ナイトキングー勇者の王者と呪われし魔王たちー 作:レイガース
序章の第一話から急展開の第二話へ。ラルクはゴルグの仇を討つまでの力を手に入れるのか。
異国オルブライトは、国として機能しており、村や町とは遥かに出来が違った。神父や宿屋も立派に作られており、ラルクがまだ読めない書物がたくさん置いてあった。ラルクは好奇心旺盛で少しずつ文字を習おうと頑張った。けれど、ラルクは文字が読める毎に違和感を覚え始めた。ラルクの中に、不思議な力が宿り始めた証拠であった。
ある夜、ラルクはベッドでまたうなされていた。今度は、幾つかの町や神殿が消えていく夢。
「大丈夫かい、ラルク」
何も分からないラルクを見て、ラルクをベッドのある自分の家に招き、さらに食事を用意してラルクを受け入れてくれた優しいお兄さん的存在だった。彼の名はグイン。謎多き青年だったが、教師としては一流だった。
「また見たんだね、恐い夢を」
グインはラルクを少し起こし、布的汗を拭く。グインはある程度は勘付いてはいたが、詮索しないように心掛けていた。
「古い書物を見ていたら見つけたよ、ラルクの探している神殿の在り処をさ」
「本当、ですか?」
グインは頷き、埃を全て拭いた綺麗な書物を取り出した。グインはページをめくり、ラルクに見せる。
「大き水の円を描きし場所、月が満ちた刻の日に現れるだろう。訳すと、『満月が現れる、満月が湖と一体化して重なる場所』ってこと。ただ、この後に続く言葉を訳すと、『100熱に一度、満月と湖が重なる場所』みたいだね」
グインは地図を取り出して、指で場所を示す。
「あった。東にある、大きな湖がある。明日、行って確認してみたらいいよ。満月の日はもう少し調べてみるよ」
グインはラルクが落ち着いたのを見て、奥の部屋へ戻っていく。ラルクは地図を見る。古の湖と書かれている。ラルクはベッドから起きて、自分の袋に荷物を入れた。ラルクには感じ取れていた。明日がその日だと。
日が昇り、グインがラルクの部屋に来た時にはラルクの姿は無かった。
「やれやれ、あの子ったらせっかちだね〜」
グインは移動魔法を唱え、家から消える。
ラルクは地図を確認しながら、神殿が現れる湖の近くまで辿り着いた。今は満月の時間ではない。けれど、ラルクは何かに引き込まれるように湖の中に落ちた。ラルクは目を開けると、目の前に大きな神殿がそびえていた。
「誰だね、こんな夜中に神殿に来た子は」
神々しい衣服をまとった男は、気絶しているラルクを見て溜息付いた。男はラルクに両手を叩いて起こした。
「この世界の子じゃないね? まだ力を操れる年齢には達していないようだ」
「!!!」
男は笑って、ラルクに手を伸ばしラルクを立たせる。
「私はオーディン。君の名前は?」
「僕はラルク。ここはどこですか?」
ラルクは立ち上がり、オーディンに尋ねる。オーディンは魔法で地図を映し出す。
「ここは、いや、この世界の名はオプテス。君らの世界とは別の世界。地図ももちろん、見たことのないものばかりだろう」
ラルクは自分の持っていた地図を確かめ、まるで違うことが分かった。海の流れや形、町や村、城が位置するところまで全てが違っていた。
「ところで、君はどうして入り込んでしまったのかな?」
「えっと、勇者が生まれるという神殿を求めて来たんだけど、そしたらここに・・・」
オーディンは腕を組み、思い当たる何かを思い出そうとした。オーディンが腕を解くと、こう話す。
「あの方の神殿かもしれない。もしかしたら・・・」
けれど、その話をしようとした矢先、神殿の中から一人の兵士が走ってきた。
「大変です、オーディン様。地上が魔物に襲われ始めています!」
「あの子は今どこに?」
兵士の話を聞き、オーディンは地上界のある町を映し出す。そこに、仲間を連れた似たような歳の子どもが戦っていた。
「アラン。私たちが援軍を送るから、どうにか耐えてくれ」
オーディンは兵士に援軍要請を出し、地上界を守ろうと戦いを開始する。
「ラルク、君は元いた世界に戻るといい。そろそろ、満月の時間。そこの噴水に飛び込むといい。健闘を祈る」
オーディンは魔法を唱え、噴水に異界のゲートを作る。ラルクは飛び込み、自分の世界へ帰る。
ラルクの世界はもう夜空が出ていた。ラルクが目を凝らして見ると、目の前に神殿が現れていた。門の石像はドラゴンの像があり、その隣からは太陽の顔をした石像が並んでいた。ラルクは中へと入り、奥へとどんどん進んでいく。
「オーディンから言伝があって聞いております。世界に選ばれし者ラルクよ、よくぞ来ました」
神殿の主は微笑む。女神の姿と手に矛を携える女が椅子に座っていた。
「私はアテナ。ギリジア時代からこの世を見守ってきた、光の女神です」
ラルクは前へ進み、アテナの前に立つ。ラルクを間近で見た女神は、ラルクの頬を触り、ゆっくりと手を離す。
「大いなる予言。この世に初めて、勇者が降り立つ時代が参りました。他世界ではもう幾人の勇者が誕生しております。ですが、この世にまだ勇者が誕生していないのをいいことに、魔王はこの世を支配せんと攻撃してきました。ラルクよ、勇者になるために来ましたか?それとも勇者を探しに?」
ラルクは首を横に振る。
「どっちもです。勇者に成れるなら、僕は勇者になりたいです。本当は勇者を探しに来たのですが」
女神アテナはそれを聞き、矛をかざして隣の扉を開く。
「そこに入れば、勇者に成れる素質を確かめられます。もし、勇者に成れる素質があるならば、勇者に成るまで出られません。いいのですか、ラルク?」
ラルクは頷き、部屋へ入っていく。
部屋に入ると、鉄の大きな匣や三角錐のような木箱が無数置いてある。遠くには湖があり、茂った木や枯れた木材などもたくさんある。
「ここは、勇者になるための訓練場所であり、まずは戦士などの力を熟練してもらいます。色々試して少しずつ上げていきましょう。まだあなたは子どもです。あなたが勇者を目指すなら、少し歳を取る時間を覚悟しなければなりません」
ラルクは反論できなかった。父親ですら、魔王に勝てなかったのだ。子どもである自分が勝てるはずがない。世界を救うには、支配されたとしても勇者になってからでも遅くない。
「数年です。まずは勇者になる素質を確かめます」
技も魔法も覚えていないラルクは、どういうもので試されるか内心ドキドキしている。女神は木箱を一つ魔法で移動させる。
「この木箱から始めます。技は 聖拳突き、魔法はメラを覚えられるかです。三日で習得できたら、どちらも見習いの位を授け勇者になる素質を認めましょう」
ラルクの過酷な試練が始まった。女神は神の力を持っているので、傷を治すのは容易い。手や足が怪我しても大丈夫と言っている。
三日目が経った。ラルクは魔法の泉で得た魔力を使い、木箱をメラで燃やし尽くす。聖拳突きは精神の滝で鍛え、技の基礎を覚えて破壊した。常人では魔力を得られないため、普通に探しても数年かかる魔力の泉がないと覚えられない。ラルクのために、女神が用意していた。基礎の基礎なので、当たり前だった。
「基礎は認めましょう。次は発展です。一週間与えましょう。銅の鉄匣を破壊、または魔法で飛ばしなさい。子どもでこれが出来たら、凄いことですよ?」
子どもの体力で重い鉄匣を破壊することは常人では無理だ。女神は技や魔法名を言わない。自力で会得し、突破せよと言っているようなものだ。ラルクはさらに過酷になった試練に、諦めずに痛いのを我慢してぶつかることにした。女神アテナは微笑み、ラルクの成長を見守る。世界は魔王の手に収まるには時間の問題だが、魔王も簡単に世界を手に出来まい。人間たちも戦って抵抗するだろう。ラルクが心配することはない。
ー第三話に続くー