なんとか俺たちの物語はこれからだぜ!エンドを迎えたい   作:お家が恋しい

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この物語はフェニックス家の平凡な日常を淡々と描く物です。過度な期待はしないでください。
あと部屋を明るくしてテレビから3メートル離れて見やがってください。


ふぇにっくすけ

いつでもそうだ。

──魔王様の妹だから。

──魔王様の妹だもの。

 

違う、私は魔王様の妹なんかじゃない。心の叫びは何処にも届かない。誰もが遠巻きに私を見る。私の機嫌を損ねたら魔王であるお兄様に何を言われるか分からないから、ガラス細工を扱うかのように……、いや腫れ物に触れるように接してくる。

 

誰も私を私として見てくれない。

お兄様のことは好きだけど嫌いだ。お兄様が魔王でいる限り、私は魔王様の妹でしかないのだから。

 

いつかきっと私を見てくれる人がいるのだ。お兄様がお姉様を見つけたように、私もそんな誰かを探している。

 

 

 

 

 

「こんにちは」

 

 

初めて私のことを見てくれた男の子。お父様とお兄様が勝手に決めた婚約者に会うために訪れた家にいたその男の子──ライザー・フェニックス。

 

お兄様に少しビクビクしていたのはやっぱり魔王なのだから仕方ないと思う。でも、私のことは魔王様の妹じゃなくて、リアス・グレモリーとして見てくれたのが分かった。

 

嬉しかった。

そして悔しかった。

 

いつか見つけると決めていた理想の人が、家同士が決めた婚約者だったのだ。そこに私の意思はない。

 

だから素直になれずにツンケンしてしまう。

きっとこれは意地だ。ライザーが悪いわけではない。私がちっぽけな意地を張っているだけ。

 

 

 

 

何処まで走ったのか自分でも分からない。限界以上に走ったせいで胸が張り裂けそうに痛い。

額から落ちる汗を拭い、大きな木に背中を預けて腰を下ろし、手のひらサイズの箱を開けた。

 

ライザーが自分で作ったというプレゼント。白く光るシルバーのリングに私の色──紅いガラスが輝く。

 

 

「綺麗……」

 

 

私にはこんなに綺麗に作るなんてことは出来ない。こんなに綺麗に作れたら人に贈るなんて出来ない。きっと独り占めしてしまう。

 

深く息を吐いて指輪を恐る恐る中指と小指の間の指に通す。予めサイズが分かっていたかのようにピッタリと指にはまった。

 

身体が熱い。

嬉しくて堪らない。幸福感が身体を駆け抜けていく。もし私が天使だったのなら堕天してしまうのだろう。

 

ああ、ライザーにどんな顔をして会えば良いのか。私は素直にありがとうを伝えることが出来るだろうか。顔がニヤけてしまう。

早く彼に会いたい。

 

 

 

 

「おや? こんなところに女子がいる?」

 

 

甲高い、それでいて低い声が背後から聞こえた。おぞましいその声の方を振り返った瞬間全てが吹き飛んだ。

男の人の顔に上半身は熊のよう、下半身は蛇──まさに怪物という言葉が当てはまるその存在の目がぎょろりと私に向く。

 

 

「ひっ──!」

 

「美味しそうだな。食べちゃおうかな?」

 

 

品定めするように頭のてっぺんからつま先まで視線を送るそれを前に私は声を出すことも出来ない。

逃げようとしても膝がガクガクと震え立ち上がることも出来ない。

 

せっかく運命の人に会えたと思ったのに、謝って仲良くなろうと思ったのに。私はこのまま死んでしまうの?

 

 

「そんなの嫌だ……」

 

「どこから食べようかな? 頭かな? いや、でも足から食べて叫び声を聞きながらの方が良いかな?」

 

 

助けてお兄様!

助けてライザー!

 

 

 

 

「人の婚約者に手を出すな、化け物!」

 

 

目を開けるとライザーが私の前に立っていた。必死に走ってきたのか息は絶え絶え、肩で呼吸をしている。

それでもその目は怪物に向けていた。

 

 

「何だお前?」

 

「この子の、リアスの(主人公が現れるまでの)婚約者だ」

 

 

心臓がドクンと強く鼓動する。こんなに危険な状況なのに、私はライザーに惹かれていた。もっと私の名前を呼んで欲しい。

 

 

「気に入らないな。お前も食べてやる」

 

 

鞭のように尻尾を振るい、ライザーの頭を狙わんとばかりに襲いかかる。ライザーはしゃがんで回避すると振り返って私の体を抱き抱えた。

 

 

「よし、逃げるぞ」

 

「え、ちょ──」

 

「サーゼクス様の元まで行けば大丈夫だから」

 

 

きっと彼も怖いはずなのだ。よく見れば手が震えていた。でも私を助けるために必死に力を振り絞ってくれている。そしてそれを悟られないように無理やり作った笑顔で。

 

 

「待てェェェ!」

 

 

たかが子供と、その数倍も身長差のある怪物の進む速さが同じはずの訳がない。それでもライザーは炎を相手の足元に放って少しでも敵の進行を遅らせようとしている。

 

 

「あともう少しだ。さっきリアスを見つけたって合図は出したから……、もう来てくれるはずだから」

 

「うん」

 

「オラァァァァ!」

 

 

何が起こったのか分からなかった。一瞬の浮遊感の後、私は地面へと投げ出された。地面を転がった拍子に口の中に砂が入る。それを吐き出して体を起こすと同じように倒れているライザーが目に入った。

ついに怪物の尾がライザーを捉えてしまったのだ。溜まった鬱憤を晴らすが如くライザーを木の幹へと叩きつける。

 

 

「ガハッ──!」

 

 

ライザーの口から赤い液体が漏れ、ポタポタと水滴となり地面へ落ちる。前に倒れそうになる彼の腹部に拳を叩き込み、幹に体をめりこませる。怪物は手を緩めることなくライザーは何度も体を叩きつけられ瞼は大きく晴れ上がり顔や腕にはミミズ腫れが幾多も走っている──死んでしまうのではないかというくらいにどんどん傷ついていく。

もう止めて!

 

 

「さてこのくらいで良いかな? 今から女子を食ってやるからお前はそこで見てろ」

 

 

ライザーは立ち上がることが出来ない。かろうじて呼吸していることが分かる程度で、きっと直ぐにでも治療をしないとダメなはずだ。

 

怪物は口角を上げてこちらに近付いてくる。私は座ったまま後退り、そして怪物はそのスピードに合わせるように追い掛けてくる。

 

楽しんでいる。私が恐怖で動けなくなるのを待っている。

トン、と背中が何かにぶつかった。振り返るとお兄様ではなく、ただの木であった。

 

 

「おや、もう逃げるのは終わりかな?」

 

 

ニタニタと笑い、尾を振りかぶる。一度でも叩きつけられたら死ぬくらいには私は弱い。

 

 

「ライザー、お兄様。ごめんなさい」

 

 

せめて死ぬ前に謝っておこう。

それが私の最後に出来ることだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

そういう意味だったのか。母上が言っていた、指輪に魔力をこめる意味。リアスがどこにいるのか手に取るように場所が分かる。悲鳴をあげる膝に後でしっかりケアをすることを約束してさらに酷使させる。

 

もう少しというところでリアスの声が頭の中に響いてきた。

 

 

 

──助けて!

 

 

間に合え……!

怪物を前に固まるリアスの姿を見て心の奥底から湧き上がる何かを感じた。

 

リアスの仮の婚約者だから。そんなことはどうでも良かった。

一人の女の子が泣いている。それだけで助ける理由になる。

 

 

 

だと言うのに、体が動かない。

何度も叩きつけられた体は全くもって動いてくれない。痛みという痛みが身体を襲い、チカチカと視線が定まらない。

 

クソッ、動いてくれ。じゃないとリアスが。

 

 

──May the Force be with you .

 

マスター・ヨーダの声が聞こえた気がした。しかしマスター・ヨーダ、俺は冥界(ダークサイド)に堕ちています。仮面着けてシュコーする方です。

 

 

「ライザー、お兄様。ごめんなさい」

 

 

いや、違う。リアスの声だ。マスター・ヨーダの声は幻聴だった。

そしてリアスの謝罪を聞いた瞬間、カチリとギアが噛み合ったような、若しくは何かピースがハマったような音が聞こえた。

 

 

「あああぁぁぁぁ!」

 

 

身体中を魔力が、炎が覆っていく。痛みが消え、視界がクリアになる。何が起きているのか自分でも分からない。分からなくて良い。

大事なのはリアスを守ることだ。

 

 

「勝手に人(主人公)の女に手を出すなぁぁぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後のことは記憶にない。

気が付いたら俺はベッドに横たわっていた。

もしかしてまた死んだのだろうか?

また赤ちゃんプレーとか、まあご褒美だけど。

さて今回のお母さんは誰かな? ピッピカチュウ。

 

……くだらない冗談は置いておいて、しかし死にかけていた割には体が軽い。まるでベホマを使った後みたいだ。体験したことないから分からないけど。

 

 

「ライザー?! 起きたのね!」

 

 

上半身を起こしたタイミングで部屋に入ってきたリアスが駆け寄ってきて──抱きついた。ほのかに良い香りが鼻腔をくすぐる。

あぁ^、心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜

いや何が何だか分からなくて全然ぴょんぴょんしないや。

 

 

 

「今起きたところだよ。……俺はずっと気を失っていたのかな」

 

「君は三日間寝ていたんだよ、ライザーくん」

 

「サーゼクス様!」

 

「ああ、大丈夫。そのまま楽にしていて」

 

 

サーゼクス様は事の顛末を語り出す。

俺の出した合図に気付いたサーゼクス様が現場に到着した時、俺は全身に炎を纏っていたらしい。言わずもがな、フェニックスの炎である。

プロレスよろしく何度攻撃を受けても一瞬にして元に戻り、怪物を挑発を繰り返していた。それが結果的にリアスから目を逸らすことになった、と。

 

 

「本当にありがとう。ライザーくんがいなければリーアはもうこの場にいなかったかもしれない」

 

「あ、頭を上げてください! あの怪物を倒したのはサーゼクス様なのですよね? 俺はそんな大したことは出来ていないです」

 

「そんなことはないよ。君の回復力が相手を怯えさせていたんだ。何度攻撃しても直ぐに復活する君の姿に」

 

 

確かにリアルでお前の攻撃効いてねえよ、を繰り返していたら気味が悪いな。残念ながら俺には攻撃する技なんてないからリアスを助けるためには時間稼ぎに徹するしかなかったとプッツンした後の俺も考えたのだろう。

というよりも俺がフェニックスの力を使えた? 以前の仮説を引用すると俺は自身に近い人──リアスが死のピンチを迎えたことで、この世界を認識することが出来たということになる?

今回は偶々使えただけで、今再度使おうとして同様に炎は出るのか?

疑問は尽きることがない。それでも、

 

 

「リアスが無事で良かった」

 

 

仮にリアスが殺されようものならば、原作が始まりすらしない可能性があった。そうなった時、ヒロインがいないのに物語がハッピーエンドを迎えるとは思えない。それこそ世界崩壊エンドとかありえそうだ。

(世界のために)本当に無事で良かった。

 

 

「ライザー……、ごめんなさい」

 

「リアス?」

 

 

リアスの言葉から以前のような棘が感じられない。俯くその目には涙が浮かんでいた。

 

 

「私が意地を張ってたからこんなことになったの。私がいけないの」

 

「そんなこと、」

 

「そんなことある!」

 

 

強い口調で俺の言葉を遮る。

 

 

「ライザーが死んだらどうしようって! 私嬉しかったの……。やっと私を見てくれる人がいたんだって。とても嬉しかったの!」

 

 

リアスは飛び込むように俺に抱きつく。俺の存在を確かめるように強く抱き締めるその体は震えていた。自分の近くで人が死ぬことの恐怖に怯えていたのだろう。

 

 

「私を一人にしないで。私の隣にいて」

 

 

多分、弱気のリアスを慰めるのは主人公の役目だ。俺の役割ではないし、選択肢として適切ではないかもしれない。

それでも目の前のリアスを放っておくことはできない。この世界に俺は生きているのだから。

 

 

「大丈夫、俺はリアスの婚約者だから。婚約者であり続ける限りリアスの隣にいることを違うよ」

 

「うん、うん……!」

 

 

堰を切ったようにリアスは泣き出した。俺が起きるまでずっと我慢していたのだろう。本当に強い子だと思う。

落ち着かせるために背中をさすろうとして体の違和感に気付く。どうしてか左手が動かない。

三日間の寝ていたせいでまだ体が疲れているせいだろうか。仕方なく腹筋で上半身が起きた状態を保ち、体を支えていた右手をリアスの背中へと回した。女の子の体重がかかっている状態で頼れるのが腹筋だけだと少ししんどい。

 

何度か腕を動かそうと試行錯誤する俺は神妙な顔をするサーゼクス様の様子に気付くことはなかった。

 




──May the Force be with you .
→フォースとライザーと時々リアス

ピッピカチュウ
→初期のNoで紹介するスタイルの方が好きだったり

ベホマ
→フェニックス家には不要の様子

あぁ^、心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜
→あぁ^、心がぴょんぴょんするんじゃぁ^〜
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