特別な何かになりたくて   作:自由な風

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自由な風流に初めて連載という形で二次創作やってみることにしました。
よろしくお願い致します。


第1話

自分が辛い時、悲しい時。苦しい時、そんな時いつも助けてくれた人がいた。

しかし、自分の人生で1番辛く、苦しく、痛い時にその人は助けてくれなかった。

その時に理解した。結局自分の身は自分で守るしかないのだと。

 

 

女性だけが動かせるパワード・スーツIS。そのISの世界大会、第2回モンド・グロッソ決勝戦が始まる前、1人の少年が2人組の男に誘拐された。

その少年の名は織斑一夏、決勝戦に出場するブリュンヒルデこと日本代表選手、織斑千冬の弟だ。

一夏を誘拐した男達の目的は織斑千冬が決勝戦に出るのを阻止すること。

そのためにたった1人の肉親である弟を誘拐したのだ。

弟を守るために決勝戦を放棄するだろう、そんな予想に反してテレビに映ったのは

 

「優勝候補筆頭、前回大会に続き2連覇なるか。日本代表、織斑千冬選手の入場です!」

 

闘志を瞳に宿し、颯爽と決められた位置へ向かう姉の姿だった。

 

「おいおいおいおい、マジかよ!国の威信のため、自分の栄光のためなら弟なんて関係ないってことかぁ?!」

 

「俺達が言うのもなんだが、ひでぇ女だな…」

 

「それより、この坊主どうするよ?」

 

1人は首だけを動かし、もう1人は椅子を回転させ誘拐した一夏を見る。

一夏は誘拐された恐怖よりも、殴られた痛みよりも、姉に見捨てられた事実が辛く、苦しく、痛み、涙を流す。

そんな様子を見た男達は一夏の頭を撫でる。

誘拐して、原因を作ってしまったとは言え、相手は子供なのだ。

犯罪に手を染め、光ある世界では生きられない自分達でも仲間は見捨てない。

だが、目の前にいる子供の姉は簡単に見捨てたのだ。たった1人の肉親である弟を。

捨てられた、ことに深く同情し、少しの慰めになればと思わず撫でてしまった。

男達は無言で頷き合うとテレビを消し、出口へ向かって歩き始める。

 

「おい、坊主。俺達は消えることにする。しばらくしたら警察にでも連絡してやるから安心しろ」

 

「まぁ、こんなことになっちまったが逆に今姉ちゃんの本性を知れてよかったのかもな。俺達が誘拐してなくても、いつかお前を見捨てる時が来たかもしれねぇ。そのせいでお前が死んだとしても何も思わねぇ。自分と国のことしか頭にないイカれた女だよ」

 

そういうと扉を開け去っていく男達。どさっと横に倒れこむと声を押し殺し、ひたすら泣き続ける一夏。鼻をすする音だけが悲しく響いていた。

 

 

*****************************

 

 

男達が一夏を連れ込んだ場所から離れて3時間後。ドイツ軍1小隊と1人の女性がその場所へと到着した。

女性の名は織斑千冬。

先ほど第2回モンド・グロッソで2回目の優勝を果たした一夏の姉、その人だった。

決勝戦前、一夏が誘拐された事実を知らされたのは彼女の優勝を称える表彰式が終わってからだった。

それを知った彼女は当然激昂した。たった1人の家族が、大事な弟が危険な目に合っているのだ。

なぜ、すぐ言わなかった。政府高官たちに厳しく問い詰めるとしどろもどろで

 

「誘拐され、連れ込まれた場所を特定してからでも遅くはないと思っていた」

 

「場所さえわかれば地元警察と協力し、君のISで速やかに突入、犯人の制圧と共に弟を救助できるだろう。それまでは君に知らせずいつも通り試合に臨んでほしかった」

 

などと言い出す。言っていることはごもっともだが、そんなものは口から出たでまかせである。

優勝すれば次の大会まで日本がIS最新国であり、世界最強のIS操縦者を擁していることになる。

世界に対して優位に物事を進めることができるのだ。そのためなら例えブリュンヒルデの弟でも、子供1人の犠牲くらいどうってことはない。それが政府高官の思惑であった。

 

「とにかく!私は弟を助けに行く!」

 

怒り交じりにそう言うと千冬は部屋を飛び出し、ISを展開する。

一夏が誘拐されてから5時間、表彰式が終わってから1時間後のことだった。

どうか無事で、ただそれだけを願って空に飛び立とうとした瞬間、後ろから声をかけられる。

 

「 Warte 」

 

「なんだ、お前達は。私の邪魔をするな!」

 

振り向くことなく焦りと苛立ちを大量に含ませた声で後ろにいた人間たちに怒鳴ると再び空へ飛ぼうとする千冬。それを止めるかのようにその者たちは静かにこう言った。

 

「 Wir kennen seinen Platz 」

 

私達は彼の場所を知っている。確かに今そう言った。すぐに振り向くとそこには黒、赤、黄色のシュワルツ・ロット・ゴルトことドイツの国旗を付けた人間達が立っていた。

 

そうしてドイツ軍の兵士に導かれるままに車に乗せられ移動を開始したのが誘拐されて7時間後。

そこからずっと千冬は一夏の無事だけを祈っていた。

 

「一夏…無事で…、どうか無事でいてくれ…」

 

そのうち車が停まると彼女の座っている座席のドアが開かれる。

すぐに飛び出すと大声で弟の名を叫んだ。

 

「一夏!どこにいる!返事をしてくれ!」

 

やめろと静止する兵士にうるさい!と怒鳴りつけ奥へと足を進めていく。

兵士達も顔を見合わせ、頷くと隊列を作り千冬を追い越し、進路を確保する。

 

「一夏!一夏ぁ!」

 

更に足を進め、人がいるならここであろうと思われる場所を1つ1つドイツ軍の兵士が攻撃に備えつつ確認していった。その間も千冬は一夏へ呼びかけ続ける。しかし返事や反応は全くない。まさか…と最悪の事態を想像するも頭を振ってそれを振り払う。いよいよ最後の場所になった。

 

「私の弟を返せぇ!!」

 

ISを展開し、まさに戦士の咆哮といった様相で最後の扉を開く。誘拐した犯人を徹底的に痛めつけ、私の家族に手を出したことを後悔させてやる!そんな決意をして突入した千冬を待っていたのは、誰もいない部屋だった。

 

まさか別の場所に?そんな馬鹿な、と思い部屋をくまなく探すが一夏の姿はどこにもない。

その部屋にあったのはほんの少しの血の跡だけだった。




2話、3話と洋画からクロスさせます。
そのあとはしばらくクロス要素出てきません笑っ
次は束さんのお話。
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