この世界が自分の知る世界から変わってしまったことに気づいてから一か月。最初こそアニメの世界に来れたと浮かれていたが、調べるにつれてこの世界のヤバさがわかっていった。前の世界との一番の違いはやっぱりノイズだ。アニメでは『バビロニアの宝物庫から出てくる最強の対人兵器』そんな感じの設定の癒し要素だった。アニメで知っているだけだったがこの世界では現実の存在だ。あんな空気の読めるノイズさんなんていない。何より以前ネットで調べたんだが、ノイズが人を炭化させる10秒程度の動画が下手なホラー映画より何倍も怖かった。
「やっぱりノイズが問題だよなぁ、リディアンとか行ってみたいけどあのあたりノイズの発生数がめっちゃ多いからな」
ちなみに俺の予想通りあのDVDは最初からなかったことになっていた。まあ、当然だけどな。それからツヴァイウィングのコンサートの事件は去年のことで風鳴翼はもう芸能活動を再開してるらしい。たしか原作があの事件から数年後のはずだったからもうすぐなのかな?えっと…1話の時は確か響が15歳だから来年に原作なら同い年か。あれ、まだ原作が始まってないってことは今の響って…
「……どうにかしたいけど俺じゃあ何もできないな」
そもそもどこにいるか知らないし。
「はぁ~アニメの世界だからってなんでも都合よくいくわけないよなぁ。まあ、ともかく今は目の前に集中するか」
さて、今俺は父親の部屋を掃除している。受験勉強は大丈夫なのかって?まあ大丈夫でしょ。まだ4月だし。ちなみにこの掃除をすると小遣いとして1000円が俺の懐に入る。こう言うとまるで父が俺に小遣いを渡して掃除をさせているみたいだがそうではない。この掃除を俺に頼んだのは母さんだ。ぶっちゃけると俺に父親はいない。自衛隊に所属していた父は俺が10才のとき前の世界では災害の救助活動中に、今の世界ではノイズとの交戦中に亡くなった。正直なところ俺は父のことをよく知らない。子供の頃の記憶しかないというのもあるが、それ以上に父がほとんど家に帰らなかったことが大きい。自衛隊の隊員として単身赴任していたため、父と会えるのは月に1度あるかないかだった。……話を戻すと今は父の遺品の整理をしている。まあ、整理といっても大体のものは屋根裏部屋に片付けられている。俺がやることは半物置と化したこの部屋の掃除だ。
「ふう、大方終わったかな?こういう生活感のない部屋って苦手なんだよなぁあんまり長居したくない雰囲気がするんだよな。て、あれ?なんだこれ?」
なんだこれ?初めて見るぞ。見た目は1メートル位の布で包まれた三角形だな。というかこれ見た目以上に重いぞ。なにが入ってるんだ?
「よっと、さてさて中身は一体…………………は?」
―――そこには日本人にあまりは馴染みのない物、銃があった。
お、おおおお落ち着け、落ち着くんだ俺!よく考えたらこれってあれじゃね親父の形見じゃね?前の世界とは違ってこっちではノイズと戦ったらしいし…………いやいやいやそれにしても銃はないだろ!ああいうのって自衛隊のものでしょ形見だって言ったってもらえるわけないじゃん。あれ、じゃあこれなんだよ?
「あーもう!わけわかんねぇ!よし、母さんに聞こうそうしよう。うんそれがいい」
これも知らないとかないよね?だったらマジで怖いんだけど。
「……って、あれ?この銃弾丸が入ってない、のかな?マガジンが入りそうなところ空いてるし。それになんかくすんでるし、しばらく放置されてたのかな?」
あれ、ひょっとしてこれマジで形見?え?死んだ隊員全員分こんなことしてんの?こんな自衛隊がぽんぽんノイズにやられる世界で?破産しそう。
「いや待てよ、ひょっとしたらこれただ重さまで再現してるだけのモデルガンなんじゃ?まあ、そりゃそうか。てか、よく考えたら本物なわけないよな。まったく、驚かせるなよ」
それにしても、こんなの前の世界じゃ見たことないな。これも世界が変わった影響かな?こっちの父さんはモデルガン集める趣味があるとか。
「はぁ、驚いて損した。まあ、本物じゃなくてよかったよかった」
もし本物だったら捕まったちゃうからな。
「ああ、それ本物よ」
「へ?マジで!?」
「マジよマジ。実は自衛隊の寮にあるあの人の遺品を整理してるときに風鳴えーっと……弦十郎だっけ?そんな感じの名前の人に会ってね。なんでも昔、うちの人の後輩だったらしくてツテであの銃だけ回収したんだってそうよ」
「へ、へーそうなんだぁ」
マジかぁ、何やったんだよ父さん。しかしなるほど、そりゃ前の世界では見つからない訳だ。あっちにはOTONAとかいないからな。しかしほんとに形見だったとはな。というか意外と身近に原作キャラが居るんだな。びっくりだ。
「あら、こんな時間。翼ちゃんの出る番組が始まっちゃうわ」
「ほんと好きだよねSAKi…風鳴翼」
「当り前じゃない、翼ちゃんの歌はなんというかこう…パワーがあるのよ。それに翼ちゃんはねぇ――」
フォニックゲインかな?まあそれはともかく、この世界のに来て一番身近な変化はこれだな。母さんがSAKIMORIのファンになった。まあ、それは別にいいんだけどね。俺もCDとか借りて聞いてるし。最初は慣れるのにスゲー疲れたけど。
「はいはい。じゃ、俺部屋に行ってるから」
「んー」
「ほうほう、こいつは89式5.56mm小銃ていう銃なのか」
部屋で俺は父さんの銃について調べてる。ほら、やっぱり男の子はこういうの好きじゃん。触りたいじゃん。いじりたいじゃん。
「フンフフーン……おっと、いけないつい鼻歌が」
やっぱりね、銃って男のロマンだと思うんだ。て、あれ?なんかこの銃きれいになってる?さっきまではくすんでる感じだったのに。それになんだっけこれ、マガジン?もついてるし。
「あれ?マガジンなんてついてったっけ?外せるかな」
お、外せた。……………なんで中身は入ってるの!?
うわああああああああ!!
原作キャラ出したい!
めっちゃ絡ませたい!
そうだ、ノイズ出そう
次回 それでもノイズは空気を読む