ダンジョンにサーヴァントを連れて潜るのは間違いな気がする 作:キョウさん
「…………アーラシュはもうステラできないね」
クーフーリンから衝撃的な事を言われたにも関わらず、僕の開口一番はどこか気の抜けたものだった。
やれやれと肩を竦めながらクーフーリンはアーラシュを見る。
「本当に必要とあれば俺は遠慮なく射るぜ?」
かなり本気っぽく弓を射るような動作をしたアーラシュの右腕を掴む。
「ダメ、マスター命令」
「ハハッ! マスターは心配性だな」
当然だ。この世界でのサーヴァントの死がどうなるかも予測できないのに、受肉しているなんて本物の死となにも代わり無い。
皆は死んでもカルデアに戻る……そう教えられていたからこそ時には捨て駒のように使うこともあったけど、そうでないなら話は別だ。
「ああ、安珍様! 清姫は何がなんだか分からなくて怖いです!」
「僕は清姫の方が怖いんだ」
強く抱きしめてくる清姫につい口から本音が漏れてしまった。
ニコリ。まるで笑えない笑みの清姫。
「なにか言いましたか?」
「それより他の皆は? 見てない?」
僕は誤魔化すことにした。
アーラシュは少し考えて、
「俺たちはまとめて同じところに倒れてたんだけど、他のは見なかったぜ」
と頷きながら話す。
誰がどのくらい来ているのかは分からないけど、でも皆なら心配はないだろう。
そう信じたい。
「心配しなくてもそのうち見つかるよね。とりあえず話を聞いて回ろう。ねぇヴェルフ」
「な、なんだ?」
「道案内とかお願いできない? ここのことまったく知らないから不安でさ。勿論お礼なら……って待てよ? ここの通貨知らないな……」
「いやそんな、礼なんて別にいらねぇよ。道案内くらいしてやる」
「……身体で払わせようとしてる……?」
「してねぇ!」
ヴェルフの反応がよくてついからかい過ぎちゃうな、自重せねば。
と思ったら清姫が早速ヴェルフを睨んでいた。いかんいかん。
「(な、なんだ? こっちを見てるだけなのに、殺気を感じる……)」
「こーら、清姫。今のは僕の冗談なんだから本気にしちゃダメだよ!」
ていっ、と清姫にチョップを入れると涙目になった清姫が「はい……」と言って僕の胸に抱きついた。
ごめんね、とヴェルフに視線を送る。
少し引いていたがおほんと一度咳をした。
「……なあ、お前らどこのファミリア所属なんだ?」
またファミリアか……この世界では誰もがファミリアに所属しているものなんだろうか?
どこのというくらいだ、色んな派閥があるのだろう。
「ファミリア……ってのがよくわからないんだよね。なんなの、それ?」
「……そうか、そうだよな。来たばかりでファミリアって話もないか。にしてはあんたら……立夏以外の三人、相当出来るだろ?」
僕以外の三人を指差してそう言うヴェルフ。
三人の持つ異様な雰囲気には気づいていたらしい。
「あん? へへ、まあな!」
「三人とも僕の信頼してるサーヴァント達だしね」
サーヴァントと聞いてヴェルフは「なんだそれ?」というような顔をした。
サーヴァントについては知らないのか……。
ここまで常識が違うとどう話せば良いか分からないな……。
どう会話の舵を取ろうかと考えようとしたとき、この状況で一番出会いたかった人の声が聞こえてきた。
「おい!! このバカ!!」
出会い頭に僕をバカとなじる孔明先生。
「あ、先生。やっぱり先生も来てたんだ」
「来てたんだ、じゃないだろ! 騒ぎが聞こえてきたから慌てて飛んできたんだよ!」
「ごめん、あれ嘘」
「そんなの分かってる! 恥ずかしいこと叫ぶなって言ってるんだ! 一緒に行く僕らが恥ずかしいんだからな!」
先生には僕の考えはバレていたらしい。
確かに大声で叫ぶだけならあんな内容じゃなくても良いかなーとも思ったのだけれど、本気で助けを求めると大事になりそうだったからああなったんだよなぁ。
「それにぐえっ!」
さらに小言を続けようとした孔明は背後からやってくる巴に気付かずにぶっ飛ばされた。
「マスター!!」
「うおっ!」
僕を見つけたと同時に抱きつく巴。
相変わらず力が強くて痛い。
「良かった……無事のようですね。では今から鬼畜狩りを始めます! マスターを襲う鬼はこの手で燃やし尽くしてやりますとも!」
瞳に灯る憤怒の炎を矢に乗せ、近くの住民へ殺気を向ける巴。
それだけで見物客は蜘蛛の子を散らしたように逃げていった。
腕を擦りながら涙声の孔明がよろよろと起き上がる。
「うう……さっきの騒ぎを聞いたサーヴァントがここに集まって来たらどうするんだよ……! 馬鹿! この馬鹿! ここを地獄に変える気か!」
「おい、この先は地獄だぞ」
「うるさい! 馬鹿ーーーー!!」
いつの間にか側にいたエミヤが冗談めかしてそう言ったが、孔明先生にはちっとも笑えなかったらしい。
僕も正直、あまり笑えなかった。
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少しして……いったんその場を離れて開けた場所に僕らはいた。
あれから更に人数は増え、念願のマシュとも再会できたのだが……。
「先輩! 先輩はどうしていつも!」
マシュも孔明先生同様、大変激怒していた。
マシュの怒り方って本気なんだろうけどまず先にこちらの心配から入っているから、なんだか可愛く見えてしまう。
不謹慎だがマシュは可愛いので仕方ない。
「いや、ああした方が近場にいる皆を集められると思って」
「正に地獄絵図というしかなかったな。主に暴走しがちなメンバーを押し止めるのが大変だった。我ながらよく止められたものだと思うね」
そう、巴の他に新たに合流したジャックと静謐が暴れそうになり、クーフーリンはそれに便乗。
あわや大惨事となりかけたのを駆けつけたマシュ、アーサーと協力して抑え込み、ようやく現在に至る。
「一度こうと決めたら真っ直ぐ行く、美点でも難点でもあるところが僕たちサーヴァントらしいじゃないか」
「ふ、確かに」
アーサーとエミヤは和やかな会話をしているが二人ともボロボロだった。
アーサー一回巴にぶん投げられてたしなぁ。
「それにしても……」
現在のメンバーを整理してみる。
孔明先生、エミヤ、マシュ、巴、槍クーフーリン、清姫、アーラシュ、アーサー、ジャック、静謐……計10名。
「けっこういるね。それに……」
僕は後ろを振り返り、そこにいる二人にも声をかける。
「ずっと後ろにいてくれたんだよね、二人とも」
数秒の沈黙、そしてすぅ……と二人の影が姿を現した。
「何があるか分かったものじゃないからな」
一人はエミヤ(アサシン)、相変わらずフードを目深に被り表情は窺えない。
ただ右手に持った銃器から彼の心境はよくわかった。
そしてもう一人……死神のような風体をしているキングハサンは、大剣をいつものように構えてこう言った。
「先ほどの者、やはり首を断っておくべきか」
「首禁止」
「そうか」
あっさりと諦めるとまた闇に消えるキングハサン。
その様子を見ていたヴェルフはなにかを言おうとして、こちらもすぐに諦めたように口を閉ざした。
言うだけ無駄だと判断したのだろう。
キングハサンに関しては説明するだけ無駄なので僕の方からも何も言わない。
「とりあえず戦力は確保した。後は今のこの状況を打破するためにも情報を」
「僕が集めておいたよ……馬鹿マスターが寝てる間にな!」
「流石先生。それで?」
このバカマスターは! と憤る先生を軽くスルー。
先生はこれ以上話しても無駄だと判断したようだ。
「ったく……これは僕なりの推理だけど、まずここは僕たちの知る世界じゃないのは確実だ。迷宮都市オラリオなんて聞いたこともない。そもそもここには人間以外の種族がけっこういたから、異世界に飛ばされて来たのはほぼ確実と言って良いだろうな。信じたくないけど」
なんとなくそうなのかなーとは思っていたけど、孔明先生に言われて一気に現実味を帯びてきた。
孔明先生が知らないならオラリアなんて都市は僕たちの世界には存在しないということだろう。
「それと僕らサーヴァントが全員受肉していることの説明は、悔しいけどまったくしようがない。一人くらいなら聖杯の力を使えば可能だろうけど全員は不可能だ。あり得ない」
「でも現実に俺ら全員なっちまってるしなぁ。何らかの力が作用したのは間違いねぇな」
クーフーリンが槍でコンコンと地面を叩いた。
「分かってるよそれくらい。こっちに来たサーヴァントがどれくらいいるのかは分からないけど……。あぁあともうひとつ、この世界にはその辺に普通に神がいる、らしい」
孔明先生の冗談のような発言に空気が固まる。
マシュがおずおずと口を開いた。
「か、神様ですか?」
「こんなときに冗談は……と言いたい所だが、その様子だとどうやら嘘では無さそうだな」
孔明先生がこんなときに冗談を言うタイプでないのか皆分かっている。
少し眉根を寄せて腕を組むエミヤは深いため息を吐いた。
「僕だってにわかには信じがたいけど、でも誰に聞いても疑問にも感じてない様子で即答されたから多分本当にいるんだろうな」
「ねーねーおかあさん、神ってなに?」
「雲の上に住んでる人達だよ」
雲を指差してからジャックを抱き上げる。
「雲の上に人が住んでるの? 私達も行ってみたい!」
「そのうちね」
ジャックを肩車すると、わーいとはしゃぎだしたので僕も一緒になってぴょんぴょん跳び跳ねる。
「そこ! 状況理解してる!? 今までみたいには行かないんだぞ!」
「受肉してるってことは死んだらそこまで……カルデアでもないここじゃ俺の宝具は封印しておくしかないって訳だ」
「それもだけど……どうやって戻るかとか……」
弓を見つめるアーラシュ。
でもアーラシュなら、必要とあったら自分の命を省みないんだろうなぁ。
孔明先生は腕を組んで顔をしかめながら思考している。
「戻る必要はあるのでしょうか? ここでならますたぁと子供を作って幸せな一生を……」
「うーん、仮に清姫と幸せになるなら俺はあっちの世界が良いな」
「さぁ!! 戻る手段を考えますよ! ハリィハリィハリィ!!」
やる気を出してくれたようで何よりだ。
僕は嘘はいってない。清姫と幸せになる未来を想像するならこっちよりあっちの方が良いと言うのは本音だもの。
清姫の矛先は孔明先生の方に向かった。
「僕を揺らすなぁ!!」
がくがくと孔明先生が揺らされている。
振り払おうとしたが力が足りないようだ。
エミヤが孔明先生から清姫を引き剥がしてくれる。
「落ち着け清姫、今考えてどうなることでもあるまい。他に考えるべきは」
「誰がこちらに連れてきたのか、だ」
殺エミヤがフードから視線を覗かせる。
そのまま全員を見渡すが、誰も口を開かない。
結局それも現段階ではまったく分からないのだ。
「とりあえず……そうだなぁ、他に誰か来てるなら早く合流しないと」
「残念なことにここに来てから上手くマスターの気を辿れない。僕がマスターを見つけたのも偶然だったからね」
「あれ、そうなんだ?」
殺エミヤの言葉に何人かが反応した。
「うん、確かにそうだね。前まではマスターがどこにいてもすぐに分かったのに、マスターがひと騒動起こすまで探すのに手間取ったよ」
アーサーにほぼ全員が頷く。
「私は愛の力で乗り切りました!」
清姫だけは予想通りというか、流石清姫と言った所だな。
「でも縁があれば会えるでしょうよ。僕はギルガメッシュが来ていないことを心のそこから祈るだけだな」
フハハハハハ!! と、空の方から高笑いが聞こえた。
フハハハハハハ!!と、一人では無いことが分かった。
フーハハハハッハッハ!!と、声の主達が近付いて……いや落ちてくるのが見えた。
「どうやらその願いは叶わないようだ」
殺エミヤがフッと鼻を鳴らす。
目の前に降り立った二人、ギルガメッシュとオジマンディアスは、結構な高さだった筈なのに元気そうだった。
「雑種ぅ……話は聞かせてもらったぞ。何故我を呼ばん? よもや我のことを忘れてはおるまいな?」
「フハハハハ! 我らなど忘れたくても忘れられ、いや!? 忘れたいとも思わんだろうな!!」
仲の良い王様コンビが高笑いをするが、僕はオジマンの手を握った。
「やったぁ、オジマンディアスだ! 今後ともよろしく!」
「貴様ぁ!! やはりこの我を邪魔者と思っているな!?」
すかさずギルが僕とオジマンの間に手刀を入れて邪魔をする。
「いやだってギルガメッシュがいると場が引っ掻き回されるし」
「我がルールだ、問題あるまい」
これだもん。オジマンはこんなノリで意外と周りの状況をよく見て行動してくれる。
この王様、自分が気に食わないことはしないし、その癖僕が王様を通さないとご機嫌が斜める。
カルデアなら好きにさせとくしギルのことは好きだけど、流石に今ギルのご機嫌取りばかりするわけにはいかない。
そんなわけで僕は酷い人間だと罵られようとギルには冷たくするのだ。
決してギルがいると僕も一緒になってふざけ始めちゃうから今のうちに距離を取っておくとかそういうことではない。断じてない。
「全部終わるまで遊んでて良いよ。オジマンディアス、協力してほし」
「待て待て待てぇい! 何故太陽のには協力を要請し我にはせん!?」
言い終わる前に片手で僕の顎を引っ付かんでギルに正面から睨まれる。
「ギルガメッシュ。目の前に声をかけてくれる人がいたらどうする?」
「雑種如きがこの我に声をかけるなど、死刑でも生温い」
「そういうとこだよ。よーし皆、まずは拠点を探そう」
ギルだけを輪から外して皆を集めようとする。
「きぃさぁまぁ……!! 良いのか! 我がいなくなると困るぞ! 良いんだな! 寝返るぞ!」
凄い脅し文句だった。
ただかなり効果的でもある。
ギルが敵に回ると本気で厄介だ。
こちらで対処できそうなのはオジマンとキングハサンしかいない。
「やれやれ……マスター、あれは本気で寝返って満足するまで暴れるぞ。確かに味方にいても面倒だが敵だともっと面倒だ、ここは堪えてくれ」
「なんだとフェイカー!!」
まぁ元々仲間外れにする気はなくてギルの反応が……おほん。
僕は誰も見捨てたりはしない!
キリッ、とキメ顔を作ってギルの手を取った。
「……ギルガメッシュ、冗談言ってごめんね? 僕にはギルガメッシュが必要なんだ、一緒に戦ってくれ」
僕のカリスマはEXまであるぞ……!
「ふっ、最初から素直にそう言え雑種」
ギルも満足したようで僕の手を離すと喧しい高笑いを始めた。
オジマンもそれに同調して更に喧しい。
「…………お前の言った通り、本当に楽しい集団みたいだな」
「いや本当にね。騒がしくしてごめん」
すっかり場の空気に呑まれてしまったヴェルフに謝罪する。
長いこと一緒にいるマシュですら着いてこれないのに、ヴェルフには悪いことをしてしまったなぁ。
「それより今の話、俺が聞いても良かったのか?」
そんな疑問に孔明先生はにやりと笑った。
「現地での協力者は絶対必要だからな。むしろここまで聞いて逃げ出さないってのは、最善と言って良い」
僕もそう思う。ここまで話を聞いても逃げ出さないというのはポイントが高い。
勿論こちらの話にはまったく着いてこれないだろうが、それで問題はないのだ。
彼には彼の知ってることだけを聞けば良いし。
「ひとまずは……この世界のお金を稼がないとね。野宿でも良いけど、一部のギルガメッシュとかいう王様がワガママだから」
「貴様ぁ!! 何故我にはいつも冷たいのだ!」
分かってるじゃない、と皮肉を言おうとしたが喉元で止める。
この王様、本当に分かっていない可能性があるのだ。
「お金に関してはあてがある……と言いたかったんだけど……」
孔明先生が口ごもるのは珍しいな。
「その辺りの説明はヴェルフにしてもらった方が良い。ダンジョンについて皆に説明してくれないか?」
「ダンジョン? あぁ、なるほど。分かった」
孔明先生に促されてヴェルフは僕たちに、この街の地下にあるダンジョンについての説明を始めた。
ダンジョンのなかにはモンスターがいること。
深層に潜れば潜るほどモンスターが強く狂暴になること。
神の眷属になることで恩恵を得た者を冒険者と呼び、ダンジョンにはその冒険者が潜ること。
神の下に集まった眷属達をまとめてファミリアと呼ぶこと。
そのファミリアに属さない事にはダンジョンに潜れないこと。
ダンジョンのなかで活躍をすれば能力に経験値が貯まり、一定値以上になるとレベルが上がること等々。
ヴェルフが知っている知識を大まかに聞くことができた。
「なるほど、迷宮都市の意味がよくわかった」
話を聞き終えて僕は迷宮都市という言葉の本当の意味を理解した。
街が迷宮みたいだからとかくだらない理由では無かったようだ。
「どこの馬の神とも知れん奴に仕えるなど、そんなことは出来んな!」
「馬の神ってなんだよ……」
オジマンに鋭いツッコミを放つヴェルフ。
馬の神はともかく、神と契約なんてしてしまっても良いのかどうか悩んでしまう。
「どうしよう先生」
「やることは決まってるだろ? 神なら誰でも同じことができるみたいだから手っ取り早く適当な神のファミリアになって乗っ取り、そこを拠点として戻る方法を探す」
流石先生。容赦がない。
「穏やかじゃなさ過ぎるだろ。乗っとるっておい」
ヴェルフは知らない。
孔明先生が冗談ではなく本気でそんなことを言っているということを。
「全員殺せば良いんだよね? 任せて!」
「ジャックはおかあさんと遊んでれば良いんだよー」
そしてこちらも冗談ではなく本気だ。
なので僕はジャックを持ち上げてくるくると回った。
「わーい」
きゃっきゃっと喜ぶジャックに満足する。
清姫と静謐が「ぐぬぬ……」と羨ましげにこちらを見ていることについては当然スルーだ。
どうせ後で僕に直談判してくるし。彼女達はそういう人間だもの。恐い。
「人数の少ない所が良いな。それでいてそれなりに良いホームを持ってる所。どこか知らない?」
「お前さてはマジで言ってんな!? 知らねぇ! 知ってても教えねぇ! 誰かを不幸にする事に荷担したくねぇ!」
ようやくヴェルフも目の前にいるショタが人間の皮を被った悪魔であることを理解してくれたらしい。
孔明先生が舌打ちをしたのを見てヴェルフは戦慄していた。
「おーおったおった」
「ろ、ロキ神!?」
ロキシン? 間接の痛みに効きそうだな。
とヴェルフが見ている方に視線を向けると、糸目のお姉さんがやあやあと腕を挙げてこちらへ来ていた。
「よー、探しとったでー。おーおー! 確かに強そうなのが沢山おるな!」
サーヴァントの皆を観察するように上から下までじっくり眺めている。
「誰ですか?」
「この人が神の一人、ロキ神だ」
これが神か……なるほど、確かに皆とこの人とはオーラが違う気がする。
人でないオーラ……という訳でもないよく考えたらサーヴァントの皆も人外みたいなものだし。
もっとこう、言葉では言えない何か特別な感じだ。
「どうしたんですか? こんなところに一人で」
「いやぁ、こっちに強そうなのがぎょうさんおるっちゅう噂を聞いて…………ん?」
なんで関西弁なんだろう。
神様としての威厳が足りない気がしているが、ヴェルフは畏まっているので他の神様もこんな感じなのだろうか?
まぁ良い、自己紹介は掴みが肝心だ。
「初めまして、神様と話すなんて光栄だなぁ。この口洗わないでおこう」
「接触すらしてないのに!?」
ちょっとしたお茶目にもマシュは全力だ。
「接触したら私、絶対に許しませんけど」
清姫は全力というか目が危ないや。
「それなら、私が」
静謐は静謐で僕に唇を近づけてくる。
マシュと清姫が静謐を引き剥がし、あー、と引きずられていった。
相変わらず三人とも楽しそうだなぁ。
「はいはい、三人とも静かに。今大事な話が進むところだ」
エミヤママが三人を抑えていてくれるみたいなので、僕はロキ神に向き直る。
ん? 何やら神妙な顔でロキ神は僕を見つめていた。
「……お前……誰や?」
「え? あぁ、自己紹介忘れてましたすいません。僕は藤丸 立夏と申します。よろしく」
「そんなん聞いてないわ。お前誰や。なんでここにおんねん」
「はい?」
どういうことだろう。
何故ここにいるのかなんて僕達が聞きたいくらいなのだが、そういう話をしている風でもない。
どういうことか聞こうとして、僕は衝撃的な言葉を投げられた。
「私も知らん神が下界に来たなんて話聞いてないで」
…………………………。
場が静寂に包まれる。
長いような短いような沈黙。
全員の視線が僕に集中し、僕は後を押されるように声を出した。
「……あの」
「なんやねん」
「誰のことですか? 神?」
「はぁ? なにとぼけとんねん。お前神やろ」
おまえかみやろ。お前神やろ。
僕のことを神だと、そんなことを言っているらしいことがわかった。
僕は振り返ってダブルピースで笑顔を作った。
「いぇーい、みんな、僕が神だよ」
というわけで僕は神になったのだ。
なにか感想やミスなどありましたらよろしくお願いします。