テニスのお弟子様   作:テニス歴0年 HORIO

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4・楽しい裏社会見学(1)

3月になり青学への入学が近づいた頃

 

 「うーん、君にも実践経験を積ませたいね」

 

 「…いきなり何ですか岬越寺先生?」

 

 背中にしぐれ師匠を乗せながら 部屋に立ててある不安定な4本の棒の上で腕立て伏せをする俺、彼の優しい声は嫌な予感しかしない…

 

 逆鬼先生も馬 先生もアパチャイ先生すらも わざわざこんな基礎トレーニングを見に来ている、部屋の外からは心配そうに美羽さんやケンイチ先輩が覗いている…嫌な予感が増す…

 

 「ほら君、あと一週間で中学生になるから、そろそろ実践経験をだねー…」

 

 「テニスのですか…」

 

 「いや、ちょっとした社会見学だよ…」

 

 バッ

 

 背中に乗っているしぐれ師匠を跳ね上げ、全力で梁山泊敷地内からの逃走をはかる…この前ケンイチ先輩が行ったっていうあれだろ…クリストなんちゃらっていう殺し屋とかと闘ったっていう…裏社会見学…先生達は馬鹿なんですか?俺 はまだ小学生だぞ

 

 「くっ 戦略的撤退」

 

 庭に向かい全力疾走だ

 

 「流石ね、テニスに必要なダッシュ力が良く鍛えられてるね…だがその戦略自体が間違ってるね…今日の秋雨どんはノリノリね」

 

 

  「逃がすかーっ 秘技 畳乱れ返し‼ 」

 

 俺の進行方向を塞ぐように立ち上がる畳達…なんの…

 

 「香坂流 燕尾空風」

 

 上空に飛び上がり 迫り来る畳を回避…しぐれ師匠が教えてくれたムーンサルトに似た回避技だ…よし、庭まで出れた

 

 「ちったあ いい動きするようになったじゃねーか‼」

 

 笑いながら俺の必死の動きをニヤニヤと笑う逆鬼先生

 

 

 「…流石はボクの弟子」

 

 しぐれ師匠~褒めるのは嬉しいんですが何で鎖鎌…

 

 シュッ

 

 「そーーいっ」

 

 飛んできた分銅を避ける為に全力で横に跳ぶ俺…よっしゃー避けた…

 

 「なーんちゃ…た♥️」

 

 ジャラジャラジャラ…

 

 この音は何でしょう…正解は俺に巻き付く鎖の音ですー

 

 何でッ‼ と思って後ろを向くと庭にある木から鎖がUターンして俺の身体に巻き付いている…残念ながら脱出は失敗に終わったようだ…

 

 

 「嫌です 嫌です 死にたくないですー、ケンイチ先輩に聞きましたよ、死にかけたって」

 

 鎖を解いてくれたアパチャイさんにがっちりと抱き抱えられながら岬越寺先生に抗議する…

 

 「いいかい将人君、人間…生まれたら必ず死ぬんだ‼」

 

 「…この世の摂理」

 

 そう言う事言ってるんじゃなくて~

 

 「やれやれ、そんな言い方じゃ誰だって怯えるね。将ちゃん安心するね、将ちゃんが行く社会見学は兼ちゃんの行った奴より10倍安全ね」

 

 いやいやいや…死にかけた の危険度10分の1ってどのみち危険じゃ無いですか…

 

 「行かなきゃ駄目ですか…」

 

 そんなやり取りをしていると奥からこの梁山泊の長老、無敵超人 風林寺隼人が優しい表情であらわれる

 

 「ホッホッ 、皆楽しそうにしておるのー」

 

 「長老、実は…

 

 ーーーーーー

 

 無理矢理は良くないと長老が先生達に言って一旦解散するように伝えた…助かった~

 

 「ところで将ちゃんや、少し話さんかの」

 

 庭先の縁側に座った長老がポンポンと自分のとなりに座るように促す

 

 「はい」

 

 そう言って俺は長老の隣へと座る

 

 「まずワシから礼を言わせてくれ、どうも ありがとう」

 

 長老からの思いがけない一言に固まってしまった俺…

 

 「将ちゃんが来てくれてから、皆の表情がさらに明るくなった…皆 眩しいくらい 世界最強の てにすぷれーやー を目指す将ちゃんが羨ましく思えて応援したくなったんと思うんじゃ」

 

 「…はい、自分で決めた夢ですから」

 

 「だからこそ皆寂しいんじゃよ、もともと将ちゃんは一年間の約束でこの梁山泊に入ってきたからの…巣立ってしまうのが…裏社会見学も皆にとっては思い出づくりみたいなもんじゃよ」

 

 …?

 

 「巣立つ…なんか勘違いしてません?…って先生達 思い出づくりにあんな事しようとしてたんですか…俺ここ続けますよ…と言うか誰が梁山泊辞めるなんて噂流したんですか?」

 

 「…違うのかの?…いやの 兼ちゃんがこの前、将ちゃんが電話をしてる時の声を聞いての「4月になったら梁山泊を辞める」と言っていたと、皆に相談してきたのじゃ。その時そう言えば将ちゃんが最初に「一年で出来るだけ強く」って言っておったのを思い出しての…」

 

 「…何でピンポイントでそこだけ聞いちゃうんですかね ケンイチ先輩…、単身赴任中の父さんへの電話ですよそれ、ここの月謝を払ってくれているのが父さんなので…「(4月になったら梁山泊を辞める)…って言ってたけどまだ俺にはここが必要なんだ、中学のテニス部には勿論入部するけど…続けてもいいかい 父さん… 」って話してたんですよ、勿論、父さんのOK貰いましたよ」

 

 

 わざとか後ろ部屋の方にいる先生達に聞こえるように大きな声で言った、遠くからケンイチ先輩の叫び声が聞こえるが気のせいだと思う

 

 「ふふ、でも先生達、寂しがってくれたんですね。俺の事」

 

 「ホッホッ、そうじゃのう ここの皆は家族じゃからの将ちゃんはもう その一員じゃて 」

 

 「ふふ、裏社会見学に連れてこうとする物騒な家族ですけどね」

 

 

 俺は立ち上がり廊下の曲がり角にある部屋まで歩いていく、中には先生達と鎖でぐるぐる巻きにされた兄弟子のケンイチ先輩の姿が…

 

 「先生方、遅くなりましたが逹宮将人、地上最強のテニスプレーヤー目指して頑張るので、これからもよろしくお願いします」

 

 

 

 ここまでだったらイイハナシダナー?…で終わっていたのかも知れないが俺がその後に調子に乗って言ってしまった一言が余計だったと思う

 

 「いやーそれにしても裏社会見学で思い出づくりって先生達らしいですね、先生達が言ってると遠足くらいの雰囲気に聞こえますよ(他人事)」

 

 

 

 「…そうだね、遠足みたいなものだね 、君がここを続けてくれるのは嬉しいが思い出なんてものは いくつあっても良いものだと私は そう思うんだよ」

 

 ん…先生方…‼何で皆うなずくの?

 

 「それにね…長老がおっしゃったじゃないか、我々は家族だと」

 

 「…はい」

 

 「行こうじゃないか…皆で家族旅行に」

 

 えっ…助けて長老ー、裏社会見学に連れてかれる

 

 「ホッホッ、良いのう楽しい旅行になりそうじゃわい」

 

 「素敵、じゃあ私は皆さんの分のお弁当を作りますわね」

 

 「ボクも手伝う…」

 

 「アパ、アパチャイも味見手伝うよ」

 

 「酒忘れんなよ」

 

 「 おいちゃんカメラの準備してくるね」

 

 「うんうん、では家族全員参加という事で異議のある者はいるかい?」

 

 そんなに目をビカビカ光らせながら俺とケンイチ先輩を見ないでくださいよ岬越寺先生…

 

 

 こうして俺の…始めての裏社会見学は梁山泊メンバー全員という過剰戦力でおこなわれる事になった…

 

 

 

 敵さんに合掌…

 

 

 

 

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