魔王ランスが歴史から消えて以降、次の魔王が誕生することもないまま二年が過ぎた。
これまでの歴史を支配していた魔王が存在しなくなった今、知識人達が新たな年号を定めようとするも結局何かしらの決め手もなく、以前から使用していたものを惰性で続ける日々。
一人の青年が再び世界を周る―――――――――
父譲りの茶色の癖っ毛を母から譲り受けたゴーグルで押さえながら、世界の何もかもが楽しいと言わんばかりに笑みをたたえて歩くあなた―――エール・モフス。
かつて世界を混沌に陥れた魔王ランス…父を救うために世界各国を周って兄弟姉妹を集め、父を業から解放し父と共に魔王の業自体を切り捨てた。
言葉にすれば短いものだが道中には数え切れないほどの困難と共に喜びがあった。
そんな波乱万丈だった1度目の旅が終わり、兄弟姉妹との一時の別れを済ませ、旅を通じてかけがえの無い友となったドッスやワッス、長田君とも別れを告げて実家へと戻ったあなた。
旅の間にあった様々な経験を母に話す中、沸々とあなたの中から湧き上がる想い。
それを感じ取ったのか、母はいつもの笑みを浮かべながらあなたにこう言った。
「エール、あなたはまた旅に出たいのでしょう」
確信に満ちた問い掛けをされたあなたは、ややあってこっくりと頷いた。
「ふふふ、やはりあなたもお父さんに似て冒険が好きなんですね。男子三日会わざれば刮目して見よとは言いますが数ヶ月も旅に出たあなたならそんなものではおさまらないのでしょうね」
あなたに父の面影を見た母はやはりどこか可笑しそうに笑うが、しばらくして居住まいを正してあなたに向かい合う。
「ひとつ、約束をしましょうか」
「魔王がいなくなって以前とは比べ物にならないくらい世界は平和になりました。しかし危険というものは何かしら潜んでいるものです」
「旅で経験を積んだあなたならば大概のものは退けられるでしょう。それでも避け得ないものというのは往々にしてあるものです」
「どんなことをしてもいい。どんな目にもあってもいい」
「ただ―――あなたが無事に帰ってきて、旅の思い出に母に話す事。これだけを約束してください」
そんな母の言葉に、あなたは――――――
>約束するまでも無い
>それが一番の楽しみだから
>絶対に帰ってくるよ
>―――――――母さん
そしてあなたは世界を周る。
今度はどんなことが待っているのか。
堪えきれぬ笑みを浮かべて、あなたは再び一歩を踏み出した。
……ーーーぃ。ぉーーーーーーーーーーい。
後ろから声がする。なにやらさっそく楽しそうな気配を感じて振り返ると。
「うおーーいエールっちゃーーーん!!何で俺を置いてくわけーーーーー!!!!」
どうやら長田君が追いかけて来ていたようだ。
いつかの旅の始まりと同じような展開にあなたはくすりと笑い、前を向き直して―――全力ダッシュ。
「ちょっと!?マジで置いてく気!?」
同じような旅の始まり。なのにいつかのそれを越えるワクワク感。あなたは気持ちを抑え切れずつい走り始めてしまった。
「んもーーー!!!!相棒ったらいつもおかしな行動する奴なんだからーーーー!!!!!」
長田君も叫んで全力ダッシュ。新しい旅は始まったばかり。
ここから何やかんやあって長田君と共に過去の世界に跳んで父親の近くで一緒に冒険を繰り広げるお話を書きたかった。
大筋は変わらないけどエール達のお陰でランス君が早めに丸くなってたりシィルちゃんに早々に想いを告げてたりフェリス他の不幸が和らいでたりと色々平和になってるお話書きたかったけどまぁ膨大過ぎて書ききれないよね、というお話。
こんなふわふわした思いつき程度のご都合なんぞ偉大な先人たちがもうとっくに面白く書いてるしね。
ドッスとワッスは村の一員として力仕事に精を出す日々なので付いていくに付いていけなかったという捏造設定。