豊かなスローライフを目指して   作:どん兵衛
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六話 女の戦い②

 

 劉表、曹操、袁紹の三人が郎官となってから、それなりに永い月日が経った。

 気づけば郎官時代も終盤。三人にも新任領主としての内示が出される。劉表は「最初は県の令か長だろう」と常識的に考えていたが、そこは巻き進行が基本の恋姫無双の世界。

 県尉、郡丞・県丞はともかくとしても、県長・県令をすっ飛ばして三人はいきなり郡太守の任を受ける。これには劉表もビックリ。さらにビックリしたのは、その赴任先の領地であった。

 

「────荊州は南郡。南郡だって…………?」

 

 三人の赴任先は以下の通り。

 曹操は兗州陳留郡(陳留県)。袁紹は冀州渤海郡(南皮県)。劉表は荊州南郡(襄陽県)。

 曹操や袁紹も重要な地ではあるが、劉表の南郡は二人とは別の重要性を誇っていた。それは三国時代の劉表が南郡を本拠地として何十年も君臨し続け、そして死を迎えた地であるからだ。

 

「初っ端から南郡とは────なるほど、うん。そういうことか。ありがとう神様!!」

 

 劉表にとって南郡とは、まさに運命の地。

 一度赴任すれば死に至るその日まで、何十年もの年月を過ごす可能性の高い領地であった。

 つまり南郡とは劉表にとって、目指しているスローライフを始める地であり、最終到達地点でもある。その地を領主となる一発目から引き当てる。なるほど、神にも祈りたくもなるだろう。

 

「出立の日まで残された時間はあまりに短い。一日も無駄にせず、僕が成すべきことを成そう!」

 

 出立の日まで残り数ヶ月。

 数ヶ月をあまりに短いと感じてしまうほど劉表は、高い使命感と熱意に燃えていた。

 そして内示が出された日を境に劉表は、何かにつけて曹操に話しかけることが多くなった。その理由は単純に、劉表は曹操と話すことで、数多くの知識を出来るだけ吸収しようとした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「華琳!今日は僕に、優れた領主としての在り方について説いてはくれないだろうか!」

「ええ、構わないわよ。何が聞きたいの?」

「そうだな。任地へと赴いた際、領内に住む土着の豪族、名士の扱いはどうするべきだろう?」

 

 この日も劉表は、新たに領主となる際に役立ちそうな質問などを曹操へと投げかけた。

 

「大雑把ね。先に貴方の意見を述べなさい」

「ああ、そうだね。まずは僕らも生まれ育った郷土に戻れば、その地域の一豪族であるという事実を忘れてはいけないと思うんだ。つまり僕らは領主であり、豪族でもあるということだね」

 

 劉表は自分が豪族の一員である故に、豪族の面倒さというものを実感していた。

 領主として治めようにも豪族、つまりはその地域の地主層の支持が無ければ治まるものも治まらない。土着の豪族、つまりは代々その地に根付く地主というのは、領内での影響力も強い。

 豪族も基本的には国が送ってくる領主の言うことは聞くが、意に反した命令であれば反発してくることもある。複数の豪族が結束して反発してくれば、領主であっても相応の処置を迫られることになる。反発を無視し続けた結果、武力行使に訴えられでもしたら面倒なこと、この上ない。

 

「ほら、領主と豪族が派手に揉めたらさ」

「ええ、定期的に不幸な事故が起きてるわね」

「そうなんだよ。賊に襲われて死んだ、なんて嘘くさいんだよね。実際も嘘なんだろうけど」

 

 漢は国土もだだっ広く、中央政府が地方の全貌を把握しきることは難しい。

 故に中央は領主を地方へと赴任させるが、地方はその地の豪族の影響力が強い。豪族を軽く扱ってしまうと面倒なことになりかねないが、それを避けるために重宝すると別の問題も生じる。

 

「だからって中枢に組み込むのも────」

「無能な豪族なんていくらでもいるわよ。半端に権力を持たせると後々拗れて厄介」

「だよなぁ。用いるにせよ、排斥するにせよ、豪族ってヤツは面倒だ。ま、僕らも豪族だけどね」

 

 地方は中央から離れるにつれ中央の影響力が落ち、地方色が強くなる傾向にある。

 そして地方とは郡太守こそが一番の長官。上司もいない。中央ほど面倒な柵も少ない。唯一面倒なのは豪族だが、折り合いをつけて上手く付き合えれば、豪族は強い味方にもなってくれる。

 

「貴方は劉氏に名を連ねる由緒ある家柄なんだから、向こうから勝手に頭を下げにくるわよ」

「だろうね。華琳はどう?」

「私は別にどちらでもいいわ。頭を下げられようが邪魔されようが、最終的な結果は同じだし」

「ふむ。非協力的な方が排斥の名分も立つか」

 

 と、このように劉表と曹操は、豪族を巡る様々な議論に花を咲かせていたのだが────。

 

「────は────だから」

「────なら────でしょうから」

「────うん。やっぱり荘園の────監査なんて真似は──────かな」

「────まあ、ある程度の────は必要だろうけど──────やっぱり流民は────」

 

 この話は続けると長くなるので割愛する。

 こうして劉表は曹操と実りの多い話し合いを交わし合い、話の流れでこんな言葉を続けた。

 

「僕が出立する際は、私塾で気運に恵まれずに燻っている友人も誘う予定なんだ」

「そう、いいんじゃないの」

「それと中央を離れ、地方で隠遁したいという名士の先生方にも既に数名、声をかけさせてもらってるんだ。少しでも応じてくれれば、僕も先々の展望が拓けて助かるんだけど────」

「…………………………」

「ああ、勿論。いらぬ反感を買わないように根回しは済んでるよ。揉めてもいいことないしね」

 

 南郡へ赴任することが決まってから、劉表は本格的なスカウト活動に乗り出していた。

 そのガチさには、流石の曹操も思わず苦笑い。曹操、袁紹も何もしていないというわけではなかったが、既に南郡を死地と定め、楽園を築き上げようとしている劉表の熱意には及ばない。

 郎官時代の劉表は、良い意味でも悪い意味でも一直線だった。来る日に向けての準備に全力を尽くす姿勢は良い。が、そのせいで自分の周りの、自分を巡る争いにまるで気づいていなかった。

 

「大和、貴方やっぱり反乱でも起こす気でしょ」

「え、なんで??」

「正直に言いなさい。怒らないから。貴方は周到すぎるのよね。この前だって────あら?」

 

 そう言葉を続けようとした曹操は不意に、柱の陰から二人の様子を窺う袁紹の姿を捉えた。

 デカい縦ロールを豪快にはみ出しながら「まだ話は続くのかな」と言いたげな表情を浮かべる袁紹。劉表と曹操の二人が小難しい話をしていたため、気を遣って話が終わるのを待っている。

 曹操が劉表から離れればすぐ、劉表の下へと駆け寄ってきそうな袁紹。だが、曹操は引く気がなかった。前回にあった無言の一悶着から、曹操と袁紹の間には直接的でないにせよ、なにかピリピリとした空気が流れていた。「なら、丁度いいか」と曹操は呟き、そして動くことにした。

 

「────ま、いいわ大和。立ち話もなんだし、続きは食事でも摂りながら、ね?」

「ん?ああ、そうしようか」

「私の舌を唸らせる名店まで案内しなさいよ。そこで話の続きをしましょうよ、ね?」

「都の名店か。あんまり詳しくないんだよな。南郡の名店なら既に調査済みなんだけどさ」

「…………そこまで突き抜けると、いっそ清々しいわね。南郡の名店にも何れは案内しなさいよ。ああ、それと、今日この話が長続きして、夜が更けてしまったらなんだけど────」

 

 曹操は劉表の懐へ一歩踏み込み「私の屋敷に泊まってもいいわよ?」と言った。

 そして柱から豪快にはみ出るデカい縦ロールを見る。明らかに不満そうな袁紹。その様子を楽しげに眺める曹操。曹操の言葉の意味を少し考えるも、からかわれただけと食事場所を悩む劉表。

 近頃、劉表と話す機会が著しく減っていた袁紹にはそれが決定打となった。翌日、袁紹は曹操を呼び出し、曹操はそれに応じる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お呼び立てして申し訳ありませんわね」

「別にかまわないわよ。あら、麗羽。今日は取り巻きの二人はいないのね?」

「華琳さんこそ、お一人ですか。ま、そんな話はどうでもいいので、早速本題に入りますわ」

 

 翌日、袁紹は曹操を呼び出した。

 呼び出した場所は賑やかな中心地から少し離れた、緑が散乱と生い茂る場末の空き地。

 女二人が話すに相応しい場所とは言えないが、袁紹は文醜の「雰囲気がでるから」という助言を受けては場末の空き地を選んだ。

 

「本題?さて、なにかしらね」

「華琳さんにも心当たりがあるのでは?」

「さあ、見当もつかないわ。ああ、それと麗羽、話は手短にね。私、大和を待たせて来たから」

 

 文醜の助言のお蔭かは定かでないが、場はなんともピリピリした雰囲気に包まれていた。

 余裕のある表情を浮かべる曹操を、袁紹が突き刺すような目で睨んでいる。今日の袁紹には普段のような、ふわふわとした空気はない。

 

「────その話ですの」

「その話とは?」

「華琳さん、はっきりと申し上げますわ。大和さんにちょっかいを出すのは止めて下さいな!」

「ふふふっ。とんだ言い掛かりね。私はただ、大和に話しかけられたから相手をしていただけよ」

 

 と、返事をした曹操には、前回の一件から考えていた袁紹に対する仕返しプランがあった。

 あの時、袁紹が曹操に見せた勝ち誇ったような笑み。曹操は女としてのプライドをいくらか刺激された。それは間違いない。が、だからといって喧嘩するほど、曹操の器は小さくはない。

 曹操の仕返しとは、割といつも通りのものだった。劉表との仲を袁紹に見せつけ、袁紹が噛みついてきたところを論破しては返り討ちにするというもの。「婚姻関係にある」と袁紹にアピールされたら「私も同じこと言われたけど」とでも返そうと曹操は考えていた。だが────。

 

「ええ、仲が良いのは喜ばしいことです。ですが、わたくしと大和さんは既に将来を誓い合った仲。たとえ華琳さんであっても、面白おかしく邪魔立てしてくるのは決して許しませんわ!」

「────へえ、麗羽も言うじゃない」

 

 袁紹が想像していた以上に真剣な様子であったため、曹操は考えを改めることにした。

 袁紹の瞳には「譲らない」という強い決意があり、声には気高い意志が籠められていた。「ああ、これは本気なのね」と曹操は思った。

 曹操は劉表と袁紹の思惑が完全に食い違っていることを正しく認識していた。劉表は同盟を結ぶために袁紹の血を求め、袁紹はそれをプロポーズの言葉と勘違いしてしまったのだと。

 曹操はこの場でその食い違いを正しく訂正しておくべきかと考えた。勘違いしている袁紹が不憫だし、意識がすっかり外へと向いている劉表は、おそらくこのまま気づかないだろうと。

 

 だが、曹操は勘違いが噛み合っては、良い方向へと進んでいることにも気づいていた。

 勘違い事件以降の袁紹は、将来へ向けての自分磨きに励みつつ、良き領主となるべく必要な知識を身につけようと勤勉に励んでいた。

 その成果は如実に現れていた。袁紹の頑張りはそのまま成長へと繋がっていた。袁紹は悪い領主にはならないだろうと曹操は思った。少なくとも自分が考えていたよりは良い領主になると。

 そして劉表も勘違い事件以降、袁紹に懐かれ始めていることを疑問に思いながらも、暇さえあれば楽しそうに相手をしていた。そんな様子を見続けていた曹操は「この二人、互いに勘違いしたまま将来くっつくかも」という感想を抱いた。

 

「────────ふふふっ」

 

 曹操にとっても二人は数少ない友人である。

 だからこのまま、二人の未来を祝福しつつ立ち去ってもよかったのだが────。

 

「ごめんなさいね麗羽。簡単に譲るつもりはないのよ。私も彼のことを狙っているから」

「────なっ!?」

「将来を誓い合った仲とか私には関係ないから。私は欲しいモノなら強引にでも奪い取るわ」

 

 そんな選択を曹操は選びはしなかった。

 曹操にとって劉表と袁紹には、確かに友人と呼ぶべき絆があった。が、曹操にとって二人は将来、大陸の覇権を奪い合うライバルでもあった。

 曹操の夢、または覇道とは現王朝を打破し、新たな国を創り上げること。汚職が蔓延り、淀み衰退していく今の国に未来はなく、そんな国に仕えることなど曹操には我慢ならなかった。

 武力によって大陸の覇権を握り、新たな国を創り上げる。かつての秦や全盛を誇った漢王朝がそうであったように、強い国こそが優れた世を、平和を築き上げる。曹操はそう確信していた。

 

「な、なな、なんですって!?」

「あら、そんなに驚くことかしら?」

「まさか華琳さんも大和さんのことが────」

「ええ、そうね。男の中では一番好きよ。ま、私は男より女の子の方がずっと好きだけど」

「な、なら、どうして華琳さんは、わたくしと大和さんの仲に割って入ろうとしますの!?」

 

 だからこそ曹操は袁紹を祝福しなかった。

 当代でも並ぶものない地位と名声を誇る袁一族。その次期当主である袁紹。そんな袁紹は曹操の仮想敵勢力の筆頭格であった。

 覇道を往く曹操と、国の重臣たる袁紹は何れ必ずぶつかる宿命。この場はまだ油断させておくという手段も確かに有効的かもしれない。だが、それは浅ましい考えであると曹操は思った。

 

「そんなの決まってるじゃない。麗羽が狙ってるからよ。麗羽が狙うなら私も狙うわ」

「────なっ!?」

「そんなに私、変なことを言ったかしら。私達が張り合うのは、昔からよくある話よね?」

「そ、それはそうですが、今回は別ですわ!そんな理由で奪おうだなんて不誠実ですわ!!」

 

 曹操は堂々たる戦いを求めた。

 そして誇り高い戦いを求めた。不意打ちや騙し打ちなど、自分の性には到底合わない。

 また、曹操の言葉にもあるように、曹操と袁紹は私塾以前からの長い付き合い。派手好きな趣味と似通っており、お互い強気な性格とあっては普通の関係とは中々いかないもの。

 仲が良くなるか悪くなるかの二つに一つ。その結果、曹操と袁紹の二人はいがみ合う仲となった。何かにつけて張り合う間柄。形は違えど、似たようなことは過去にも何度かあった。

 

「まあ、男を奪い合うのは無かったわね」

「そ、そうですわ!ですから今回も────」

「なら今回が最初ね。大和、悪くないわね。傍に侍らすぐらいの価値は十分にあると思うわ」

 

 曹操は競う相手には強さを求めた。

 劉表を奪い合うことで袁紹により成長を促せるのなら、それもまた悪くないと考えた。

 そして曹操の言葉に嘘偽りはなかった。劉表を自らの好敵手として狙っていることも、勝利した暁には幕僚として迎え入れ、身の回りに侍らすのもいいと考えてもいた。

 

「────そんなことは許しませんわ」

「麗羽じゃ私には勝てないわよ。だって貴女は肝心なところで慢心してばかりだもの」

「ええ、そうかもしれませんね。そのせいで華琳さんに敗れてばかりでしたもの。ただ────」

 

 仮に劉表が私塾の門を叩かなかったとしても、曹操と袁紹は将来的に戦う宿命にあった。

 劉表を巡る女の戦いが起こっていなくとも、曹操と袁紹の大戦、官渡の戦いは必然と起こっていた。歴史の大きな流れというのは、人一人で変わるほど緩やかな流れではない。が────。

 

「────それも今日までの話ですわ」

 

 勝敗とは、その限りではないかもしれない。

 瞳を紅蓮に滾らせる袁紹。後に続く言葉を聞いた曹操は「そうこなくっちゃ」と口端を上げる。

 

「お邪魔虫の華琳さんを前にして、わたくしが慢心することは二度と無いでしょう!」

「ふふふっ。正直なところ麗羽にはあまり期待してなかったけど、案外そうでもないかもね」

「お覚悟なさって下さいな。そして、わたくし達の愛の偉大さを、しかと思い知りなさい!!」

 

 こうして曹操と袁紹の決別は確定的となった。

 今回のやり取りに高い満足感を示す曹操。曹操の言葉を受け、強い対抗意識を燃やす袁紹。本人の知らぬところで王冠を被せられた劉表。いや、あるいは王冠ではなく荊冠かもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 劉表、曹操、袁紹の三人は出立の直前、最後に三人だけで集まることとなった。

 主催したのは劉表。二人の争いを何も知らない劉表は「せっかくだから最後ぐらい」と宴の席を主催した。年単位で会う機会もない友人との別れとあっては、至って健全な発想なのだが。

 

「…………………………」

「…………………………」

「────うん?なんか空気重くない?もしかして二人共、別れを惜しんでるかんじ??」

 

 場の空気が異様に重たかった。

 そんなこととも露知らず、一人ゴクゴクと酒を飲み進める劉表。すっかり酔いも回っている。

 なにか少しでもあれば、すぐにでも重箱の隅を突き合うようにピリピリとした会話が繰り広げられそうな場。曹操も袁紹も、そのなにかに備えつつ静かに目を伏せていたのだが────。

 

「────ま、でもそうだね。僕も二人と別れるのは惜しいよ。なんだかんだ、本当に楽しい日々だったからね。華琳、麗羽、仲良くしてくれてありがとう。そしてこれからも健やかにね」

 

 酔った劉表が思いの丈を淡々と述べては、そんな重い空気をあっさりと振り払ってみせた。

 

「────っ!大和さん!」

「おお、麗羽。わかってくれるか」

「ええ、本当に楽しかったですわ!」

「そうか。これからも三人で仲良く────」

「再会の日を待ち侘びてますわ!そして必ずや二人で邪悪な華琳さんを打ち破りましょうね!」

「え、いや、それは────どうだろうね?」

 

 袁紹は感涙の声を上げては曹操打倒を誓う。

 劉表はそんな袁紹に戸惑いながらも、玉虫色の返事を返しつつ曹操の様子を窺う。

 曹操は「やれやれ」と一つ息をつき、そして劉表を見る。本当に色んなことがあったが、本質的には善人な男なんだろうと曹操は思う。あの袁紹が懐いているのが良い証拠でもあった。

 それでも上辺ばかりの甘い男でないことを曹操は見抜いていた。劉表は事と次第によっては、自分や袁紹と構えることさえ躊躇わない男であると。そして曹操は強く思う。そういう男であるからこそ、我が友と呼ぶに相応しいと。

 

「ふふふっ。まったくホントに────」

 

 興味が尽きない男だと曹操は思った。

 自分の目指す覇道が破られるのであれば、相手は目の前の呑気な男かもしれないとも思った。

 そんなことを思ってしまう自分に曹操は少し苦笑しながらも、最後なんだから本音で話すのも悪くないとばかりに劉表に声をかける。

 

「大和」

「なに?」

「貴方がもし、私を欲するのであれば────」

 

「この私の覇道を打ち破ってみせなさい」と曹操は厳しくも、柔らかい笑みを浮かべて言った。

 

「貴方にはその資格があるかもしれないわ」

「ハハハッ。まあ、覚えておくよ」

「最後までつれない男ね。あまりつれないようだと、私の方から出向くかもしれないわよ?」

「え、なんだって?ぜんぜん聞こえない。酒も回ってるから、明日には忘れてるかなぁ…………」

 

 やれやれ、と曹操は微笑む。

 そして自分を強く睨む袁紹に視線を向けては、不敵にこう言って続けてみせた。

 そして袁紹も曹操の言葉を受けては臆することなく、堂々と胸を張って返答を返す。

 

「────麗羽。貴女とはいずれ、決着をつけることになるでしょうね」

「望むところですわ。わたくし、チンチクリンの華琳さんに負ける気など毛頭ありませんの!」

 

 こうして三人は最後の宴を楽しむ。

 宴の結びには新たな地での互いの健闘を誓い合い、そして再会の約束を交わし合う。

 それから数日後、三人はそれぞれの任地へと旅立った。劉表は荊州は南郡へ。曹操は兗州は陳留郡へ。袁紹は冀州は渤海郡へ。三人が再会するのはそれから数年後のこととなった。

 

 




詰め込み過ぎたせいで色々と描写不足感は否めませんが、テンポ重視ということで御了承下さい。春蘭と秋蘭は完全に出し損ねました。

ここまでのおさらい。
劉表:コネ作り、人材収集、と地味に当初の予定を完遂して安住の地、南郡へ。
曹操:自ら難易度を上げる覇王モード突入。曹操の攻略方法は、覇道を打ち破ればOK。
袁紹:勘違い系お嬢様。対曹操戦では慢心無し予定。袁紹の攻略方法は、お互い無事ならOK。

領主編に出る予定のキャラは以下の通り。
【確定】
朱里(諸葛亮)雛里(鳳統)
【ほぼ確定】
焔耶(魏延)徐庶(女)
【五分五分】
蓮華(孫権)蒲公英(馬岱)法正(男)

後は出ても名前だけのモブとなる予定です。
蓮華を出してしまうと露骨に贔屓しそうなので検討中。割を食う蜀のテコ入れも考えときます。







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