佐久間景は操者である  偽 魔装機神 ~A bystander of the Brave~   作:某アークス(三鯖民)

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細々と投稿。



第二話 『さくまけい 上』

 

 

 

「では、話してくれるか?君の事を」

 

「…その前に、一つ聞かせてください。……あの子は、どうなるんですか」

 

 

取調室のような部屋。

 

机をはさみ対面する2人の男。

 

 

一人は壮年の男。

 

もう一人は、治療を受けた後なのか全身のいたるところを包帯で覆った茶髪の青年。

 

 

「今彼女の治療を行っている。…少なくとも俺達は、彼女を盾に君に無理難題を突きつけるつもりはない」

 

 

壁にもたれかかっている紫髪の男が、包帯の青年の質問に答える。

 

 

「…話せる範囲でいい。君と彼女の身に何が起きたか、話してはくれないか?」

 

 

壮年の男が、正面に座る茶髪の青年に言葉をかける。

 

 

「……分かりました。俺の知ってる範囲でなら全部話します」

 

「すまないな、助かる」

 

「…俺がアレを見つけたのは、確かアイツと特訓やってた頃くらいだった…と思います」

 

 

 

そうして彼は回想する。

 

 

 

 

 

―――自らの運命を大きく狂わせた、あの「巨人」との出会いを。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

―――――――佐久間景は操者である 第二話 『さくまけい 上』―――――――――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「―――――はい、やめ。ありがとうございました」

 

「ありがとうございましたっ!……だぁー!つっかれたぁ……」

 

 

 

 

剣道場のような広い施設。

 

そこで少女が一人の青年と木刀を使った訓練を終え、休憩に入っていた様だった。

 

 

「毎回…思うんだけど…佐久間さんの訓練…ハードすぎ……!」

 

「おいおい、これくらいで音を上げてるようじゃでっかい化け物には勝てんぞー」

 

 

綺麗に磨かれた板張りの床の上に、大の字になって寝っ転がる少女。

 

その少女に「佐久間さん」と呼ばれた男は、笑いながら木刀を所定の位置と思わしき場所…無造作に竹刀や木刀が入れられた竹刀立てにしまっていく。

 

そして竹刀立ての近くに置いてあるペットボトルを二つ取り、一つを少女…三ノ輪銀の額に当てる。

 

 

「あー…冷たくて気持ちいー…」

 

「まぁとりあえずお疲れ。いくら疲れていても水はしっかりとるんだぞ」

 

 

 

 

はーい、と生返事を返しながらペットボトルを受け取る銀を見ながら、男…佐久間景は座り込む。

 

 

 

 

 

 

彼は、一言で言えば「大赦から派遣された教官」だった。

 

勇者に選ばれたとはいえ、彼女たちはついこの間まで戦いとは無縁だった少女。そんな彼女たち勇者に敵を屠る刃の握り方を教え、生き残る術を授ける。

 

それが今、景に与えられた「お役目」だった。

 

 

 

 

「そう言えば佐久間さんって、バーテックスと戦ったことあんの?」

 

「ある訳ねーでしょうが。俺ただ剣術の腕がいいからって理由で派遣されたんだからね?」

 

「え、そうなの?!…てっきり戦ったことがあるから教官になってくれたのかと思ってた」

 

 

 

 

だがそんな役目に選ばれた彼自身、分からないことだらけだった。

 

本人の宣告通り、彼はバーテックスと戦った事はない。ただ西暦の時代から連綿と受け継がれてきた剣術道場の跡取りだったことが、彼の大抜擢の理由の一つだった。

 

 

 

 

「大赦も難題を押し付けるもんだ……『未知の敵と戦うためにありったけの剣技詰め込め』って、最初聞いた時アホかと思った」

 

「いや、アタシも今『アホか』って思った」

 

「……だよね?これ俺がおかしい訳じゃないよね?」

 

 

うーん……と唸る二人。

 

 

「………考えても仕方ないな」

 

「そっすね」

 

 

そう言って立ち上がり、体を動かし特訓の続きを始める銀と景。

 

 

 

―――景が選ばれたのは、『これ』も理由の一つだった。

 

 

事前の調査で、突撃能力の高さと、単純明快な思考を持つと評価された銀。彼女に短期間で戦技を授けるには、彼女が理解しやすい指導をしてくれる相手でなければならない。

 

故に、「彼女によく似た思考回路を持つ人物」でなければならなかった。

 

そして彼自身、私生活でも銀と関わりを持つ人間……幼少期から知り合いであることも抜擢に拍車をかけた。

 

どれくらい長い付き合いかと言うと。

 

 

 

「元気な嬢ちゃんだな…名前は?」

 

「あたしみのあぎん!さんさい!」

 

「みのあ…みのわ……あ、三ノ輪さんちのか!」

 

「うん!おにーさんは?」

 

「俺は佐久間景、ご近所さんってやつだ。よろしくな、銀の字!」

 

「よろしくー!」

 

 

 

 

とまぁ、こんな出会いがあったとかなかったとか。

 

 

ともあれ組織の冷たい合理的な判断が、巡り巡って近所付き合いのある二人を引き合わせたのは奇跡だった。

 

 

 

そのあと、しばらくまた竹刀で打ち合いを続け、結局2人がそれぞれの帰路に就いたのは夜の帳が落ち始める頃合いだった。

 

 

 

「はい、今日の訓練終わり!」

 

「ありがとうございました!」

 

「きちんと汗の始末するんだぞー」

 

「はーい」

 

 

駆け足で帰っていく銀を見送った後、鍵を閉めて自分も帰る景。

 

 

 

 

「……だー、つっかれたぁ………銀の字はガッツあふれて羨ましいぜ……」

 

 

大通りから離れ少し暗い、田んぼが広がる道の中を竹刀入れを担ぎながらひとり歩く。

 

 

 

 

 

―――その時だった。

 

 

「……?」

 

 

風が吹いた。そして、『自分を呼ぶ声』を聞いた。

 

辺りを見渡す。しかし周りには自分一人。

 

 

 

 

 

 

 

 

どうしてか、その声を無視できなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

……何か、今の自分が劇的に変わる出来事が起こる。

 

そんな予感がして、つい好奇心に身を任せてしまった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ…はぁ…ッ!!」

 

 

石で組まれた階段を、一心不乱に登る。

 

 

気付けば自分を呼ぶ声に従って、呆然と歩いていた。

 

 

 

 

偶然にもその方向は自分の家……山奥に構える道場のような屋敷の近くにあった、洞窟に足を運んでいた。

 

 

暗い洞窟を、明かりもつけずずんずんと進んでいく景。

 

知らない場所なら危険だが、ここは彼が幼少のころから何度も探検と称し訪れた洞窟。

 

もはや自分の庭とも言い切れるくらいに歩き慣れている場所なので、大した危険もなく進んでいた。

 

 

(確か…この奥は水たまりで…)

 

 

彼の記憶が確かなら、この奥には下手な池より深い水たまりがあるはずだ。

 

 

 

 

そして、その水たまりへとたどり着く。

 

 

 

 

 

「…あれ、光ってる?」

 

 

水面が、ぼんやりと輝いていた。

 

水底から、何かが迫ってくる。でも、不思議と怖くはない。

 

 

 

 

そして「それ」が、とうとう姿を現す。

 

 

 

「……なんっだこりゃぁ……!!」

 

 

 

一言でいうなら、それは騎士だった。

 

 

 

 

 

白い甲冑の様なフォルム、手には両刃の剣。

 

背中には巨大な翼のようなパーツ。

 

頭部には、赤い宝石を中心に三方向に分かれた角。

 

 

「で……っけぇし……かっけぇ……!!」

 

 

まるで古い昔の…「西暦」の時代のロボットアニメに出てくるような、無骨ながらカッコイイデザインの巨人。

 

未知の存在である「それ」に対し、抱いたのは恐怖ではなく、男心に響く「かっこよさ」だった。

 

 

そしてその巨人が腕を差し伸べる。

 

 

「…乗れって事か?」

 

 

巨人は答えない。

 

 

「……よっこいせ、っと」

 

 

だがそんな様子を気にも留めず、ささっと手の上に乗り込む景。

 

 

緩やかながらも前に向かって尖っている胸部装甲が開く。

 

 

中にはシートが一つと、丸い操縦桿。

 

 

「…座っていいんだよな?」

 

 

 

巨人は何も言わず、頷く。

 

 

 

「……失礼しまーす」

 

 

今更恐る恐る、断りを入れて座る景。

 

 

彼が座ったと同時に開いていた装甲が閉じられ、コクピットは密閉される。

 

 

「うぉっ」

 

 

しかし同時に周囲の状況が映し出され、まるで自分が巨大化したかのような錯覚を受ける。

 

 

「すっげぇ……今俺ロボットに乗ってるんだ…!!」

 

 

ついつい童心に帰ってしまう景。

 

 

 

 

 

 

彼が興奮する中、コンソールに文字が映し出される。

 

 

<Confirmation of passenger……Start sphere Drive Aptitude survey……〉

 

「……なんだ、この文字…英語って奴か…?」

 

 

 

 

 

 

瞬間、脳に電気が走ったような衝撃が景を襲う。

 

 

 

言葉を上げる余裕すらなかった。

 

 

 

 

そして膨大な量の知識が、無差別に景の頭に押し込まれていく。

 

 

まるで自分の中身が全部混ぜられているような錯覚すら感じる。

 

 

「う…うぉっ…うぇ……!?」

 

 

 

意識が遠のく。

 

 

だがそんな中、情報の中に引っかかるものを感じた。

 

 

「ぅ……げほっ…い、まのはぁ…!」

 

 

何かの光景か。

 

 

ぼんやりとしていたが人影が一人、巨大なモノ三つに向かって立ち向かうビジョンが一瞬見えた。

 

 

「ふぅ…はぁ……はぁ…なんなんだ…こいつ…?!」

 

 

 

 

 

その疑問に答える者は、その場にはいなかった。

 

 

 

 

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