ダンジョンにサーヴァントを連れて潜るのは間違いな気がする 作:キョウさん
「いやいやいやいや!!! えええ!? 先輩神様だったんですか!?」
慌てふためき手をバタバタとさせるマシュに僕は右手を差し出した。
「そうだよ? ほら崇めて崇めて。余は酒池肉林を」
「ま す た ぁ ?」
「求めて三千里! そんなものに興味を抱いたこともない!」
「圧倒的矛盾」
目を怒りの炎に燃やす清姫に即座に掌を返すとクーフーリンに馬鹿にされた。
酒池肉林に興味ないのは本当だ! サーヴァント相手じゃ命がいくつあっても足りないし普通の人間相手にしようとしてもサーヴァントが弊害になるからな!
「お前らちょっと黙れ! こいつが神ってどういうことだよ!?」
僕のおふざけにキレてから、孔明先生は僕を指差した。
ロキ神は糸目を少し開けて僕を睨んだままだ。
「どういうもなにもこっちが聞きたいわ。どういうことやねん」
「こんなへちゃむくれの能天気な奴が神な訳………………」
孔明先生が言い留まる。
何か思うところがあるようだ。
押し黙った孔明先生へ畳み掛けるようにエミヤ、清姫、クーフーリンが明後日の方向を見ながら口を開く。
「神の中にはそんな印象の奴もいるがな」
「自分が楽しむ為に世界を混乱に陥れるようなのもいますし」
「つーか神なんてどっかしら能天気な奴らばっかだぜ? まぁなんとかなんだろーつって災厄振り撒いたりするし」
「ぐぐぅ……いや百歩譲ってそういう神がいるのは良いとして! こいつは普通の人間な筈だ!」
「そーだそーだ、僕は人間だー」
「ん……? ……いいや、間違いなくお前は神や。威光は上手く隠しとるようやけど、神は騙せんで。私ら神は相手が神か子供たちか分かる。お前もそうやろ?」
顎をクイッとさせて僕に同意を求める。
僕は少し考えて頷いた。
「ええまぁはい、実はそうなんですよ孔明先生。皆とこの人、ロキさん? とは何となく雰囲気違うなーってのは分かってたんだ」
「そういうことは最初に言えよこの馬鹿!」
ぐいっと孔明先生に口を引っ張られた。地味に痛い。
「お前、神だったのかよ……全然気づかなかったぜ……」
「今知ったんだけど、なんかごめんね?」
「い、いや謝られても。むしろ何があったら神であることを忘れるんだ」
少し遠慮がちなヴェルフ。
重ね重ね悪いことをしてしまったなぁ。
「でもさ先生、これで条件は整ったんじゃない?」
「非常に遺憾だけど、そうだその通りだ。僕たちはお前の下に入ってファミリアを形成する。そうすればダンジョンに潜ることもできる」
僕が神だというのは謎だけど、これで身内だけで全て処理できる。
乗っ取られる可哀想なファミリアなんていなかったんだ。
「おいちょお待て。まだ話は終わっと」
僕の肩を掴んだロキ神の腕を逆に掴んで引き寄せ肩を組んだ。
咄嗟のことに反応できていないロキ神に僕はチェケラ、と呟く。
「ヘイYOそこのお神さん。僕今日神になったばっかだYO! あっちで二人、手取り足取り神について話そうYO!」
「は、はぁ? え、ちょ……おあああ」
引きずるように僕はロキ神を近くのベンチで連れていった。
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「向こうは馬鹿に任せとこう。とにかく問題の一つは片付きそうだから、あとはこっちのことだな」
孔明もマスターがロキにしたように、ヴェルフと肩を組んだ。
「え? え?」
「すまないな。これも人助けだと思って諦めてくれ」
孔明に続いてエミヤもヴェルフの肩を掴む。
「ちょっ、まっ」
「君たちはここでマスターを待っていてくれ」
エミヤが女性陣にそう言うと、男たちはヴェルフを連れ闇の中へ消えていったのだった。
「買い物できる所を教えろだなんて、口で説明しろよ!」
現在エミヤ達は商人で賑わう通りにやって来ていた。
不機嫌そうにしているヴェルフにエミヤはククッ、と笑う。
「この体になってから空腹感を覚えてね。すまないな」
金が無いが腹は減るということでヴェルフに立て替えてもらうという算段だった。
珍しいことにエミヤ達についてきていたギルガメッシュが、黄金をカランと鳴らす。
「フェイカーは剣の腕は三流だが料理の腕は超一流だ。どれ、今回も精々我を楽しませろよ?」
「貴様だけ飯抜きだ」
「貴様ぁ!! 最近益々我に対する扱いが雑になってきたな! 無理矢理にでも奪って我の宝物庫に入れてやる!」
掴みかかろうとするギルガメッシュをいなしながら、エミヤは売り出されている商品に目を光らせる。
とギルガメッシュの発言に孔明があっ! と声をあげた。
「あーーー!! そうだ、そうだよ! 今まで確認するのを忘れてた僕の馬鹿! おいギルガメッシュ! お前宝物庫は使えるのか!?」
「ふん、使えぬ筈がないだろう戯け」
背後に【王の財宝】を展開するギルガメッシュ。
それを見て他の面々も孔明の発言の意味に気がついた。
「そうか、宝具か。僕たちって今どういう扱いなんだろう? 少なくともマスターとの契約は切れている状態のようだけど」
「ダンジョンに潜るにしてもその辺りのことがわからない内は危険か? ……投影、開始」
アーサーは自分の手を、そこにある聖剣を見る。
隣でエミヤが夫婦剣の模倣品を投影する。
当然見慣れていないヴェルフは驚くが話はそのまま進行した。
エミヤの投影した剣を触るクーフーリン。
「問題無さそうだな?」
「まだ分からないよ。エミヤの固有結界を展開できるかどうか」
「無くても戦えない訳ではないが、敵の全容が明らかでない内は危険だろう」
アーサーの心配に少し神妙な表情になるエミヤ。
固有結界が全てでは無いものの、エミヤの奥義は強力だ。
自力で勝てない相手と戦う為の手段は必要になる。
「この辺りで試せば良かろう」
「では行こうか!」
ギルガメッシュとオジマンディアスがそう言って魔力を高め……ようとして孔明が大慌てで阻害した。
「やめろーー!!」
「落ち着いて。ここがどういう場所かも分からない内から敵を増やすのは良くない」
アーサーもオジマンディアスをなだめる。
そうこうしている内にようやく目的の場所に着いた。
孔明の心労だけが増えていく時間だった。
「……とりあえず着いたぜ。ここら辺なら一通りのものは揃う筈だ」
「では行ってこよう、そちらも頼んだ。……ついでに調理器具でもあると良いが」
「頼んだ。お前はマジでうちの生命線だからほんと、頼んだ」
少し楽しげに張り切るエミヤに、孔明はこれから世界が終わると聞かされた人のような顔をして懇願した。
「泣けてくるからその顔はやめてくれ……」
同じく心労をかけられる組であるエミヤだが、彼の場合はまだ心に余裕がある分諦めという形で受け流せる。
孔明は全部受け止めて完全解決を目指す傾向にあるため、負担はエミヤの比ではなかった。
とりあえず買い出しはエミヤに任せることにして、アーサー達は辺りを見渡す。
「さて、こっちも始めようか。僕たちは今はただの人間と言えるから、住む場所を探さないとね。風呂や食事、睡眠、その他色々も必要になってくる」
「んなもんその辺の山で全部事足りるだろ」
「僕やマスターはお前らみたいに野蛮じゃないんだよ!」
クーフーリンは山で野宿することに苦を感じない。
だが近代文明人には中々厳しい話だ。
頭を悩ませる孔明、それに呼応するようにざわつく周囲。
「っと、考えるのは後にした方が良さそうだぜ。向こうの方で騒ぎが起きてるみたいだ」
アーラシュが指差した方では、人々が逃げ惑っているのが見えた。
わーー!!
モンスターだー!!
そう言ってアーラシュ達の横を過ぎて逃げて行く民衆。
「モンスターだと!?」
「ここは安全って話じゃなかったのか!?」
「モンスターが地上に出てくるなんて、そんな話最近じゃ聞いたことも無いぜ!」
驚愕するヴェルフと孔明だが、他の面々はそれぞれの得物を手にとって笑った。
「ちょうど良いぜ! ちょっくら遊んでくるかぁ!」
「この世界のモンスターに興味はある。我が行くから犬は座っていろ」
「テメェ!」
「喧嘩する前にさっさと行こうぜ?」
喧嘩するクーフーリンとギルガメッシュをなだめながら警戒を怠らないアーラシュ。
その時、孔明だけがとても嫌な予感を感じていた。
「だぁかぁらぁ! 姫たちはモンスターじゃないってばぁー!」
「■■■■■ーーーーーーーーー!!!!!」
「くっ、マスターを早く探さなければいけないというのに……!」
「ほらぁー! ヘラクレスだー! モンスターだよあれは確かに!」
騒動の中心にたどり着いた孔明は、囲まれる刑部姫、ヘラクレス、ランスロットを見つけて頭を抱えた。
確かにヘラクレスは誰がどう見てもモンスターにしか見えなかった。
「確かにどこからどうみてもモンスターだわな」
クーフーリンは肩透かしを喰らったように地面に座る。
「チッ……くだらん。我は行く! 後は貴様らでなんとかしておけ!」
踵を返してどこかへ行こうとするギルガメッシュ。
「ちょ、どこに!?」
「どこへでも良いだろう。雑種にはすぐに戻ると伝えておけ」
アーサーの問い掛けには答えず、ギルガメッシュはさっさと人混みを蹴り飛ばしながら消えていった。
「相変わらず自由な王様だ。仕方ない、俺達だけでやるか」
「任せろ勇者。余にかかればあのような雑兵共、瞬く間に蹴散らしてやる!」
楽しそうにアーラシュの隣に立つオジマンディアス。
「兄さん、加減してくれよ?」
「加減なら余以上に出来る者はいない!」
オジマンディアスの高笑いは、孔明の頭へ更なるダメージを負わせた。
「ああ、頭が……」
「あーーー!!! いたーーー!!! 助けてよーーー!!!」
刑部姫が孔明達に気付き、大声をあげながら手を振る。
「■■■■■■ーーーッッッ!!!」
ヘラクレスの怒号で周囲の屈強そうな冒険者達が威圧される。
そしてランスロットもアーサーの姿を確認し、救いの手が来た! と膝を地面についた。
「王よ! それに他の皆さんも! 申し訳ないがヘラクレス殿についての釈明を手伝ってはいただけないだろうか!」
「い、いつもこうだーーー!!!」
「■■■■■■ーーーッッッ!!!」
孔明の何度目かの叫びは、ヘラクレスにかき消されたのだった。
それから二時間後……。
ようやく誤解が解いた頃に合流してきたエミヤは、経緯を聞いてため息を吐く。
「お前たちはいつも楽しそうだな」
「楽しくないよ! なんっにも! ひとっつも! まったく!!!」
「あんまり怒ってると倒れちまうぜ?」
顔を真っ赤にする孔明にアーラシュは笑いかけた。
~~~~~~
「皆さんお帰りなさい!」
「遅かったね」
何だか疲弊している孔明先生だが、後ろにいる三人を見つけて僕は理由を察した。
心のなかで孔明先生に合掌する。
「まーーちゃーーん!!」
僕の胸に駆け込んでこようとする刑部姫。
だが僕はサッ! とそれをかわして横を駆け抜けた。
向かう先は当然……。
「ヘラクレスー!」
「■■■■■ーー!」
「僕のヘラクレスは最強なんだー!」
「■■■■■ーー!」
抱き付いたヘラクレスにブンブン振り回される。
楽しい! 清姫達の嫉妬に晒されるより十倍楽しいや!
それはそれとしてマシュに声をかけようとして冷めた視線で出迎えられるランスロットが不憫でなら無い。
女の子って恐い。
「またけったいな……」
「ロキ神、まだいたんですか」
「私だってはよ帰りたかったわ! 神についておしえろー言われて仕方なく……それにこんな謎の集団放置して行くのも寝覚め悪い」
はぁー……と深く吐く神に苦笑いするヴェルフ。
「さてと。それじゃあ買い出し班にも説明をしよう。まず僕はこの世界ではカルデアという名前の神様を名乗ることにした。そして皆を眷属とした、カルデア・ファミリアを発足する。僕が主神だ」
「えへへ……」
「当然ですとも!」
清姫と静謐に両脇を固められる。
何故この子達はいつも距離が近いのだろう。
そんな意味の無い疑問を頭から消して……。
僕は気持ちを落ち着けるように深呼吸をした。
「これは皆に強制はしない。なりたい人だけ、僕のファミリアに入ってほしい」
「……どういうことだ」
「孔明先生。考えたんだけどさ、皆受肉して人間になれたんだよね。だから好きに生きて良いんじゃないかと思うんだよね僕は」
少し怒気を孕ませる孔明先生にも僕は物怖じしない。
嘘、ちょっと怖い。
「ここでは僕は君たちのマスターじゃない。契約が解除されてるのは皆分かってる筈だ。それに僕は神で君たちは人間。だから、他の神がよければそっちに行ってくれて良いし、戻りたくない、ここで生きていきたいというなら僕はそれを尊重」
「馬鹿者」
ポカッ、と頭を叩かれて僕は驚いた。
後ろにはギルガメッシュがいた。
ギルガメッシュも少しだけ怒っているのが気配でわかる。
「あれ、そういえばいなかったね。どこにいってたの?」
「少し出ていた。それよりも、今更そんなこと聞くまでもなかろうが。我らが他の者と行くなどと本気で思っている訳でもあるまい?」
「思ってないから言ってみたんだよ。君たちには新しい道が開かれたってね」
ギルガメッシュの視線を正面から受け止め、視線を返す。
僕の真意を探るような視線は、戯け……という呟きで反らされた。
ギルの視線の先、そこにいた皆の表情。
全員がまったく悩むそぶりも見せずに、答えを示していた。
―あなたと共にありたい―
「……皆ってほんと、馬鹿だよ。せっかく好き放題できるのに、僕は気にしないって言ってるのに」
「我々は普段マスターにうるさく言ったり、時に罵倒したりもする。だが、お前の馬鹿さに我々は惹かれているんだ。その愚直さ、諦めの悪さ、どんな苦難も乗り越える強さ。敬意を抱いている」
エミヤが遠くを見るように僕を見る。
「ずっと前しか見ないで歩いて、どいつもこいつもを仲間にして世界を救った。マスター以上に信頼できる奴も一緒にいたいと思える奴もいないな」
アーラシュは快活に笑い、最大限の賛辞を贈ってくれた。
「当然貴様が神だろうとなんだろうと、お前が我に仕えるというところには変わりないがな」
ニィッ、と笑うギルガメッシュはいつも通りだ。
「……分かった。ありがとう皆」
「それともうひとつ。雑種の為に動くのは癪であったが、なにもしない奴だと思われるのはもっと癪なのでな。拠点を手に入れて来てやったぞ」
正直ここに来て一番の驚きがここにあった。
ギル、意外と僕の発言気にしてたんだ……。
「たまには役に立つじゃねぇか」
「貴様は死刑だ犬ーー!!」
「うおおおお!!?」
クーフーリンの軽口を封じようと【王の財宝】から剣が飛んでいく。
「ん、ランサーが死んだー」
「おっ。この人でなしー、って奴だな!」
エミヤに合わせてアーラシュが続けると、オジマンディアスが喜んだ。
「いよし余が許そう! 死ねランサー!」
喜んだ拍子で酷いことを言っている。
「テメーら人で遊んでんじゃねぇぞ!!」
その叫びを聞いて皆笑いだした。
クーフーリンは本気で死にかけてるけど、まぁ大丈夫だろう。
ただこの空から剣が降ってくる光景を見慣れていなかったロキ神は目を剥いて愕然としていた。
「なんなんやこれ!?」
「さぁ、なんなんでしょうね……」
皆と散歩している間に全てを諦めたのか、ヴェルフの目は冷たかった。
「っと、俺はこの辺りで失礼するぜ」
「え? これからママのご飯だよ? 食べていけばいいのに」
「いやこれからちょっと用事があるからよ」
「そっか、分かった。今度お礼に行くね」
「ははっ、だから良いって。またな」
ヴェルフが片手を挙げて去っていく。
「ロキ神は来るの?」
「当たり前やろ。あんだけ美味い飯美味い飯言われたら食べたなるわ!」
ということでギルガメッシュに先導されてぞろぞろと僕たちは新たな拠点へ向かうのだった。
おらに……文章力を……