ナイトキングー勇者の王者と呪われし魔王たちー 作:レイガース
伝説の勇者と幼少ラルクの夢
別の世界の、遠い銀河の彼方にある地球に似た惑星ソールは、かつてないほど闇に覆われていた。
三人の一行は、魔王の棲む居城の近くにいた。
「アラン。準備は出来てる?」
「ああ、大空の聖剣も手に持ってる!」
勇者アランは聖剣をかざし、仲間に見せる。
「さっさと行きましょう。敵は目の前です」
僧侶のような少年がアランに言う。巨大な城がそびえ立つ。アランたち一行は前へ前へ進み、静か過ぎる気配に心臓をドクンドクンいわせながら歩いていく。大扉を開けると、近くに魔王の姿がある。アランたちは魔王の前へ進み、武器や拳を構える。
『よくぞ来た、その聖剣で我を倒せるか。とくと拝見させていただこう!』
魔王は眩い光を放ち、辺りが霧に覆われて見えなくなっていった。
北の魔王の居城がアランたちに陥落させられようとしている頃、南の海底大魔城でも伝説の盾を振りかざして戦っている一行がいた。
「凄いぜ、ユーメ!お前はやっぱり勇者の素質あるぜ!」
格闘家らしき男が勇者の姿をした少女を褒めていた。
「私たちには、貴様のような魔法に囚われる者たちはいない」
『グフフフ、我を倒せるか試してみるが良い!』
魔王は火炎を放って、ユーメたちを炎の渦へ巻き込む。
北、南の魔王は居城が戦っている時、西の閉ざされた山々のある魔城でも、新たな勇者一行が戦闘を始めていた。その勇者の体には、伝説の鎧が装備されており、魔王の攻撃を軽く凌いでいた。
「さすが、その鎧は強い。防御力が桁違いだな」
その他の武器は伝説の鎧と違ってある程度の強い武器だが、鎧を装備している勇者ジーグは勇者としてはかなり強かった。
『ジーグよ。その鎧で我を倒そうとは笑わせる。お前の仲間と剣をへし折ってくれるワ〜!』
北、南、西の魔城で最大の強い伝説の武具、防具を得た勇者たちが戦っている。世界の命運を背負ったこの戦いには、まだ幾つか足りない武具と法具があった。
物語の十数年前、ラルクの住む村コッツンでは、ラルクがベッドから落ちていた。恐ろしい夢だった。世界が大きな闇に覆われ、恐ろしい悪魔のような存在が世界を支配しようとする夢だった。幼少のラルクにとって、それは悪夢でしかなかった。
「どうした、ラルク。また恐い夢でも見たのか?」
ラルクの父、ゴルグはラルクの頭を撫でながらラルクの涙を拭き取った。その時、ドアがバタンと開き、
「ゴルグさん大変です!隣の町が良く分からない生物に襲われています」
「何だと!分かった。この子を守っていてくれないか?」
村人は頷き、ラルクを預かってゴルグの後を目で見守る。
ゴルグは隣町に着き、襲われている家々に入って奇妙な物体と戦う。戦っていると、ゴルグは手を止め、
「お前たちは何者だ!なぜ、町の人を襲う?」
『グヘヘ、知ったことか。我らが魔王様の命令で、世界各地に魔物が放たれた。俺たちはここを襲うよう命令されただけだ』
何と奇妙な物体は魔物だった。ゴルグは魔物を斬り、すぐに他の家々を助けていく。襲撃を終わらせると、大きな音とともに、二倍以上の大きさを持つ魔物が現れた。
『よくも儂の部下たちを倒してくれたな。儂は魔王バグレン。貴様だけは生かしておかん!』
ゴルグとバグレンの激しい戦いが始まった。バグレンは雷撃の魔法や爪の直接攻撃などをして、町に被害を大きくする。ゴルグは町を離れ、バグレンを町から引き離して戦い続ける。ゴルグの攻撃が少なくなってきたのを見計らい、バグレンは巨大魔法を投げる。ゴルグは剣で巨大魔法を受け止めるが止めている間に、バグレンに後ろを取られ爪で背中を切られる。
「ぐっ!」
『トドメだ、ゴルグとやら!喰らえ、ダークフレイム!』
ゴルグは足を踏み外し、海に落ちる。巨大魔法もゴルグを追って水しぶきを上げながら、音を立てて爆発する。
『さあ、部下たちよ。再び、この地を魔物で埋め尽くせ〜!』
バグレンは無数の魔物を召喚して、各地の村や町が襲われる。主人公ラルクは夢の通りになった現実を知り、慌てて村から逃げ出す。そこから、ラルクの冒険が始まる。
ラルクは村を逃げ出して、一人孤独に彷徨っていた。ラルクはお腹を空かせ、ある町のある民家の前で倒れた。誰かが倒れたような音を聞いた家主はドアを開け、衰弱している小さい子どもに驚く。
「世界がこの有様じゃあ、この子も酷い目にあったんだね〜。とりあえず、家で寝かせよう」
家主のおじさんはラルクを抱いて、家のベッドに寝かす。ラルクは酷い衰弱状態で、熱も出していた。おじさんは神父や医者を呼び、看病に当たった。
「数日前、つい最近、息子が旅に出たばかりだってのに。それにしても、あの子はなぜ旅に出たのか。そしたら、急に世界が魔物に襲われるようになった。この子に知り合ったのも、何かの運命かね〜」
おじさんは息子のことを考えながら、ラルクの熱が治まるまで待った。まだ五、六歳の子どもが衰弱するまで歩いているとは、それはとんでもないことだ。こんな状態じゃ、いつ魔物に襲われてもおかしくない。
太陽が何度も上がっては下がり、ラルクは家主のおじさんに料理をご馳走になり、明るい笑顔を取り戻しつつあった。けれど、ラルクは熱で倒れている間、また恐い夢を見ていた。何度も同じ恐ろしい悪夢を見た。勇者たちが魔物に殺されていく夢。希望の力があと少しで揃うはずが、その希望が現れず、勇者たちは望み果たせぬまま倒されていった。
「おじさん、聞いていい?」
「何だい、ラルクくん?」
ゴクン、とジュースを飲み干し、ラルクはおじさんの顔をジッと見る。
「この世界に、伝説の武具とか防具とかってあるの?」
おじさんは手を組み、困った表情を見せた。
「実は無いんだ。名刀を作れたり、防具を作れる名人級の職人の噂は聞いたことある。それに、最高の素材オリハルコンの噂も存在すると聞いてある。だけれど、勇者に匹敵する人はいないし、それに似合った武器や防具を作った人はいないんだ」
そうか、とラルクも困った表情をする。ではなぜ、自分はこんな恐ろしい悪魔を見続けるのだろう。ラルクは平穏で無くなった世界に、とても落ち込んでいた。父のゴルグを魔王によって引き離され、生きているのか死んでいるのかも分からない。
そんなある日、おじさんは驚くべき昔話を語った。
「これは、私の爺さんの話でね。どこかに、勇者を誕生させる神殿があるらしい。でも、勇者は現れたことがないし、その神殿を見た人はもうこの世にいない。いや、爺さんすら知らないんだ。ただ噂では、勇者となるべき存在が現れた時、その神殿も勇者になるべき子どもの前に現れるらしい」
ラルクは目を輝かせた。やはり勇者は存在する。ラルクにとって、その情報は嬉しいものだった。ラルクはおじさんに身支度を整えてもらい、まずは神殿に近いとされる国、オルブライトに向かうことにした。おじさんは少しだけラルクに、棒などの子どもでも扱える技を教えて、自分の身を守れるくらいにした。
「おじさん、助けてくれてありがとう。僕、頑張って探して見せるよ!」
「私の息子に会ったらよろしく言ってくれ。私も心配していつでも帰りを待っているからと」
ラルクは頭を下げて旅立つ。もう逃げ出したくない。子どもの自分でも、何か世界を救える力はあるはずだと。ラルクは、異国オルブライトに向かって歩いて行った。