・・
・
「そんな事があったんだよ~」
「実力は飛躍的に向上しても、その部分は全く変わってないのね……」
放課後になって、私は本音、ラウラと一緒に生徒会室にお邪魔していた。
他の皆はそれぞれに部活や個人的な用事などに行って、珍しく暇になった。
「全くだ。少しは見直していたのだが、私の中での評価はすっかり元通りだ」
「あはは……」
ラウラが呆れるのも無理ないよ。
私も素で呆れたもん。
「うむ。今日も虚先輩の淹れてくれる紅茶は美味だな」
「ありがとうございます。ボーデヴィッヒさん」
ラウラもすっかり虚さんの紅茶の虜だね~。
気持ちは分かるよ。私も大好きだし。
「にしても、弥生ちゃんのISって一体どれだけの武装を積んでるの?」
「沢山……としか……」
「言えないって訳じゃなくて、多すぎて弥生ちゃん自身も把握しきれてない感じ?」
「です……」
「アーキテクトの武装のセレクトをしたのは板垣総理だと伺っていますからね。あの方の事ですから、溺愛している義娘の弥生さんの為を思って、私達が想像も出来ないような武装を多く積んでいるかもしれません」
「一度、ちゃんと確認した方がいいかもしれないわね」
楯無さんの言う通り、その方がよさそうかも。
いざって時に困らないようにしとかないとね。
「そう言えば、弥生ちゃんとラウラちゃんって部活には何か入ってるのかしら?」
「部活か……。護衛として姫様のお側にいなければいけないから、余りよく考えてなかったな……」
「このIS学園は、何らかの部活に入る事が必須になってるから、いつかはどこかに入部しないといけないわよ?」
「う~む……」
そういや、ラウラは私の護衛だったね。
最近じゃ完全に妹みたいに見てたよ。
「弥生ちゃんは?」
「私…も……入ってない……です……」
「そう……どこにもまだ入部してないのね……」
この目は……またぞろ碌でもない事を企んでる顔ですな。
なんとなく、言おうとしてる事は予想出来るんだけど。
「それなら二人共、この生徒会に入らない?」
「「え?」」
ほらね。
「別に適当に言ってる訳じゃないのよ? 生徒会も一応は部活扱いになってるから、ここに所属してくれれば他の部に入る必要は無くなるし、私や虚ちゃんもいるから、可能な限りのフォローが出来る。それに、虚ちゃんの紅茶が飲み放題になるわよ?」
「お嬢様……紅茶で釣るのはどうかと思いますが……」
「「虚さんの紅茶……」」
「釣られてるっ!?」
虚さんの紅茶か~……。
部活云々はともかく、紅茶が飲み放題は魅力的だな……。
「やよっち~……らうらう~……一緒に入ろ~よ~……」
「本音……」
トドメに、本音のウルウルおめめですよ。
これに抗える人間がいたら、是非とも見てみたいもんだ。
「姫様……どうしますか?」
「……入ろ…うか……」
「いいのっ!?」
「よろしいのですか?」
「入部……したい部……がある……わけじゃない……し……」
「姫様がいいのでしたら、私もお供します」
「本当に!? 本当に生徒会に入ってくれるの!?」
「あぁ。姫様と共に入ってやろう」
「やったわ虚ちゃん!!」
そこまで喜ばれると、なんか逆に申し訳なくなってくるな。
でも、悪い気分じゃないね。
「本人達の意思を無下には出来ませんしね……。何かあれば、すぐに私に言ってくださいね?」
「虚ちゃ~ん? それってどーゆー意味かしら?」
「そのままの意味です。学園で弥生さんの貞操が散らされたとあっては、総理に対して申し訳がありませんから」
「虚ちゃ~んっ!?」
楯無さんよりは一夏の方に何かされる方が心配なんですけど。
いや、アイツはその辺に関してはヘタレだから大丈夫か。
「それじゃあ、ラウラちゃんが本音ちゃんと一緒の書記で、弥生ちゃんは副会長ね!」
「書記か。悪くないな」
「副会長……? 私…が……?」
「そうよ。人気があって美人でスタイルもよくて包容力もある。そして、私が卒業したら生徒会長になって貰うから」
「にゃんと……」
既に二年後の未来が確定っ!?
副会長でも十分に過分な役職なのに、将来的には生徒会長になれってか!?
「今は副会長で、その後は生徒会長か。姫様ならば見事にこなすに違いない」
「やよっちなら、きっと皆も支持してくれるよ~」
「だといい……けど……」
正直、不安要素しかない気がするんだけど~……。
でもまぁ、なってしまった以上は頑張るしかないか。
「なら早速、明日の全校集会で発表ね! 今から楽しみだわ~!」
私は今から胃が痛みだしてるよ……。
皆……どんな反応をするのかな……。
そんな訳で、一年生二学期にして、IS学園の副会長になってしまった私なのでした。
転生前も含めて、人生初の部活が生徒会って……どんだけって感じです。
弥生と一緒にラウラも生徒会に入って貰いました。
やっぱり、この二人はセットじゃないとですね。