インフィニット・ストラトス~白き翼~ 作:ReiFeL@Ayuru
ノーランとアンノウンの戦いが終わり、花月荘の作戦室では――――。
千「………」
作戦開始から三時間以上が経った旅館の一室で千冬は今までで見た事がない程の険しい表情でとても近寄りがたい雰囲気を出していた。
山「織斑先生………」
他の教師陣が近寄れない中、同僚の副担任である麻耶が千冬に声をかけた。
千「山田先生………二人の容体は?」
山「はい。保険の稲干先生の診察によると織斑君は全身に軽度の火傷と打撲、それに爆発の衝撃で後頭部を強く打ったことによる脳震盪が目立ちますが、命に別状はないそうです」
千「そうか。………ノーランは?」
千冬が尋ねると麻耶は途端に表情を暗くし、戸惑いながら、
山「ノーラン君は・・・全身に打撲と肋骨の六番と七番、右腕の上腕骨に罅が入っています」
千「………」
ギリッと千冬が組んでいた腕を音が出るほど強く握りしめた。
山「あの………織斑先生………」
千「なんだ、山田先生?」
麻耶は一瞬、躊躇したが意を決して千冬に進言した。
山「ノーラン君を病院に搬送した方がいいのではないでしょうか?彼は酷い重態です。病院でしっかりとした治療を受けさせた方が・・・・」
千「私も、そうしたいのは山々なんだがな…………そうもいかん」
千冬は忌々しげに窓の外に映る海面を睨みつけながら、言葉をつづけた。
千「例のアンノウンはノーランを狙っている………」
山「それなら此処の方が関係者で固めていますからよっぽど危険が少なく安全・・・・ということですね」
千「ああ」
そこで会話が途切れ、重い沈黙が流れる。それに耐えきれなくなったのか、麻耶が話題を変えた。
山「それにしても……あの二機目のアンノウンは、いったい何者だったのでしょうか?あのアンノウンのお陰でノーラン君を回収できましたけど………」
千「さあな……」
~回想~
ノーランとの通信が一方的に切られ、千冬たち作戦室は大いに焦った。が、ノーランのバイタルデータは常に作戦室でモニタリングしており何か異変があればすぐにわかった。
更に、
千(仮に今、あの混戦状態の他の専用機持ち達を行かせる事は得策ではない)
ノーランと他の専用機持ち達、両方の命を危険に晒すことだと考えた千冬はノーランが無事に帰ってくることを祈りながらメインモニターで激しく動く三つの光点を睨みつけていた。
が、状況は更に悪化した。モニタリングされていたノーランのバイタルデータを写していたモニターが急に歪み、砂嵐が走った。そして、砂嵐が止むとノーランのバイタルデータがかなり危険な状態になっていた。
突然の事に教師陣は騒然となり、千冬は内心で舌打ちした。千冬は自分の迂闊さに腹が立ったが、今それよりもノーランの救出するのが先だと判断し、他の専用機持ち達に指示を出そうとした瞬間、
山「た、大変です!織斑先生!!だ、第二のアンノウンが出現しました!」
千「なんだと!?」
慌てて画面を見ると福音とアンノウン以外にもう一つの光点が出ていた。
第二のアンノウンが現れると、そのまま残りの二機の間を通り抜け、まっすぐこちらに向かっていった。同時にノーランのバイタル反応が第二のアンノウンと一緒に移動していることが分かった。
千「これは………山田先生、医療班を旅館前の砂浜に待機するよう指示してください」
山「は、はい!」
千「それと念の為、デュノア以外の専用機持ち達を旅館前の砂浜に待機させてください。ただし、こちらからの攻撃は禁ずる事」
山「わかりました!」
麻耶に指示を出した後、千冬は現場に向かうため作戦室を後にした。
そして、千冬が砂浜に到着すると同時に、第二のアンノウンが千冬の目の前へと舞い降りてきた。
青色の装甲にオーラコンバーター、二枚の虫の羽の様な
バインダー、鞘に納められたオーラソード、サーバインに似た頭部の角
(形状はどことなくノーランのサーバインに似ているな……)
第二のアンノウンを見て千冬はそんな感想を覚えるが、その手の中に抱えられている人物を見てそんな感想は吹き飛んだ。
千「ノーラン!?」
そこには血塗れでボロボロになったノーランが抱きかかえられていた。
?「……」
第二のアンノウン――――ヴェルビンはノーランをそっと千冬に差し出す。
千「クッ!?医療班!急げ!!」
「は、はい!」
千冬はノーランを受け取ると容体がかなり拙い事がすぐにわかり、医療班を怒鳴りつけるように急かす。
千冬からノーランを受け取った医療班はノーランを担架に乗せ、そのまま旅館へと向かっていった。
ヴ「マスターを、よろしくお願いいたします」
それを見届けたヴェルビンはそう呟くと砂埃を巻き上げあっという間に千冬たちの前から飛び去ってしまった。
~回想終了~
ヴェルビンのことを考えていた千冬は今はそんな事を考えている場合ではないと頭を振って一旦リセットするように頭を振る。
千「それよりも、シャルロットの方はどうだ?」
話題を変えるため、ある意味、もう一人の重傷者の容体を尋ねた。
山「大分落ち着いたようです。今はオルコットさんとボーデヴィッヒさんが付いています」
千「そうか・・・」
千冬は重いため息を着いた。
そう、ノーランの治療中、彼のボロボロの姿を見たシャルロットはそれもこちらが見ていて痛々しくなるほど錯乱した。暴れる彼女を自分と教師陣が取り押さえ鎮静剤を打って何とか落ち着かせることができた。その後、目を覚ました彼女はノーランの前で泣き崩れ、そんな彼女をラウラが慰めていた。
山「シャルロットさんとノーラン君は姉弟でしたから……自分の弟があんなボロボロの姿で帰ってきたのだから錯乱してもしょうがないですね」
千「………ああ」
それだけでは無いだろうな・・・と千冬は考えながら、福音の探索を再開するのであった。
旅館の一室、そこにベッドに横たわる一夏とその傍らで控えている箒がいた。
箒(私の所為だ……)
戦闘中にリボンを無くし、普段まとめられている髪は今は力なく垂れていた。
箒(私がしっかりしないから、一夏がこんな目に!!)
ギュッとスカートを握りしめる。その色が白く色を失うほど力強く握りしめた。
千『作戦は失敗だ。以降、状況が変化すれば招集する。各自自室で待機していろ』
戦闘空域から何とか戻ってきた箒に待っていたのは、千冬のそんな言葉であった。そして、一夏の治療を指示してすぐさま作戦室に向かっていった。叱責されなかった事が箒には一層つらかった。
箒(私は……どうして、いつも………力に流されたしまうんだ)
そして、箒は不意に作戦前にノーランに言われたことが脳裏によぎった。
『えぇ。もらったばっかの専用機、まともな実戦経験もない素人にこんな大事な作戦を任せられる訳ないでしょ?機体が最強だとしても、それを操る操縦者が未熟だったら、意味がありません』
『そうです。この際はっきり言わせてもらいますが、一夏の方が自分を未熟と思ってる分、数段マシです。機体の力を自分の力と考えて勘違いする様な人よりかは、ね』
箒(全くその通りだ……!!)
そしてそんなノーランは自分のミスの所為でアンノウンと福音の二機を同時に戦い、重傷を負ってしまった。
シ『ラン………?ラン!?いや、いや――――イヤァ!!ラぁぁぁぁン!!?』
ボロボロのノーランの姿を見て錯乱したシャルロットの姿が今でも脳裏に焼き付いている。
箒(私は・・・もうISには・・・・)
箒が一つの決心を決めようとした瞬間、バンッ!と扉が勢いよく開いた。しかし、箒はそこに向く気力はない。
鈴「あー、あー、分かりやすいわねぇ」
遠慮無く入ってきた少女――――鈴はうなだれる箒の隣までやってきた。
箒「………」
鈴「あのさぁ・・・一夏やノーランがこうなったのってあんたの所為なんでしょ」
鈴の発言に箒の肩はビクッと震えた。
箒「………」
鈴「ったく、ノーランの言ってたとおりじゃない。で?落ち込んでますってポーズ?――――ざっけんじゃないわよ!!」
突然烈火の如く怒りをあらわにした鈴は箒の胸倉をつかみ無理やり立たせた。
鈴「やるべきところがあるでしょうが!今!戦わなくていつ戦うのよ!!」
箒「わ、私は……もう、ISは……使わない」
バシンッ!!
鈴の渾身のビンタが箒の頬に炸裂し、支えを失った箒は力なく倒れる。
鈴「甘ったれてんじゃないわよ!専用機持ちっつーのわね、そういう我儘が許される立場じゃないのよ!それともアンタ――――」
鈴はグイッと箒を締め上げるように振り向かせ額同士がくっつく程、顔を近づけその熱く滾った闘志の瞳で箒の瞳を直視する。
鈴「ただの臆病者なの?」
その言葉で、箒の燻っていた瞳に力が宿った。
箒「なら、どうしろというんだ!?もう敵の居場所もわからない!戦えるなら、私だって戦う!」
自分の意思で立ち上がった箒を見て鈴はふうっとため息を吐いた。
鈴「やっとやる気になったわね。遅いのよ、まったく」
箒「な、なに?」
鈴「場所ならわかるわ。今ラウラが―――」
言葉の途中でドアが開いた。そこに立っていたのは黒い軍服を着たラウラであった。
ラ「出たぞ。此処から30キロ離れた沖合に目標を確認した。ステルスモードに入っていたが、どうも光学迷彩を持っていないようだ。更に衛星による捜索も駆使した結果、ノーランと第二のアンノウンによってつけられた傷はまだ修復されていない。叩くなら今だ」
鈴「さっすが、ドイツ特殊部隊。頼りになるわね」
ラ「ふん。そう言うお前はどうなんだ?」
鈴「当然、甲龍の攻撃特化パッケージはインストール済みよ」
セ「こちらも終わりましたわ!」
シ「………」
声高々と部屋に入ってきたのはセシリアとその後ろに続くようにシャルロットが立っていた。
箒「しゃ、シャルロット………」
シ「………」
箒は彼女を見た瞬間、先ほどの彼女の取り乱した姿が脳裏によぎり、先ほどまで瞳に滾っていた闘志の炎が一瞬で鎮火してしまった。
鈴「………箒」
後退ろうとする箒を鈴は押し止め厳しい視線で彼女を見つめる。
その瞳は逃げるなっとただそれだけを語っていた。
その瞳を見た箒は少しの間、戸惑うが意を決して彼女に話しかける。
箒「シャ、シャルロット……。その………ノーランの事は、その………すまなかった」
謝罪し深々と頭を下げる箒。だが、シャルロットは何の反応も示さない。疑問に思い顔をあげてみて彼女の顔を見た瞬間、後悔した。
何故なら前髪の隙間から見えた彼女の瞳は誰も映していないのだから。まるで底の見えない暗闇の様であった。その目を見た瞬間、箒は生まれて初めて本能的な恐怖を味わった。
箒「しゃ、シャルロット……?」
シ「だいじょうぶだよ」
不安になって箒は再度、シャルロットを呼ぶと。シャルロットは微笑みながら答えた。
シ「ランは大丈夫。だってランは僕の大事な大事な大事な大事な大事な大事な大事な弟だもの。あんな木偶人形なんかにつけられた傷なんてすぐに治るんだよ?でもでも、僕はランが傷つけた木偶人形を許せないんだ。許せるはずないよね?だからさ、僕もあの木偶に同じ事をするんだ。ううん、同じじゃないよね、ランが受けた痛み以上の事をやって造られたことを後悔するほどズタボロのスクラップに変えなきゃ。そうじゃないと不公平だよね。ね、箒」
箒「あ、ああ」
普段の彼女の向日葵の様な笑顔。しかし、どこか作り物めいた無機質さがあり、なにより目が一切笑っていなかった。何より細められた瞳には狂気の光とどす黒い殺意の闇が混ざっていた。
海上で捕捉したズワウスを取り囲む5人の少女達。
ラウラの『シュヴァツェア・レーゲン』には砲戦パッケージ『パンツァー・カノニーア』、セシリアの『ブルー・ティアーズ』には強襲用高軌道パッケージ『ストライク・ガンナー』、鈴の『甲龍』には機能増幅パッケージ『崩山』と、それぞれの機体には今回の臨海学校に於いて試験予定だった特殊パッケージが装備されている。
シャルロットの『ラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡ』も例外ではなく、実体シールドとエネルギーシールドを追加搭載する専用防御用パッケージ『ガーデン・カーテン』を更にウィナー家お抱えメカニック、ハワードが強化改修を施して二種のシールドをビットにして防御力をそのままに機動力を上げ、専用の武装を追加して火力も上げることに成功した『ガーデン・カーテンVer.HA』。箒もまた、膨大なエネルギー消費の原因たる展開装甲の一部を封印した『紅椿』を身に纏っている。
ラウラが先制の砲撃を行い、シャルロットが彼女の盾役となり、セシリアが牽制して箒と鈴が追撃するという作戦。
海中に潜んでいた箒と鈴の連携攻撃を食らったズワウスはダメージをほとんど受けておらず、まだまだ余裕そうだった。ヴェルビンはというと、5人の一斉攻撃に乗じて戦線を離脱、そのままどこかへと消えていった。
連携攻撃が一段落し、空中で5人と1機が空中で睨み合う格好となった時。
シ「うふ、うふふふふふふっ」
ラ「しゃ、シャルロット?」
突如、シャルロットが笑い出した。しかもただ笑ったのではない。底冷えするほど冷たく昏い嗤い声だった。隣にいたラウラは間近で彼女の顔を見た時、背筋に氷の塊を突っ込まれた気がした程、背筋が凍った。
シ「アハ、アハハハハハハハハハハハハハハハ!!」
そして、それは箒たちも同じであった。のっぺりとした平坦な笑い声、それでいて昏く重い嗤い声に聞いてるだけで震えが来る程であった。やがて、笑い声がピタリと止むと人形のような無表情のまま両腕にダブルガトリングガンを呼出して銃口をズワウスに向けてただ一言。
シ「Mourir(死ね)」
その言葉と同時に轟音と共に両腕のガトリングが火を噴いた。
シャルロット達が福音と激闘を繰り広げている中、意識を取り戻したノーランが最初に見た景色は青空であった。
ノ「ここは………どこ」
上半身を起こして辺りを確認するが、そこは一面花だらけ。ノーランはこの場所を知らなかった。
?「大丈夫か、ノーラン」
ノ「ふぇ?」
後ろに向くと、そこにはローブで顔を隠した女性が立っていた。
ノ「あ、あなたは……」
サ「おっと、この姿で会うのは初めてだったな。私はサーバイン、お前の相棒だ」
そう言って、サーバインはローブを掴み一気に脱ぎ捨てた。
ノ「…………」
サーバインの素顔を見た瞬間、俺は呼吸が止まった。
腰まである長い銀髪。
ルビーを連想させる赤い瞳。
シミ一つない透き通った白い肌。
服越しでも分かる抜群なプロポーション。
IS学園でも滅多にお目にかかれない絶世の美女が俺の相棒『オーラバトラー:サーバイン』であった。
サ「ノーラン?」
ノ「ふぇっ!?」///
コテンッと可愛らしく首を傾げるサーバインに俺は自分でもかなり動揺しながら返事を返した。
ノ(き、綺麗だなぁ。スタイルも良いし、まさしくお姉さんって感じだなぁ。ていうか、サーバインの胸って織班先生や束さんよりもずっと大きいんじゃ……)
サ「ノーラン………私に何か付いているのか?」
ノ「うぇ!?い、いや?!何でもないよ!!?」///
サ「ふふっ、可愛いなお前は。さあ、お前の傷は治った。お前の友人は今戦っているぞ」
友人?………ってまさか?!
ノ「ねぇ、それってシャル達の事!?」
サ「あぁ。更に先ほど白に選ばれし騎士も行ったぞ」
一夏も!?ボロボロの癖に何やってるの!?
ノ「俺も行かないと!!」
サ「あぁ。だが気を付けろ?それとヴェルビンがお前を待っている。お前の力になってくれる二人目の相棒だ」
意識を失う時、サーバインのそんな言葉が聞こえた。
ノ「ハッ!」
目が覚めたら真っ先に目に映ったのは旅館の天井であった。
慌てて飛び起き、すぐさま首にかけているサーバインを確認すると修復が既に完了していた。
それを確認すると、俺はすぐさま部屋の窓を開ける。
ノ「急がないと間に合わない………!」
サ『む?ノーラン、ヴェルビンが迎えに来てくれたようだ』
ノ「えっ?」
辺りを確認すると、青い光点がこちらに向かってきた。
そしてその光点は次第に大きくなり、俺の前で止まった。
ヴ『マスター、迎えに来たよ♪』
ノ「君が、ヴェルビン?」
ヴ『うん!さ、早く行かないと!』
ノ「うん!』
俺はそう言いヴェルビンに触れる。すると俺はいつの間にかヴェルビンを身に纏っていた。
ヴ『さぁ、行こうマスター!』
ノ「うん!……ノーラン・デュノア、ヴェルビン出ます!』
俺はそのままシャル達がいる海域へと飛びだった
出来ればオーラシュートをさせたいですねぇ。
次回もお楽しみに!