なんでこうなるの?   作:とんこつラーメン

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昨晩、寝ている隙にムカデの野郎に右手の中指と左の脇腹を刺されちゃいました……。

その痛みで目が覚めてしまって、今日はかなり眠かったです……。







副会長に就任しました

 次の日。

 朝一からSHRと一時間目の半分を使って行われた全校集会が行われた。

 話の内容は主に、今月に開催される学園祭の事らしい。

 高校の学園祭ともなれば、かなりの規模で行われるに違いない。

 それが天下に名高いIS学園ならば猶更だ。

 

 現在、俺達はクラスごとに並んでいて、俺は比較的前の方に位置している。

 だが、この一組の列の中に弥生とラウラと布仏さんがいない。

 三人共、寮の食堂で朝ご飯を食べた時はいたけど、それから揃ってどこかに行っちまったんだよな……。

 ダメ元で千冬姉に聞いてみたら、『大事な用で少しだけ席を外す』らしい。

 弥生一人ならともかく、ラウラ達も一緒なのは気にかかる。

 あの三人が揃っていなくなるような用事って一体なんだ?

 

(しっかし、ここまで女子が勢揃いしている中で俺一人だけが男子って、想像以上に浮くな……)

 

 数か月間、この学園で過ごしてそれなりにこの環境にも慣れたと自負していたけど、まだまだだったみたいだ。

 この疎外感はマジで半端ないぞ……。

 夏休み中の合宿の時も似たり寄ったりの状況だったけど、塩田さん達の場合はどこか男勝りな部分もあったから、不思議とそこまで気にならなかったんだよな~……。

 

(そういや、全校集会って事は、前にシャルロットの件で会った生徒会長だって言ってた更識先輩も壇上に上がったりするんだろうか?)

 

 その可能性は非常に高いだろうな。

 いやほんと、マジで立派だわ。

 俺にはこんな大勢の人間がいる前で壇上に上がって話をするとか絶対に無理だし。

 多分、緊張で凍りつくんじゃなかろうか。

 

 なんて考え事をしている間も、壇上では司会役をしているであろう生徒会役員と思われる眼鏡を掛けた三年生の先輩が話していた。

 ちゃんと話に集中しないとな。ここでまた聞き逃してたりしたら、千冬姉の出席簿が飛んできちまう。

 

「では、ここからは生徒会長から説明をしていただきます。どうぞ」

 

 やっぱりご登場か。

 俺達の前に、更識先輩が堂々とした足取りでやって来て、壇上にあるマイクの前に立った。

 

「はぁい。みんな、おはよう♡」

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 どーも。私の名前は板垣弥生です。

 ……緊張のあまり、今更な自己紹介をしてしまった。

 

 現在、私とラウラと本音の三人は、壇上の端にある、カーテンで覆われた見えない場所で待機中してます。

 楯無さん曰く『この全校集会で、学園祭について話すついでに私達の事も紹介する』らしい。

 別にそんな事をしなくてもいいと思うんだけどな……。

 大観衆がいるアリーナで試合をした時もかなり緊張したのに、全校集会なんてもっと緊張するじゃない! また胃が痛くなってきた……!

 

「ふむ……これは中々に壮観だな……」

「沢山いて緊張するね~」

 

 流石はラウラ。見事に場馴れしているみたいで羨ましいです。

 言葉とは裏腹に、本音は絶対に緊張とかしてないでしょ。

 

「彼女が出ただけで生徒達の顔色が一気に変わったな」

 

 確かに。

 楯無さんが出ていっただけなのに、皆の表情が心なしか明るくなった気がする。

 それだけ人気があるって事なのかな?

 

「さて……と。今年は本当に色んな事が立て込んでて、新入生の子達にはまだちゃんとした挨拶をしてなかったわね」

 

 そういやそうだ。

 唯でさえ一夏なんてイレギュラーが入学して大騒ぎだったんだし、生徒会長である楯無さんもきっと大忙しだったに違いない。

 そうか。この全校集会は自分の自己紹介も兼ねてたのか。

 

「私は二年の更識楯無。この学園の生徒会長をしている者よ。これからどうかよろしくね」

 

 同性異性問わず魅了するような微笑みで挨拶をした楯無さんに、不覚にも私もドキリとしてしまった。

 

「今月に開催される一大イベントでもある学園祭の話をする前に、まずは今年になって新しく生徒会メンバーになった子達を紹介するわ。さぁ、こっちに来て頂戴」

 

 で……出番が来た! ど……どうする私! まだ何も話したらいいか考えてないんですけど!?

 でも、ここで渋っているわけにもいかないし……こうなったら自棄だ!

 適当に喋ってやろうじゃないか!!

 

 

 

 

・・・・・

・・・・

・・・

・・

 

 

 

 

 新しく生徒会のメンバーになった子……?

 まさか、それって……。

 いやいやいや。そこまで都合がいい事なんてあるわけが……。

 

(いっ!?)

 

 裏からやって来たのは、キビキビと歩くラウラと、いつも通りの布仏さん、そして最後はガチガチに緊張をしている弥生だった。

 

(やっぱりかよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!?)

 

 いや、その可能性もあるかもとは思ってたけど、まさか本当にそうだったなんて誰が想像する?

 少し周りの様子を見ると、箒もシャルロットもセシリアも口をポカ~ンと開けたまま固まっている。

 よく見ると、二組の鈴も似たような顔をしているし、ここからではよく分からないけど、四組の簪もそれっぽい表情をしているように見える。

 

「それじゃあ、自己紹介をよろしくね」

「は~い」

「了解した」

「は…い……」

 

 弥生の反応が普通だと思うんだけど、どうして他の二人は平気そうにしてるんだ?

 いや、ラウラは職業柄、こういった場で緊張しない訓練とかしているかもしれないけど、布仏さんは違うだろ?

 ……そもそも、彼女は緊張なんてする人種なんだろうか……?

 

「一年一組の布仏本音で~す。生徒会書記をしてま~す」

 

 うん。これは前に教えて貰ったから知ってる。

 なら、後の二人はどんな役職なんだ?

 

「一年一組のラウラ・ボーデヴィッヒだ。本音と同じ書記をする事となった。よろしく頼む」

 

 ラウラも書記なのか。

 でもそっか。生徒会の書記ってなんとなく二人いるイメージが強いしな。

 って事は、弥生はなんなんだ?

 

「では姫様。どうぞ」

「う……うん……」

 

 緊張する気持ちは分かるけど、頑張れ弥生!!

 声を出す事は出来ないけど、俺は全力で応援してるからな!!

 

「い……板垣…や……弥生……です……。この度……生…徒会……副会…長……に就任し…まし……た……。よ……よろ…しくお……ねがいし…ます……」

 

 定型文ではあるが、ちゃんと言うべき事を言い終えた弥生は、可愛らしくペコリと頭を下げて挨拶を締めくくった。

 弥生の挨拶が終わった直後に、皆から沢山の拍手が送られた。

 だが、そんな中でも一部の熱狂的な弥生ファンもいる訳で。

 

「キャ~~~!!! 板垣さ~~~~ん!!」

「私……IS学園に入学して……本当によかった……」

「我が人生に一片の悔いなし!!!」

 

 前に桜井さんが言ってたっけ。

 弥生がIS学園を受験すると決めた直後、あの子を追って同じようにIS学園を受験した連中がいるって。

 多分、あの叫んでいる子達がそうなんだろう。

 相当な倍率の筈なのに、弥生に会いたい一心でここまで出来るもんなんだな……。

 俺も人の事は言えないか。

 

「あぁ……我が愛しの姫よ!! 壇上で挨拶をする君は誰よりも美しい! 美の女神ヴィーナスですら嫉妬を覚えるに違いない……」

 

 これは間違いなくロランだな。

 こんな宝塚のような言い回しをする人間は、この学園にはアイツ以外にいない。

 

「皆にもちゃんと受け入れられてなによりだわ。これからは、この子達も一緒によろしくお願いね?」

 

 楯無さんが最後に三人に目配せをすると、布仏さんは陽気に手を振って、ラウラはビシッっと敬礼、弥生はさっきと同じように頭を下げた。

 

「では、三人は少し横に移動してて頂戴ね」

「「「はい」」」

 

 あの三人の挨拶だけで相当な密度があったと思うのは俺だけだろうか。

 まだ今回の話の主軸を聞いてないのに。

 

「それじゃあ、ここから学園祭の話に移させて貰うわね。実は今回の学園祭、ちょっとした特別ルールを設けようと思います。その名も……」

 

 な…なんだ? 未だ嘗て味わった事の無いような悪寒が背中を走ったぞ!?

 猛烈に嫌な予感を感じていると、楯無さんの背後にデカデカと投影型ディスプレイが浮かび上がった。

 

「『各部対抗織斑一夏争奪戦』!!」

 

 …………はい? 俺の聞き間違い&見間違いか?

 俺の顔写真がでっかく表示された上に、俺の争奪戦とか聞こえた気がするんだけど。

 ははは……まさかな。そんな訳があるなんて有り得な……。

 

「「「「「ええぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇ~~~~~~~!?」」」」」

 

 ギャ~~~~~~~~ッ!!! 鼓膜が壊れる~~~~~~!!!

 

「はいはい静かに。毎年、学園祭では各部活動ごとに催し物をして、それに対して皆で帳票を行い、その上位の部に賞金として部費に特別報奨金が出る仕組みでした。けど、毎回毎回同じ事の繰り返しでは芸が無いと考えた私達は………」

 

 バッ!っと扇子が開かれると、そこには『派遣部員』と書かれてあった。

 

「一位となった部に彼を臨時部員として派遣する権利を与えます!」

 

 は……派遣部員? 聞いた事も無い単語に皆が静まりかえった。

 

「簡単に説明すれば、忙しくて手伝ってほしい時、誰かが休んで手が足りない時などに彼を一日部員に出来る権利が与えられるって事。最初は強制入部とかも考えたけど、それはあんまりだと考えた結果、これが一番妥当だと判断しました」

「ふむ……。つまり、一夏を一位の部の幽霊部員に出来る……という事か?」

「その考えでいいと思うわ。ラウラちゃん」

 

 普段はいないけど、呼ばれたら俺が他の部にいても絶対に行かなくちゃいいけないってことか?

 なんか複雑で分かりにくいぞ……。

 だが、そこは優秀なIS学園の生徒達。

 すぐに楯無さんの意図を理解して、一瞬で興奮MAXになった。

 

「おおおおぉおぉぉおおぉぉぉぉっ!!!」

「幽霊部員でも上等!!」

「ナイスアイデアよ会長!!」

「今日の放課後から早速、準備に取り掛かるわよ!! いいわね!?」

「学園祭は弱肉強食……!」

 

 やる気があるのはいいけど、最後のは普通に怖いよ。

 どうしてしれっと志々雄真実が混ざってるんだよ。

 

「なぁんだ……板垣さんじゃないのか……」

「板垣さんだったら、世界征服をする覚悟で挑むのに……」

 

 危な――――――――!!

 とんでもない危険思想の子がいたんですけど――――――!?

 

「テンション上がって来たぁ~~~~!!」

「気力300よ!! 底力を見せてやるわ!!」

 

 学園祭が盛り上がるのはいい事だと思うよ?

 でもさ、一言だけ言わせて貰っていいだろうか。

 

「………俺の意思は?」

 

 俺の精一杯の抵抗は、女子達の歓声によって瞬時に掻き消された。

 余談だが、箒やセシリアを初めとする『弥生を愛で隊』の面々は、100万ドルの笑顔で楯無さんに向かって見事なサムズアップをしていた。

 

 俺……これからどうなっちまうんだ……?

 

 

 

 




原作通り、学園祭は一夏の争奪戦になりましたが、流石に強制入部は止めました。

ちょっとアレだと思いましたし、原作と同じだとマンネリですしね。

次回は一組の出し物を決めるお話。

勿論、弥生も矢面に立たせますよ?

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