両親の承諾を得て梁山泊に通い始めて3ヶ月、小学校に行ってる時間と土曜日のテニス教室を除き殆んどこの梁山泊にて修行?をおこなっている
「熱ーっ じぇろにもおぉおお‼」
声にならない声が出る、漫画で知ってはいたが、俺が頭の中で考えた特訓なんて…そんなものは天国だった
今現在俺のしている特訓…
その名も 「スルメ踊り‼」
洗濯物の様に足から吊られ真下の部分に火が設置される…お腹を火傷する前に背中を、背中を火傷する前にお腹をと高速で腹筋と背筋を繰り返している
「人間追い込まれると実力以上の力が出る」
パタパタと火を扇ぎながら岬越寺先生は話しを続ける
「あと9ヵ月しか時間は無いんだ、中学テニスに何としても間に合わせたいと言ったのは君じゃないか、こんな短期間である一定の水準を越えるにはこう言う方法を使わないと不可能だ、私も本当はこんなに厳しくしたくないんだが…ほら後5分頑張りたまえ」
「絶対嘘だー楽しんでるってー 人殺し~」
ーーーーー
「動いちゃ、だめ だよ」
両腕を真横に開き 空気椅子のような体勢の俺に彼女はその台詞を告げる
トン トンと乗せられていく真っ赤なリンゴ…嫌な予感しかしない…何故なら彼女は
剣と兵器の申し子‼香坂しぐれ
あーやっぱり剣を鞘から抜きますよね…
「恐怖を克服する…修行…らしい」
「らしいって…」
シュパ シュパ シュパパン
膝や手 頭に置いてあった林檎達が一瞬で一口サイズにカットされる
「ギャアアアァ‼」
ぬっと木陰から出てきた岬越寺先生がメモをとりながら呟く
「勝負やスポーツでもっとも重要な物、それはー 勇気‼」
やっぱりあんたが考えたんかい!?
「それにしぐれの剣筋を良く見ておくように、モノは違うけれどもラケットも同様に手で持ち振っているんだからね…」
トン、トン
また積まれていく野菜…今度は茄子やきゅうりもある…今晩のおかずかな…余計な事を考えて心を落ち着ける
シュパ シュパ シュパパン
「…見えた?」
「しっかりと目を見開いてましたが殆んどわかりませーん」
「…続ける」
トン トン トン……
ーーーーー
「おらおらーっ、どんどんスピードを上げるぞ‼」
「ぎゃああ‼」
強面の大男に足を固定されて捕まれたまま前へと押し出される、急角度の腕立て伏せの体勢…顔から突っ込まぬ様に必死に手を前へと前へと出して猛スピードで進んでいく
「足は腕の3倍の力がある、なぜか!?それは人は足で歩くからだ‼オレもそう思ってたぜ‼」
喧嘩100段の異名を持つ空手家! 逆鬼至緒が上機嫌にスピードを上げてくる
「ひぃぃー押さないで~顔が地面につく~ギャアアァーー」
また木陰で岬越寺先生は呟く
「もっともてっとり早く強くなりたければ、突きをケリ並みに強くするか、ケリを突き並みに器用にするかである!by秋雨 」
「俺は蹴らないし 突きませーん」
「そうだね、でもラケットを振るのは手じゃないか。となれば足並みに鍛えるのが道理というものだよ」
「ひいいぃぃぃぃー」
ーーーーー
夕飯が終わり各自が部屋で過ごす頃
私の自室に剣星と逆鬼を呼んでいた
「どう思う剣星、逆鬼」
「元から11才にしては身体がしっかりと出来ていたね、だから秋雨どんもこうやって無茶をするね」
「はっ 良いんじゃねーのか、今日の手押し車 結局最後まで頑張りやがったし、基礎は出来てるだろうよ」
「そろそろ 耐えられると思うんだが?」
「おいちゃんもそう思うね、それにそろそろ将ちゃんの技の修行をしないと しぐれどん がぐれちゃうね」
うちには白浜 兼一と言う弟子一号がすでにいる、しかし技の修行が本格的になってくると一つ問題が発生した、彼は無手 つまり武器を使わないのが主流なのだ
この事により、剣と兵器の申し子である香坂しぐれの担当する修行の時間は激減、しぐれ本人も気にしている…
そんな時によきタイミングで未来有望な少年が入ってきてくれるではないか、テニスと言うスポーツであれど あらゆる武器に通ずる彼女なら良き指導が出来るだろう
それに彼女も初めて弟子を持つのだ、こういう特殊な形での指導は彼女自身の成長に繋がるのではないかという願いもある
「噂をすれば…見てみろよ」
逆鬼が月明かり射す庭先に親指を向ける
そこにいたのはしぐれ、私が試しに作ったテニスラケットを持ち剣の型をしている
「無表情だけど なんか嬉しそうじゃねーか」
「現に逆鬼どんも兼ちゃんに嬉しそうに技を教えてるね、しぐれどんの気持ちはわかると思うね」
「バッカ…あれだ兼一の奴が余りにも下手すぎて笑っちまうだけだ」
鼻を擦りながら外の方を向いている
…いい弟子は師を育てる、あんな真っ直ぐに夢に向かう少年はなかなかいないよ
私は目の前にあった弟子二号の育成プランのノートにある1文を書き足す
技の修行 担当 香坂しぐれ