泥水を啜り、屍を作り出し、それを貪り。
彼女も、その一人だ

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その日は普通の日だったんだ。
なんてことない、いつも通りの日だ。
…崩壊は、突然やってくるものなんだ。


誰もが、生きるために戦う。

───死にたくない

 

ぬかるんだ地面に足を取られながら、走り続ける。

 

───死にたくない

 

雨の音すらかき消す爆音を聞きながら

 

───死にたくない

 

なぜ私がこんな目に、なんて考える余裕もない

 

───死にたくない

 

後ろの死神の標的にされませんように、と願いながら

 

走っていると、いつの間にか廃品置き場に来ていた。

この棄てられた街に前からあった、唯一名残がある場所。ここになら、隠れる場所があるかもしれない。

そう考えた私は、すぐに廃品や鉄屑が山のようになったそこへ登った。

上にはハッチのようなものがあった。

廃品を避け、力づくでそれを開くと、中には椅子があった。

すぐさまそこに飛び込み、ハッチを閉め、息を殺して潜む。

どうか、死神が気づきませんように、と。

 

 

 

…どれほど、時間が経ったんだろうか

物音一つしないく暗い空間で、何時までこうしていたらいいのだろうか?

 

───いい加減、いなくなっただろう。

 

そう思い、ハッチを開けようとした。

だがハッチはビクともしない。

まるで固定されたみたいだ。

 

「嘘、嘘でしょ、開いてよ」

 

我武者羅にハッチを開けようとする。

開かない。

弱いながらも拳を叩き込んでみる。

開かない。

焦るうちに座席で滑り、盛大に座席の前の操縦桿やその他の機械を蹴ってしまう。

恐らく、そのうちに大事なボタンがあったのだろう。

前が突然明るくなった。

それと同時に座席から金属のシートベルトのようなものが伸び、私を拘束する。

未だ明るさに視界を奪われている私の耳に、こんな声が聞こえてきた。

 

「おはようございます。パイロットデータを承認しました。貴方の帰還を歓迎します。ようこそ、戦場へ。」

 

それが私が初めてAC───アンガーゲート───を動かした時だった。

 

 

 

 

 

赤い機体

まるで憤怒したような赤

何に怒っているかなんて私は知っている。

自分を奪った敵だ。

明瞭にどんな敵か、なんて知らない。わからない。

だが、敵へ対する怒りはわかる。

 

『ゴーレムはまだなのか!?』

『A-84で持ちこたえろ!』

『戦車部隊!早く来てくれ!』

 

混乱した敵の声が聞こえてくる。

右腕のガトリングガンGGA-206を乱射し空のハエ共を撃ち落とす。

ハエ共を撃ち落としたら、今度は地上だ。

地上のアリをバトルライフルAu-C-B19で掃除する。

肩部に追加弾倉があるので余裕はまだまだある。

そろそろゴーレムが来るかもしれない。

リコンを近くの建物、壁、柱、計三ヶ所、自分を囲い死角のないようにし、スキャンモード。

やはりゴーレムが三機、こちらへ向かってきている。

両腕パルスキャノンが二機、盾持ちヒートキャノンが先頭に一機。

角からでてきたところを横からコックピットごと蹴り壊す。

カメラに飛び散る装甲の破片と肉片が見えた。

パルスキャノン二機が慌ててこちらを狙うが、真ん中のパルスキャノンを先頭の機体の残骸を蹴って上空へ飛んで避け、最後尾のパルスキャノンをハイブーストで避ける。

上空からならコックピットが狙いやすい上、装甲も薄い。

一機にヒートキャノンを真上から何発かぶち込み、もう一機にはKE弾の雨を降らせる。

敵は大凡倒しきっただろう。

ここから撤退していく輸送機が見えるが、私の任務は敵勢力をここから退けること。

既に任務は達成された。

虚無感と達成感が入り交じった相変わらずの勝利。

…疲れているだろうか、近いうちに休暇をとろう。

偶には許されるだろう。

 

『次もよろしくお願いします。ミア・レッドフィールド様。…もし宜しければ、引き続き依頼を遂行してくれないでしょうか?』

 

…どうやら、私に休暇は訪れないらしい。

 

「…わかった。やるよ。」

『ありがとうございます。では、このままミッションの説明をさせていただきます。作戦目標は敵ACの二機の撃破。一機はキャスパリーグ。もう一機はワルキューレです。貴方の機体の防御力では、KE武器が多いキャスパリーグ、及びスナイパーキャノンを備えた武器腕のワルキューレとの相性は最悪でしょう。また、貴方の主力のGGA-206も、ワルキューレのKE盾を相手にするとまともに通らないでしょう。ハンガーのレーザーキャノンとバトルライフルを使用した撹乱戦闘が有効でしょう。また、こちらの部隊も貴方の援護に当たります。貴方の技量であれば、負けることはないかと。我々は、あなたへ期待しています。どうか良いご報告をお待ちしています。』

 

その声を最後に通信は切られる。

作戦領域はここから遠くない。

敵を殲滅する。私はそのためにまた、機体を動かした。

いつも理由は変わらない。

…気分転換が必要だ。

明日か明後日あたりに休暇をとろう。

休暇をとって、静かに本を読もう。

ラジオを流して、不味い飲み物を飲みながら不味い飯を食い、何時に作られたのかもわからないつまらない本を読む。

…そうだ、それがいい。

明日は、ゆっくり休もう。


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