クソ提督奮闘記   作:ちーまる

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ローソンコラボでの由良さん、凄く尊い……ファイルのために菓子を大量購入しました。

息抜きの方が先に投稿できるという不思議。


クソ提督に至るまで 3

 長良型軽巡洋艦4番艦由良。

 解けば腰元まであるだろう薄桃色の髪を、灰色のリボンで長いロングポニーテールにしている姿が特徴的な艦娘。第二改装まで実装されていた彼女はその汎用性の高さから生前ゲームの中で、それなりに愛用していた艦娘の一人であった。対空カットイン、対潜先制爆雷攻撃、先制雷撃等々、久しく思い出していなかった単語ばかりが頭に浮かぶ。

 

 改装前の阿武隈や鬼怒とお揃いの白を基調とした服装の彼女は、今私の目の前で優雅にお茶を飲んでいます。

 

 

 いやいやいや、本当にどうしてこうなった……!!

 

 おかしくない?さっき不合格通知もらったはずだよね?

 思わず手元の通知書を見たもののそこに描かれている不合格の三文字は変わらない。ぐるぐると纏まらない思考の中、ふと頭をよぎる最悪の可能性。

 ――これはもしかして試験の演技がばれたのでは?

 

 背中に冷たいものが伝う。だってあの日何万人と試験を担当した艦娘が()()()()()()()こうもタイミングよく、いち受験生―しかも提督適性が無いと落とされた不適合者―の家を個別訪問するものなのか。

 

いや、まだだっ……!まだ、私は終わらんよ!

ここまで来て「はい、そうですか」と素直に認められるはずがない。

 大丈夫だ、まだ希望はある。もしかしたら適性試験落としてごめん的な何かかもしれない。流石は俺たちの大本営、フォローも完璧だ!くそが、今すぐ隕石がピンポイントで大本営を直撃して滅ばないかな。若しくは盛大なドッキリだったとか。ひたひたと近づいてきた現実から全力で目を逸らし、意を決して目の前の怨敵に話しかける。

 

「えーと、確か由良さんでしたっけ、本日は一体どういったご用件で……」

「ふふっ、それは()()()()自身がよく分かっているんじゃないですか?」

 

 希望は死んだ。神はいない。

 

 天を仰ぎ飛びかけた意識を気合と根性で繋ぎ止めたが、何とか浮かべていた愛想笑いを維持する余裕は無かった。表情が抜け落ち代わりに冷や汗を掻きまくる俺を見て、彼女は心底可笑しそうにくすくすと笑う。ゲームの中で静止画しか見ていなかったユーザーとしては、こうも彼女が表情豊かに存在していることに少しばかり感動を覚えなくもないが、出来ることなら一生関わりたくはなかった。もはや何も言えなくなった俺を他所に、そのまま持っていた湯呑をゆっくり机の上に置くと手に顎を乗せこちらを覗き込んでくる。満面の笑顔を浮かべる由良の琥珀色の瞳と視線がぶつかった。

 

 ああ……やはり、この世界はクソである。あの時と同じようにぐしゃりと通知書が手の中で潰れた。

 

 だが、現実は非情である。

 

 にこにこと今にも鼻歌を歌いだしそうなほど機嫌が良い彼女が持っていた鞄から何かを取り出す。一枚の真っ白な紙、そこに書かれている文字が目に入った瞬間思わず頬が引き攣った。提督補佐任命書、逃れられない程でかでかとそう書かれている。忌々しいその書類をそっと俺の方に押し出すと由良はゆっくりと口を開く。

 

「提督さん本当はあの試験の時、妖精さんのこと見えてましたよね?」

 

 疑問符が付いていたものの、由良のその言葉はやけに断定的だった。質問ではなく、確認。まるで見えていて当たり前といった彼女の言葉に、俺はもう逃げきれないことを感じていた。

 

 任命書が軍から発行されている時点でもう個人で抗うことなど不可能に近い。なぜならこのご時世、艦娘という日本の守護神を保持する海軍こそが一番偉いからだ。海軍が白と言えば、どんなに真っ黒なものでも白になる。そこに個人の意思など存在しない。ブラックもブラックだが、そもそもブラック企業やサービス残業という概念はこの情勢で生まれるはずも無く、比較対象が無い故にブラックはブラックではないのだ。やはりリアルはクソゲーであった。

 

 だがしかし誠に遺憾ながら海軍のお陰、というよりも戦前で体を張って戦い続けているまだ見ぬ提督諸兄と艦娘諸君のお陰で日々の安寧が守られているのもまた事実である。だからこそ誰も表立って海軍に逆らう奴なんていない。

 

 故にこの状況はちょっとどころか、命の危険的な意味でだいぶマズイ。答えを一つでも間違えれば問答無用で俺の首が物理的に飛ぶ。

 どうしようもない状況に思わず引きつった笑みを浮かべて、からからに乾いた口を無理やり開く。

 

「ええ、見えていましたよ。ですが、それが何か問題でも?」

「いいえ。由良としても本当は正式に提督として着任して欲しかったんですけど……でも提督さんは提督にどうしてもなりなくなさそうだったから」

 

 提督という言葉がゲシュタルト崩壊を起こしそうになる中、はいこれと目の前に契約書を掲げながら彼女は心底嬉しそうに笑った。

 

「今私がいる鎮守府で先ず働いてほしいなーって、そう思ったんです、ねっ!」

 

 はいはいクソゲー、クソゲー。

 

 

 

 提督補佐とは、文字通り提督を補佐する存在のことを指す。まあ、あれだ簡単に言えばゲームで言うところの大淀ポジションである。

 この世界の鎮守府でも一つの鎮守府に対して一人の提督という基本は変わらない。だが、その運営には数多の人員が配置されているのである。食堂も間宮だけで運営はされていないし、近海付近の哨戒なら普通に艦娘ではなく海軍所属の軍人が行っている。故に提督を補佐する事務官やら相談役やらが多数配置されていても問題はない。

 

――それが自分でなかったらの話だが。

 

 提督補佐何て聞こえの良い役職名だが、実態はただの雑用係に決まっている。艦隊の指揮を執るのは提督、艦娘のご機嫌取りも提督だし矢面に立つのも提督だ。

 

 ……あれ、これはよくよく考えたら逆に大チャンスなのでは。

 いつの間に手に持たされていたボールペンで契約書にサインしながら、そんな考えに辿り着く。何せ就職先は天下の海軍様だ、給料はダントツで良い。仕事内容は事務仕事がメインで、目下の懸念事項である艦娘と主たる関係を築いていくのは提督だ。無論面倒事の一切合切はそちらに行くはずだろう。むしろ敵からも狙われる可能性がある提督という立場より、影の薄い補佐何て数万倍安全なポジションではないか。

 

 あれよあれよと由良に押し切られて契約書にサインしてしまったことに一抹の不安はあるものの、これから待っているのは楽な仕事と高い給料だ。提督適性試験が来たときは人生詰んだと思ったが、大丈夫だまだ希望はある。艦娘と極力関わらずに、現提督の誰かが深海棲艦を根絶やしにするまで待つだけで良いのだ。こんなにも楽なことは無い。

 

 

 

 

 

 契約書にサインをした数日後、初出勤した自分に上司である影と髪の薄い提督が告げたのは死刑宣告にも等しい言葉だった。

 

「これから宜しくお願いします、補佐さん。艦隊の指揮を一部お願いするにあたって、彼女たちが貴方に預けたい艦娘になります」

 

 

「はーいっ! 衣笠さんの登場よ!これから末永く宜しくね、提督!」

「よ!アタシ摩耶ってんだ。宜しくな、提督」

「アタシは軽巡、北上。まー宜しく」

「霞よ。まあ……一応宜しく」

 

「ふふっ、改めて第二艦隊旗艦の由良です。これから宜しくお願いしますね、ねっ」

 

 

 何か急に部下が増えたぞーやったー(白目)




今回も割と駆け足気味です。
次回からは「クソ提督への道」編になります。

そしてまたまた次回投稿は未定です。メインの「VR艦これ」のサブ的ポジションの本作ですが、なる早(死語)で上げられたらとは思っています。気長にお待ちください。
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