なんとか俺たちの物語はこれからだぜ!エンドを迎えたい 作:お家が恋しい
アットホームな職場でお待ちしています!
時給1,000円〜
ジローがライザーを襲名して数年が経ち、無事八歳の誕生日を迎えることが出来た。
流石に数年も夢の中にいるとは考えにくいのできっと俺は転生?憑依?をしたのだという結論に至った。
御免なさいお父さん。俺はレーサービームで地球を破壊することは叶いませんでした。あれ、地球を破壊するのは青学の部長だっけ?
まあどちらでも良いか。
この体に憑依してからというもの、なんというかもう驚きの連続だった。前世の十数年の常識は、実は常識ではなかったのかもしれない。
まず自分の容姿。日本人とはほど遠い造形は欧米人のようで、そして両親の遺伝子の恩恵を受けて美形である。
前世はまあ……、残念とまではいかないでも(当社比)告白などされたことはなかったので、その点に関しては少し嬉しかった。
そして自分の種族。人間に対して種族などという言葉を用いるとは思わなかった。いや、俺は今は人間ではないのでその言葉も語弊があるか。
この世界には人間以外にも悪魔と天使などがいるらしい。御多分に洩れず俺も悪魔の一人である。
イッチみたいに人外的な選手になろうとしたら既に人外になっていたとか笑えもしない。もしかしたら前世とは違う世界なのか、はたまた俺が他種族の存在を知らなかっただけなのか。今となってはどっちでも良いけど。
……色々なことに対してどうでも良くなり過ぎてるな。
また、悪魔という種族の寿命は人間とは比べ物にならないくらい長いようだ。父も母も俺とは普通の人間の親子ほどの年齢差ではないようで、上に二人いる兄と俺とでも親子以上に歳は離れているみたいだ。
確定の言葉を使えない理由として両親と兄たちが歳というものに対してあまり頓着しないらしく、結局のところ正確な数字を聞けていないことが挙げられる。きっといつか俺も気にならなくなるのだろう。
と長々と話してきたが、気になるのが俺の名前、ライザー・フェニックスである。この名前を何処かで聞いたことのあるような気がする、と小骨が喉に刺さった時のような違和感が続くこと数年、とある日の両親との会話でやっと疑問点が解決した。
「ライザー、お前には婚約者がいる」
「婚約者、ですか? それはどんなお菓子なのですか?」
「婚約者はお菓子ではない。もちろん成長すれば食べる時が──」
「あなた?」
普段から両親から怪しまれないよう、ある程度は無知な子供を演じている。両親は比較的そうではないものの、種族的に人間を見下している中で元人間が悪魔に憑依しましたなんてバレたらどうなるか分かったものではない。殺されるか研究対象となって解剖されるか。きっと良い方向には進まないだろう。
まあ、悪魔だからか分からないけど、比較的早熟な子が多いらしく何の問題もなく生活出来ているのでそこは安心材料である。
とりあえず子供らしく振る舞おうとする俺のテキトーなボケに対して発しかけた父の下ネタを母上は笑顔で制止する。顔が青ざめている父上との二人の力関係がよく分かるのは良いのだけど、その余波が俺にまできているせいですごい鳥肌が立つ。
というか母上超怖い。
父上の馬鹿野郎。
「ゴ、ゴホン! まあ、なんだ。婚約者というのはライザーの将来の結婚する相手のことだ。つまりお前のお嫁さんになる人だ」
「お嫁さんかー」
「現魔王様の妹様だ。今度うちにいらっしゃるからしっかりと挨拶するように」
「分かりました。父上」
それでやって来たのが魔王であるサーゼクス・ルシファー様と、その妹であるリアス・グレモリー。
リアスという名前、また事前に渡された写真に写るその容姿を見てやっと理解することになる。
この世界はハイスクールD×Dの世界なのだと。
しかしながら俺は原作を読んでいなければアニメも視聴していない。高校の寮で同室だった奴が俺に勧めてきていて語るに語る話をBGMとして聞いていたくらいだ。
つまり残念ながらこのハイスクールD×Dという物語においてイニシアチブを取ることは出来ない。何かしら起きても後手に回る他ないのである。
ただ、ここで新たな疑問点が浮かんでくる。俺の記憶が確かなら、原作ではリアス・グレモリーはヒロインの一人のはずだ。それがどうして俺の婚約者なのだろうか。
主人公は人間、いや元人間だったことから俺が主人公でないことは明らかだ。なのに、俺の婚約者という事実がある。
考えられることとして大きく二つある。
一つ目、俺は原作には登場しないオリジナルの存在であり、今現在既に物語が原作から剥離している。
二つ目は原作が始まる頃に俺は既に死んでいるか、もしくは原作が進む中で何かしらの原因で婚約が破棄、解消されることになる。
幾つか考えられることはあるとしても、出来れば死亡ルートでないことを祈りたい。ハイスクールと名がつくくらいだから、物語はリアス達登場キャラクターが高校生の頃がメインのはずである。
今出来ること……、死なないように力をつけること、なるべく危ない方向には進まないよう注意することくらいだろうか。
少しずつこの世界のことが分かってきた上でフェニックスという一族は特殊な存在であることも把握しつつある。
不死鳥の名の通り、回復力が半端ない。ちょっとやそっとの程度では無問題に回復してしまう。うちの特産である“フェニックスの涙”の効力もそれを裏付けるものとなっている。
その特殊能力とも言える回復力は子供の頃から発揮されるものであり、話を聞く限り二人の兄も今の俺くらいの年齢には回復力だけでなく、既に魔力を扱うことに関しても優秀だったようだ。
ところが俺には未だ魔力をまともに扱うことが出来ていない上に、特性とも言える回復力もままならない。例えば怪我をしたとしてもそれが治るスピードは並みの悪魔と変わらない。また、手から出る炎はガスバーナー程度。
理科の実験でしか役に立たない系男子の出来上がりだ。
優秀な兄たちに続くことが出来ていないのを両親はまだ幼いからだ、と楽観視しているが一部からは出来損ないと陰口を叩かれていることを俺は知っている。
これはあくまで俺の推測であるが、多分俺の前世の魂とライザーの魂が合致していないからだろう。前世から剥離した非常識的なことの連続、価値観の違いが魔力などを否定しているために安定した力を発揮することが出来ないのではないか。
心では理解した、と思い込もうとしても本能的なところで拒否をしている。この仮説が正しいとすれば何かキッカケがないと俺は出来損ないのままである。
と、悶々とした現状を嘆きつつも時はやって来る。
「魔王様、遠路はるばるようこそいらっしゃいました」
「お迎えありがとう。フェニックス卿」
あーイケメンだなー。
グレモリー家の一族である証と言ってもよい紅い髪に端正な顔立ち、まさに世の女性の想像するイケメンというものを具現化した存在ではなかろうか。
前世の姉上、イケメンは冥界にいました。ふるってのご来界をお待ちしています。
出迎えをした両親へと挨拶をするとイケメン魔王様はこっちを向いた。威圧感というかイケメンに見つめられたからか、その双眸が直視出来ずに目を逸らしてしまう。
「君がライザー君、かな?」
「は、はい。ライザー・フェニックスです。お会い出来て光栄です」
「ありがとう。しっかりした子だね。卿の教育の素晴らしさが分かるよ」
「お褒めの言葉感謝いたします」
「ではこちらも。……リーア、挨拶なさい」
未来のお義兄様(仮)から視線を下げると隠れるように一人の少女がいた。同じく髪は紅く、人形のような容姿。もし俺が博識であれば万の言葉を用いて彼女の素晴らしさを語れたことだろう。
ロリコンじゃないよ。可愛いものは可愛いと正直に言ってるだけだよ。可愛いは正義だ。伸姉も言ってた(言ってない)。
誰に言い訳してるか分からない俺を他所に、美しき幼女ことリアス・グレモリーは何処か警戒した目をしていた。
「私は婚約者なんて要らない!」
ベーっと舌を出してサーゼクス様の後ろに隠れてしまう。
あれ? もしかして俺は嫌われ者の立場の人間なのか?(もう人間という言葉を指摘するのが疲れた)
よくある物語だと、主人公が勝手に決められたヒロインの許嫁や婚約者を倒したり何なりで破棄させる展開がある。
もしそうならば悪魔という種族上、話し合いとかではなくバトル的なサムシングでボコボコにされてしまう可能性が浮上してきた。そんなことがあった日には俺のあだ名はボコられ熊のボコになってしまう。
いや、西住ちゃんに可愛がってもらえるなら喜んでボコになるのだけど。え? アリスちゃんの方が良いって? そんなのどっちも良いに決まってる。
しかし痛いのは嫌だ。万が一婚約を破棄するにしても何とかして穏便に済ませなくてはならない。
つまり嫌われない程度に付き合いつつ、物語の進行を感じ取った段階でそれとなくフェードアウトする。うん、それが最善だろう。
最終巻で主人公たちを応援する人たちの中に紛れるくらいが俺には適していると思う。
「私はお兄様みたいに自分で決めた人と結婚するの! あなたみたいな人となんて御免だわ!」
うーん。前途多難だ。
青学の部長
→油断せずにいこう
イッチ
→エリア51は今年も健在です
伸姉
→高校生でタバコはやめましょう
ボコ
→ガルパンはいいぞ
以下主人公の前世
家族構成…両親、姉
パワプロ的能力(旧バージョン)
ミート…B(6)、パワー…C(100)、走…A(14)、肩…B(12)、守…B(13)