インフィニット・ストラトス~白き翼~ 作:ReiFeL@Ayuru
ズワウス登場です!
……でもほんとに少しだけです!
合宿二日目。今日一日は午前中から夜までISの各種装備運用とデータ取りに追われる。特に専用機持ちは大量の装備が待っている。
千「ようやく全員集まったか。――――おい、遅刻者」
ラ「は、はいっ」
千冬に呼ばれ身をすくませたのは、意外にもラウラであった。あのラウラが珍しく寝坊した事にノーランは驚いた。
暫くするとラウラの説明が終わり、千冬は専用機持ちとそうでない者を別けさせ、専用機持ちは少し離れた場所に集められた何故か箒も一緒に。
千「さて、篠ノ之お前には今日から専用―――」
?「ちーちゃ~~~~ん!!!」
ずどどど…………!と砂煙を巻き上げながら人影が走ってくる。ノーランはその人物をみると、ノーランは目を疑った。
ノ「あ、あの人ってもしかして……」
千「………束」
‶天災‶篠ノ之束が満面の笑みを浮かべながら千冬へと飛び掛かっていった。
束「やあやあ!会いたかったよ、ちーちゃん!さあ、今すぐにハグハグしよう!そして愛を確かめ―――ぶへっ」
そんな束の顔面を千冬は片手で掴む。しかも思いっきり指が食い込んでおり、手加減など一切していないようだ。
千「うるさいぞ、束」
束「ぐぬぬっ相変わらず容赦のないアイアンクローだね!」
そして、いつの間にか千冬の拘束から抜け出す束。やはりこの女も只者じゃなかった。
そして、束は今度は箒の方に向く。
束「やあ!」
箒「久しぶりです、姉さん」
千「おい束、自己紹介くらいしろ。うちの生徒たちが困っている」
束「はーい!私が天災の篠ノ之束さんだよー。よろしくねー。ぶいぶい♪」
箒「それで、頼んでいたものは?」
ややためらいがちに尋ねる箒に束の眼がキラーンと光った。
「うっふっふっ。それはすでに準備済みだよ。さあ、大空をご覧あれ!」
ビシッと空に向かって指差す束。その指さす方向を箒を含めノーラン達全員が見上げる。
ズズーンッ!!
ノ「うわっ!」
突如、上空から銀色のコンテナのような物が落下してきた。すさまじい衝撃とともに砂埃が舞う。
次の瞬間コンテナの正面が開き、その中身を表す。そこにあったのは――――。
束「じゃじゃーん!これぞ箒ちゃん専用機こと『紅椿』!全スペックが現行ISを上回る束さんお手製のISだよ!」
束の言葉に呼応するようにゆっくりと銀色のコンテナが開き、真紅の装甲のISが姿を現した。
ノ(いや、ちょっと待て!?今この人、とんでもない事言ったよ!?‶全スペックが現行ISを上回る‶?それってつまり第四世代クラスじゃないか!?)
束の発言を理解したノーランは頬が引き攣るのを感じるがそんな事は関係なく篠ノ之姉妹は作業を進めていく。
そして、後は自動処理でパーソナライズも終了すると告げると束はノーランの方へと顔を向けてきた。
「やあやあ!君だね、ノーラン・デュノア君は?」
『!?』
この時、千冬だけでなく束の事をよく知っている一夏と箒も驚愕した。あの束が自分たち以外に、しかも自分から話しかけたのだから・・・。
ノ「はい、そうですが……?」
束「はぁ、前から可愛いとは思ってたけど、まさかこんなに可愛いなんて思わなかったよ~♪……って違う!
ねぇのーちゃん、のーちゃんのISを見せてくれない?」
ノ「は、はい。わかりました。」
俺は束さんの言う通りにサーバインを展開した。
束「………やっぱり。このISは束さんの作品じゃない。
一体誰が作ったんだろ?」
千「――――なんだと?」
千冬は耳を疑った。いや、千冬だけでなくこの場にいる全員が耳を疑った。
ノーランの持つIS『サーバイン』は束が作ったものではない。それはつまり――――。
千「お前以外にもISを作れる人間がいるというのか!?」
束「どうだろう。少なくともこれは束さんの作品じゃないね。」
ということは最低でも目の前の束を抜いてあともう一人の人間がISを作れるという事だ。
そう考えた千冬は戦慄した。これでは世界のバランスが崩れ去る。
束「でも、その人がどこにいるのかわかんないんだよねぇ」
が、束の言葉を聞き冷静さを取り戻した千冬だったが今度はある疑問を覚えた。
千「何故わからないのだ?お前ならすぐに見つけられるだろう?」
束「う~ん、調べても調べても私以外でISを作ったって人が見つからなかったんだよ~」
説明する束の話を千冬は信じられない思いで聞いていた。
(馬鹿な……ISを作った束でも見つけられないだと?
一体誰なのだ。サーバインを作ったのは)
山「た、大変です織斑先生っ!!」
だが、そんな疑問を打ち消すほど切迫した麻耶の声に千冬は考えるのをいったん止め麻耶へと向き直る。
千「どうした?」
山「こ、これを!」
渡された小型端末の画面を見て千冬の表情が変わる。
千「特務任務レベルA。現時刻をもって対策を始められたし・・・」
山「そ、それが―――」
千「しっ。ここで機密事項をしゃべるな。生徒たちに聞こえる」
山「は、はい。そうですね・・・」
千「専用機持ちは?」
山「一人欠席していますが、それ以外は・・・」
二人の会話は段々と小さくなりしまいには手話での会話に切り替えた。
山「そ、それでは私は他の先生方を呼んできますね」
千「了解した。――――全員注目!!」
麻耶が走り去った後、千冬はパンパンと手を叩いて生徒全員を振り向かせる。
千「現時刻より、IS学園教員は特殊任務行動に移る。今日の稼動テストは中止だ。各班、ISを片付けて旅館に戻るように。連絡があるまでは各自待機しておくように。以上だ!」
突然の中止に生徒たちがどよめくが、そんな生徒たちを千冬は一喝すると生徒たちは蜘蛛の子を散らしたかのように各々行動を始める。
そして・・・・。
千「専用機持ちは全員集合!!織斑、オルコット、デュノア姉弟、ボーデヴィッヒ、凰!――――それと篠ノ之もだ!」
箒「はい!」
気合の入った返事をする箒だが、そんな箒を見て一夏は形容しがたい不安を抱えていた。
千「では、現状を説明する」
旅館にある宴会用の大座敷、風花の間に、教師陣と一夏達専用機持ちが集められた。
照明の落とされた薄暗い部屋の中、ぼうっと空中投影ディスプレイが浮かび上がる。
千「二時間前、ハワイ沖で試験稼動にあったアメリカ・イスラエル共同開発の第三世代型の軍用ISである『銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)』が制御下を離れて暴走。そして監視空域より離脱したとの連絡があった」
いきなりの事で一夏達は面食らってしまう。それはノーランも例外ではなく千冬の言った意味が理解できなかった。
ノ(強奪ならわかるけど暴走?)
千「その後、衛星による追跡の結果、福音はここから二キロ先の空域を通過する事が分かった。時間にして五十分後だ。学園上層部からの通達によって、我々がこの事態に対処する事になった。教員は学園の訓練機を使用して空域及び海域の封鎖を行う。よって、本作戦の要は専用機持ちに担当してもらう」
まぁ、妥当だね……とノーランは内心で同意した。幾らなんでも軍用ISに訓練機で相手は出来ない、なら専用機持ちにやらせた方が勝率は高いだろう。
千「それでは作戦会議をはじめる。意見があるものは挙手するように」
早速セシリアさんが手を挙げた。
セ「目標ISの詳細なスペックデータを要求します」
千「わかった。ただし、これらは二ヵ国の最重要軍事機密だ。けして口外はするな。情報が漏洩した場合、諸君には査問委員会による裁判と最低でも二年の監視がつけられる」
セ「了解しました」
ディスプレイに表示された情報を元に未だに状況が呑み込めない一夏と箒を除き専用機持ちと教員は開示されたデータを元に相談を始めた。
セ「広域殲滅を目的とした特殊射撃型・・・わたくしのISと同じく、オールレンジ攻撃を行えるようですわね」
ノ「いいや、厄介さではセシリアさんのブルーティアーズより上だね。しかもこの特殊兵装・・・俺のISと相性最悪だなぁ」
鈴「攻撃と機動の両方を特化した機体ね。厄介だわ。しかも、スペック上ではあたしの甲龍を上回ってるから、むこうの方が有利」
シ「この特殊武装が曲者って感じがするね。丁度本国からリヴァイブ用の防御パッケージが来てるけど、連続しての防御は難しい気がする」
ラ「しかも、このデータでは格闘性能が未知数だ。持っているスキルも分からん。偵察は行えないのですか?」
ラウラさんの質問に織班先生は首を振る。
千「無理だな。この機体は現在も超音速飛行を続けている。アプローチは一回が限度だろう」
山「一回きりのチャンス・・・。ということは一撃必殺の攻撃を持った機体で当たるしかありませんね」
山田先生の発言に全員が一夏を見る。
一「え・・・?」
鈴「一夏、あんたの零落白夜で落とすのよ」
セ「それしかありませんわね。ただ、問題は―――」
シ「どうやって一夏をそこまで運ぶか、だね。エネルギーは全部攻撃に使うから移動はどうするか」
ラ「しかも、目標に追いつける速度が出せるISでなければいけないな。超高感度ハイパーセンサーも必要だろう」
一「ちょ、ちょっと待ってくれ!お、俺がやるのか?」
『当然』
五人の声が見事にそろった。
千「織斑、これは訓練ではない、実戦だ。もし覚悟がないなら、無理強いは無しない。本来ならノーランが適任だとは思うが・・・・いかんせん機体の相性が最悪だ」
そう、この『銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)』はノーランのサーバインにとって天敵とも言っていいほど最悪の相性であった。スペック的にはサーバインが上であるが、近距離の武装しか持たないサーバインに対し銀の福音(シルベリオ・ゴスペル)は全方位360度の一斉射撃が可能な『銀の鐘』を持っている。しかもこの『銀の鐘』がサーバインの動きを封じ込めてしまう。サーバインはレーダー所かISのハイパーセンサーにすらキャッチされない。だが、そこに360度全方位攻撃である『銀の鐘』を放たれたらサーバインに打つ手はない。もちろん機体の相性だけで勝敗が決まるわけではないがリスクが高すぎる為、千冬はノーランを候補から外した。
一「やります。俺が、やってみせます」
姉の一言に一夏は及び腰だった自分を蹴り飛ばし、確固たる決意をもって返事をした。
千「よし。それなら作戦の具体的な内容に入る。現在、この専用機持ちの中で最高速度が出せる機体はどれだ」
ノ「それなら、俺のサーバインですね。素のスペックでも一夏の白式を凌駕していますしサーバインなら超音速下でも俺を含めて二人までなら飛行できます」
千「ノーラン……だが、お前のISでは……」
ノ「大丈夫ですよ。元々、俺の機体は強襲に向いていますし。それにいろんな意味で俺以上に適任はいないでしょう?」
セ「お待ちください。ならば、わたくしのブルー・ティアーズの方が適任ですわ。丁度イギリスから強襲用高機動パッケージ『ストライク・ガンナー』が来ていますわ。高感度ハイパーセンサーもついています」
千「ふむ……」
セシリアの進言に千冬は指を顎に当てて考える。実力で言えば間違いなくノーランである。だが、セシリアの方は機体の相性と接近戦しかできない一夏との連携も取りやすい。だが・・・。
そこまで考えた千冬は決意を固め二人を見る。
千「よし、ならば―――」
千冬が適任者の名前を言おうとした瞬間、場にそぐわない明るい声が響いた。
束「待った待ーった。その作戦ちょっと待ったなんだよ~~!」
突如天井から合われたウサミミアリスの天災、篠ノ之束博士が現れた。そして、束の登場でノーランは少しびっくりしてしまった。
千「・・・・山田先生、室外への強制退去を」
山田「えっ!?は、はいっ。あの、篠ノ之博士、とりあえず降りてきてください・・・」
千「とうっ★」
くるりと空中で一回転して着地。全員が唖然としている中で篠ノ之束が口を開く。
束「ちーちゃん、ちーちゃん。もっといい作戦が私の頭の中にナウ・プリンティングー!」
千「……出て行け」
頭を抑える千冬。麻耶は千冬に言われた通り篠ノ之束を退去させようとするがするりと躱されてしまう。
束「聞いて聞いて!ここは断・然!紅椿の出番なんだよっ!」
千「なに?」
束「紅椿のスペックデータ見て見て!パッケージなんかなくても超高速機動が出来るんだよ!」
篠ノ之束の言葉に答えるように数枚のディスプレイが千冬を囲むように出現する。
束「紅椿の展開装甲を調整して、ほいほいほいほいっと。ホラ!これでスピードはばっちり!」
ノ(展開装甲!?それが実装されてるってことはやっぱり紅椿は・・・・)
束「説明しましょ~そうしましょ~。展開装甲というのはだね、この天才の束さんが作った第四世代型ISの装備なんだよー」
何でもないように言う篠ノ之束だが、その発言はこの場にいる全員を驚愕させた。
束「はーい、ここで心優しい束さんの解説開始~。いっくんのためにね。へへん、嬉しいかな? まず、第一世代というのは『ISの完成』を目的とした機体だね。次が、『後付け武装による多様化』――――これが第二世代。そして、第三世代が『操縦者のイメージ・インターフェイスを利用した特殊兵装の実装』。空間圧作用兵器にBT兵器。あとはAICにナノマシンを使った武装だね。・・・・で、第四世代っていうのが『パッケージ換装を必要としない万能機』という、現在絶賛机上の空論中のもの。はい、いっくん理解できました?先生は優秀な子が大好きです」
尋ねられた一夏は未だに理解が追い付かないのか、困惑していてなんと返事していいかわからない状態だが、他の人間には嫌というほど理解できた。つまり、簡単に言えば紅椿は現存するISの中で、最強のスペックを持つ機体なのだ。
束「具体的には白式の《雪片弐型》に使用されてま~す。試しに私が突っ込んだ~」
『え!?』
一夏やほかの専用機持ちが驚きの声を上げる中、ノーランはやっぱり・・・と納得していた。
束「それで、上手く行ったのでなんとなんと紅椿は全身のアーマーを展開装甲にしてありまーす。システム最大稼動時にはスペックデータは更に倍プッシュだよ★」
山「ちょっ、ちょっと、ちょっと待って下さい。え?全身?全身が、雪片弐型と同じ?それってひょっとして・・・」
束「うん、無茶苦茶強いね。一言で言うと最強だね」
周りが唖然としている中、ノーランは一人だけ冷静さを保っていた。何故なら、
ノ(サーバインの方が断然性能高いなぁ。)
束が最強と言った紅椿よりもサーバインの方が性能が圧倒的に高かったからだ。
束「ちなみに紅椿の展開装甲はより発展したタイプだから、攻撃・防御・機動と用途に応じて切り替えが可能。これぞ第四世代型の目標、即時万能対応機ってやつだね。にゃはは、私が早くも作っちゃったよ。ぶいぶぃ」
自ら妹が外部から狙われる要因を増やす姉の行動に千冬は頭を抱えた。
束「はにゃ?あれ?何でみんなお通夜みたいな顔してるの?誰か死んだ?変なの」
千「・・・・束、言った筈だぞ。やり過ぎるな、と」
束「そうだっけ?えへへ、ついつい熱中しちゃったんだよ~」
千冬の言葉に悪びれもなく笑う束。
束「あ、でもほら、紅椿はまだ完全体じゃないから、そんな顔しないでよ、いっくん。いっくんが暗いと束さんは思わずイタズラしたくなっちゃうよん」
そう言いながらウインクをする篠ノ之束。だが、一夏はなんとも言えない顔をしている。
束「まー、あれだね。今の話は紅椿のスペックをフルに引き出したら、って話しだし。でもまあ、今回の作戦をこなすくらいは夕食前だよ!」
なんだかもう、一夏なんて何も言う気になれない表情であった。
「それにしてもアレだね~。海で暴走っていうと、十年前の白騎士事件を思い出すねー」
ニコニコとした顔のまま話し出す篠ノ之束。その横で千冬がなにやら『しまった』というような顔をする。
束「しかし、それにしても~ウフフフ。一体白騎士って誰だったんだろうね~?ちーちゃん?」
千「知らん」
束 「うむん。私の予想ではバスト88センチの――」
ごすっ。と鈍い音がした。千冬の出席簿―――ではなく情報端末アタックが篠ノ之束の頭に炸裂していた。
束「ひ、ひどい、ちーちゃん。束さんの脳は左右に割れたよ!?」
千「そうか、よかったな。これからは左右で交代に考え事が出来るぞ」
束「おお!そっかぁ!ちーちゃん、頭いい~!」
束「あの事件では凄い活躍だったね、ちーちゃん!」
千「そうだな。白騎士が、活躍したな………話を戻すぞ。束、紅椿の調整にはどれくらいの時間がかかる?」
セ「お、織斑先生!?」
ノ「織班先生?」
千冬の言葉にセシリアが声をあげ、ノーランが本気か?という顔で問いかける。
セ「わ、わたくしとブルー・ティアーズなら必ず成功して見せますわ!」
千「そのパッケージは量子変換してあるのか?」
セ「そ、それは・・・まだですが・・・」
痛いところを突かれたらしくセシリアが口ごもる。それに入れ替わるように篠ノ之束が前に出る。
束「ちなみに紅椿の調整時間は七分あれば余裕だね★」
千「よし。では本作戦では織斑・篠ノ之の両名による――――」
ノ「待ってください。織班先生、本気ですか?」
千「不服か、ノーラン?」
千冬の決断を遮る形でノーランが千冬に詰め寄る。
ノ「はい。それなら俺と一夏が組んだ方がよっぽど勝算が高いです」
箒「なんだと!?ノーランは私と紅椿のどこが不満だと言うのだ!」
怒りの形相で詰め寄る箒の迫力に負けず、むしろそれ以上に表情を険しくするノーラン。
ノ「不満?俺は君自体に不満があるんだよ、箒さん」
箒「わ、私に?」
ノ「えぇ。もらったばかりの専用機、まともな実戦経験もない素人にこんな大事な作戦を任せられる訳ないでしょ?機体が最強だとしてもそれを操る操縦者が未熟だったら、意味がありません」
一「お、おい、ノーラン……」
流石に言い過ぎだと思った一夏は慌ててノーランを止めようとするが、それより早く箒が噛みついてきた。
箒「わ、私が未熟だというのか!?」
ノ「そうです。この際はっきり言わせてもらいますが、一夏の方が自分を未熟と思ってる分、数段マシです。機体の力を自分の力と考えて勘違いする様な人よりかは、ね」
箒「なっ―――」
ノーランの発言に絶句する箒。が、すぐに顔を真っ赤にしてノーランに掴みかかろうと襲い掛かり、寸での所で一夏を含めた専用機持ち達が割って入る。
一「ちょ、落ち着け二人とも!!」
セ「そうですわ!箒さんもノーランさんも冷静になってくださいまし」
鈴「ちょっと!こんな時に止めなさいよ、二人とも!」
シ「ラン!言い過ぎだよ!」
ラ「大事な作戦前にもめ事を起こすな!」
何とか二人の距離を空けようとする五人と烈火の如く怒り狂う箒、それを冷めた目で見つめるノーラン。そんな専用機持ち達の外側からオロオロする麻耶達教師陣。そんな混沌とする会議室を鎮めるのはやはりこの人である。
千「全員静まれ!!」
ビクッ!!
千冬の強烈な一喝に専用機持ち達だけだ無く麻耶達教師陣もあまりの迫力に一瞬、体が硬直した。
千「篠ノ之、ノーランの言っていたことは事実だ。お前はここにいる専用機持ち達の中で一番未熟だ。その事を踏まえて織斑のバックアップに徹しろ。いいな?」
箒「ッ・・・・はいっ」
箒は‶未熟‶という単語にまたも反応したが今度は何とか堪えることができ、しぶしぶといった感じで返事をした。次に千冬はノーランの方を向き、
千「次にノーラン。大事な作戦前に余計な事を言って連携に支障をきたすようなことを言うな。それに先ほどの発言。余程自信があるようだな」
ノ「……少なくとも、箒さんを出すよりも俺と一夏を出した方が勝率は高いです。それにサーバインの性能は紅椿より数倍高いですから。」
千「なっ?!ノーラン、それはどういう―――」
千冬はノーランの発言が信じられず、真相をききだそうとするが、
山「た、たた、大変です!織斑先生!?」
千「落ち着け。今度はなんだ、山田先生?」
青ざめた表情で詰め寄ってくる麻耶を落ち着かせながら千冬は胸の内から猛烈に嫌な予感がしていた。
山「つ、つい今しがた、入った情報なんですが・・・・突如現れた所属不明の未確認機が迎撃に当たったアメリカ・イスラエル両軍のIS部隊を壊滅させ、まっすぐこちらへと向かっているとのことです・・・」
千「なんだと!?」
麻耶の報告に千冬は柄にもなく驚愕の声を上げた。しかし、それは無理もない。麻耶の報告を聞いて専用機持ち達だけでなく教師陣も驚愕していた。だが、ノーランは違った。
ノ(やっぱり、あれは何かが起こる前兆だったのか)
ノーランは昨日感じた"何か"は今こちらに向かっている未確認機の事だったと理解する。
千「その未確認機の情報は!?」
山「そ、それが・・・・あまりにも一瞬の出来事だったとのことで、詳しい情報はまだ何も・・・。ただ、比較的軽症なアメリカのイーリス・コーリングさんの話によると―――「いきなり地面から光の柱がたったと思ったら中から黒いISが現れて戦闘になった。まるで悪魔と対峙したようだった」―――と」
千「クッ・・・所属不明機の現在位置は!?」
千冬の指示に教師の一人が端末を操作し衛星からの探索を始める。
山「・・・・見つけました!」
千「メインモニターに出せ!」
山「はい!」
福音のスペックデータを写していた空中投影ディスプレイの画面が切り替わり海域の地図が映し出され、銀色の光点とは別に黒い点が猛スピードで銀の光点に近づいてきていた。
千「所属不明機をモニタリングできないか!?」
山「無理です!見失わないようにするのが精一杯です!」
チッと千冬は大きく舌打ちしながら空中投影ディスプレイを睨みつける。
ノ「まずい。このまま行くと、俺達が福音と交戦するポイントで丁度、不明機も福音と接触する……」
ノ(光の柱から出てきた?つまり、アンノウンは【オーラロード】を通ってきたということか!)
千(どうする?……このまま黙ってこの二機が潰しあうのを黙ってみているか?……いや、ダメだ。どちらが勝ってもデメリットの方が大きい。ならば、隊を二つに分けるか?もっと、論外だ。何より、アンノウンの方はアメリカとイスラエルの連合軍を壊滅させるほどの実力者。そんな者を相手にできる奴など……)
思考にふけっていた千冬はノーランを見てにはたと気が付く。
千(いる。少なくとも私以外に、それも専用機を持った実力者が………しかし………)
ノーランと向かい合いながら千冬は悩む。それは教師として、一指導者として言ってはいけない、と。
ノ「そのアンノウンの相手は俺がやります」
一「ノーラン!?」
箒「なっ!?」
セ「何を言ってますの!?」
鈴「ハァッ!?」
ラ「一体何を言っている!?」
シ「ラン……」
山「ノーラン君!?」
ノーランの発言に周りが騒然とし、専用機持ち達と麻耶が詰め寄る。
箒「相手はアメリカとイスラエルの両軍を壊滅させているのだぞ!?」
ノ「大丈夫。簡単には負けないよ」
セ「それならわたくしも一緒に!」
ノ「だめ。奴の性能は恐らくサーバインと同等。大人数はむしろ邪魔になる」
ノーランは周りの意見を悉く切り伏せる。しかし、泣きそうな顔でこちらを窺っているシャルとは一切目を合わせようとしなかった。
千「わかった。アンノウンの対処はノーラン、お前に一任する」
ノ「ありがとうございます」
『織斑先生(千冬姉/教官)!?』
周りの非難の声を聴き流し千冬は苦渋の顔を浮かべながら命令を下す。
一「ちょ、ちょっと待ってくれよ千冬姉!?」
千「織斑先生、だ。だったら織斑、他に何か策があるのか?あるのなら、今ここで言ってみろ」
一「ぐっ………」
姉の非情な決断に食って掛かる一夏だが、千冬は冷徹な表情で一夏を睨み黙らせる。
ノ「心配しないで一夏。確かに単機で軍の特殊部隊を壊滅させたのは驚きだけど、それによって奴もかなり疲労してるだろうからね。案外すぐに終わるかもしれないよ?」
一「でもよ・・・」
ノ「……」チョイチョイ
心配そうにノーランの方を見る一夏の言葉を遮り、ノーランは一夏に顔を寄せるようにジェスチャーをする。
ノ「むしろ、自分たちの……いや、箒さんの事の方を心配して」
一「え?」
ノ「気づいているかどうか知らないけど、箒さんはかなり浮かれてる。注意しないと怪我だけじゃ済まないよ」
一夏にだけ聞こえる声音でそう忠告したのはは一夏の肩をポンッと叩くとそのまま部屋の外へと向かっていく」
ノ「では織班先生。俺は先に出撃の準備をしてきます」
そう言って部屋を出ていくノーラン。それを皮切りに千冬は各員にそれぞれ指示を出す。
全員が慌ただしく行動を開始する中、ただ一人、シャルだけはノーランの後を追っていった。
そして、千冬はあえてその行為を黙認した。
次回ズワウスと接触&戦闘です!
お楽しみに!