ダンジョンにサーヴァントを連れて潜るのは間違いな気がする   作:キョウさん

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新しくなった四話に合わせて修正、あと表現を一部変更しました


5話―冒険者に―

「で? 説明してもらおうか?」

 

「かくかくしかじか」

 

「今そんな冗談を言うつもりなら本気で覚悟してもらうからな」

 

マジと書いて本気と読む目をしている孔明先生は、閉じた扇子で手のひらを鳴らした。

エミヤママとマシュまで明らかに激怒しているし、僕の罪がどれだけ重いことか。

だが僕だって負ける訳にはいかないんだ。

 

「ということで続きは回想で!」

 

勿論僕が口頭で説明するんだけどね。

 

~~~~~~~~

 

ウラノス神との面談が終わったのは、日も上りきった頃。

外に出てきた僕を出迎えたのは意外にもロキ神だった。

 

「お疲れさん」

 

「おつー」

 

「かっるいな」

 

旧来の友人のようなノリで挨拶する。

ロキ神の雰囲気が柔らかくなっているので、少なくとも僕と敵対する気は無いことが分かってちょっと安心した。

 

「どうやった?」

 

「ウラノス神と友達になりました」

 

「そりゃ良かったな。飯でもどうや?」

 

「まさか僕に禁断の恋を?」

 

「アホ。朝の詫びでもしよ思っただけや」

 

頬を掻いて少し照れくさそうにしている。

ロキ神はしっかりケジメをつけるタイプなんだなぁ。

僕の好感度高まり。本当に攻略されちゃうよ。

でも詫びなんて別に良いのになぁ。

 

「でもお腹すいたのでありがたくいただきます」

 

「おう、この辺りで美味い飯屋あんねん」

 

行こか、と歩き出すロキ神の後ろを着いていく。

かなり注目されている中を歩くのはちょっとだけ辛かったけど、目的地はそこまで遠くはなかった。

十分ほど歩いたくらいでロキ神がここや、と指差した店は、そこそこ賑わっている大衆酒場のような場所だ。

看板には僕の読めない字で【豊饒の女主人】と書かれている。

店の前で呼び込みをしていた猫耳の美少女が僕達に気付いて客寄せの看板を持ったまま近寄ってきた。

 

「そこなカップル、よければうちの店に寄ってかないか?」

 

「そのつもりやで。てかなんや、新人か」

 

犬のような手足、獣耳、メイド服。

どこからどう見てもタマモキャットだった。

 

「おう! 世を渡り愛知らぬ心の荒んだ者たちに猫の手を、タマモキャットとは我のことだぜ! んで飯か? 美味い飯あるぞー」

 

「うちはここの常連やから案内されんでも分かるで」

 

「それなら良かった。おお?」

 

あ、僕に気づいた。

タマモは何度かパチパチとまばたきをし、そうしてから看板を放り投げて僕に抱きついてきた。

 

「ご主人!!」

 

「タマモも来てたんだね」

 

頭を撫でてやると、僕の胸にぐりぐりと擦りつく。

 

「ずっと探していたワン! タマモがいてご主人がいないなんて話も無いと思ってな!」

 

「痛い痛い痛い痛い」

 

ミシミシと僕の背骨が悲鳴をあげた。

それに気付いて「おおっ」と手を離してくれた。

 

「つい嬉しさを過剰摂取しちゃったぜ。大丈夫か?」

 

「なんとか……」

 

「こいつもお前の仲間なんか」

 

「うちの厨房担当の一人、タマモキャットだよ。彼女がいなかったら僕らは修羅に落ちていた可能性があるくらいに命の恩人なんだ」

 

誇張じゃなくマジでそうなのだ。

今でこそエミヤがメインで頑張っているが、エミヤが僕達の所に召喚されてきたのは第五特異点を修復した直後で、対してタマモは一番初めに来てくれた最古参。

料理のできるサーヴァントは今は数多くいるものの、タマモがいなければカルデアは終わっていたかもしれない。

マシュを除けば、唯一本音で話せる相手でもある。

 

「それでご主人、ここはいったい何なのだワン?」

 

「異世界ということしか分かってないワン」

 

「なるほどつまりあれだな? 異世界ハーレム物だな?」

 

「僕は異世界に行く必要無かったでしょ」

 

こう言うのもなんだけど、僕は複数のサーヴァントから好意を寄せられているし。

 

「ここで話すのもなんや、注目も浴びてるしとっとと中入らんか?」

 

「おおっそうだな! 二名様ご案内だワン!」

 

僕の手を握ったままタマモが店内に入っていく。

中に入ると騒がしかった声が一気に静まった。

タマモは気にせず空いている席に僕を座らせて、「待ってろ!」と笑って行ってしまう。

 

「なんや居心地悪いな……まだ今朝のこと引きずっとんのか?」

 

周りの反応に不快感を滲ませながらロキ神も席に座る。

そして早速というか、ロキ神はギルドでのことを聞いてきた。

 

「それでウラノスとは何の話したんや?」

 

「ギルドに所属するように話をされた、それは多分ロキ神も薄々気づいてるよね」

 

「そらな。ギルドに報告したのは私やし」

 

「だと思った。アーラシュのレベル知ってるのは僕らとロキ神しかいない筈なのに、あれだけ警戒されちゃね」

 

「そっちは私も予想外やったで? 見たまま伝えたけど、まさか強制任務って形であんだけ数揃えるとは思わんかったわ」

 

「この街を思ってのことなのは分かったけどね。で、僕らの世界のことを話してダンジョン行く気はそんなにないからギルドにも所属しません、って言ったのね」

 

「お前異世界から来た言うとったなそういや」

 

「ウラノス神もロキ神と同じで僕のことすぐ信じてくれたよ。まぁそれで、遠征は免除するからギルドに所属しろって言われてそこで手を打った訳だよ」

 

「なんやその条件羨ましい」

 

「そうそうロキ神に相談あるんだけどさ」

 

ウラノス神にあの話を聞かされてから考えていたことをロキ神に頼もうとした。

だが横からドンッと太い腕が僕らの机を叩いて中断されてしまう。

 

「あんたがタマモの主人ってやつかい」

 

僕よりも一回りは大きい女性が睨み付けるように僕を見た。

うっ……と僕は言葉に詰まる。

僕は今まで色んな特異点に行き、色んな敵と戦ってきた。

度胸はついたと自負しているし、仮に僕のサーヴァントが本気で僕を殺しに来たとしても恐怖することは無いだろう。

だがどうしても慣れないものがあった。

それは年上の女性だ。

ただ年上だから弱い、という訳ではない。

 

「は、はい!」

 

「タマモを連れていこうって話、待ってくんないかい? タマモの料理の腕はかなりのものでね、今逃げられると店の損失になっちまうんだ。人気もあるしね」

 

こういう、なんというか母親的な雰囲気の女性が苦手なのだ。

威圧的に来てる訳では無いのだが有無を言わさない迫力がある。

いつまで経っても慣れる気がしない。

 

「えーと……僕は別に良いんですけど……タマモがどうしたいかで決めてもらえれば」

 

「そうかい!」

 

「アタシ的にはご主人と一緒にいたいんだけどもなー。そこまで言われちゃタマモ魂に火がつくワン。ご主人、構わないか?」

 

「うん。迷惑はかけないようにね」

 

「あたしはミア・グランド、ここの店主だ。悪いね無理言って」

 

僕の背中をバシバシ叩いてくる。

タマモが役に立てるなら僕はそれでいいと思う。

寂しく無いと言えば嘘になるが、タマモのことを必要としてくれる人がいるのなら僕の心情なんて二の次だ。

 

「ただタマモとも今後のことを話したいので……一時間ほど時間をいただいてもよろしいですか?」

 

「そろそろ休憩の時間だし構わないよ。今回のお代はこっちで持つから、好きなもん食べていきな! ロキ様も、邪魔して悪かったね」

 

笑いながら去っていく豪快な女主人を見送ると、タマモも僕の隣に座った。

そしてすぐに従業員の一人が皿を持ってくる。

カルデアでたまに作ってもらっていたオムライスがほかほかと湯気を上らせていた。

 

「タマモ特性オムライスだ、よく味わえ!」

 

「おお、いただくで」

 

そう言うと一口食べて「美味い!」とすぐにがつがつ食べ始めた。

 

「それでタマモ、いつこっちに?」

 

「昨日だぞ。お日様の気持ちいい場所で目が覚めてな」

 

「一人で?」

 

「ヴラドとすまないさんが一緒にいたが、太陽の光が嫌だと逃げるヴラドについて行ってしまった。アタシは人参を求めてさ迷っているところを店主に拾われたという話だ!」

 

受肉しているとは言っても苦手なものは苦手なんだな。

ヴラドは吸血鬼だしそれもそうか。

 

「ご主人は今なにをしているのだ?」

 

「神になりました」

 

「神になったのか! 流石ご主人だな!」

 

疑うことなく笑顔で僕の手を握る。

タマモはどこまでこの世界の事情を知っているのだろう?

……タマモはなにも知らなくても僕の言うことを疑わないか。

 

「じゃあちょっと契約しようか」

 

「勿論それは構わんが、アタシはダンジョンに行く暇は無いぞ?」

 

やべぇ結構事情把握してるっぽい。

流石謎のキャット。

 

「あっ! ええなええなー! どうせその子も強いんやろ?」

 

「戦闘は専門外だワン。美味い飯を作り家を守る、それがタマモクオリティ」

 

嘘やー! と叫ぶロキ神を放っておいてタマモとの契約を結ぶ。

ステータスは暇なときにでも見せてもらおう。

さて冷めないうちにオムライスを……とその前に。

 

「それでロキ神、お願いなんだけども」

 

「あぁせやったな。なんや、言うてみ?」

 

「僕をロキ神のファミリアに入れて欲しいんだ」

 

ふんふんと聞く体制になって頷いていたロキ神の動きがピタッ、と止まった。

ゆっくりと顔をあげて、驚愕した表情で僕を見る。

 

「………………は?」

 

人影さんと同じ反応だ。

だがすぐに何故か頭を抱えて机に突っ伏した。

 

「ああああああああああ! そういうことやったんか……!なんで気付かんかったんやアホ……!」

 

「何やらうちひしがれている様子。ご主人は人心を惑わす天災か?」

 

「そんなつもりはないんだけれども。ロキ神、どういうこと?」

 

「下界の住人が嘘をついているどうか、神なら分かる。そや、最初に会ったときに違和感はあったんや……お前が神だと分かったからなんも疑問に思っとらんかった……」

 

「僕が嘘をついていないと分かってた、ってことか」

 

「よく思い出してみればあん時、お前の眷属もまったく嘘ついとらんかったし……ウラノスもそれに気付いたっちゅうことか。あーくそ、冷静さを欠くな口酸っぱく言ってきた自分がそうなってたなんて、笑えんわ……」

 

「まぁまぁ。それでどう? 雇ってみない?」

 

「アタシが言うのもなんだが、ご主人は戦闘は出来んぞ!」

 

本当にタマモが言うことじゃなかった。

正しい情報は大切だけどさ。

僕だってあれだよ? 修羅場潜り抜けてるから多少は心得とか身に付けてるんだからね?

まぁサーヴァント達に比べたら、そりゃなんの役にも立たないけども。

 

「いやでも僕のガンドは凄いんだよ! 褒められたし!」

 

「急に騒ぐなや。まぁええよ、これも何かの縁やし……」

 

「『それにこいつと契約すれば眷属達も抱き込めるしな』」

 

「心読むなや!」

 

僕のことをからかうサーヴァントが日に日に増していくせいで、自分の身を守るために学んだ技術の一つが読心術である。多分ランクはCかDくらい。

ロキ神には悪いけどこれも処世術の賜物なのだ。

ほれ、と差し出された手を握ると速やかに契約を完了させた。

 

「………………」

 

「それにしてもまさか神が冒険者に……ん? なんやそんな怖い顔して」

 

おっと危ない危ない。

ちょっとだけ気が抜けてた。

 

「いやぁわーいって感じですよもう。なんてったって」

 

「ご主人はいつも戦えない自分を嫌っていたからな」

 

マシュにも言ったことのない僕の本音をあっさりとぶっちゃけられてしまった。

タマモめ……でもサーヴァントのなかには薄々と感付いている人も多いから……別に良いし……。

くそぅ昔の僕よ、何故タマモに泣きついたのだ!

ギルとアーラシュにはバレバレで罵倒(ギル)と慰め(アーラシュ)を受けていたりするけどそれはそれだ。

 

「そらあんな連中に囲まれてたら惨めにもなるわ」

 

「言わないでよ……」

 

「んじゃこのあとうちの拠点に行くか」

 

「うっす」

 

期せずして僕はきっかけを得られたんだ。

チャンスは最大限生かすさ。

隣でニヤニヤ笑っているキャットがムカつく可愛いのでチョップを落としておいた。

 

~~~~~~~~

 

藤丸 立夏

Lv.1

力:I59

耐久:H195

器用:I47

俊敏:H156

魔力:H131

《魔法》

【変化B】

・性別を変更できる

【ガンドEX】

・相手をスタンさせる

《スキル》

【大英雄】

・仲間の能力を上昇させる

【縁故収集】

・人との縁が強まる

【虚空投影】

・強く想う相手を投影する

 

食事を終えてロキファミリアの拠点に来た僕は、ロキ神に渡された僕のステータスが写された紙を見てため息をついた。

ある程度期待していただけにこのガッカリ感と言ったら無い。

それでもロキ神がかなり驚いていたからこれでも凄いんだろう。

 

「大英雄……なんつーレアスキル持ってんねんお前」

 

僕もそう思う。

大英雄なんて僕が得られる称号だとは思えない。

そりゃ戦場で指揮したりするし、可能ならサポートもするけど。

 

「このスキル、かなり昔に持ってた奴がいるらしいけど、今は見かけんようになったわ。実績が必要……って噂しか聞かんし当然っちゃ当然やけど」

 

「流石世界の救世主」

 

「誰が聞いても冗談や思うやろけどな」

 

「この基本的な能力はどうすれば成長するの?」

 

「力なら攻撃、耐久なら防御ってな具合に、能力が向上しそうな行動をすれば上がってくで。早い話攻撃受けまくれば耐久ばっか上がってくっちゅう話や」

 

痛いのは嫌だな……冒険者も大変だ。

うーん僕の場合魔力が他よりもちょっと高いけど……。

 

「この性別変更できるってなんやねん」

 

「生まれつきの特技みたいなもんだよ。心も身体も女の子になれるんだよね」

 

「お前なんなん?」

 

「両生類かな」

 

「……まぁええわ。このガンドって魔法は聞いたことも見たことも無いわ」

 

「大したこと無い魔法なんだけど、何故か僕のガンドは異常らしいね」

 

あのビースト・ティアマトに最後の足掻きで打ったガンドが効いた時は、その場にいた全員が凍りついたもんなぁ。

一回打つごとに13分のクールタイムが必要だけど、それでも切り札としては十分すぎる。

 

「つーかレベル1からスキル三つもあるし、全部レアスキルやしなんなんやほんま」

 

「異分子ってやつなんやろなぁ」

 

「真似すんな」

 

コツンと頭を叩かれる。

 

「縁故収集と虚空投影ってのが何なのかは分からんけど、大英雄……このスキル持ってるゆうだけで第一線に投入してもええくらいやな。お前これからどないするんや?」

 

「ダンジョンに入ってみたいなぁ」

 

「ん? ええんか?」

 

「皆には怒られると思う。けど……僕は戦えるようになりたい」

 

マシュが僕の前から消えた時。

ロマンと別れた時。

僕は無力だった。あの場に僕がいることが不思議なくらいに。

もうあんな思いは御免だ。

まっすぐロキ神を見つめると、ロキ神は口角をつり上げた。

 

「分かった。んなら明日さっそく、うちの新人達とダンジョン行ってこいや」

 

~~~~~~~~

 

「というのが全貌でございます」

 

一部を誤魔化しつつ、先ほどまでの出来事を思い出しながら説明した。

話をしている最中にもどんどんと圧力が強まり、最終的に僕は今土下座をしている。

静謐とアーラシュだけが僕の傍にいてくれているが、旗色は悪すぎた。

 

「まぁなんだ、マスターも男の子ってことだ」

 

「こんな馬鹿庇うなよアーラシュ。もう地下牢にでも監禁しとくしかないんだから」

 

「あまりにも重たい刑罰過ぎて僕泣きそう。そんなに悪いことしましたか……?」

 

「当たり前じゃないですか。当たり前じゃないんですか?」

 

ああマシュが笑いながらキレてる。

これは本気で怖いやつだ、洒落にならないレベルで。

でも僕にだって男の子の意地があるんだぞ!

 

「ちょっと待ってよ。そりゃ勝手に行動した僕は悪いけどさ、現状手掛かりがないんだからダンジョンを探すのもありだと思うんだ」

 

「お前が行く意味無いだろ」

 

流石孔明先生、見事な論破でございます。

ふん、朝になったら勝手に出ていくもんね。

 

「というわけで清姫、静謐。今日は朝まで馬鹿の部屋に一緒にいてくれて良いぞ」

 

「おまかせあれ!」

 

「分かりました……!」

 

「おのれ孔明! 謀ったな!?」

 

そんなことしたら色んな意味で逃げ道が無くなるだろ!

 

「安心してください先輩。私も一緒にいますから」

 

マシュの後ろには巴とエミヤまでいる。

僕のダンジョンデビューは始まる前から人生ごと終わりかけていた。

 

 

 

なんてな!!!

 

翌朝。僕は拠点から無事に脱出することに成功していた。

馬鹿め孔明、僕を甘く見すぎたな!

とはいってもここまで上手く行ったのは勿論協力者のおかげだ。

 

「ありがとう、静謐、それにエミヤ」

 

「いえ……マスターのお願いでしたから」

 

「まったく……後が怖いな」

 

そう……エミヤを懐柔することに成功した僕に敗北はなかった。

説得には苦労したが、僕の本心を少しだけ打ち明けたら渋々と了承してくれたのだ。

といっても本日のダンジョン潜りにこの二人が着いてくることになってしまったが……後ろにいつもキングハサンがいるんだ、今さら何人増えようが関係ないだろう。

 

「自分を鍛えたい、というのは良いことだマスター。普段私は君のことを何か考えているように見せかけて何も考えていない、ただ状況に流されて楽しみたいだけの男だと思っていた」

 

エミヤから見れば僕はそんな奴だったようだ。

昔の僕を知ってる人は絶対にそんな風には言わないから新鮮だな。

途中から開き直ることにした結果今の僕がある。

 

「向上心があるのは結構、だがマスターは戦闘経験が皆無。確かに時折サーヴァントと訓練はしていたようだが、だからと言って」

 

「もう昨日いっぱい聞いたってば。分かってる分かってます無茶はしません勝手な行動もしません」

 

僕を心配してくれるのはありがたいけど、少しでも皆に追いつく為なら無茶をするくらいじゃないと無理なんだ。

まだ僕を疑っているような視線を向けてくるエミヤから逃れるように、僕はロキ神との待ち合わせ場所に向かった。

 

 

 

「おう、おはようさん」

 

先に来ていたロキ神が手を挙げて挨拶をしてきた。

なので僕はハイタッチしながら挨拶する。

 

「おはよう」

 

「なんでハイタッチやねん」

 

「なんとなく」

 

「マスターのやることに一々反応していては日が暮れてしまう。ダンジョンに行くのだろう?」

 

ん? とロキ神がエミヤと僕の後ろにいる静謐に目をやった。

 

「確か……エミヤ言うたか。昨日は悪かったな」

 

「気にするな。そちらの行動は当然のものだった」

 

おう、と軽くロキ神は受け入れた。

 

「にしてもお仲間連れてきたんなら必要なかったかもな」

 

ロキ神の後ろにいる少女達にそう告げる。

一人だけ、異彩を放っている美少女と目があった。

というか昨日エミヤとやりあった無表情少女だった。

何を考えているのかまるで読めないその少女は、僕を観察してからすぐに興味が失せたように視線をエミヤにやる。

 

「くそぅイケメンは滅びろ」

 

「私を見ながらふざけたことを言わないでほしいのだが」

 

「紹介するわ。こっちの三人はお前と同じ最近うちのファミリアに入った新人や。挨拶せぇ」

 

「ベルラですわ」

 

「アリスです……」

 

「アティーです!」

 

年齢は僕よりも下に見えるけど、こんな子達でもダンジョンに潜るのか。

三人の挨拶に、僕も紳士的に返さなければいけないな。

 

「やったー! 可愛い女の子達とダンジョン潜りサイッコー!!!!」

 

僕はどうやらテンションが上がってしまっているようだ。

よろしく~と軽く挨拶しようとしたのに思ってもいない言葉が僕の口をついて出てしまった。

ああ、僕を見る視線の冷たさと言ったらない。

 

「一応言っとくけど……うちの眷属に手ぇ出したら……」

 

「人の心を縛ることなんて神にすら出来やしない。特に恋心なんてのぁなぁ!」

 

恥ずかしさを誤魔化すために恥の上塗りまでしてしまった。

誰か僕を殺

 

「あの……私、口の軽い男性は……嫌いなので……」

 

「私も知性の感じられない男性は無理ですわね」

 

「私はー……好みのタイプじゃないかなぁ」

 

殺された。バッサリ殺されたよ今。

男として何か大事なものを失いました。

 

「どうしたマスター? 足が震えているぞ?」

 

エミヤの煽りにも動揺しない鋼の精神力を僕は手にいれたんだ……またひとつ強くなった。

 

「ったく朝っぱらから疲れるやっちゃな」

 

苦笑しながら僕の頭を撫でる。

それからもう一人、僕の発言を聞いても興味無さそうにしていた美少女に目を向けた。

 

「っと一人紹介まだやったな、今回の監督役のアイズたんや。レベルは5、昨日エミヤと戦ったんやし実力は分かったやろ。積極的に戦闘には参加しないけど何かあった時はアイズたんに頼れや」

 

なんでアイズ"たん"なんだろう。

とにかくつまらなさそうにしているアイズたんへ僕からも挨拶した。

 

「アイズたんよろしく」

 

「ぶち殺したる」

 

ただ挨拶しただけなのにロキ神の逆鱗に触れてしまった。

なんでや。

 

「まぁ冗談はこの辺にして。僕は藤丸 立夏。最近神になったばかりの新米冒険者、よろしく」

 

「神になった? あの、どういうことかしら?」

 

「あーそうか言っとらんかったな。最近カルデア・ファミリアってのが発足されたのはまぁ知っとるよな? そのカルデアがこいつや」

 

目を丸くして驚く三人はお互いに顔を見合わせる。

 

「でも神は冒険者にはなれないと聞いてますけど……」

 

「そらな。神が神の眷属になるなんて一大事やで。こいつが例外ってだけや」

 

「どこに行っても例外扱いされるんだ」

 

平和な世界で幸せに生きたい。

とりあえず僕の紹介はそんなもので、僕は二人の紹介をすることにした

 

「次はこっちの番だね。こっちがエミヤ、色んな意味で剣の達人なんだ」

 

「達人というほどの腕はないが、知識面で言えば確かに多少の心得はあるな。よろしく」

 

ベルラとアリスが顔を赤くさせてエミヤを見つめている。

嫉妬で人が殺せるならば……僕はエミヤに殺意の念を送る、エミヤは迷惑そうにして僕から目をそらした。

 

「あとこっちのが……あー……静謐って言うんだけど、見ての通りちょっと人見知りなところがあるんだ。良い子なんだけどちょっと特殊な体質でさ。絶対に触れちゃダメだよ」

 

「そんなこと言われてもなぁ。こんな可愛い女の子に触れんな言う方が無理やわぁ」

 

手をワキワキとさせるロキ神、多分冗談で言っているのだろう。

だがこっちは冗談じゃない。

うっかり事故で死なせてしまうなんて事があってからじゃ遅い。

僕は静謐を守るように背中に隠す。

 

「最悪ロキ神死んじゃうから」

 

「急に物騒やな!?」

 

アイズたんの目が少し細まる。

うーん……隠してあげたかったけど、ここで喧嘩になるよりは事前に話しておくべきだよな。

そう考えて口を開こうとしたのだが、静謐が僕の前に出てきてそのまま抱きしめ直した。

 

「……私の身体は全身が猛毒です。足の爪の先から髪の毛一本一本までが生物を死に至らしめる物です。ですから、お願いします。どうか、私には触れないでください」

 

そう言って静謐は僕を抱きしめる力を少し強くさせる。

頭を撫でると僕を見上げて嬉しそうにはにかんだ。

 

「……マジなん? いや、フジマルは触ってるやん」

 

「僕とか、あと一部の人は耐性があるので大丈夫なんだけど大抵はヤバイよ。触れるだけでも動けなくなったりするから」

 

「こわぁ」

 

ロキ・ファミリアの面々は静謐から少し距離を取った。

仕方がない事とはいえ、可哀相だ……「マスターさえいてくれれば良い」なんて言ってはくれてるけど、本当は色んな人と交流したいだろうに。

ロキ神が気の毒そうな視線を静謐に向け、気を取り直すように手をパンパンと叩いた。

 

「よっしゃ、そろそろ時間も勿体無いしダンジョンに……ん?」

 

僕、エミヤを見てロキ神が怪訝そうな表情をした。

ゆっくり僕らの腰の辺りや背中を見る。

 

「自分ら、武器はどないしたん? 防具も無いし」

 

「武器……あっ」

 

忘れてた、僕の武器無いじゃん。

完全に失念してた。

見ればアティーは剣、ベルラは弓、アリスは杖を装備している。

 

「エミヤ、僕の使えそうな武器ある?」

 

「普段私が使っている双剣で良いだろう。多少質を落としてマスターでも楽に取り扱いできるように調整する。……投影、開始」

 

スッ、とエミヤの手に握られているのはエミヤの愛用する干将・莫耶……のちょっと質が落ちたもの。

それを見てロキファミリアの面々が声を上げた。

 

「え? その剣、今どこから!?」

 

「昨日もいつの間にか取り出していた……」

 

それも気にせず双剣を手渡すエミヤ、少しずっしりとはしていたが僕の手にも驚くほどすんなり馴染んだ。

試しに振ってみようと思ったのだが、「借りるで」と横から夫の剣はロキ神に、妻の剣はアイズたんにそれぞれ掻っ攫われてしまう。

二人は不思議そうに剣をしげしげと眺めていた。

 

「こりゃ……ええ物やな。お前が作ったんか?」

 

「それは贋物だ。見様見真似で模倣しただけの型落ち品でしかない」

 

「贋物? これが? そうは見えんけどなぁ」

 

「そう言っていただけるとありがたいがね」

 

僕は自嘲気味に笑うエミヤに思わず吹き出しそうになってしまった。

出会った頃のエミヤならもっと嫌味なことを言ってただろうなぁ。

 

「で、エミヤの方の武器は?」

 

「私にもこれがある」

 

そしてエミヤはいつも使っている版の干将・莫耶を投影してみせた。

僕が持っている物とまったく同じ剣を、また虚空から取り出したエミヤに言葉を失うロキ神。

だが数秒で立て直した。驚いても仕方ない、という心構えが身に付いて来たようだ。

その後静謐を見たが、先ほどの説明を聞いていたからか特に装備には言及することはなかった。

 

「うし……じゃあこれからダンジョンに行ってもらうけど、その前に私から。お前ら四人はまだ新人や、モンスターと戦ったこともない素人や。初めての冒険に気分が高揚するかもしれんけど、良いか? 冒険者は冒険したらアカン。確実に全員で生きて帰ることだけを考えて安全を第一にせぇ。分かったな?」

 

三人がはい! と元気良く返事をした。

冒険者が冒険するな、か。

なんとなくおかしくなって笑ってしまう。

 

「なんやねん」

 

「いや。必ず生きて帰るよ」

 

「おう。私は一緒に行けんけど今回はアイズたんに、そっちの二人もおるから大丈夫やろうけど、それでも何が起こるか分からないのがダンジョンや。十分気を付けぇや」

 

今度は僕も三人に合わせてはい! と声を出した。

いよいよ僕の冒険の第一歩が始まる。

今回でせめて手応えだけでも感じて帰る、それが今日の目標だった。




ぐだ男スキルの名前も適当だし能力も適当
あとオリジナルキャラを出したのはロキ・ファミリアの新人メンバーが本編に出てなかったので仕方なくの措置です
感想や誤字等ありましたらよろしくお願いします
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