ダンジョンにサーヴァントを連れて潜るのは間違いな気がする   作:キョウさん

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1話―迷宮都市―

眩しい……目を閉じているのに隙間から射し込んでくる強烈な光に、僕の意識は覚醒した。

あれからどうなったのだろう。

遠くなる意識のなか皆が騒いでる音は聞こえたけれど……と僕は目を開けた。

 

「…………ここ、どこ?」

 

見覚えのない建物の前、僕は長椅子の上で寝転がっているらしい。

これは夢だろうか……雰囲気はキャメロットに似ている気もするけど、それとも違う気がする。

でも何て言うか……良い陽射しだ……。周りの人が僕を奇異の目で見てくるがそれも気にならないくらいに気持ちが良い……。

 

ああ、良い天気だな………………。

 

……………………なんて、こんなことを考えてボーッとしていれば、いつもならマシュかダヴィンチちゃんにツッコミを入れてもらえるのだけど、今日に限ってはそれがなかった。

起きてからもう一時間くらいここでこうしているのに誰からの声もかからない。

どうなってるんだ……暖かくて気持ちいいや……。

 

「……ちょっと良いか」

 

「はい」

 

ようやく声がかかった僕は、ゆっくりとそちらに視線をやった。

黒い服を着た気の良さそうな男の人が、困惑した表情をしていた。

 

「こんなところで何をしているんだ?」

 

「何をしているように見えますか?」

 

「え? ……日向ぼっこ?」

 

「残念ハズレです」

 

「ええっ」

 

やれやれ、と僕は首を竦める。

とりあえずこの人が悪い人では無いことは分かった。

 

「正解が聞きたいんですか?」

 

「まあ、気になるからな」

 

僕は残念そうにため息をつき、ゆっくりと息を吸う。

 

「正解は……仲間がどこにも居なくて二進も三進も行かなくなったからどうにか前に進みたいんだけどここが暖かくてそのうち仲間が来てくれるかなぁと願って日向ぼっこしてました」

 

「日向ぼっこじゃねーか!?」

 

「日向ぼっこしてます」

 

「最初からそう言えよ!」

 

くすくすと笑う僕を見て苦虫を噛み潰したような表情で頭をガシガシと掻いている。

最近マウント取られる人生しか歩んでいなかったのでちょっと楽しい。

 

「てかあんた、どこのファミリアに所属してんのか?」

 

急に聞き覚えのない単語が出てきて、僕は首を傾げた。

ファミリアに所属……ファミリアってなんだろう?

……ギャング? ○○ファミリーみたいなそういう話?

 

「いえ、そういうのやってないんで」

 

「はい?」

 

「僕は健全に太陽の下を歩ける……かどうかは分からないけど悪いことはしないんで。ほんとそういう勧誘は断固お断りしております」

 

「……いや、ギャングのお誘いに来たわけでもねーよ! なんなんだこいつ!」

 

「ほんと僕ってなんなんでしょうね……いつも皆に助けられて皆僕を慕ってくれてるけど僕なんてちょっと令呪あるだけの馬の骨…………ああ、太陽が暖か――ー」

 

「寝るな! 寝るんじゃねぇ!」

 

「寝たら死ぬんですか?」

 

「死なないけど危ないだろこんなところで寝てたら! 物盗まれたり最悪拉致されるなんてこともあんだから!」

 

治安はあまり良くないのだろうか?

とは言え日本であろうと野宿していればそういう危険がある以上、僕らホームレスには本当に安心して生きていける場所なんて無いのかもしれない。

 

「そうでしたか。僕は藤丸 立夏と言います。よろしくお願いします」

 

「今!? 今自己紹介するのか!? 話の流れってもん掴めなさすぎるだろ!」

 

「いやぁ、悪い人には見えなかったので」

 

「お前ひょっとしてあれだな? コミュ障だろ? まともに他人と話したこと無いだろ?」

 

「君の名は?」

 

「自分勝手に過ぎる! ……はぁ、もういい……俺はヴェルフ、一応鍛冶師だ。まだレベル1だけどな」

 

鍛冶師……レベル? この人はサーヴァントなのだろうか?

とてもそうには見えないけど、でもサーヴァントのなかにはそうは見えない人も多い。ジキルとかパッと見ただのもやし眼鏡だし。

あとレベルが低いことを気にしているみたいだな、そんなの気にしなくて良いのに。

 

「大丈夫大丈夫、種火食べればレベルなんてすぐ上がるよ」

 

「た、種火? なんだそれ?」

 

どうやらレベルを上げるための種火を知らないようだ。

それならレベル1にも頷ける。

僕は種火について説明してあげることにした。

 

「苦くて固くて食べづらい上にいっぱい食べさせられ、しかもクセにもならない最悪な食べ物です」

 

「食べんなよんなもん!」

 

皆我慢して食べてます。

なんでも食べれると豪語しているサーヴァントもこれだけは嫌だって叫ぶけど、僕が無理やり食べさせています。

キングハサンが食べながら嫌そうな顔をしているのを見るのが楽しかったです。

 

「どんな食べ物なんだ……」

 

「人間が食べると爆発して最低一週間は寝込みます」

 

「食べ物ですらねぇ!?」

 

「辛かったです」

 

「食べたのか!? 食べたんだな!?」

 

「…………ああ、暖かい……」

 

「自由気まま! 寝るんじゃねぇ! ったく、お前の仲間の苦労がよくわかるぜ!」

 

なん、だと……?

僕の仲間の苦労がわかる……?

それは流石に聞き捨てならない。

 

「君は、なにもわかってない」

 

「え?」

 

「僕は、仲間内では、常識人枠…………ああ、暖かい…………」

 

「……お前……現実逃避してるだけだったんだな……なんか、悪い……」

 

「良いんだ、ごめん、ありがとう。……ありがとう……陽射しが眩しくて涙が出てきた……」

 

別に本気で悲しかった訳でもないのに、涙が出てきた。

おかしいなぁ……おかしいなぁ……ぐすっ。

 

「と、とにかく。まぁ問題無さそうなら良いんだけどよ、仲間だってお前のこと心配してるだろうし程ほどにして帰れよ?」

 

帰る……そうだ、帰らないといけないんだ。

だけどそもそもここどこなんだ?

僕、いつの間にレイシフトしたんだろう?

僕が寝ている間だろうから、キアラが?

ダメだ、僕だけで考えていても仕方ない。

とにかくこのヴェルフと名乗る人から情報収集をしてみよう。

孔明先生がいたら「もっと先にやっとけこのバカ!」とか言われるんだろうなぁ。

 

「帰る場所が分からない……というか、ここはどこですか?」

 

「どこって、ここは迷宮都市オラリオ……おい、そんなことも知らないでこんなところにいるのか?」

 

「というか気がついたらここに寝てました」

 

迷宮都市オラリアなんて聞いたことも無い。

現地人がそう呼んでる……とか? いつの時代なんだ。

 

「なんだそりゃ……仕方ねぇ、俺が案内してやる」

 

「わーいありがとうございます助かります」

 

起き上がってヴェルフに着いていく。

ヴェルフはため息をつき、仕方ねぇな……と苦笑いを浮かべた。

 

「ん?」

 

「どうした?」

 

「いや……」

 

後ろに二人の気配を感じた。

そちらを見ても誰もいない、が誰かは分かる。

ありがとう、二人とも。

 

~~~~~~

 

「でここが酒場。なんとなく分かったか?」

 

「いや、まったく。迷宮都市って意味は分かりましたけど。迷ったら二度と生還できませんね」

 

あれから一時間ほど歩いただろうか。

ヴェルフに説明されながら歩いてみたけど、ごちゃごちゃしていて何がなんだか分からなかった。

 

「いや迷宮はそっちのことじゃ……言ってもわかんねぇか」

 

どうしたもんか、とヴェルフが考え込んでいるとき、前から男が歩いてくるのが見えた。

どうにも僕の方を目掛けて歩いて来ているのがわかる。

これはあれだ、明らかにあたり屋なやつだ。

直前で避けてやろう、と思ったのだが避けようとしたときに急加速してきて結局ぶつかってしまった。

 

「っと……ごめんなさい」

 

「いてぇな……どこ見て歩いてんだ?」

 

「強いて言えば明日ですかね」

 

「あぁ!?」

 

僕は遠い太陽の光を手で遮りながら、ふぅ……と黄昏た。

当たり前だが僕の態度が気に食わなかったのだろう男は僕の胸ぐらを掴みあげる。

慌ててヴェルフが間に入ってきた。

周りには人がいるが、誰も助けてくれそうにない。

ひそひそ、と「レベル3」「傭兵崩れ」「たちが悪い」なんて聞こえてくる。

せっかくだ、この状況を利用してやろう。

 

「おいおいちょっと待て。こいつ今日初めてここに来た奴なんだ、勘弁してやってくれないか?」

 

「テメェこいつの仲間か?」

 

「いや、そういう訳じゃないが……」

 

「なら引っ込んでろ。俺はこいつと話があんだよ」

 

「そういう訳にゃいかねぇな」

 

「んだと?」

 

今度はヴェルフの方に難癖をつけようとしたので僕は叫んだ。

 

「やめて! 僕の為に争わないで!」

 

「テメーはもうちょい危機感を持て!」

 

「ナメてんのかテメェ……」

 

ヴェルフに迷惑をかけるわけにもいかない。

僕は掴まれてる状態なので男を見下すようにして言ってやる。

 

「こっちを認識してあえてぶつかってくる人にそんな事を言われるなんて……はい、これ」

 

鞄のなかから出した鏡を男の顔に向ける。

男は困惑したような顔をしていた。

 

「これは今一番他人をナメてる人の顔でございます、荒くれ者様」

 

「この野郎!!!」

 

ついに堪忍袋の緒が切れた男は空いている手で僕を殴り付けようとした。

ヴェルフがその手を止めようとしてくれる。

そろそろ良いだろう、と僕は叫び始めた。

 

「いやーーーー!!! やめてーーー!!! 僕に寄ってたかって酷いことするつもりなんでしょ!!! エロ同人みたいに!!! エロ同人みたいに!!!」

 

「大声でなに意味わからねぇこ」

 

「乱暴に服を破いて辱しめられるんだ!!! ホモ達に歪んだ欲望ぶちまけられるんだ!!! やだーーーー!!!」

 

「やめ、やめろ!! クソ!!」

 

男は吐き捨てるようにそう言って走り去ってしまう。

あの程度で逃げ出すなんて当たり屋の面汚し目。

 

「助かった」

 

僕は澄ました顔でそう言ったが、再び苦虫を噛み潰したような顔をヴェルフはしていた。

 

「…………お前のどこが常識人枠なんだよ」

 

「君は知らない。今の茶番を繰り広げようものならマジで囲まれて乱暴(意味深)するような集団がいるということを」

 

フェルグスとかギルガメッシュとかうちの男性陣は男女に拘らない人が中々多い。

まだどちらの清純も保っているが、世界が平和になった今近々散らされるだろうと覚悟していました。死にたい。

 

「お前それは本当に仲間なのか……?」

 

その問いには一瞬も迷わず笑顔で返す。

 

「一番大切で大好きな仲間達だよ」

 

そして僕は男の逃げていった方へ振り返る。

ドカッ!! バキッ!! と先ほどの男が僕たちの足下に転がってきた。

 

「ぐええ…………」

 

「良かった、大声で叫んだ甲斐があったみたい」

 

「え?」

 

「「「マスターー!!」

 

見慣れた顔の三人、クーフーリンと清姫、アーラシュが僕に駆け寄ってきた。

 

「無事だったみたいだな坊主」

 

「良かった! 本当に良かったです! 安珍様の貞操を守れて!」

 

「心配したぜ。心の傷だけはどうにもなんねぇからな」

 

「ね?」

 

僕に抱きついてくる清姫の頭を撫でながらヴェルフに笑顔を向ける。

 

「お前の仲間か?」

 

「そっちのはさっきの奴の仲間だな?」

 

「え?」

 

クーフーリンがヴェルフも蹴散らそうとしたので、僕はすぐに訂正する。

 

「違うよ。僕を助けてくれたんだ、恩人だよ」

 

「おっそうかい。うちのマスターはどこか危なっかしくていけねぇ、助けてくれてありがとな!」

 

相変わらず良い笑顔でヴェルフの手を握るアーラシュ。

ヴェルフは頬を掻く。

 

「助けた、って良いのか分からないんだけどな」

 

「あぶねぇな、もうちょっとでこいつ同じようにぶちのめす所だったわ」

 

ガハハと笑うクーフーリン。

おっと、それよりも本題に入らないと。

 

「それより三人とも、ここがどこだか分かる?」

 

「いえ、それがまったく……私たちも先ほど起きたばかりで、何故ここにいるのかも分からないんです」

 

「俺とアーラシュも同じだ」

 

アーラシュが頷くのを見て、僕は腕を組んだ。

確か昨日のあの時、クーフーリンとアーラシュ、清姫は僕を追いかけていた。

それからの記憶も無さそうだ。となると。

 

「うーん……特異点じゃなさそうなんだよね、これ……なんだろう?」

 

「あともうひとつだけ、訳のわからんことならあるぜ」

 

「なに?」

 

「俺らな、受肉してるみたいなんだ」

 

クーフーリンのその言葉は、思ってもみないことだった。




おらに文才別けてくれぇー!
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