テニスのお弟子様   作:テニス歴0年 HORIO

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20・達宮 VS 波動球

 

「決勝戦どうなってる?青学と…不動峰だっけ?」

 

「第一シード校とノーシード校の試合だしな」

 

「じゃあ青学の圧勝か…ん?4ー3…接戦じゃないか」

 

 決勝戦がおこなわれているテニスコートの得点板に目をやると、ギャラリーの想像以上にいい勝負をしている不動峰の姿があった

 

 ーーーーー

 

「先程の二年の石田のパワーにこの強烈なトップスピン…強いねまさかこれほどとは…」

 

 石田のパワーショットや先ほどのポイントを取った 不動峰の桜井に対して竜崎先生が一言 漏らす、一方 不動峰ベンチでは

 

「…あの1年やるな、さすがは青学と言ったところか パワーテニスの河村 それをフォローするテクニックのテニスか…穴が無いな」

 

 河村がパワーで押して、1年の達宮がドロップなどで敵を翻弄するその相性に舌を巻く

 

「そんなに難しく考え無くても大丈夫ですよ橘さん、今のアイツらはノってますから」

 

 そう言って神尾はテニスコートに目を向ける

 

「ラリーの応酬!不動峰 なんてねばっこいテニスするんだ」

 

「桜井のトップスピンのキレも増してきたよ」

 

「おいおい…不動峰サイドの方が気迫で押してきてんじゃねーか面白くなってきた」

 

 ギャラリー達もこの熱戦に熱い視線を送る、そんな接戦状態にあるこの試合が動き出す

 

 ーーーーー

 

 さすがは不動峰…並みの精神力じゃない、不動峰戦の初戦であるこの試合…流れをつくる為にも負けたく無いからね…

 

 まずはこの不動峰に傾きかけている流れを断ち切る

 

 鞘から刀を抜くようにバックハンドでボールに向かってラケットを振るう

 

 それを見て不動峰の二人は飛んでくるボールに備える…

 

 シュタン

 

 …しかし放たれたボールは二人が警戒した所と全く違う位置から跳ねた音を空しく響かせる

 

 「なっ…」

 

「何だ今のは?」

 

「バックハンドから…いつの間にフォアハンドに?」

 

 会場がざわつく中 乾先輩が眼鏡をクイッと持ち上げながら喋り出す

 

 「バックハンドのフォームから一振りのうちにラケットの持ち手を素早く持ち替える事により 相手が予測する軌道とタイミングを狂わせる技…「五月雨」俺との試合の時に使われた技だな…」

 

 ノートを片手に味方の技をギャラリー解説する乾先輩…技を見たら大体解るけど大々的なネタバラシみたいなのはやめてほしいです先輩…

 

「でもこれで奴らは達宮のバックハンド時には常に警戒せざるを得なくなった、「五月雨」…つまり逆方向へのショットに」

 

 ーーーーー

 

「どりゃあ!バーニング!」

 

 強烈な球が不動峰のコートめがけて放たれる

 

「今度は青学が押し始めやがった」

 

 タカさんのパワーによって相手の返球がおろそかになる、その球目掛けてまた居合抜きのようなフォームでバックハンドからショットを放つ…

 

「なんちゃっ…た」

 

 シュタン

 

「今度は普通に打った…でも不動峰の選手の反応が悪い…」

 

 「五月雨」の真骨頂は相手に対して二択を迫る事…どっちに飛んでくるのか考えるその時間が最初の一歩目を遅くする

 

 

 「青学1年 達宮…か、「五月雨」と言う技一つで試合の流れを変えちまいやがった」

 

「やったー!完全に青学のペースだ」

 

 

 不動峰のサーブ、今は 40ー15で次のポイントを取ると相手のサービスゲームをブレイク出来る

 

「よっしゃー!ブレイクチャ~ンス!一本集中 」

 

「そうですね…タカさん」

 

 次のポイントの意味は大きい…俺達がポイントを取ればゲームは 5ー3 次は青学のサービスゲームでかなり優勢になる

 

 

 つまりこの勝負のタイミングであれが来る…

 

 

 ふと相手のコートへと視線を向ける…間違いないな 、不動峰の石田が腕捲くりをして戦闘準備万端ってね…

 

 限界まで息を吐き 一気に息を吸い込む、俺は深く集中する為のルーティーンを行い…決戦の場に備える

 

 不動峰のサーブから始まるこの重要な局面…タカさんが返し石田が受けて俺がまた返す、続くラリー…

 

 

 ゾクッ…不動峰の石田の纏う雰囲気が変わる

 

 彼は腰を落としまるで仁王象かのように左を前に出してボールを待ち構える

 

 「行け!石田ぁ!波動球~!」

 

 

 石田の仁王象のような構えに対して俺は剣道の五行の構えの一つ上段の構えで向かい打つ

 

この上段の構えを取っている場合、斬る為に必要な動作は、極論をすればその体勢から剣を振り下ろすだけであり、斬り下ろす攻撃に限れば他の全ての構えの中で最速の行動が可能である 非常に攻撃的な構えだ

 

 

 勝負…

 

 

「ヌンッ」

 

 バコーン!!!

 

 テニスラケットから鳴るとは思えない音で不動峰の石田放たれる技「波動球」が 放たれた、その瞬間に俺は前方へと距離を詰め加速する

 

 

 激しい強烈な球…それを叩き切る!

 

 「雷鳴返し」

 

 上段の構えから振り下ろされるラケット、ボールを捉えるのはシングルシャフトの芯の部分、綺麗に体重が乗ったその打ち下ろしは固い物がぶつかる特有の重い音を立て波動球の威力そのままに不動峰のコートへと返球される

 

 「返した!!」

 

 しかしその先には腰を深く落とした石田が意思のこもった強い目で待ち構える

 

 「げげ!あの構え…連続で波動球だ」

 

 「止めろ 石田! 腕が…」

 

「ヌンッ!?」

 

 ビシッ!

 

 カランカラン…

 

 地面に音を立てて落ちるラケット、石田のラケットは初球の「波動球」を放った際ガットの真ん中の部分が破れたようだ、僅かに残ったガットに引っ掛かったもののジャストミート出来ず その反動でラケットが弾き飛んだようだ

 

 「ゲームカウント 5ー3 青学リード!」

 

 

 わーー!! っと試合に勝ったかのように盛り上がるギャラリー「スゲー技のぶつかり合いだ!」「見たかよアレ…どうなってんだ?」「河村先輩~あと1ゲームバーニングサーブで決めちゃってくださーい!」

 

 

そんな盛り上がりの中俺は ジンジンする自分の両手を見つめる、体重を乗せ完璧に芯で捉えて返したのにこの反動…やっぱりテニスってスゲー…もっと修行頑張らないとな…まるでバットで地面をおもいっきり叩いたかのような手のしびれを感じ改めて気合いを入れ直した

 

 

 決め技の波動球を返された不動峰…その後の試合展開は不動峰が粘って意地を見せるも届かず6ー3で青学の勝ちとなった

 

 試合後 竜崎先生の話を聞いた後、俺達はコートから離れた所にある水道で蛇口をひねり顔を洗っていた

 

 「タカさんダブルスありがとうございました、 試合お疲れ様です」

 

 「…お おう」

 

 「ん? どうかしました?」

 

「いや…なんでもないよ、こちらこそありがとう 達宮」

 

「さあ、応援に戻りましょうか、次は青学のゴールデンペアですもんね」

 

 「…ちょっと俺はトイレに行ってから応援に行くよ、多少の応援が遅れても大丈夫、なんたって青学のゴールデンペアだからね」

 

 「そうですね、じゃあ特等席準備して先に応援してますね」

 

 そう言って俺は特等席キープの為にコートの方へと足を進めた、ゴールデンペアの試合…ダブルスの勉強になるしあの二人の試合は見てて面白いんだよな~♪

 

 

 ーーーーー

 

 

 無邪気に試合の応援に行く達宮…今の俺はそれに合わせて無邪気に応援出来そうに無い…

 

 試合に勝てた嬉しさはある…青学が勝つ為にこの初戦の勝利はとてもデカイのは分かっている…でも素直に喜べない自分が居る

 

 試合の流れを変えたのは達宮、相手の決め球を返したのも達宮…

 

 俺はいったい何をした?…

 

 込み上げてくる自分への悔しさ 腑甲斐無さ…

 

 俺がレギュラーで良かったのか…

 

 

 

 「河村か?」

 

 突如かけられた声に振り返る

 

 「辻さん?なぜこんな所に?」

 

 声をかけたのは 辻新之助 昔空手をやっていた時にお世話になった先輩だ、らぐなれく?とかなんか言う不良集団みたいな所に入ってからは疎遠になっていた

 

 「たまたま通った道に 湿気た面した後輩がいると思ってな 近くまで来てみた」

 

 「…」

 

 「でっ どうしたよ、昔見たいに相談にでも乗ってやろうか?」

 

 不良集団に所属したと聞いたが目の前に居るのは昔と変わらない 面倒見が良い辻さんのままだった、その懐かしさのせいか俺の口が軽くなる

 

「嫌になってたんです…自分の弱さに…本当に俺なんかがレギュラーで良かったのかって…」

 

「相変わらずしみったれた事言ってんなぁ 河村」

 

 そう言うと 辻さんはピトっと手の平を近くにあった木につける

 

「そんなもんはオメーよー…強くなりてぇならウダウダする前に…」

 

 ズドン!!

 

 目の前にある木が大きく揺れ傾く、葉っぱが舞い散り、衝撃により木の幹はベキベキと音を立てる

 

「命懸けで山に籠ればすむこったぜ!」

 

 ベキベキ! ズン!!

 

 衝撃に耐えきれず折れる形で倒れる木…

 

 その一撃に一体どれだけの力がいる?…その一撃にどれだけの技術がいるのだろうか…俺に出来るのだろうか…再び下を向いてしまう

 

「ウダウダ考えるな ただがむしゃらに前見て進め、俺はそうやって強くなった」

 

 そうだ…俺に落ち込んでる暇など無い、乾や他の選手達が着たかったこのレギュラージャージを俺が着ているんだ…何をしてでも前に進まないと

 

 

「…はい、辻さんありがとうございます」

 

 「おう、少しマシな面になったみてーだし大丈夫そうだな…じゃあな、頑張れよ」

 

 そう言い残して去っていく辻さん

 

 倒れた木を見て思う…山篭もりは無理でも山にトレーニングに行こうと…今 目の前で見た辻さんのパワーと技術に少しでも近づけるのなら…

 

 

 この日の出会いをきっかけにタカさんの運命は大きく変わっていく…

 




・辻新之助…同世代でケンイチに勝った珍しいキャラです…作者はあのキャラ好きなんですが…後半全然登場すらしない悲しいキャラです(´・ω・`)

お気に入り2200超え、しおり500超え、そしてたくさんの感想等ありがとうございます大変嬉しいです。これからも皆様のご期待に少しでも答えれるようにゆっくり頑張っていきます(*´ー`*)
・次回投稿は8/27になります鈍筆で申し訳ありません(´・ω・`)
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