ナイトキングー勇者の王者と呪われし魔王たちー 作:レイガース
七年後の世界ー魔界樹の支配ー
ラルクは七年の時を経て、勇者の称号を手にした。でも、真の勇者ではない。まだ見ぬ武器や防具、法具を探し、身に付けてこそ勇者の道が始まる。技や魔法を身に付け、覚えただけでは一人前といえないのだ。
「行きなさい、勇者ラルク。世界は七年の時を経て、平穏な日常は失われつつあります。魔王を倒し、一刻も早く世界に平和を取り戻すのです!」
ラルクは開かれた大扉に立ち、広大な世界に目を向ける。長かった試練や訓練の日々。その日々の中でも、父ゴルグが倒された日は忘れたことばかりないのだ。ラルクは一歩足を踏み出していった。
グインがいた町は、魔物たちに破壊されて廃墟になっていた。多くの町や村も同じように破壊されていると噂を聞く。
ラルクは少し離れた王国へ入り、仲間を集める旅に出る。そこで、奇妙な話を耳にする。
「聞いたかよ、国王の話? この頃、様子がおかしくて、魔物の軍勢まで取り入れようとしているらしいぜ」
「聞いた、聞いた。優しい王様だと思ったのにな〜。人はやっぱり権力で変わるのかね〜」
町人たちの話を聞き、魔王が国王を操っているかもしれないとラルクは思った。ラルクは城に入るため、警備の目をかいくぐる。ラルクの眼は、邪気を感じ取る。魔王を倒すために勇者の少年を与えられた時に得た力だ。窓際から、厳重な警備の城内を見回す。城内の至るところに、魔物が警備兵に化けているのが分かる。近くには本物の警備兵もいるので、倒そうとすれば見つかる恐れがある。
「何してるの?」
ラルクの後ろにひょっこりと現れた少女は、ラルクを不思議そうに見ている。
「近頃、お父様の様子がおかしいのは分かるの。映し身の鏡さえあれば、真実が分かるっていうけれど、私じゃ場所しか分からないし」
ラルクは映し身の鏡さえあれば、城内の魔物たちを倒せると知り、どうすればいいか迷った。王女を連れて行けば大問題になるのは確実だろう。
「私ね、ミレイっていうのよ。剣術は習ってるんだけど、まだ半分しか習得してないの」
その歳で半分ほど習得していれば上出来である。
「城の抜け道教えてあげる。ねえ、私を連れてって!お願いします!」
途中、断ろうとしたラルクは、ミレイに鋭く睨まれ、仕方なく抜け道を出て町を出た。
「近くに馴染みの店があるの。そこで、武器などを調達しましょうよ」
ミレイに引かれ、雑魚モンスターを倒しながら金を集めて、武器屋と防具屋に入った。ラルクは武器を見回し、装備出来そうな武器を手探りで見つけ、試しに扱ってみる。
「じゃーん。見なさい、ラルクくん。昔、お父様が買ってくれた私専用の武器と鎧よ。ここに預けていたの」
まるで女の鬼武者である。ラルクは震え上がりそうになるが、その時に手に掴んだ武器が、ラルクを興味に向ける。
はがねの剣だ。近くにはがねの鎧もあり、ラルクは目を輝かせる。はがね系の武器や防具は高いが、この国に来るまでだいぶ貯まっていた。
ラルクははがねの剣と鎧を屋主に指差し、金を払う。王女ミレイは国民の金を見て、ふむふむ、と金銭感覚を見る。
ミレイは地図を借り、屋主に相談を持ち掛けた。屋主は頷き、ミレイに色々と話をする。
「近くに、鏡の在り処を知る人がいるそうよ。遠いけど、そこの村に行けば情報だけは手に入るかもしれないわね」
ミレイは屋主にお辞儀をして、ラルクを店から引っ張る。ミレイはラルクが何も知らないと思っているのか、どんどんトントン拍子に話を進めて行く。こんなのが次期女王でいいのか、ラルクは心配だった。
写し身の鏡があるとされる、反射鏡の塔に向かう。そこには、反射されて写し出された偽物の塔があった。ラルクとミレイは、一つずつその塔に入ることにする。魔物と遭遇する割合は少ないものの、出てくるシャインドラゴンは手強く経験値稼ぎにちょうど良かった。
「やっぱり北じゃん。東西南は調べたけど、北は調べていないものね。行くわよ、ラルク!」
「ちょっと〜!」
ラルクはミレイに引っ張られ、北の塔の最上部へと進んで行く。北の塔の最上部には、写し身の鏡を護るドラゴンの石像が立っていた。ミレイが鏡を取ろうとすると鏡は奥へ引っ込み、石像が動き出した。
『汝ら、我の護りし鏡を取らんとせんとするならば、生かしておけぬ』
ラルクとミレイに、ミラードラゴンが立ち塞がる。
ラルクはミラードラゴンに魔法メラゾーマを放つ。だが、ミラードラゴンの鏡の盾が跳ね返し、ラルクにダメージを与える。ミレイは魔法が効かないことが分かり、魔法以外の物理攻撃でダメージを与える。ミラードラゴンが動き、凍える吹雪を使ってくる。ラルクとミレイは物理攻撃を繰り返し、あと少しのところでミラードラゴンに打ち勝つ。ミラードラゴンは消え、写し身の鏡が表に出る。
「これが写し身の鏡。よいしょっと」
ミレイは真実の鏡を手に取った。その時、大きな音とともに、黒雲が二つ現れる。ランプの魔人とファントムシャドウが姿を見せる。
「魔王様の命令で、貴様らを殺しに来ました。弱っているところ獲物を狙うのは、楽しいですね〜」
体力が少なく、魔力しか残っていない2人は回復を専念しながら戦うことを決意した。しかし、突然空間が歪み、目を開けたら敵がいなく同じ最上部にいた。
「あれ?私たちどうなったの?」
とりあえず、塔から出ることにした。不思議な地図を持っていたミレイは、地図を見て驚愕した。地形や位置の場所が大きく変わっていたのだ。近くに城下町があるが、それが知っている町かどうか分からない。
「行ってみましょう。何か、情報が掴めるかもしれないわ」
「そうだね」
東北に位置するお城に向かったラルクとミレイは、魔物と一切出会うことがなく町に着いた。町は賑やかで、活気づいていた。持っていた鏡が時々動くことがあったが、敵の気配もないのでラルクはそのままにしておいた。
「変な感じ。見て、ラルク。空の色を!」
ラルクは空を見上げると、太陽が二つ浮かんでいる。一つは紫、もう一つは赤。ラルクは空を見続けていると、雲が集まり黒雲となって闇色に染める。魔物の気配が急に強くなり、無数の魔物の大群が黒雲から襲ってきた。ラルクとミレイは魔物を倒していくが、数が多過ぎて倒し切れない。
「食らえ、ギガデイン!」
勇者しか使えない魔法を誰かが使っていた。ラルクも続けて同じギガデインを放つ。
「君たちはこの世界の人じゃないね。俺はジーグ。君と同じ勇者さ」
青年の勇者ジーグは、仲間と共に城下町に襲いかかる魔物たちを倒していく。すると空間が歪み、再び元の世界に戻ってきた。ランプの魔人とファントムシャドウは、かなり力が弱っている二人を見て、今度こそ倒そうと攻撃してくる。けれど、鏡の壁に阻まれてランプの魔人とファントムシャドウは戦うことができなかった。
「行きましょう、ラルク。ここから出るのよ」
反射鏡の塔から脱出した二人は、追ってくるランプの魔人とファントムシャドウに魔法をぶつけながら、町の近くまで辿り着くが追いつめられた。それを、武闘家の男が助けに入る。
「俺はヤッサンっていうんだ。話は後々」
ヤッサンは二体の魔物をものともせず、会心の一撃で倒していく。
「おのれ、ゴルグの残し遺産め」
ランプの魔人はそういい残し、力尽きて消滅した。ヤッサンはこちらも気絶した二人を見て、担いで宿屋に向かった。上空では、邪気をまとった魔物が見ていた。
「魔王様に知らせないといけないかもしれませんね。ゴルグが生きているのなら、早く見つけ出さないといけませんか」
上空の魔物は姿を消した。ラルクに恐るべき危機が迫っていた。
ー第四話に続くー