特別な何かになりたくて   作:自由な風

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次回投稿は6~8日と言ったな?
あれは嘘だ。

お気に入り登録が嬉しかったので1日だけ早く投稿します。


第4話

IS学園の入学式まであと1週間という晴れた日のこと。織斑千冬は学園長室に呼ばれていた。

 

「忙しい中申し訳ありません。実は織斑先生の耳に入れておきたいことがありまして」

 

柔らかな口調だが神妙な面持ちで壮年の男性が椅子に座り話しかける。

 

「いえ…、構いません。山田先生に任せていますから。それで、用件は?」

 

表情を一切変えずそれに答える千冬。その様子を見て男性は話を続ける。

 

「実は来週入学予定の織斑一夏君なんですが…」

 

「弟がどうかしましたか?」

 

「ニュースにもあった通り、彼はつい最近まで誘拐されていました。病院に話を聞いたところ、誘拐における長い監禁生活及び誘拐時のショックで記憶の1部を脳が封印しているようなのです」

 

男性の言葉を聞き少し俯く千冬。あの時、もし誘拐されたことを知っていたら。

モンド・グロッソなんてものはすぐさま放棄し大事な弟を助けに行っていたのに。

千冬の人生における悔やんでも悔やみきれない唯一の出来事になっていた。

 

「そう…ですか。それは誘拐されていた時の記憶がない、ということですか?」

 

それならそれでいい。辛い記憶ならばない方がいい。

来週からの高校生活、それ以降も今度こそ私が守り抜いてみせる。そう思った瞬間だった。

 

「違うんだな~、ちーちゃん」

 

聞き覚えのある声が後ろからして思わず振り返る千冬。

するとそこには3年前に姿を消した小学校の頃からの腐れ縁、篠ノ之束の姿があった。

 

「束、お前いったいどうしてここに?!」

 

驚きつつも束に問いかける千冬。そんな千冬に束はあっけらかんと答える。

 

「え~、だって来週からいっくんも箒ちゃんもここに通うんだよ?そりゃ挨拶くらいはしときたいじゃ~ん」

 

「お前は素直に挨拶にくるような奴じゃないがここにいる理由はわかった。もう1つ聞こう、今までどこに行っていた」

 

それに対して束はさも当然かのように答える。

 

「どこに行ってたってさ~、3年前からずっといっくん探してたに決まってんじゃん」

 

「えっ?」

 

続けて束は一夏達と一緒に世界に対してついた嘘、にリアリティを増すための嘘を加えて話す。

 

「やっと見つけたと思ったらいっくんすごいボロボロで動けない状態だったんだよ?さすがの束さんも乗り込んだ瞬間暴力に訴えるじゃん?いっくんいじめた人間全員豚の餌に変えたあと、すぐにナノマシン使ってある程度回復させたんだよ。そしたら本格的に治療する前にどっか行っちゃって、慌ててナノマシンの反応追って迎えに行ったらIS起動させて大騒ぎになっちゃうし~」

 

「ちょっと待て、なぜ見つけた時にすぐ私に言わなかった!」

 

千冬の言うことは当然である。家族が見つかったならすぐ知らせてほしい。少しでも早く会いたい、そんな当たり前の一言を束は悪意ある言葉で返す。

 

「だってちーちゃんドイツに行っちゃったじゃん。私でさえいっくん見つけ出すのに色んなことが邪魔になったから姿消したのにさ。たった1人のお姉さんがさっさと見切りつけて次のこと始めてたなんてとてもいっくんには言えないよ」

 

「そ、それは…」

 

そう言われてはどうしようもない。一夏の居場所という情報をくれたドイツ軍への義理もある。

そして、ドイツ軍にいれば一夏に関する情報も手に入りやすくなる。そう思って事件後ドイツ軍に行ったのだが今となっては言い訳でしかないのだ。

 

「すいません、話を続けてもよろしいでしょうか?」

 

動揺する千冬、無邪気な笑顔で悪意を放つ束の間に男性が割って入る。

 

「ああ、ごめんごめん。いっくんの記憶についてだね」

 

男性の一言に目的を思い出したのか話を戻す束。

 

「少なくとも子供の頃のこととかそういうのは忘れてないよ。ただ1つ思い出せないのは…」

 

焦らすように言葉を溜める束。そんな束を千冬はただ見つめ、次の言葉を待っている。

その言葉が自分にとってとても残酷なものとは知らずに…。

 

「実の姉、ちーちゃんのことだけかな?」

 

自分のことだけ思い出せない。そう聞いた瞬間に膝から崩れ落ちる千冬。

慌てて男性が駆け寄り支えようとするがそんな様子も意に介さず束は話し続ける。

 

「自分には姉がいるってのはなんとなくわかるんだけど、どういう人だったか、その人との思い出がすっぽり抜けちゃってるみたいなんだよね~。束さんのことはちゃんと覚えててくれたし、毎日こっそりお話してたから別にいいんだけど~」

 

その後も1人何か話し続けているが千冬の耳には入ってこない。男性も千冬がここまで絶望し、心折れた姿を見たことがなく、しっかりしてくださいと話しかけるのに精いっぱいだった。

 

 

 

 

「~というわけでいっくんのお話はこれで終わり!」

 

時間にして20分ほどではあるが、それでもとても長く感じた束の報告が終わると男性が束に声を掛けた。

 

「…ありがとうございました。それであなたはこの後どうされるおつもりですか?」

 

「ん?いっくんが明日か明後日に日本に帰ってくるからまずはそれを見届けて~。そしたらこの天才束さんがいっくんのために専用機を作って持ってきちゃおっかな~?自分の身は自分で守るしかないからもう二度とつらい目に合わないように、何物にも屈することがないように、いっくんの望みが叶うような、そんなやつをね」

 

千冬を見ながら男性に答える束。千冬は相変わらずうなだれたままだった。

 

「そうですか…」

 

「じゃあ私はこれで帰るね!ばいば~い!!」

 

そう言うとドアを開けて部屋から出ていく束。学園長室には重い沈黙が漂う。

 

「私は…どうすれば…」

 

今にも泣きそうな声でぽつりと千冬が呟く。それを見て男性はこう答えた。

 

「色々と落ち着くまで…、それまでは見守りましょう。あなたなりに織斑君に接して、受け止められると思った時。その時にはあなたが姉だと、今までの想いを、全部伝えましょう…」

 

 

その頃学園長室を出て自身のラボに戻ってきた束は電話をしていた。

 

「もすもすひねもす~?いっくん?束さんだよ~!…うんうん、行ってきたよ。いっくんはちーちゃんのことだけ思い出せない、って言った時のちーちゃんの顔、いっくんにも見せたかったよ。うん、わかってる。それよりもいっくん、気を付けてね?専用機ができるまでの間はいっくんも無防備なんだから、あいつらが何してくるかわかんないし。うん、うん。そだねー!じゃあ!」

 

一夏との通話を終えた束は薄暗いラボの天井を見上げ笑顔で1人話しだす。

 

「いっくんのISのコアにはあれ使って…、装備は…あ~!久しぶりにワクワクするな~!」

 

 

その翌日、織斑一夏が3年ぶりに日本の地を踏んだ。

各メディアが取材を申し込んでも完全にシャットアウト。

その2日後に最終試験と称し教師との戦闘をするも相手の自爆で何もせずに勝利した。

そして3日間の休養を経ていよいよIS学園の入学式がやってくる。

 




千冬にも早いうちに救いは用意してありますのでご安心を?

いよいよ次回入学式です。

7日か8日に投稿できたらな、と思ってます。
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