ありふれた職業と転生者の願い事が世界最強   作:愛川蓮

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絶望との死闘~落下~



第6話

「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「退け! 邪魔だ!」

「あ、あんな化け物、敵うわけないよぉ!」

「助けて……助けてぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 3匹のベヒモスの圧倒的な威圧感の前にあっと言う間に大混乱に陥り、先ほどまでの威勢は何処に行ったと言わんばかりに、我先にと逃げ出さんとする同じ学校の皆に少しばかり冷ややかな視線を送りながら僕は戻ってきたアランさんを中心とする騎士団の人達や比較的冷静さを保っている生徒達や転生者達と共に必死にアントロードに立ち向かっていた。

 

 アントロード……『仮面ライダーアギト』に登場する敵勢力『超越生命体(アンノウン)』の1種族であり、他の超越生命体とは違い地球の蟻と同じように女王蟻を中心にした群れで活動する奴等だ。……まあ、小学生の頃に劇場版を見てトラウマになったんだけどね。(暫くアントロードの大軍に追い掛けられる夢を見た)

 

「ぐ……このぉ!」

 僕が飛びかかってきたペデスを両断し……って、あれ? 超越生命体がこんな簡単に倒された……?

 

「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「っ!? 園部先輩!」

「優花!?」

 僕が内心で首を傾げていると悲鳴が聞こえてきたので振り向くとそこには『園部(そのべ)優花(ゆうか)』先輩が尻餅をついていて、悲鳴に刺激されたのかペデスが10匹ほど向かっている光景だった。

 因みに園部先輩の名を言ったのは『鹿島(かのしま)(たける)』先輩。園部先輩の幼馴染みで家族ぐるみで仲が良いみたいなんだ。

 

「今助けに……!? この、邪魔だぁ!」

「退けぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 僕達が園部先輩を助けに行こうとすると、目の前にペデスが5匹ほど現れる。即座に倒したけど、既にペデス達は園部先輩を貪り尽くそうとその手を……

 

「優花、優花ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「「錬成!」」

 伸ばす前に突如として盛り上がった地面にバランスを崩し、そのまま崖下に墜落していった。

 

「……え?」

「……は?」

「園部さん、大丈夫!?」

「ほら、立てるか?」

「え……う、うん」

 僕達がいきなりの事態に呆然としていると、園部先輩に雪姉が手を差し出して立たせていた。

 

「南雲、畑中……悪い! 助かった!」

「礼は良いさ。だが、帰ったあとで園部の家の飯を食いたいな……タダで」

「ちゃっかりしてるわね!? ……良いわよ! お腹が破裂するくらい食べさせてあげる!」

「楽しみにしているよ! 雪兎、早くメルドさん達と天之河君達の所に!」

「わかっている!」

「ぼ、僕も行くよ!」

 そう言って2人はすぐにメルドさん達の所に向かい、僕もそれに着いていった。

 

「天之河君!」

「天之河先輩!」

「南雲と篠宮か! ごめん、今は手が放せないんだ!」

「ベヒモスのせいか……一か八かだ! 変身!」

 天之河先輩の言葉で手が放せない理由がわかったのか、直ぐ様ゴリラモンドに変身した雪姉がベヒモスを殴り飛ばし……ゴリラモンド専用の武器である『サドンデストロイヤー』の効果でベヒモスが一撃で息絶えた。

 

「まさか一発で成功するとは……」

「日頃の行いが良いせいかな!? 天之河君、此処は僕達が抑えるから君達は皆の所へ! 君達がいないとこのままじゃ……」

 ……授業中(愛姉の授業以外)寝たり、授業以外の事をやったりしてるのって、日頃の行いが良いのかな?

 

「!? 南雲君、駄目……」

「……わかった! 南雲、畑中さん。此処は任せたぞ!」

「光輝!? お前は何を……」

「メルドさん。確かに此処を南雲達に任せるのは不安かもしれません……だけど、あのままだと他の皆は全滅します。だから、南雲達がベヒモスの足止めをして、俺達が皆の援護に行くしかないんです!」

 白崎先輩やメルドさんが天之河先輩の言葉に慌てて口を挟むけど……正論を言われてメルドさんは考え込んだ後「……わかった。ただし、無茶をするなよ? それから……必ず助けるからな!」と言って部下達の下へと戻っていった。

 

「でも、でもそれじゃあ南雲君が……」

「白崎先輩……僕や南雲さんが一緒に抑えます! だから……僕達や南雲先輩達を信じてください!

「僕を勝手に巻き込まないでくれないかなぁ!? ……まあ、やるけどさ」

「篠宮君……」

「香織……彼らが心配なのはわかるけど、向こうの皆には貴方が必用なのよ」

「……うん。篠宮君、南雲君……絶対に無事に帰ってきてね?」

「……はい!」

「勿論!」

 白崎先輩が尚も反論をするけど、篠宮君の信念の籠った言葉に気圧されたのかその後の八重樫先輩の言葉にもすぐに頷いてそのまま天之河先輩達と一緒に後列の皆の下へと向かっていった。

 

 さてと……やりますか!

 

…………………………

 

「来い、クローズドラゴン!」

 俺はビルドドライバーを腰に装着し、走りながらガジェットモードになったクローズドラゴンを手に納め、そしてドラゴンフルボトルを装填してドライバーに装着した。

 

 ウェイクアップ!

 クローズドラゴン!

 Are you ready?

「変身!」

 Wake up burning! Get CROSS-Z DRAGON!

 Yeah!

 

 俺の体は音声と共にドラゴンを模した鎧を身に纏った仮面の戦士……俺の戦闘の師でもある『万丈(ばんじょう)龍我(りゅうが)』が変身する『仮面ライダークローズ』に変身した。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「こ、光輝君……(光輝君が、僕を守ってくれた……『あの時』の様に……)」

 俺はそのまま恵里を喰らおうと手を伸ばしていた蟻の魔物を両断し、そのまま声を大にして叫ぶ。

 

「皆、落ち着け! 訓練を思い出すんだ!」

「え!? 誰!?」

「声から察すると……天之河か!?」

 俺の声に先程までパニックになっていた皆が一斉に変身した俺の方を向く。……クローズの姿を皆に見せなかったのはちょっと失敗だったか?

 

 ロボットゼリー!

「変身!」

 潰れる!流れる!溢れ出る!

 ロボットイングリス!

 ブラアアアア!!

 

「心の火……心火を燃やしてお前らをぶっ潰す!」

「こ、今度は坂上か!?」

「お前ら! パニックになってんじゃねえよ! 周りの連中を援護してやれ!」

「そ、そうだった……皆、周りにいる連中と連携してあたるんだ! 1匹、1匹は俺達が連携すれば負けない相手じゃないぞ!」

 龍太郎の変身した『仮面ライダーグリス』がパニックを起こしていた皆にカツを入れ、皆は戸惑いながらも訓練で見せた連携をし始めた。

 

「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

「……え? シズシズ? 何その鎧!?」

 さっきまでの混乱の影響で態勢を崩していた鈴に接近した魔物を『キバの鎧』を身に纏った雫の回し蹴りが吹き飛ばした。

 本来は『仮面ライダーキバ』なんだが……どういうわけか雫のキバの鎧には仮面がなく、雫の顔が丸見えだった。(後鎧の細部も微妙に違う。これには渡さんや戦兎さんも首を傾げていた)

 

「皆、俺達に続け!」

「此処を突破するぞ!」

「行くわよ、皆!」

「俺も行くぜ!」

「俺も忘れるなよ!」

 そう言って魔物が現れた当初から『仮面ライダーサガ』に変身して奮戦していた清水も入れた俺達5人を中心に……5人? 4人じゃなくて?

 

「……おい、天之河。俺を忘れてるんじゃないだろうな……?」

 は!? そうだった浩介も『仮面ライダーイクサ』に変身出来るんだった!

 

 ……こほん。兎に角! 俺達5人を中心にした皆は最早500匹を超えた魔物達の殲滅を開始する。

 流石にチート揃いなだけあって冷静になった皆は強かった(香織が回復を連発しているのもあるだろうが)。あっという間に雑魚を殲滅し始め、そのまま階段までたどり着ける……と俺は思っていた。しかし……

 

「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「礼一!? こ、この野郎……うぶげあ!?」

「良樹ぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!?」

 階段の前に陣取っていた大将と思われる魔物とその親衛隊と思われている魔物が戦線に加わってから徐々に俺達は苦戦を強いられた。大将と親衛隊の魔物が赤いオーラを放つと、その周りにいる魔物はあらゆるステータスが強化され、一撃で倒せなくなってきたからだ。

 

「っ……! このままじゃあ……!?」

 俺は歯噛みをしながら親衛隊の魔物が振り回す鎌をクローズの武器である『ビートクローザー』で受け止める。

 本当にこのままじゃ皆に死傷者が……!

 

 タカ!

 ガトリング!

 ベストマッチ! Are you ready?

「変身!」

 天空の暴れん坊! ホークガトリング!

 イエァ!

 

 ボルテックフィニッシュ!

「早速で悪いが……『フルバレットバースト』!」

 ワンハンドレッド! フルバレット!

 

 畑中さんの声が響いてきたかと思うと天空から100発もの弾丸の雨が降り注ぎ、魔物達を吹き飛ばした。

 

「……待て、なんで畑中さんが此処にいるんだ!?」

「それは……次のシーンを見ろ! 因みにハジメも来ているぞ!」

 俺は『仮面ライダービルド ホークガトリングフォーム』に変身した畑中さんにそう突っ込むと、畑中さんはメタ発言をしながら俺にそう言った。

 ……何がどうなっているんだ!?

 

……………………………

 

 時は南雲先輩達が天之河先輩達のいる場所に戻る少し前に遡る。

 

「「「錬成!」」」

 南雲先輩、畑中先輩、南雲さんの3人が同時に錬成してベヒモス達の上半身を石橋に埋める。

 

「魔法剣『俄雨(にわかあめ)』!」

 僕がその瞬間を突いて魔法剣を繰り出し、小うるさく自分達を突っつく蝿を思わせることでベヒモス達の狙いを南雲先輩達に絞らせないようにする……それが南雲先輩の考えた作戦だった。

 それは今のところ順調だろう。何せベヒモス達は地面に埋まって身動きが取れず、僕達はこうして足止めの任務を果たせているんだから。

 

「(だけど油断は出来ない……!)」

 僕は魔力回復薬をイッキ飲みしながらそう思う。何せベヒモス達はあっという間に錬成されて硬度が増した地面を砕いてくるし、長引けば長引くほど僕達の集中力が散漫になりタイミングを間違えて殺される危険性が上昇するからだ。

 

「く……ハジメ、不味い事態になった。大将の魔物達が配下を強化するスキルを持っているみたいだ。天之河達が苦戦している」

「っ……! だったら誰かが戻らないといけないんだろうけど……」

 畑中先輩の苦虫を噛み潰したような言葉に南雲先輩も苦々しい顔で応じるけど……2人とも前にいるベヒモスの事で手一杯で戻ろうにも戻れないみたいだ。

 ……だったら!

 

「行ってください、南雲先輩! 白崎先輩には南雲先輩が必要なんです!」

 僕は起き上がってきたベヒモスの攻撃を避けながら南雲先輩にそう叫ぶ。白崎先輩との約束を果たすためにも、南雲先輩が戻らなきゃいけないんだ……!

 

「それじゃあ、篠宮君が!」

「なら僕もお手伝いをさせてもらおうかな?」

 南雲先輩が必死に僕を説得しようとするけど、南雲さんが南雲先輩に微笑みながらそう言った。

 

「継!? でも……」

「ハジメ! 迷っている暇はない! 戻るぞ!」

「っ……! わかったよ……でも、篠宮君、継! 戻ったら後で説教だからね!」

 そう言って南雲先輩は畑中先輩と一緒に階段へと向かっていった。

 

 これで良し……と。

「南雲さん、ごめん。僕のわがままに付き合わせちゃって……」

「良いよ別に。僕達は友達じゃないか! 錬成!」

 そう言って南雲さんはベヒモスの1体を錬成で埋める。……僕は南雲さんに攻撃がいかないようにしないと!

 

「魔法連剣『(みぞれ)』、『疾風(はやて)』!」

 僕は大きな隙を作らない速度重視の魔法剣を連続で使い、もう1体のベヒモスの注意を南雲さんから反らす。ベヒモスは小うるさい蝿を払うかの様に首を振ったり、足で踏みつけを行ってくるけど僕はそれを紙一重で避け、更なる攻撃に繋げる。

 ……行けるか!?

 

 ボルテックフィニッシュ!

「ぶっ飛べ! 『ロケットクラッシャー』!」

 

 ドラゴニックフィニッシュ!

「これで……終わりだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 

 スクラップフィニッシュ!

「必殺、滅殺、瞬殺……吹っ飛びやがれぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

 

「ウェイクアップ!」

「『ダークネスムーンブレイク』!」

 後ろをちらりと見ると大将と親衛隊の魔物達が畑中先輩達の必殺技を叩き込まれ、吹き飛ばされた。

 ……漸く待ち望んでいた時が来た!

 

「南雲さん、逃げるよ!」

「合点承知の助! 置き土産の……錬成!」

 僕達は後ろをくるりと向くと、そのまま地面に埋まったベヒモス達を置いて脱兎の如く逃げ出した。

 

 ……すぐにベヒモス達は石橋を砕きながら僕達を追って来たんだけどね!

 

「す、すげぇ……」

「あいつら、あの化け物を食い止めてくれたのか……」

「そうだ! ハジメ達が足止めをしてくれたから俺達は態勢を整えられた! 楓達が足止めしてくれたから此処まで来れた! 二人を死なせるな! 一斉に攻撃してあいつらを助けるんだ!」

「「「「お、おぉー!」」」」

 僕達が走り出すと同時に隊列を組ながら先輩達や同級生達が一斉に色とりどりの魔法や遠距離攻撃をベヒモス達に向けて撃ってきた。

 ……正直、頭の上を無数の攻撃が通ってるのって背筋が寒くなるんだけど……チート揃いの皆だから大丈夫……だよね?

 

「(死ね! 篠宮!)」

「……!? 篠宮君、危ない!(な、なんで篠宮君に!?)」

「え……!?」

 僕が南雲さんの警告に驚いていると……突然放たれていた魔法の1つが僕に向かって曲がってきた!?

 

「(な、なんで……!?)か、彼の魔法を纏い、我が剣となれ! 魔法返剣……うわぁ!?」

 僕は慌てて魔法返剣を使ってそれを防ごうとして……手前で炸裂した為に僕は走っていたのもあってそのまま転倒してしまった。

 

「しまっ……あ」

 僕は慌てて立ち上がって……気付いてしまった。ベヒモス達が赤熱した角を盾にしながら突っ込んでくるのを。……そして、それは僕が挽き肉になる未来が確定したのも意味していた。

 

「(……白崎先輩、ごめんなさい。貴女の命は、守れそうにもありません。そして……好きでした。姉さん……ごめん)」

 僕はその運命を受け入れようとして……

 

「何勝手に死のうとしてるんだこの馬鹿ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 『覇潰昇華(はついしょうか)』! (使いたかないけど!)神意よ! 全ての邪悪を滅ぼし光をもたらしたまえ!(何が光だ! お前(エヒト)が一番邪悪だ!)神の息吹よ! 全ての暗雲を吹き払い、この世を聖浄で満たしたまえ!(何が聖浄だ! お前(エヒト)が一番の暗雲だ!) 神の慈悲よ! この一撃を以て全ての罪科を許したまえ!(神神五月蝿いんだよ! お前が一番罪深いんだよ、この邪神(エヒト)が!)神威!」

 ……南雲さんが何故か初期から覚えていた技能『限界突破』とその派生技能『覇潰(はつい)』、そして謎の魔法『昇華魔法(しょうかまほう)』(南雲さんは何故か凍り付いていたけど)の合わせ技に光属性の最大の砲撃をベヒモスに向けて発射した。

 

 光の砲撃はベヒモス達を押し留め、ジリジリとベヒモス達を後退させ、そして……ベヒモス達の魔法を貫き、光の中で消滅させた。

 

「……マジで?(ん……? 今、先輩達の周囲の魔物達の死骸が動いた様な……?)」

「全く……篠宮君が死んだら皆(特に白崎先輩)が悲しむんだよ? 勝手に死のうとしないでくれるかな?」

「え、あ? あ、うん。ありがとう……って、やっぱり幻覚じゃない!? 八重樫先輩、後ろです!」

「こいつ、まだ生きてるの!?」

 僕はさっき見た魔物達の死骸が動いていたのが幻覚でないのがわかると、その魔物達の狙いが八重樫先輩に向いているのがわかったので慌てて警告したけど……頭部が吹き飛んでいる大将の魔物が八重樫先輩を羽交い締めにしてそのまま崖から落ちようとする。先輩達は慌てて助けようとすると、他の魔物達の死骸が我が身を盾にしてそれを阻む。

 

「(さようなら、怪物女)」

「く、この……! 雫、早く振りほどくんだ!」

「何とかやってるけど……さっきよりも力が強くなってて……!」

「僕達も助けに行こう!」

「う、うん! わかった!(な、何で中村恵里がこんなにも短絡的な活動を……!?)」

 僕達は慌てて崖から落ちようとする八重樫先輩を助けに行こうとして……そのまま石橋が崩れ落ちて、僕達は宙を舞うことになった。

 

「な、なんでいきなり石橋が!?」

「(さっきまで大丈夫そうだったのに何でいきなり石橋が崩れ落ちるの!? ……まさか!? ハジメ兄の代用として篠宮君と僕を利用する気なのか、世界は!?)」

 僕達はそのまま崖から飛び降りた魔物と八重樫先輩達と共に奈落へ……

 

「継! 篠宮君!」

「八重樫!」

 落ちる前に僕達は蝙蝠の翼を広げた南雲先輩に、八重樫先輩は体の構成が鷹の様な体の『タカハーフボディ』とロケットの様な体の『ロケットハーフボディ』になっているビルドに変身した畑中先輩に抱えられた。

 

「ハジメ兄! どうして!?」

「妹と後輩の危機に僕が現れちゃダメかな!? 急いで雪兎と合流してここから脱出しよう!」

 そう言って南雲先輩はロケットハーフボディにエネルギーを蓄えている畑中先輩に合流すると、その体に掴まる。

 

「……エネルギー充填完了! ロケット噴射開始! 飛ぶぞ! 歯を食いしばれ!」

 僕達はロケットの噴射による驚異的な推進力でそのまま脱出できる……と、考えていた。

 

「「待ってろよ、『ユエ』!」」

「「誰だ(よ)そいつは!?」」

「何してくれちゃってんですかあんたらわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

 自分から飛び降りてきた鎌上先輩と黒影先輩、2人を押さえ込もうとしていてそのまま一緒に落ちるはめになった山宮先輩達が落ちてくるまでは。

 

「うわぁ!?」

「南雲さん……ぐえ!?」

「くっそ! すまねえっす!」

 僕と南雲さんは鎌上先輩と山宮先輩が激突して上昇中だった畑中の体から引き離される。

 

「食らえ、モブ女に雑魚!」

「しま……馬鹿な、何故一撃で変身が!?」

「うわぁ!?」

 畑中先輩はベルトを、南雲先輩はトランスチームガンを黒影先輩に攻撃されてそのまま変身が解除される。

 

 つまり……

「く……愛子姉さん、すまない」

「雪兎!」

 南雲先輩は悔しそうな顔の畑中先輩を抱き締め、一緒に墜落する。

 

「楓っち、継!」

「山宮先輩!」

「くそ、くそぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ! 僕は、僕はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 僕と南雲さんは山宮先輩に捕まる形で一緒に墜落する。

 

「光輝……ごめんなさい」

「雫……雫ぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!」

 八重樫先輩は申し訳なさそうな顔で天之河先輩に謝り、天之河先輩は皆に押さえ込まれながらも八重樫先輩に手を伸ばし……

 

「よっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ! 俺のハーレム伝説の始まりだぜぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」

「いや、俺のチーレム伝説だぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 元凶の2人は楽しそうな声をあげながら落ちていた……

 

…………………………

 

 時間にして一時間、されど一時間。その間に訪れた怒濤の展開。

 

 そして……

 

「雫……雫……あ、ああ……あああああああああああああああ!」

「いや……いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」

「光輝!」

「し、白崎さん!」

「(ごめんね、光輝君。これも必要な行為だったんだ。そして……サヨウナラ、怪物女(八重樫雫)。天国……いや、地獄から僕と光輝君が幸せになるのを絶望しながら見ていてよ)」

「(やった! やったぞ! 俺は、俺はこれで香織を……何でだ? 何で香織を手に入れられる筈なのに、俺の胸には罪悪感しか湧かないんだ……?)」

 あまりの絶望に耐えきれず倒れ伏す天之河光輝と白崎香織。2人に慌てて駆け寄る他のメンバー。そしてそれを遠巻きに見る悪意を放った……だけど対照的な感覚を覚えた2人。

 

 ……勇者(天之河光輝)恋する少女(白崎香織)が再び立ち上がるのはそれから二週間後の事である。

 

 




次回

奈落での出会い~南雲ハジメと畑中雪兎の場合~

ハジメ「こ、此処は……?」

雪兎「つまり……私達は変身出来ないということだ」
ハジメ「そ、そんな!?」

ハジメ「雪兎、此処は僕が食い止める! だから逃げるんだ!」
雪兎「ふざけるな! お前を見捨てる位なら私が……!」

???「ぐっはぁ!? 風の刃で斬られるのは蹴られるのとはまた違った快感が……!」
ハジメ&雪兎「「誰(だ)!? この変態は!?」

???「『エクスプロージョン』!」
???「この狭い空間でそれをやるな! この『爆裂ロリ』がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

……お楽しみに
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