INFINITE・GREASE   作:オーマピジョン

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青羽「ISを動かしてしまった猿渡一海はIS学園に入学する。フランスとドイツからの留学生、シャルルとラウラにカシラは奔走されるのであった……」

セシリア「まさか私の料理が美味しくなかったなんて……」

青羽「いや、当たり前だろ。レシピ聞いた時俺達顔真っ青になったわ」

一夏「だ、大丈夫だよ!セシリアだって沢山勉強すれば、上手くなるって!」

セシリア「一夏さん……!分かりましたわ!一海の下で、料理の腕を積んできます!」

一海「教えるコッチの立場になってくれ……!」

青羽「頑張れカシラ」

一夏「頑張れカズミン」

一海「他人行儀みたいに言うなぁ!うぅ……第9話・前編、始めてくれ……」


冷徹のシュヴァルツェア・レーゲン 前編

「ここが君と僕の部屋。自由にしていいよ」

「ありがとう、幻徳」

 

ドアを開けて部屋へ歓迎する幻徳。シャルルは部屋を見回している間にコップを取り出した。

 

「コーヒーはいる?」

「ありがとう。喜んで」

 

幻徳はインスタントコーヒーを出して、水を沸かし始めた。その間に手のひらサイズの端末を机に置く。

 

「それは?」

 

端末に気づいたシャルルは幻徳に聞いてきた。幻徳は笑顔で答える。

 

「コレ?僕のISのデータ」

「ッ!?」

 

それを聞いたシャルルは息を呑んだ。幻徳はお湯が沸騰したのに気づいてミルクと砂糖を探し出した。その間にシャルルは端末へ近づくと、それを取ろうとする。

 

「動くな、デュノアの息子」

 

ガチャリとシャルルの後頭部に何かを突きつけられた。銃か何かなのだろう。シャルルは端末を机に置くと、その場で立ち尽くす。

 

「な、何で……!?」

「デュノア社が経済危機に陥っていたのは既に知っていた。お前はデュノアの子。目的は織斑一夏、猿渡一海からデータを手に入れる事。『俺』が警戒するのは当たり前だろう?」

 

図星だった。

シャルルは幻徳の雰囲気や態度の変化に戸惑っていた。氷室幻徳のデータだけは正確な物は手に入れる事は出来ていなかったのは知っていたが、それでも彼の正体の不完全さに恐怖すら感じる。

見えない姿。まるで、煙を纏っているような。

 

「それに、お前は男では無いはずだ」

「……ッ」

「……図星だな。そもそも、簡単にISに乗れる男子が現れるはず無いだろう?男子としての素振りも粗がありすぎる。デュノアの奴らが焦るのも分かるが、ここまで来ると無能の一言しか出ないな」

 

呆れた様に言った幻徳だったが、シャルルが銃を払いながらポケットから何かを取り出した。それは蜘蛛の巣のような網目の模様をしたボトルだった。

 

「ッ!?そのボトルは……!?止めろ!」

 

シャルルはボトルを振り、フタを正面に合わせると、ボトルを逆さにした。ボトルからオレンジの粒子が放出し、シャルルを包み込んでいく。その姿は異形の怪物へと変貌させた。

 

「チィッ……!」

 

幻徳は銃をしまうと、部屋を出て怪物から逃げていった。

 

***

 

「いや、ですからね会長。服くらいはちゃんと着ましょうよ!」

 

猿渡一海は部屋でのんびりする暇もなかった。その原因こそがベッドでくつろぐIS学園生徒会長の更識楯無である。彼女の姿は下着の上にシャツのみである。男子の一海にとっては目に毒なものだ。

 

「えー、良いじゃない。見ても減るものじゃあるまいし」

「俺のSAN値が減るんですよ!」

 

女子のと交流は少なく、三羽ガラスや農場の人、中学時代の男友達としか話していなかった一海には今のこの状態は大跳躍ものだった。

 

「……私の裸見たのに?」

「うぐっ」

 

楯無に数日前の出来事を言われ、痛い所を突かれた一海は目をそらして誤魔化した。ちなみにその時に見た楯無の裸を思い出して顔が少し赤い。

 

「……エッチ」

「グフゥ!?」

 

トドメをさされた一海はその場で跪く。今回もまた楯無の勝利に終わった。

すると、部屋の外が騒がしくなっているのに2人は気づいた。試しに耳をすましてみる。

 

『怪物が向こうで暴れてるそうだよ』

『逃げた方が良いよね』

『先生達が対応に向かっているそうだし……』

 

怪物と言うワードを聞いて一海はすぐに立ち上がると、ベルトとボトルを掴んで走っていく。

 

「あ、一海くん!?」

 

楯無が呼びかけるが、答える暇は無かった。逃げる女子生徒達とは逆の方向に走り抜ける一海は怪物の姿を捉えた。

くすんだ金色をベースとしており、人工筋肉の浮き出た屈強な体つきをしていて、凶暴なゴリラを彷彿とさせる顔に、2本の短く、太い角がある。

 

『通常はスマッシュと呼ばれるバケモノになるが……』

 

以前内海と話した内容を思い出す。ネビュラガスを注入されるとなるとは聞いていたが、IS学園にはネビュラガスは無い。可能性があるなら……

 

「ファウスト……!」

 

一海は宿敵の顔を思い浮かべる。ナイトローグが誰かをスマッシュにしたのだろう。無抵抗の人を対象にしたのなら尚更許せない。

一海はビルドドライバーを腰に巻くと、フェニックスとロボットのフルボトルを振り、フタを正面に合わせた。

 

『フェニックス!ロボット!ベストマッチ!』

 

ボトルをベルトにさすと、レバーを回す。ガラス管がベルトから伸びて前後にランナーの様な形を作り出す。

 

『Are you ready?』

「変身」

『不死身の兵器!フェニックスロボ!イェーイ!』

 

ランナーが重なると、一海はビルドグリスへと変身した。

 

「ブオオオオ!」

 

怪物は叫びながらグリスへと接近してきた。グリスは左手のデモリションワンでスマッシュ……通称キングコングスマッシュを殴った。しかし、キングコングは前進を止めただけでビクともしていなかった。

 

「ブオオオオオ!」

「へっ……グアッ!?」

 

キングコングのパンチがグリスに叩き込まれる。グリスの体は宙へ浮き、窓を突き破った。砕かれ、飛び散ったガラスと共にグリスは地面に打ち付けられる。

 

「グハァッ………!何だよコイツ、頑丈過ぎだろ」

 

キングコングは壁を砕くと、寮から外へと出た。狙いは勿論グリスである。

 

「ザ・脳筋だな。プロレスが好きな脳筋主人公が出でくる小説書き手が考えそうなスマッシュだな」

「ブオオオオオオ!」

 

キングコングはズシズシと音を立てながらグリスの元へと近づいた。キングコングはその強靭な腕力でグリスを地に伏せようとする。しかし、一筋縄では無いのはキングコングだけではない。

グリスは右腕から炎を放出させた。キングコングの顔面一面に炎が浴びせられる。しかし、キングコングの攻撃は止まらない。

 

「ブオオオオ!」

「残念だったな。そこに俺はいねぇよ」

 

グリスは炎を放ちながらキングコングの後ろへと回っていた。そして、 デモリションワンでキングコングの膝裏に一撃を与える。カクンと膝が折れた。グリスはキングコングをデリモションワンでキングコングを掴むと、ロボットアーム状のディストラクティブアームの力を借りて地面に叩きつけた。

 

「オラオラオラオラオラァ!」

 

倒れたキングコングにグリスは機械の拳を叩き込んでいく。そして、キングコングを掴んで持ち上げると、炎を纏った拳で殴り飛ばした。

 

「ブ、ブオオ……」

「これでフィニッシュだ……!」

 

グリスはレバーを再度回すと、上へ飛び上がった。

 

『Ready、Go!ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

グリスの体に炎が纏われ、さながら不死鳥の様な姿になる。グリスはそのままキングコングへと突進して行った。

 

「ーーーーーーッ!」

 

すると、キングコングが莫大な声量で吠えた。不死鳥の炎は吹き飛ばされ、グリスは地面に堕ちていく。

 

「ぐあっ……何だよ、アレ…!」

 

立ち上がろうとするグリスの背に両手の指を組んでハンマーの様に振り下ろした。

 

「ガアッ!」

 

直撃したグリスは再び地面に叩きつけられる。キングコングはグリスを掴みあげると、その顔面にヘッドバットをした。

 

「グアァ!」

 

地面を転がって倒れるグリス。頭を頭突きされた影響か意識は朦朧としている。

 

「ブオオ……」

 

キングコングがグリスの元へと近づいていく。マトモに動けないグリスはキングコングを見るだけしか出来なかった。キングコングが拳を振るう。

 

ズドドドドドッ!

 

キングコングの拳がグリスに当たる前におびただしい量の弾丸がキングコングに当たり続ける。グリスはその隙にキングコングから離れた。

 

「大丈夫、一海くん?」

 

グリスを助けたのは楯無だった。専用機『ミステリアス・レイディ』を纏っていた。先程の弾丸はランスの蒼流旋に装備されているガトリングガンである。

すると、内海もその場に駆けつけてきた。内海はキングコングを見て驚愕している。

 

「何故この学園にスマッシュが……!?」

 

グリスは楯無の元へと行くと、キングコングを警戒しながら楯無に話しかけた。

 

「会長、ありがとうございーーー」

 

グリスの腹に拳が入った。突然の腹への一撃に膝をついて倒れてしまう。

 

「か、会長……何で……!?」

「ゴメンね、一海くん。でも、この学園を守る為にもこうするしか無いの」

 

楯無はグリスからビルドドライバーを引っ剥がした。グリスの変身が解除されて一海に戻ってしまう。

 

「内海先生、例のボトルを」

「……アレは危険だ。それでも良いのか?」

 

楯無はミステリアス・レイディを解除すると、ビルドドライバーを腰に装着した。

 

「『一年前』から、もう覚悟は決めています」

「……分かった。君に託そう」

 

内海は青と黄金のフルボトルを楯無に投げ渡した。楯無は片手で2本を掴むと、カチャカチャと振る。空いた片手で2本のフタを正面に合わせると、ベルトにはめた。

 

『ドラゴン!ロック!ベストマッチ!』

 

楯無はドライバーのレバーを回すと、ガラス管が伸びて青と金のランナーを創りあげる。

 

『Are you ready?』

「変身」

『封印のファンタジスタ!キードラゴン!イェーイ!』

 

ランナーが重なると、楯無は変身をした。龍のような右側と鍵のような武器のついた左側のボディをしたビルドである。

 

「ブオオオオ!」

 

キングコングがノシノシとビルドに近づく。ビルドは蒼流旋を構えると、青い炎を纏わせた。キングコングの拳をひょいと避けると、槍での連撃を次々と当てていく。

 

「おねーさん、気づいてるのよ?どんな攻撃をしても避けない事……いや、避けれない事」

 

普段通りの余裕を見せた様子で戦う楯無。しかし、キングコングはビルドが1度引き下がったのを見計らって咆哮を仕掛けようとする。

 

「させないわよ!」

 

ビルドは蛇腹剣のラスティー・ネイルを呼び出して、キングコングに連続で当てていく。キングコングは咆哮が出来ずに逆に怯まされた。

 

「ぶ、ブオオ……」

「さて、時間が無いから終わりにしましょうか?」

 

ビルドはレバーを回すと、左腕の鍵を模したバインドマスターキーを射出し、キングコングを鎖で拘束した。

 

『Ready、Go!』

 

蒼流旋を再度呼び出すと、アクア・ナノマシンで操作された水と青炎が螺旋を描いていく。ビルドはそれをキングコングに突き当てた。

 

『ボルテックフィニッシュ!イェーイ!』

 

青と蒼の螺旋の一撃はキングコングに直撃し、緑色の爆炎に包み込まれた。

 

「スゲェ……」

 

それを見ていた一海は感嘆の声を上げていた。ISとライダーシステムの両方を使った戦法。専用機を持たない一海には出来ない芸当である。

 

「俺にも、専用機が有ればなぁ……」

 

一海は悔しそうに呟いた。実際、一海はビルドグリスに変身しないと戦えない。専用のISがあれば、少しでも力になれるのだが。

 

『流石だねぇ、ロシア代表の更識楯無』

 

突然渋く、低い男の声が聞こえた。街灯の上にその姿が見えた。ワインレッドに緑のコブラの装飾がされたナイトローグにも似た姿をしていた。

 

「貴方は……!」

『よっと!……一年ぶりだねぇ。この前会ったのは猿渡一海と一緒に逃げようとした時か?』

 

街灯から降りたコブラ男の話を聞いた一海は「は?」と声をあげた。一年前……それは一海が何者かに連れ去られた時期だった。

 

「今度こそ貴方を倒すわ……『ブラッドスターク』!」

『ヤレヤレ、俺も厄介なのに目をつけられたねぇ』

 

ビルドはスタークに接近すると、槍を巧みに操って攻めいく。しかし、スタークはそれを容易く避けるだけで、攻めようとはしなかった。

槍での一突きをスタークは避けると、背中にチョップを当てた。前につんのめるビルドだったが、すぐに体勢を直すと再び攻めていく。

 

「ハザードレベル3.1……まだまだだな。それじゃ俺は倒せないぜ?……何より、そのフォームでこれ以上戦えるのか?」

 

スタークがそう言った瞬間、ビルドに異常が生じた。青い電気が走り、体が炎で包まれる。

 

「きゃああああ!」

 

強制的に変身を解除された楯無はその場に倒れようとする。しかし、その前に一海が楯無の体をキャッチした。

 

「会長……!?会長!」

『あーあ、言わんこっちゃない。どうする?このままお前が戦うか?』

「テメェ……コノヤロォォォ!」

 

一海はロボットフルボトルを振ると、それを握ったままスタークに殴りかかる。しかし、スタークはそれを掴んでみせた。

 

『ハザードレベル3.84!イイねぇ、覚醒まであと一息と言った所か!』

「うるせェェェェ!」

 

ケンカ方式で戦う一海。しかし、どの攻撃も受け止められるか防御されるだけだった。

 

『そもそも!更識楯無がお前からビルドドライバーを奪わずに共闘の道を選べばああはならなかった筈だ。自業自得だろうに』

「知ったことか!」

 

スタークはため息をつくと、一海の右ストレートを受け止めた。そして、一海をギロリと睨む。さながら、獲物を睨むコブラの様に。

 

『知ったことか?よく言うよ。お前だって本心は思っている癖に』

「ッ!?それは……!」

『1人で背負う事に拘る更識楯無と、三羽ガラスや仲間達と共に戦う事を決心したお前。違いに気づいたお前は思ったんだろう?』

 

一海は心の中で叫んだ。「それ以上言うな」と。しかし、赤いコブラは嘲笑うように話し続けた。

 

『更識楯無とは、分かり合えないと。分かり合おうとしても、無理だと』

「……!……!」

 

一海の体が震え出す。頭の中で否定し続けても、心のどこかで囁き続けされる。

 

『フンッ!』

「ガハッ……!」

 

スタークに腹を殴られた一海は気絶してしまった。スタークは一海を投げ捨てると、銃型の武器『トランスチームガン』を構えた。

 

『じゃあ、スマッシュの後始末と2人の看病よろしく頼むぜ、内海』

 

スタークはトランスチームガンから煙をまくと、その中へ消えていった。

 

「スターク……」

 

内海は空のフルボトル『エンプティボトル』を取り出すと、倒れているキングコングスマッシュへ向けた。すると、キングコングの姿が粒子になってボトルへ吸い込まれ、蜘蛛の巣の様な模様になった。

 

「!?シャルル・デュノア……!?」

 

キングコングの姿からシャルルへと戻ったのを見た内海は驚愕する。

その影では幻徳が無言で見ていた。




長くなりそうなので前編・後編に分ける事にしました。早めに後編を投稿させます。
次回予告は前回したので今回は無しです。

今回、麦ちゃさんのキングコングスマッシュを出させて頂きました。ありがとうございます!

スマッシュの他にいくつか新しく募集も始めます。是非活動報告を見てください。

次回は後編です。一海と楯無の関係が加速したり、謎が深まったり、一海とラウラが戦います。
後編でサブタイ回収とか不味かったかな?

後編もお楽しみに!
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