いよいよ束と一夏の再会です。
「はー、明日からまた父さんとガンナーおじさん、ヤンおじさん、ロードおじさんは遠征か」
ツールの店を出て家に戻ったヒルこと織斑一夏は自室のベッドで横になっていた。
「リーおじさんが夕方に来るって言ってたからなんか好きそうな料理でも作って…」
1人明日のことを呟きながらうとうと微睡んでいると、部屋の窓からコンコンと音がする。
「…誰だ!」
枕の下にある銃に手をやって音のする方向へ声をかける。父に恨みを持った人間か?
しかし、あの時とは違う。自分の身を守るだけの力は手に入れたのだ。
来るなら来い、相手になってやる。そんな決意もつかの間、聞こえてきたのは懐かしい声だった。
「いっくん、いっくん。開けてよ~」
「えっ?まさか束さん?!」
慌ててカーテンを開け、姿を確認する。
間違いない、そこには姉の親友でもあった篠ノ之束が立っていた。
「いっくんいっくんいっくんいっくん~!会いたかったよ~!!」
そう言いながら窓を開けると自分に飛びつき抱きしめてくる束。
久しぶりの温もりと匂いにどこか安心感を覚えながらもゆっくりと束を引き剥がす。
「とりあえず落ち着いて。でも束さんがどうしてここにいるんですか?」
「いっくんがいなくなったって聞いて、ずっと探してたからに決まってんじゃん。全世界の監視カメラをハッキングしてひたすら見続けたんだぜぃ!」
笑顔でピースサインをしながらそう答える束の姿を見て変わらないな…、そう思うと自然と笑みが浮かんでくる。そんな一夏へ束は疑問に思うことをぶつけていった。
「無事だったらなんですぐに教えてくれなかったのさ!そしたらばびゅんと迎えに行ったのに!あとなんでヒルって呼ばれてるの?」
その問いを聞いた瞬間、一夏の表情が真顔になる。目も濁り、急に俯き出す。少しの沈黙の後ふぅ、と大きなため息を1つ吐き、天井を見上げると束の質問に答え始めた。
「連絡しなかったのは姉さんに会いたくなかったから。あと助けてくれた人が色々調べてくれて、すぐに日本に帰っても碌なことがないってわかったからです。世界的に有名なあの人の弟と知られずに生きるには、別人として生きていく必要があった。だからヒルって名乗りました。俺を助けてくれただけじゃなく今まで育ててくれて、守ってくれた恩人であるバーニー・ロスの子供。ヒル・アンドン・ロス、それが今の俺です」
姉さんに会いたくなかった、その言葉に驚きつつもその他の言葉はすぐに理解できた。
自らの発明を悪用しようと近付いてきた汚い大人たちの思惑がすぐに想像できたからだ。
過去を捨て、名を偽り生きてきた一夏に束はこう言った。
「ねぇ、いっくん。いっくんはこれからどうしたい?」
その言葉に一夏はこう答える。
「今日、父さんたちにもうそろそろ日本に戻っても大丈夫って言われたんだ。だから日本に戻りたいとは思ってる。ヒル・アンドン・ロス、じゃなくて織斑一夏として。でも姉さんが帰ってくる家には戻りたくない。あの時なぜ来てくれなかったんだ、って責めちゃいそうだしやりたいこともあるから」
「やりたいことって…?」
「それは…」
その続きを束の耳元まで顔を近付け話す一夏。
一瞬目を見開くとわくわくしたような表情になり笑いだす束。
「いいねいいね!うん、面白いよ!私も協力する!いっくん、私と一緒にやろう!」
何を話したのかはわからないが、そのあとの2人の行動は早かった。
まずはバーニー達エクスペンダブルズのいるバーに行くと近いうちに日本に戻ること、そして今まで育ててくれた礼を伝える。いきなりの女連れ、しかも年上ということで最初は驚いたバーニーも
「そうか、いなくなっちまったら寂しくなるがあっちでも元気でやれよ。何かあったらすぐに呼べ、世界のどこでも駆けつける」
と胸ポケットから一夏がタトゥーとして身体に刻みたがった、自身の部隊のロゴをかたどったワッペンを取り出して一夏に渡す。
「いっくん…一夏を助けていただいただけでなく、今まで守り、育てていただきありがとうございました。何かお困りのことがありましたらこちらへご連絡いただければできる限りご協力させていただきます」
と他人や興味のないことに対して冷酷なまでに無関心である束も恩を感じているのか恭しい態度で深々と頭を下げる。
「で、お前達どうやって帰るんだ?」
送別会、みたいになった空気で何気なく放たれたバーニーの質問に、2人は笑顔で計画を話す。
それから1年後、世界を揺るがす大事件が起きた。
『世界初の男性IS操縦者発見!!』
アメリカのニューオーリンズで開催されたISの展覧会にてボロボロになった少年が女性にしか起動させられないはずISを起動させたのだ。それだけではない。起動させた少年は3年前に誘拐され行方不明になった、ブリュンヒルデこと織斑千冬の弟である織斑一夏だということが分かった。
「俺達が依頼を受けて展覧会の警備をしているとどこからか少年がやってきてISにぶつかるかのように倒れこんだ。そうしたらいきなり電源が入って起動した」
とは第1発見者の傭兵部隊隊長の談。
衰弱が激しいことから、しばらくは面会謝絶の上に絶対安静という形で療養していた一夏の回復を待つと一夏は日本へ帰ることとなった。そして誘拐されていた(とされる)期間の学力をつけるための特別補習を経て、一夏はIS操縦者育成用の特殊国立高等学校であるIS学園に入学することとなる。
次回投稿は4月の6日~8日が濃厚です。
このあとどうすっかな~。妄想が捗ります。