特別な何かになりたくて   作:自由な風

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この話と次の話でプロローグ的な部分が終わります。
そして、エクスペンダブルズとの最初のクロスでもあります。


第2話

織斑一夏誘拐事件から2年が経った。

この事件は人々の記憶から薄れ、今ではすっかり過去のものとなってしまった。

あのあと部屋にあった血痕と地面に残った僅かな皮膚組織を調べると、その血液、皮膚組織共に織斑一夏のものであることがわかった。誘拐犯は捕まることなく逃げおおせ、事件は闇の中。

織斑一夏は生死不明であることから行方不明者として、一応の捜索が続いている。

しかし、時間が経ちすぎた。生きて保護されるのが1番ではあるが、遺体としてでも、せめて身体の1部だけでもたった1人の家族に返してあげたい。捜索はそういう空気で行われているのが現状である。

 

一夏が生きていることを諦めていないのは姉の千冬ともう1人…。

 

 

************************************

 

「いっくん、いっくん…」

 

一夏につけたあだ名を呟きながら薄暗い部屋でモニターを見つめ、キーボードで文字を打ち込み続ける女性。

篠ノ之束。ISの開発者であり織斑姉弟の古くからの知り合いでもある彼女は、一夏が行方不明になってからずっと一夏を探していた。彼女自身もそのことで姿を消したせいで日本や世界各国から追われる身となった。その為直接探すことは叶わない。

そこで自他ともに認める「天才」科学者の束は世界中の監視カメラや衛星をハッキングし、自分が見たい時にいつでも世界のいろんな場所を見られるようにしていた。

 

「たぶんここらへんにいるはずなんだ…待っててね」

 

先日、といってもほんの2日前。ドイツにある空港の監視カメラを覗いていると一夏によく似た少年を見つけた。白人、黒人、アジア系、様々な人種の人間と笑いあって歩いている。

慌てて空港にある飛行機全ての乗客者リストを調べても、ICHIKA ORIMURAの名前は出てこない。もしかしてチャーター機や個人機なのでは?

そう思い調べるとたった1機、個人機があり行先はアメリカ、ニューオーリンズ。

 

「うがー!なんでだよー、なんでいっくんがいないんだよー!」

 

ニューオーリンズで一夏が行きそうな場所はくまなく探した。

しかし、一夏の影すら掴めない。

仕方がないので子供は入っちゃダメよ、的な店を探すもなかなか刺激が強い映像ばかりで苛立ちを隠せない。

これが最後の店だ。いるはずはないと思いながらもタトゥーショップとバーを兼ねた店を覗く。

音声を拾うことも忘れない。

 

…執念が実を結んだ瞬間だった。

 

「ツールさん!頼むから俺にもそれ彫ってくれよ!」

 

言ってることは穏やかではないが、笑顔で店主に声を掛ける少年は間違いなく一夏だった。

よかった。いた。やっと見付けた、大事な弟を。余りの嬉しさに涙が零れるのを止められない。

 

「ダメだ!お前が21歳になるまでは彫らねぇ!親父連中に蜂の巣にされちまうからな!」

 

カウンターでカタログを見ていた店主が笑いながら一夏に答えるのを見ると、ああこの子はよその国でも大事に守られて今まで過ごしてきた、と泣きながらも笑みが浮かぶ。親父、というのも保護者が中年の男なのだろう。

 

「じゃあビール!1杯くらいならいいだろ?!」

 

「…そいつは後ろにいるお前の家族に聞きな」

 

家族、という言葉を聞き涙が止まる。まさか一夏達を捨てた両親が再び一夏を引き取ったのか?

画面を注視すると入口からあの日一夏と一緒に空港を歩いていた男達が入ってきたのであった。

 

 

 

「まったく、お前は目を離すとすぐ酒を飲もうとする。いいか、酒もタトゥーも21になってからだ」

 

筋肉隆々のベレー帽をかぶった男が葉巻をくわえ、ぽっぽっと煙を吐き出すと人差し指を少年に向け説教を始める。

 

「ああ、ツールの店じゃなかったら警察呼ばれてるぞ?」

 

笑顔でそう話すのは琥珀色の液体が入ったグラスを持つスキンヘッドの男。

 

「そうだ!酒なんてのは大人だからうまく飲めるんだ。今はこれで我慢しとけよ、坊主!」

 

ガッハッハと豪快に笑いながらそう言って少年にコーラの瓶を手渡す男。

 

「ありがとう、ガンナーおじさん。でも父さん、俺だってエクスペンダブルズのメンバーだろ?メンバーみんなが入れてるタトゥーくらい、いいじゃないか」

 

コーラを受け取ると礼を言い、先ほどの筋肉隆々男と向き合う少年。

 

「ああ、確かにお前はうちのメンバーだ。炊事洗濯、家のこと全部任せられる、な」

 

「実戦に出てないからダメだって言うのか?父さん、いやバーニー・ロス!確かに実戦には出てない、でもそこにいるリーおじさんにナイフを、ガンナーおじさんには勉強と射撃を。ヤンおじさん、ロードおじさんには格闘技、シーザーおじさんには色んな武器の使い方を教わったんだ。きっとうまくやれる」

 

スキンヘッドのリーおじさん、豪快に笑ってコーラをくれたガンナーおじさんを見ながらそう父と呼んだ男、バーニーに伝える少年。しかし、バーニーは譲らない。

 

「きっとうまくやれる、じゃダメだ。それに自分の息子をドンパチやる現場に連れてく親なんていない。お前は俺達の大事な仲間で、俺の大切な息子なんだ。2年前にお前を拾ったあの日からな」

 

「父さん…」

 

「そういうことだ、ヒル。みんなお前のことを大事に思ってる。だからこそ大人になるまでしっかり考えて欲しい、自分の人生を」

 

「リーおじさん…」

 

温かなやり取りをモニター越しに見守っていた束はひとまず安心した。

 

「よかった、いっくん元気だった。でもなんでヒルって呼ばれてるんだろう?」

 

当然の疑問である。少年は間違いなく織斑一夏だ。それがなぜヒルなんて偽名を使っているのか。

 

「よっし!じゃあ行っちゃいますか~!」

 

モニターの電源を落とすと自作のロケットに乗り込む。行先はもちろんニューオーリンズ。

目的は2つ、一夏に会いに行くこと。なぜ一夏がヒル、と呼ばれているのかそれを知るためだ。




すごく趣味に走った話。
いよいよ次回で束と一夏が再会します。
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