なんとか俺たちの物語はこれからだぜ!エンドを迎えたい   作:お家が恋しい

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そういえば悪魔の世界に保険証ってあるのかな(意味不明


普段できていることができないとしんどい

経過は順調だった。

最新の医療をもって治療を受けられていることもあるが、何よりフェニックスの力を扱えるようになったことが回復にかかる時間を大幅に短縮させていた。

 

 

「ライザー様、リハビリの時間です」

 

 

──動かない左手を除けば。

 

 

 

体に不都合はない、他の部位は全回復している、だというのに未だ左手はあの時から変わらないでいた。

 

サーゼクス様は、まだあの時フェニックスの力が安定していなかったこと、ほぼ力を使い果たしたタイミングで左腕を切断されたこと、あの怪物が何かしらの呪いをかけたことなどが考えられると言っていた。

 

全く動かない訳ではない。全力で手を握ろうとすれば微かに指先が震えるのだ。筋肉量も変化がない……ということは、つまり現状で神経が完全に切断されているのではなく、しかし一度切断されてしまったために神経伝達に何かしら不都合があるのだろう。

 

なお、もう一回腕を切断してフェニックスの力で元に戻せば以前みたいに動くようになるのでは?と思いやってみたところ、既に今の左手の動かない状態が正常な状態であると体が認識しているらしく、全く意味がなかった。

いたずらに左手を切断するとかメンタルが病んでいてもやらなさそうなことを考えもなしにやってしまう辺り、もしかして俺もメンヘラの素質はあるのかもしれない。

もぅマヂ無理。リハビリしょ。。

 

 

冗談はさておき。

ただ、神経が繋がっているのならリハビリをすることで十分に回復する可能性はある。ということで今日も今日とてグレイフィア様に案内されリハビリのために用意された部屋へと向かう。

 

 

なお、何故俺が未だにグレモリー家にお世話になっているのか。

今回の件──俺が負傷したことは突発的な事情があるにしろ、グレモリー家にも責任の一端がある。サーゼクス様はフェニックス家にそう謝罪し、両家の話し合いの結果、俺は実家には戻らずグレモリー領内で療養することになった。

 

両親にどうしたいか訊かれた時、俺はリアスのことが頭から離れなかった。左手が動かないことを知った時、リアスは瞼が腫れるまで泣いて謝ってきた。

リアスは悪くない、そう伝えても首を横に振るだけ。自責の念から食欲も落ちて夜も眠れてもいないようだった。

 

リアスがそんな状態なのに俺が近くにいることが適当なのか分からないが、しかし隣にいると約束をしてしまった以上それを反故にする訳にもいかない。

リアスを気遣う意味も含め、ある程度の回復があるまではグレモリー領でお世話になることにした。

 

考え事をしている間に部屋に到着していたようだ。グレイフィア様は振り向くと一つ息を吐いた。銀色に輝く髪先がフワリと遊ぶ。

 

 

「申し訳ありません」

 

 

謝罪するグレイフィア様の眉尻は下がり、その瞳は揺れていた。リアスを元気付けることができない、その無力感に苛まされている。

 

 

「勝手ながらお嬢様がまた笑顔を見せてくれるのはライザー様の手が以前のように動くようになった時だと考えています」

 

 

「そしてそのことがライザー様に多大な負担をかけてしまうであろうことも理解しているつもりです」

 

 

グレイフィア様は深く頭を下げた。

 

 

「お嬢様に──いえ一人の家族として、リアスに笑顔を取り戻してあげて下さい」

 

「グレイフィア様……」

 

 

正直なところ、複雑な気分である。俺に実家に帰るかグレモリー家に残るか、わざわざ選択肢を与えずに、一層の事グレモリー家が俺とリアスの婚約を解消しても良かったのではないか。

 

左手を使えないことが周知の事実となったならば、俺の評価は今以上に落ちることになる。ただでさえ今現在で一部から“出来損ない”と言われているのに、片方の手が不自由であることなど“フェニックスの涙”で儲けている家の評判を落とすには格好の材料になるはずだ。

 

そんな俺との婚約を続けること自体、グレモリー家にメリットはないように思える。今回の件だって俺がリアスを危険な目に遭わせた、と責任をなすりつけることだって出来たはずなのだ。

 

たとえリアスが心に傷を負っているとしても、それは時間をかけて癒すことも不可能ではない。

なのに今、目の前でグレイフィア様はこんな俺なんかに頭を下げている。

 

 

「ライザー様は勘違いされているかもしれませんので予め申し上げておきます」

 

 

「ライザー様は自分が悪く言われることでお嬢様、強いてはグレモリー家に不都合があると考えているようですが、それは違います」

 

 

「ライザー様は優秀な方であると確信しています。当主様、サーゼクス様はライザー様に期待しているのです」

 

 

俺が口を開ける隙間すら与えずにグレイフィア様は矢継ぎ早に言葉を紡ぐ。なんか心読まれてる? 実はグレイフィア様は人の心を読めるように桜に願ったりしてたり?

いや、というよりも何か謎の高評価にビビるんだけど。

 

しかし俺も人間だ──いや、悪魔だった──好感を持たれて嫌な気分にはならない。しかも美人さんに言われると嬉しい。男の子は純粋なのさ。

 

 

「……ありがとうございます」

 

「私たちもなるべく早く回復できるよう協力していきます。あまり無茶はなさらないで下さい」

 

 

グレイフィア様の言う通り、焦っても治りが早まることはないからな。今できることを今やる。それが重要なのだと。

俺は左手を軽く叩いて部屋のドアを開けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

***

 

 

 

 

 

 

 

 

私は部屋に入っていく男の子──ライザー・フェニックス様を見送り、サーゼクス様のいる執務室へと足を運んだ。

 

 

「おや、もう戻ったのかい? ライザー君はどうだった?」

 

「はい、問題ありません。彼自身リハビリには前向きのようです」

 

「それは良かった」

 

 

楽しそうにサーゼクス様は笑う。仕事がひと段落ついてちょうどひと休憩入れる頃だろう、私はそれを尻目に紅茶を淹れる準備に取り掛かった。

 

 

 

「サーゼクス様、」

 

「うん?」

 

「何故お嬢様とライザー様の婚約を解消しないのですか?」

 

「それは前にも話した通りだよ。僕は彼には期待しているからね」

 

「それでもリスクが大きいように思えます」

 

 

確かに弱冠八歳にしてあの思考力や洞察力、人との接し方には眼を見張るものがある。彼の本質なのだろう、柔らかい雰囲気は会話する人を穏やかにさせ、気が付くと自分のペースに引き込んでいた。

問題視されていたフェニックスの力も解放され魔力の扱いも向上している。

いずれ悪魔の中でも上に立つ可能性は大いにあるだろう。

 

しかし、その魅力を補っても余りある欠点がある。

 

 

「医師が言うにはライザー様の左腕は回復できて日常生活レベルです」

 

「力がモノを言う悪魔の中で生き残ることは難しい、と」

 

「はい。いくらライザー様が優秀とはいえ、レーティングゲームに出場することは困難と考えられます」

 

 

お嬢様への恩がある上に、お嬢様自身ライザー様への気持ちが少なからずあることは否定できない。情に深いと言われるグレモリー家だからこそ、歯痒い思いが募る。

もし彼が何も問題なければ、お嬢様にとってこれ以上ない相手になったことだろう。しかしサーゼクス様は気にしないといった顔をしている。

 

 

「私は思うんだ。ライザー君は普通の悪魔とは一線を画した存在になる」

 

「魔王様としての勘ですか?」

 

「いや、あくまで一人の悪魔の意見だね。あ、悪魔とあくまでは別に駄洒落じゃないよ?」

 

 

くだらない駄洒落は置いておいて、しかしサーゼクス様がここまで誰のことを買うなんてことは記憶に少ない。私には分かり得ないだけで、それだけライザー様が異質な存在なのだろうか。

それならば私はサーゼクス様の配下の一人としてその勘を信じるだけである。

 

 

「かしこまりました。引き続きライザー様に協力してまいります」

 

「あれ、駄洒落のことは無視かい?」

 

「今度の魔王様方の会議に関することですが、」

 

「あ、やっぱり無視なんだね。いくら魔王とはいえ泣いちゃうよ? 私が泣くと面倒だよ?」

 

 

ああ、面倒くさい。でも、こういうところも愛おしく思えてしまうのだから仕方がない。

私は口角が上がりそうになるのを誤魔化すように深くため息を吐いた。




もぅマヂ無理。リハビリしょ。。
→きゅうり=水のコピペが一番好きだった

人の心を読めるように桜に願ったりしてたり?
→ことり可愛いよことり
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