ありふれた職業と転生者の願い事が世界最強   作:愛川蓮

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月下の語らい~三者三様~


第4話

 檜山君達が醜態を曝した決闘から数日後、僕達は七つある大迷宮の1つ『オルクス大迷宮』に挑む事になり、宿場町『ホルアド』に来ていた。

 ……普通の部屋だからラッキーって思ったけど、本来は二人部屋なのに僕だけ一人部屋だったからちょっと泣きそうになった。

 

 ……まあ、僕としては檜山君を筆頭に男子達がバットフルボトルとトランスチームガンを奪って(篠宮君のみ借りて)ナイトローグに変身しようとして拒絶反応で悲鳴をあげてその度に文句を言われる……って、無限ループに本気で飽きていたからちょうど良いんだけどね。(因みに篠宮君は変身に成功した……首を傾げながら変身を解除してたけどね。曰く「なんかしっくり来ないんです」だそうだよ)

 

 因みに迷宮に潜るには潜るんだけどあくまでも低階層……良くて第20層までだから、僕らでも行けそうなんだよね。

 

 ……何故か継からは必死に行かないように言われたけど、行かなかったら僕の地位は最低レベルに落ち込むから行かないわけにはいかないんだよね。

 継はその事を説明しても食い下がってきたけど、山宮さんと雪兎の説得で渋々と引いてくれた。

 

「……本当に僕って、色んな人に苦労をかけてるよね」

 僕は本を読みながらそんな事を呟いていると……

 

 コンコン

「ハジメ、私だ。……いるか?」

 聞き慣れた声が聴こえてきたからドアを開けると、そこには制服の上に白衣を纏っている、何時も通りの格好をした雪兎がそこにいた。

 

「雪兎……? どうしたの、こんな時間に?」

「ああ……迷宮攻略の前にハジメと話をしたくてな。……こんな時間なのはすまないと思っている」

 僕が雪兎を部屋に入れながらそう言うと、雪兎も苦笑いをしながら部屋に入って来た。

 

「……それで? 話って、何?」

「……ハジメ、昨日の今日で悪いがオルクス大迷宮に行くのは止めてくれないか? 仮病でもなんでも良い、兎に角あそこには行かないでくれ」

 僕は雪兎の言葉に本気で驚いた。雪兎は基本的に前言を撤回することはないんだけど……どうしたんだろう?

 

「実は、な。昨日、夢を見たんだ。ハジメがとても恐い奴になる夢を……」

 それから雪兎が話したことは俄に信じがたい話だった。

 

 雪兎の夢の中の僕はなんでかオルクス大迷宮で一度死にかけ(左腕がもぎ取られていたそうだよ)、その後物凄く恐い顔になって魔物を食べて物凄いチートステータスと魔物の能力を手に入れてそれで銃を開発してそれで戦い……

 

「吸血鬼族の女と迷宮を攻略しつつ……その、肉体関係になってた」

「ぶふぉ!?」

 な、なななななんだよ、それ!? 何処をどうしたらそんな展開になるの!?

 

 それから僕は峡谷らしき場所で兎人族を助けて、兎人族の女の子に一目惚れされて、帝国の兵士(人間)を『撃ち殺し』、フルメタっぽい特訓で兎人族をヒャッハーに変えたり、伝説の竜人族の女の子をドMに変え……

 

「……敵になるからって、夢のハジメは……清水を撃ち殺した」

「……っ!?」

 ……幸利を撃ち殺した? 僕が? 敵になるからって? ふざけるな! 幾ら強い力を持ってるからって……! そんな理不尽な行動があってたまるか!

 

「……続きを言うぞ」

 そして夢の僕は海人族の女の子を助けるために裏組織(笑)の人達を虐殺し、海人族の女の子を義理の娘にして、魔人族のそれも婚約者がいる女性を撃ち殺し、公国を救い、檜山君を殺し、皇帝の息子と将軍を殺し、王国を救い、魔人族を虐殺し、(方法はわからなかったみたいだけど)世界も救った。

 ……だけど、だけど!

 

「人を、殺しすぎだろ……!」

 魔物を生きるために殺すならまだわかる。正当防衛の為に人を倒すならわかる。大切な人達の為に、故郷に帰るために努力するのもわかるよ! だけど、幸利を撃ち殺した事、虐殺を実行したことは例え夢の中だとしても、僕は僕としてそいつを認めない! 人を殺してまで地球に帰ろうとする奴なんて屑以下だ!

 

「私はな、ハジメ。怖いんだよ。お前が夢の中の怖いお前になるのが」

 雪兎は自分で体を抱きしめ、体を震わせながらそう言った。

 

「私は、何度も、何度も、人を殺そうとする夢の中のハジメに泣きながら殺すなと訴えたんだ。だけど、アイツは、笑いながら、笑いながら容赦なく撃ち殺すんだ。まるで私に見せつける様に……」

 そしてと雪兎は悲しい顔でこう言ったんだ。

 

「アイツは、私を五月蝿いハエの様に、私を、私を……」

 僕はガタガタと震える雪兎の体を抱きしめた。

 

「は、ハジメ……?」

「良いよ、もう良いよ。怖がりながら言う必要は、ないんだ」

 僕は雪兎の頭を撫でながらそう言った。……そうか、夢の中の僕は、雪兎を撃ち殺したのか。雪兎を、僕の大切な人を容赦なく。……本当に、本当に屑だな、そいつは。

 

「約束するよ……僕は雪兎が夢に見たような屑になんてならない! 絶対に雪兎の知っている僕であり続ける!」

「……ハジメ」

 僕が雪兎を抱きしめながら言った言葉に雪兎は安心した顔で僕の胸に顔を押し付ける。

 

「……ハジメ、キスをしてくれないか?」

「……急にどうしたの?」

 僕は雪兎の言葉に苦笑いをした。雪兎がキスを欲しがる時は、飛びっきり喜んでいる時(これはファーストキスを交わしたときに知った)、もしくは……

 

「……おまじないだ」

 雪兎が不安を完全に払拭しようとして、そのおまじないとしての要求だ。

 

「……ハジメの言葉は、信頼できる。でも、万が一ということがあるからな」

「……もう、仕方ないなぁ」

 そう言って僕は目を閉じて、唇を僕の顔に向けている雪兎に僕の唇を重ねた……

 

 ……? 扉の向こうから、何か走り去る気配がしたような……?

 

…………………………

 

「はぁ、はぁ、はぁ……なんで、なんで! なんで私の思いは……届かないの……!?」

 私、『白崎香織』は南雲君の部屋で見た……見てしまった光景に絶望し、本来の目的も忘れて宿を飛び出して知らない場所をさ迷っていた。

 

 私が見てしまった光景……それは、南雲君と畑中さんが抱きしめあってキスをするところだった。

 ……二人が恋人だっていうのは、知ってた。だって、私が南雲君への恋心を抱くきっかけになった『あの事件』の時から仲が良さそうだったし……夏休みの時に雫ちゃんから「南雲君が畑中さんと付き合うって言ってたわ」って、話してたから。でも、きっと大丈夫って、最後には私が勝つって……そう思っていた、そう思い込んでいた。

 

「でも、でも……南雲君を、諦めたくないよぉ……」

 私は涙を流しながら知らない路地裏をさ迷う。そして……

 

「……はいよ、あんたのお求めの『神代の魔法剣』に関する書物だよ」

「ありがとうございます、『カレン』さん!」

 そこにはフードで顔を隠した赤髪の女の人と楽しそうにお話をする篠宮君がいた。

 ……誰なんだろう、あの人。

 

「にしても、あんたも好き者だねぇ……『白崎先輩やみんなの為にもっと強くなりたいんです!』って、言っていきなりあたしの持ってこの本を譲ってくれって土下座してきた時には本当にどうしようかと思ったよ」

「な、ななな!? なんで白崎先輩の事が出てくるんですか!?」

「そりゃ、この本をあげる対価にあたしが求めた『あんたの中で最も嬉かったこと、怒ったこと、悲しかったこと、喜んだこと、楽しかったこと、恥ずかしかったことを言え』っていう課題の大半にその『白崎先輩』が出てきたからに決まってるじゃないか」

「わー! わー! わー!」

「……え?」

 私は女の人が言ったことに思わず声を出してしまいました。二人が私の声に気が付いて振り向くと、篠宮君は真っ赤になって、女の人はにんまりと笑いました。

 

「し、白崎先輩!? ど、どうしてこんな時間に出歩いて……!?」

「はぁ~ん? この子があんたの……なるほど、確かに器量よしだねぇ。あんたが……」

「か、かかかかかカレンさん! いい加減にしないと怒りますよ!」

「あっははは! それじゃあ、お邪魔虫のあたしは退散しようじゃないか! じゃあね、ぼうや! 運が良かったらまた会おうじゃないか!」

「はい! 今度はカレンさんの恋人の『ミハエル』さんとも会いたいです!」

「ああ、そう伝えておくよ!」

 そう言って女の人は夜の人通りの中に消えていきました。

 

「……篠宮君、篠宮君は何をしていたの?」

「え、えっと……その……実は、この近辺で神代で最強と言われた魔法剣士が使った魔法剣の数々が記された本があるって噂があって……それでいてもたってもいられずに探していたら……」

「あの人に土下座して、とんでもない課題を言われたの?」

「……はい。最も、完全に満足させるまではあの人の家族自慢だとか恋人自慢が主でしたけど」

 手にいれた本で隠ししている篠宮君の顔がどんどん赤くなってる……熱でもあるのかな?

 

「し、白崎先輩はどうしてこんな時間に出歩いているんですか!? ここは結構治安が悪、い……ど、どうしたんですか!? 涙なんか流して!?」

 篠宮君が私が此処にいる理由を聞いて……私はさっきの光景を思い出して、また涙が溢れてきた……

 

…………………………

 

「そう、ですか。南雲先輩が畑中先輩と……」

 僕『篠宮楓』は僕の初恋の人で、現在進行形で恋をしている『白崎香織』先輩の隣で話を聞いていた。

 南雲先輩が畑中先輩とキス、かぁ……二人が恋人なのは知ってるけど、そこまで関係が進んでいたなんて……僕も何時か……って、何を考えているんだ、僕は!?

 

「そういえば……白崎先輩はなんで南雲先輩の部屋を訪れていたんですか? その……ネグリジェにカーディガンを着て……」

 本当になんでその服装なんだろう……? は!? まさか南雲先輩に夜這いを!? やっぱり僕の初恋って、実らないのかな……?

 

「……実はね、不吉な夢を見たの」

「……夢?」

 僕が内心の混乱を隠しながらそう言うと、白崎先輩はコクりと頷きながらポツポツと話始めた。

 

「うん。南雲君と雫ちゃんがいるんだけど、二人がどんどん遠ざかっていくの。私が必死に走っても追い付けなくて、声をかけても気付いてくれなくて……それで、最後には……」

「……最後には?」

 僕は、尊敬する八重樫先輩のことと、南雲先輩のことを話す白崎先輩の真剣な様子に息を飲みながら続きを促す。

 

「……消えちゃうの」

「……消える」

 それは、不吉な夢だ。明日は大迷宮に挑むのに……

 

「……それとね、私に関する夢もみたんだ」

「え!?」

 僕が驚きながらそう言うと、白崎先輩は少し不安そうに話始めた。

 

「……王城でね、深紅と黄金の鎧を纏った雫ちゃんが血を流している私を抱き上げているの。私は上から見てるんだけどね。それから、悲しそうな顔の南雲君と畑中さん、光輝君と龍太郎君がいて、恵里ちゃんと檜山君を除いた皆がいて、私が途切れ途切れに話たら、雫ちゃん泣いちゃって……それで……」

 ……まさか、

 

「私が目を閉じたら、雫ちゃんの慟哭が響いて、皆が泣いちゃう夢を見たの」

 つまり、それって……白崎先輩が死ぬってこと……

 

「……怖いよ、南雲君と雫ちゃんがいなくなっちゃうのも怖いけど、死にたく……ないよ」

 僕は自分が死ぬかもしれない恐怖で震えている白崎先輩を……何時の間にか抱きしめていた。

 

「し、ししししし篠宮君!?」

「……は!? し、失礼しました!?」

 僕は慌てて白崎先輩から離れると、慌てて今日二回目の土下座を敢行した。……死ぬほど恥ずかしいなぁ。

 

「か、顔をあげて! ……って、どうしたの急に!?」

 ……僕は意を決して立ち上がり、腰に差してある南雲先輩の錬成刀『雪染(ゆきぞめ)』に手を触れ、騎士の誓いを立てるように僕は白崎先輩に告げた。

 

「……僕は、剣士として腰の刀に誓います。絶対に南雲先輩と八重樫先輩、白崎先輩を守りきることを! 夢の様に白崎先輩を死なせもしませんし、南雲先輩達も遠くにいかせません!」

 僕の言葉に白崎先輩は驚いたような顔になり……すぐに涙ぐんで近付くと……僕を抱きしめた。

 

「…………し、ししししし白崎先輩!?」

「……ありがとう、篠宮君」

 僕は白崎先輩の体の柔らかさに翻弄されながら、絶対に約束を守り抜くんだと誓った。

 ……? 誰かの気配が……?

 

……………………………

 

「……びっくりしたわ」

「ああ、確かにびっくりしたな」

 私『八重樫雫』は幼馴染みであり、最愛の恋人でもある光輝と最後の打合せ兼夜中のデートをしてたんだけど……香織と篠宮君の衝撃的なシーンに出くわしたわね……

 

「それにしても……雫と南雲が遠ざかっていく……か」

 光輝が難しそうな顔で私を見ながら呟く。……香織の見た夢を気にしているのかしら?

 

「大丈夫よ。私の強さ、知ってるでしょ?」

「勿論知ってるさ。でも、今は『黄金のキバ(エンペラー)』も各種アームズモンスターも使えないんだろう? それに……」

「わかってるわよ。香織の勘は良く当たるでしょ?」

 ……思えば香織が嫌な予感がすると、高い確率で嫌な事件が起きるのよね。

 例えば私と雪兎が深央さんを(事故で)殺してしまったとき、香織は「なんだか雫ちゃんの大切な人がいなくなる気がして……」って言って私が出歩くのを無理矢理止めようとしたっけ……あの時は雪兎がハザードトリガーの力で暴走していたから戦わなきゃいけなかったのよね……そして、暴走を止めない雪兎と相討ちになりそうになって……深央さんが変身したファンガイアが攻撃の間に割り込んで相討ちを防いで結果的に死んでいえ、殺してしまったのよね……(最も平行世界の私とも言える紅渡さんのお陰でビショップの策略と知ってビショップを過去の世界で倒すことで死を無しにしたんだけどね……)

 

「……雫」

 私が考え込んでいると光輝の声が聞こえたから振り向くと……光輝の唇が私の唇と重なりあった。

 

「!?!?!?」

「…………」

 私が驚愕して、動けないでいると光輝は少しの間唇を重ねたまま私を抱きしめて、そのまま離れる。

 

「い、いきなりなにするのよ!」

「……畑中さんのおまじないを真似たんだ」

「!」

 私は顔を真っ赤にしながら、明日の朝余計な事を覚えさせた雪兎を蹴り飛ばすことを決めた。

 

「それに、ちょっとお守りも買ったからおまじないを加えたいと思ってな」

 そう言って光輝がポケットから出したのは……二つの鈴付きのリボン?

 

「……魔除けと幸運の鈴の着いたリボンなんだ。雫に似合うと思って買ったんだが……香織の話を聞いて今すぐにプレゼントしたくなってな」

「……バカ」

 私は光輝の手からリボンを貰うと、さっきまで着けてた愛用のリボンを光輝のリボンをを持ってた手に巻く。

 

「……雫?」

「……私からもおまじない。どんなに離れていても、通じ会えるようにって」

 ……私が読んでいる少女漫画の受け売りなんだけどね。

 

「……ありがとう、雫。本当に俺には勿体ない彼女だよ」

「……バカね。今の貴方も私には勿体ないわ」

 今の光輝は底知れない正義感だけじゃない。力の意味を、正義の意味をきちんと考えて、それを正しく使うための努力もしてる。そんな光輝に気付いて、何時の間にか惹かれていたからこそ私は光輝の告白を受け入れたの。

 

 だから……

「……大好きよ、光輝」

「……俺もだ、雫」

 今度は私から雪兎のおまじないをさせて。

 

…………………………

 

 月の下で語らう3組の男女。しかしこの内の二組……篠宮楓と白崎香織、八重樫雫と天之河光輝は気付いていなかった。

 

「糞が……! 白崎は……いや、香織はてめぇのものじゃねぇ、俺の『所有物(もの)』だ! てめぇなんかに渡してたまるかよ……! だから……」

「……怪物の血が混ざったお前(八重樫雫)が僕『の』光輝君とキスをするなよ。本当なら、そこにいるべきのは僕なんだ。光輝君の側にいて、彼とキスをして、一緒に昼食を食べて、話をするのも僕だけでいいんだ。だから……」

 悪意が、どす黒い悪意が……

 

キモオタもろとも死ね

僕と光輝君の未来のためにも、死んでくれよ

 すぐ側にいることを……




次回

絶望の序曲~降臨~

渡「どーしてこうなったんすかねぇ……?」


雫「(き、気持ち悪い……!?)」
光輝「(意外と可愛い物好きな雫にはキツいだろうなぁ……)」


雪兎「おいおい……ゴリラがゴリラに怯んでどうする!」
メルド「あんなバカ力で殴り飛ばすな!」


継「結局……絶望は降臨するのか……!」

……お楽しみに
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