モーモーモーさん   作:ちみっコぐらし335号

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 いやあ、リヨモンのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング魔神柱は強敵でしたね……。

 正直もうダメかと思いましたが、それだけに増援に来たダ・ヴィンチちゃんのロケットパンチが親指立てながら溶鉱炉に沈んでいく場面は涙なしでは語れません。



(前話にて、色々なランキングにお邪魔していたようです。この場を借りて深く御礼申し上げます)



第六特異点 胸にしぼうを キャメロット(中編)

 

 

 煌々と太陽が輝く空の下、度重なる戦闘によって錆色に染め上げられた平原に、モードレッドは仁王立ちしていた。その姿は、全身完全フル装備。戦場に在り戦意に満ち溢れているはずのその顔には、しかし活力がない。付け加えると仏頂面であった。

 

 その答えはモードレッドの目の前に広がっていた。見渡せども見渡せども、そこには無人の景色が続く。

 

 どういうわけかここ最近、珍しく蛮族との殺し合い(ランデブー)が途切れているのだ。

 

 この場所に陣を展開してから三日ほど経過したが、いつまで経っても敵は来ない。()る気満々で出陣してきたが、見事に出鼻を挫かれた形だ。兵士やら女中やらランスロットやらで溜まったストレスを、蛮族退治で発散しようと画策していたのだが………………それも不発に終わってしまった。

 

 モードレッドは不機嫌な表情を隠そうともしない。鬱屈を紛らわすため、力任せに地面を踏み砕いた。

 モードレッドの後方で息を呑む音が聞こえた。ここまで共に進駐してきた騎士のものだろう。モードレッド(規格外)からすれば頼りないが、平凡なりにその努力は認めている。

 

「あ、あのっ、モードレッド卿?」

 

「…………別に何でもねぇよ。腰抜け共がアーサー王の威光を恐れ、来なかった。ただそれだけのことだ」

 

 連れてきた兵士たちはやや離れた所に待機しており、戦端が開かれなかったことに安堵している。あるいは、ここ数日の緊張が緩んだだけなのかもしれないが。

 

 モードレッドには、彼らを「弛んでいる」などと叱る気はない。平和を尊ぶ。それが当たり前のことだ。

 

 もっとも、戦わずに済むことを喜んでばかりもいられない。無論、戦いがないのが一番ではあるのだが、未だ蛮族は降伏したわけではないのだ。奴らは、今もどこかで牙を研ぎ澄ましているのだろう。

 

「ふん、一寸の虫(ムシケラ)にも一丁前に恐怖心があったっつーわけだ」

 

 ナヨナヨとした騎士はおっかなびっくりといった様子で、首を何度も縦に振った。別に同意が欲しかったわけではないのだが。モードレッドは鼻を鳴らした。

 

 少しして、モードレッドの放っていた斥候が戻ってきた。それらの報告に拠ると、蛮族の侵攻の兆候どころか影も形もないらしい。となれば、此度の出陣は無駄骨か。このまま粘ったところで兵糧が尽きるだけ。

 

 引き延ばしても無意味だ。そう判断したモードレッドは、すぐに撤収の指示を出した。日が傾く前に移動を開始できればいいな、と思いながら。

 

 

 

 

 

 夜の帳が降りた頃、何事もなくキャメロットに帰還したモードレッド麾下(きか)の一軍。

 

 モードレッドが損耗確認をした後、解散命令を出すと、兵士らは思い思いに城下町に繰り出していった。店で酒をかっくらうも良し、そのまま寝床で鼾(いびき)をかくでも良し、今後のために英気を養ってくれればいい。モードレッドは彼らを見送ると、お供の騎士と共に城内へ。まだやるべきことが残っている。まずは王に報告をせねばならない。

 

 執務室にて書類と格闘しているアーサー王に、戦闘の有無と全員無事に帰ってきたことを伝えた。その後、騎士を次回の兵糧の工面のため走らせた。彼には、大まかな計画が提出できれば自由にしていいと言いつけてある。それなりに作業したら休むだろう。

 

 残ったモードレッドは単身円卓の間に向かった。先の報告時、アーサー王は各円卓の騎士に伝令を出していた。蛮族について考察の場を設けるのだという。夜も深まってきたとはいえ、そろそろ彼らが集まってくる頃合いか。

 

 部屋に入り、モードレッドが席に着くと円卓の過半が埋まった。さほど経たずして残りのメンバーも到着。アグラヴェインに次いで、ベディヴィエールを侍らせたアーサー王が着席すると、円卓会議は始まった。今回の議題は『蛮族について』。

 

 ブリテンの地に攻めあがってくる蛮族については、今まで飽きるほど意見交換されてきた。それにも関わらず、奴らの正体といい、目的といい、どうも不可解な点が多い。

 

 モードレッドの素人目で見ても、ブリテンの環境は過酷だ。土地は大陸ほどの面積もなく、その土壌は農耕に適しているわけでもない。おまけに、宝飾に使える宝石類が出土したりもしない。特徴といえば精々『幻想種』と呼ばれる生命体が多く生息していることぐらいだが…………それとて人間の生活は疎か、時には命をも脅かすことを思えばマイナス要素でしかない。謎である。

 

 が、現在の話題の中心は蛮族の目的ではなく、奴らの今後の行動。目的が判明すれば自ずと行動も絞れるが、手がかりすらないこの状況で闇雲に話し合っても会議が踊るだけである。故に、雲を掴むような頭の痛い話はすっ飛ばして、今できる最善の策を練るのだ。

 

 最近の傾向を踏まえて、蛮族の動きを分析していく。今までは、ただ単純に継続的な侵攻と物量で押し入ろうとしているように思えたが、蛮族の方でも何かが変わったのやもしれない。

 

「――――思えば」

 

 挙手し、次なる発言をしたのは幽弦の使い手、嘆きのトリスタン。曲を奏でるかの如く敵の首を跳ね飛ばす術(すべ)を持った円卓の騎士である。

 

 燃えるような赤髪を肩口まで伸ばしたこの伊達男は、モードレッドの知る限り常に目を瞑っている。だが、盲目なのかといえば違う。何も見ていないように思えるが、腕は百発百中。弓として使う弦楽器が狙いを誤ったことはないという。楽器を用い音波で首級を上げるという点において、個性派揃いの円卓の騎士の中でも、相当の変わり種である。

 

 先ほどまで、皆が様々な意見を述べる中でも静かに目を閉じ俯いていたので、もしや寝ているのでは、とモードレッドは密かに疑っていた。

 

「前回の戦いもどこか散発的でした。これまでの常であれば、果断なく指を動かし続け、それでもなお敵影に足りず、戦闘が終わる頃には疲労で指が震える程だったのに」

 

 前回の出撃においては、戦闘の間隙に別の曲を奏でる余裕がありました。そう、例えば恋の歌などを。

 

 そう、いけしゃあしゃあと語るトリスタンに、くらりと眩暈を覚えたのはモードレッドだけではなかった。

 

「何故それを、帰還してすぐ王にご報告しなかったのか?」

 

「何故って、いつも通りでしたから。『我が弓で数多の蛮族共を屠った』、この事実に変わりありませんからね」

 

 トリスタンの報告に対し、アグラヴェインの唸る声が室内に響いた。怒っているのか、呆れているのかは定かではないが、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている。

 

 普段のアグラヴェインは他の騎士と意見衝突することがままあるが、この時ばかりは大多数の騎士と意見が一致していた。すなわち――――お前(トリスタン)もう少し真剣にやれよ、と。

 

「…………次からはどんな些細なことでも報告を上げるように。それが王にお伝えするまでもない些末な事柄か否かは、私が判断する」

 

 疲れたように首を横に振り、トリスタンへの追及は打ち止めとなった。

 

 話が脱線していたが、蛮族の動きの変化と、今後向こうが取る可能性の高い動きを探るための議論は再開された。――――だが、案の定議論は紛糾した。

 

 誰かが「奴らは諦めたのではないか」と希望的観測を出せば、別の誰かから「いや、それならばとっとと降伏するのでは」と否定が飛んでくる。

 

 ある者は「蛮族が何か作戦を企てている可能性もあるのでは」と言うが、肝心の作戦内容は検討も付かない。

 

 時間は進めども、ただ眠気ばかりが積み上がっていく。モードレッドは欠伸をかみ殺した。

 

 結局、『奴らが敗北を宣言するまで徹底して叩き潰すべき』という至極当然の意見に集約されたのは、開始から二時間ほど経ってからであった。にも関わらず、特にめぼしい対策が打ち出せたわけではない。

 

 最終的にモードレッドたちに与えられたのは、『情報を密に集め、如何なる状況にも対応できるように』という何とも抽象的な指針である。発表した際のアーサー王の目が、やけに据わっていたのが印象に残った。

 

 命令がふわっとしていても何とかなるという自信と信頼の表れか。はたまた睡眠欲に負けて投げやりになったのか。

 

 後者でないことを祈りつつ、眼(まなこ)を擦りながらモードレッドは退出したのであった。…………アーサー王の頭がゆらゆらと揺れていたのは、見なかったことにした。

 

 

 

 

 

 翌日。いつもより遅く起床したモードレッドであったが、特に焦ることなく悠々と支度を整えていた。それというのも、今し方モードレッドに伝達された内容が理由である。

 

 伝令役に曰わく、「蛮族について、より精密な情報を収集しているので、周辺警戒以外での出撃はない」という。続けて「各自修練を怠らず、また傷病の快癒に努めよ」との王の言葉も伝えられた。おかげで、久方ぶりにモードレッドはまったり微睡(まどろ)んでいられるのである。最近では人目を忍んでのんびりするのが、二番目に至福の時になりつつあった。だいたい『姫騎士』だのと無駄に面白おかしく持ち上げられているのが原因だ。ちなみに、同僚の目があるために心安らぐわけではないが、アーサー王(父上)に会っている時がモードレッドにとって一番の幸せである。例えどれほど短い間でも。

 

 どうやら情報集めには、アグラヴェイン子飼いの専門集団が動いているらしい。何故か前屈みになり、目を逸らしていた伝令がボソボソとそう口走っていた。走り去る前に風の噂だと嘯(うそぶ)いていたが、なかなかどうして、噂もバカにはできないものだと身に沁みている。出回りは早いし、事実が混ざっていたりもする。無論、噂である以上情報の確度は下がろうが、何割かは真実が混ざっているだろう。……それを選り分けるのは容易ではないが。

 

 乱雑に身嗜みを仕上げると、モードレッドはそのまま部屋で息を吐いた。さて、今日はどう過ごすべきか。

 

 仕事はあるにはあるのだが、書類仕事(デスクワーク)はやる気が起きない。目は覚めたが、頭が冴えたわけではないのだ。頭が重い中取り組んでもロクな効率ではなかろう。元々得意とは言い難い上に、最近では下手に取り組むと鉄面皮(アグラヴェイン)からお叱りが飛んでくるようになっていた。仕事に生真面目、かつこの国の内政の要であるのは理解している。しかし、もう少しあの人当たりの悪さは何とかならないのだろうか。

 

 苦手意識を押し込めるように、丹田に力を入れ深く息を吐いた。

 

 残りの選択肢は少ない。その内、一番簡単で実りがあるのは運動だ。許可だの報告書だのもなく身体を鍛えられる。アグラヴェインに何かをネチっこく言われる恐れも低い。

 

 モードレッドは修練場に足を向けかけて、ピタリと止まった。何とはなしにトラブルの予感がする。そう、例えるなら同僚を壁に埋めてしまった時のような。もしくは、熱心なファンに取り囲まれた時のような。

 

 今までまともな仕事をしてこなかった己の直感(B)が懸命に囁いている。――――今日はちょーっとお外に行くのは止めた方がいいんじゃないっすかね? お部屋に引きこもるのとかマジベターっすよ、と。

 

「なるほど」

 

 特に宛てにならない気がするので、直感(B)の意見は封殺した。

 

 近頃の修練場周辺での経験から、少々行きづらさを感じるのは事実だ。とはいえ、せっかく身体を動かす気分になったのだから、書類仕事で水を差されたくない。代替案として自室での筋トレ――――は力加減を誤ると室内が吹き飛ぶから無理。代わりにガレスの部屋――――でやると多分泣かれる、却下。

 

 比較的無害で人懐こく、何も考えていなさそうでその実やっぱり何も考えていないらしい円卓の騎士(ガレス)が脳裏に浮かんだ。何故か一目で毒気が抜かれる顔。よく絡まれるので若干辟易するが、さりとてわざわざ泣かせてやろうとも思わない。

 

 そういえば、先日ピクニックに誘われた時、城内にある中庭の話をしていた覚えがある。「すごい綺麗だよー。癒されるよー」といった内容を、握り拳をブンブン振り回して力説していた気もする。

「周りは脳筋ばっかりだから、話しても全然興味持ってもらえないんですよッ!」

 確かそのようなシャウトもしていた。彼女(ガレス)の誤算は、モードレッドもその『興味ない側の人間』であったことか。しょぼくれたように会話を打ち止めていたが、こうしてモードレッドの頭の片隅には残っていた。場所についても仕切りに説明していたので、行こうと思えば行けるはずだ。その点においては、ガレスの宣伝(アピール)も無駄ではなかろう。

 

「中庭か…………」

 

 その時の話以外ではとんと耳に入ってこないので、知っている人は少なさそうだ。あるいは、知っていても自(おの)ずから行こうとは思わないのか。どちらにしても、余計なトラブルは避けられるに違いない。

 

 モードレッドは目的地をまだ見ぬ中庭に定めた。

 

 中庭というからには修練場よりは狭いはず。地面も踏み均されてはいまい。動くには不向きな環境であろうが、それもまた体捌きの訓練となろう。

 

 それに、とモードレッドは人通りのない静かな空間を思い描いた。別に騒音が苦手な訳ではない。だが、血潮が沸き立つような戦場(いくさば)の大音声ならばともかく、心をささくれ立たせる噂話の類いは勘弁願いたい。そう、例えば姫騎士とか姫騎士とか姫騎士とか。

 

 歩いているうちに、段々と人の気配が遠ざかっていく。代わりに近づいてくるのは、木の葉の擦れる音と土の匂い。よかった、無事に到着したようだ。

 

 人があまり訪れないからといって、整備を怠っている訳ではないらしい。緑は多いが決して鬱蒼としておらず、どことなく落ち着ける雰囲気を醸し出していた。『植物だらけの庭園』という共通項はあれど、不気味なだけのモルガン(クソババア)の薬草部屋とはワケが違う。

 

 ――――さすが父上、趣味もいいな! ガーデニングの知識は皆無だが、モードレッドはアーサー王を誉めそやした。

 

 しかし、想像以上に整えられた一画だ。人目が多い修練場と異なり、精神的に消耗することはなかろうが、ここでいつもの素振りなどを実施すれば、激しすぎて木立が吹き飛んでしまう。

 

 さて、如何なる手を打つか。こういった時、真っ当な剣術を学んだ者であれば、型のおさらいでもするのだろう。が、残念ながら型にはまっていられるほどモードレッドのお行儀は良くない。只管にその場その場の刹那を、全身全霊を以て切り抜けるのみ。第一、敵を討つのに剣の型を覚える必要はない。その時の状況に合った最適な動きをすれば良いのだから。

 

「…………うっし」

 

 そうだ、基本に立ち返るべきだ。我が身はただ(父上)の敵を打ち払う剣である。ならば、あらゆる場所で敵を倒す訓練を――――!

 

 脳内でモルガン(クソババア)顔の仮想敵を構築。現在地に適したシミュレーションを開始した。…………状況仮定、周囲は繊細な稀少品でいっぱいだ。例えば、父上の私室。絶対に被害を出してはならない。

 

「ン、グッ――――――この、ッ…………!」

 

 強張った太刀筋は、イメージの中の憎き(モルガン)にひらりひらりと回避されてしまう。周りの枝葉を揺らしているようではダメだ。この状況では、無尽蔵の力(いつもの馬鹿力)は用いない。狙いはただ一点。迅速に、最短距離で曲者の首を――――取る!

 

()ッ!!」

 

 吸い込まれるように剣を突き刺すと、モルガンの幻影はゆらりと消えた。

 

「おや…………? 珍しいですね、このような場所でお会いするとは」

 

「お前は――――」

 

 晴れ空の下、瑞々しく輝く中庭に一人の騎士が足を踏み入れていた。ブリテンが誇る円卓が一員、太陽の騎士ガウェイン。装飾の見事な胴鎧を彩るように、癖のある蜂蜜色の頭髪が僅かにそよぐ。

 

「何故このような場所に?」

 

「…………やることがないから身体を動かしてただけだ」

 

 モードレッドは投げやりに答えた。今はあまり他人と会話したい気分ではない。特別嫌いになる要因もないし。ガウェインは、料理スキル(マッシュ一択)以外は比較的まともな人材である。…………まあ、ランスロットと比べれば誰でも人格者に見えるかもしれないが。

 

「訓練ならば修練場に行けばいいのでは?」

 

「…………ひそひそ話がなくなればな」

 

「確かに、今城内は卿の噂で持ちきりです。あれでは身も入らないでしょう」

 

 ははは、とガウェインは朗らかに笑った。彼にとっては実際他人事だろうが、少しぐらい火消し作業を手伝ってくれないものか。

 

 そういえばこの男、とモードレッドはガウェインを見つめた。他人事と言ったが、彼の母親は魔女モルガンなのだという。ついでにアグラヴェインやガレスもそうらしい。

 

 モードレッドはアーサー王とモルガンの子供である。そして、彼ら兄妹はどこぞのお偉いさんとモルガンの子供である。

 

 ――――あれ、つまりこいつらとオレは異父兄妹とかいうやつなのでは? というかモルガンの子供、円卓に居過ぎでは?

 

 全員が全員、獅子身中の虫ということでもないだろう。一番ウケが悪いアグラヴェインですら、内政になくてはならない存在だし。え、何、モルガンの奴、実はアーサー王(父上)のことが好きだったりする、のか? …………いやいや、そんなまさか。あれだけ王を害そうとしているのに、好意を抱いているとか有り得ないだろう。きっとただの偶然だ。そうに違いない。

 

 混乱から立て直すようにモードレッドは首を横に振った。その様子を観察していたガウェインの目がすっと細められる。

 

「しかし――――果たしてそこまでして訓練する必要があるのですか?」

 

「何…………?」

 

「アーサー王の『娘』である貴方が戦場に出る理由を問うているのです」

 

 甘え、媚びを売るためですか。次々と吐き出されるのは、どこか辛辣な言葉の数々。その語り口は、ここにはいない誰かをモードレッドに想起させて――――。

 

『――――お前は私の言うことだけ聞いていればいいのよ』

 

 聞こえるはずのない魔女(モルガン)の言葉が耳元で反響する。太陽の騎士に重なる陽炎のごとく、あの女(クソババア)の姿が立ち上った。

 

『お前は私の言う通りに――――』

 

「――――――違う」

 

 音もなく剣を抜き放ち、ガウェインの背後に見え隠れするモルガンの影を断ち切った。

 

「っ」

 

「オレは父上の――――アーサー王の騎士だ。王に楯突く輩を討伐し、王の命令に従い国と民を守る者だ」

 

 確かに始まりはアイツ(モルガン)のせいだったかもしれない。けれど、今はモードレッド自身の意思で、アーサー王と共に在りたいと願っているのだ。ましてや、親に甘えるためなどではない。

 

 剣を鞘に収めながら断言すると、ガウェインは感心したように息を吐いた。

 

「なるほど。よく見ると…………ふむ」

 

 先ほどの姿勢、太刀筋、何よりも…………。最後は聞き取れなかったが、モードレッドに注がれていたガウェインの視線が獲物を見定めるような物に変貌した。柄に手をかけ、ピリピリとした空気を纏う。

 

「よろしければ私が訓練のお相手をしましょう」

 

「ハッ――――――上等ッ!」

 

 ちなみに太陽三倍剣は卑怯だった。

 

 

 




※先生がゆうしゃロマの意思を継ぐ旅に出てしまったので、今回が最終回となります。先生の次回作にご期待ください。


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