士「どうやら、今回は人間関係が面倒になりそうだな」
一海「そう言う士さんは人間関係は問題無いんすか?」
士「俺か?そうだな……そこまで苦労はしてないぞ」
一海「あの青色のライダーは?」
士「海東は……アイツは論外だ」
一海「うっわぁ、凄い嫌そうな顔してる……」
士「面倒とかそんな次元じゃないんだよ」
一海「どんな奴なんすよ……」
士「それは、第52話を見てから教えてやんよ」
自室に帰ろうとする一海と一夏。互いに沈黙しており、一海は何か話さねばと考えていた。
「……なぁ、一海。守るのには力がいるのか?」
ふと一夏からそう聞かれた一海は、考える。
守るには力が必要ーー確かにそうかもしれない。
「肯定出来るけど……力だけじゃねぇと思うぞ、俺は」
「力だけじゃない……例えば?」
「例えか……個人差があるからな。それに、一夏自身の力で見つけねぇと」
一夏は「そっか……」と悩み続ける。一海は力になってやりたいと思うが、今は一夏が強くなるのを見守るしかできない。
「とりあえず、今は特訓あるのみだな。暗い気持ちで考えても良い答えなんて出にくいしな」
2人は一夏の部屋に辿り着くと、一海は一夏の部屋の扉を開いてーー
「ご飯にします?お風呂にします?それとも、わたーー」
バァン!と一海は扉を叩く様に閉める。一夏は少し戸惑ってる様子だった。
「はっ、ハァァァ!?何であの人いんの!?お前楯無さんに何かしたのか!?」
「いや俺も知らねぇよ!楯無さんのイタズラじゃないのか!?」
迷わず一夏の胸ぐらを掴む一海。一夏は慌てて一海を宥める。
「イタズラなんて……する訳ありそうだな。とりま、楯無さんに聞くしかねぇな」
一海が再度一夏の部屋の扉を開けると、布団を身に包んで現れる。
「おかえりなさい……」
「おかえりなさいじゃないすよ。なーにそんな際どい服着て一夏煽る気満々でいたんですか」
「一海くんが来るだなんて思ってなかったもん」
「なーにが『もん』すか。ほら、待つから着替えてください。話は後で聞きますから」
一海は仕方ないと諦めたように一夏を連れて1度退出する。
「な、なぁ、一海……?」
「気にすんな。いつもの事だからよ。俺平気だし」
それは平気と言うより慣れや感覚麻痺なのではと一夏はふと思うが、気にするのはやめようとすぐに取り消す。
すると、扉が内側からノックされる。一海が開けると、制服を着た楯無がいた。
「んんっ……では、気を改めましょう。まず、2人には言っておく事があるわ」
先程までとは一転、楯無は普段のテンションになる。
「まず、私、一海くんの部屋から一夏くんの部屋に引っ越すわ」
それを聞いて一夏は驚き、一海は少し眉を顰める。楯無は案の定の反応だと頷いた。
「そんな、突然困りますよ!それに、そんな事したら他の奴らから何されるか分からないですし……」
「一夏くんの人物像を良く理解しておかないと、実戦の時にどう立ち回れば良いか、と言うのを考えれないわ」
「箒達は俺が何とか説得するぜ。俺は別に異論はいねぇからな」
楯無は一夏に明確な理由を口にし、一海は引っ越しに関しては特に異論は無い様子だった。
「それじゃあ決まりね。当分はよろしく頼むわよ」
「そ、そんなぁ……」
一夏が肩を落としている間に、一海は楯無の傍によって耳元で話しかける。
「後で聞きたい事があります」
「えぇ、一海くんにも納得いってもらわないと困るからね」
一海は楯無が一夏の部屋に引っ越すのには別の理由があると予想していた。
「ま、苦労するのは確実だから、頑張れよ」
「応援してる暇があるなら……あれ、一海?カズミーン!」
一海は一夏に最低限のエールを送ると、一夏の断末魔に近い呼び声が聞こえるが、聞かなかった事にして部屋から立ち去った。
***
以前龍我と話をした事もある自販機が設置されている休憩スペースにて、一海は缶コーヒーを飲みながら楯無が来るのを待っていた。
「お待たせ〜」
「うす。待つのくらい楯無さんの為なら平気すよ」
「もう、そう上手い事言っちゃって」
「楯無さん相手にカッコつけたいですしぃ?」
冗談を言い合いつつも、一海は手に持つ未開封の缶コーヒーを渡す。
「んで、どうなんすか?楯無さんが考え無しに一夏のコーチをしたり、同室になる訳がありませんし」
「察しがいいわね。流石一海くん」
「楯無さんの事ならすぐに分かりますよ。あ、誇張ありますよ」
一海と楯無は隣合って座ると、話し始める。内容は至って真剣な筈なのに、空気は緩いものそのものだ。
「……一夏くんの周辺を嗅ぎつける連中が現れ始めたわ」
それを聞いた一海はすぐに反応した。それは即ち、一夏に危機が迫っているということ。
「一夏くんを狙っている以上、身元周辺で警護する必要があるわ」
「それで、同室になったと……あれ、それ以外は?」
「そりゃあ、放っておく訳にはいかないから、お昼休みには教室に通うわよ」
「俺に何か出来ますかね?」
一海が楯無に聞くが、楯無は「言うと思った」と呟きながら一海の肩に手を置いた。
「一海くん、これは暗部の仕事。貴方みたいな人は踏み込んじゃいけない境界なの」
「でも、仲間の危機を見過ごせねぇんすよ俺だって。それに、楯無さん1人に負わせるような事じゃ……」
「仲間は一海くん1人じゃないわ」
そう言われた一海は言葉を止めてしまう。そう、楯無には生徒会や家の方、クラスにも仲間がいる。一海1人じゃないのだ。
「それでも、俺は……大切な貴方の力になりたいんすよ……!」
「ッ……ごめんなさい、一海くん。私も貴方の事を想ってるわ。それでも、貴方には踏み込んで欲しくないの」
楯無は一海の手に置くと、「それじゃあね」と立ち去っていく。一海は悔しくてもひっくり返しようが無い事実に震えるだけだった。
***
それから数日後ーー
「…………」
「…………」
食堂のテーブルの1つで、一海と一夏が向かい合っていた。一海の表情はかなり険悪で、一夏はそんな一海を見てかなり気まずそうだった。
「何をやっておるのだ、2人は……」
「私達を弾き出したと思えば、向かい合って黙りあってるだけですし……」
「もうアイツ退かすわよ!折角一夏の隣になれたのに、我慢出来ないわよ!」
「待て、カシラの事だから何かある筈だ」
元々一夏と同席だった箒、セシリア、鈴、ラウラは近くの席で2人の様子を見ていた。
「……何してるの?」
「シャルロットか。実はカシラが……」
「まーだ拗ねてやがるよ」
「カシラ、すっごい嫉妬深いからねー」
三羽ガラスも4人同様一海と一夏の様子を見ており、シャルロットは少し困惑気味である。
「……なぁ、一夏」
「なっ、何だ……?」
一海に呼ばれた一夏はビクッと体を震わせながら反応する。一海の目は様々な感情で埋め尽くされている。主な感情は……
「お前……楯無さんと仲良くしやがってー!」
「グエエエ!?一海、苦しい!止めてくれって!」
大概が嫉妬だった。一海は体を乗り出すと、一夏の首をガッチリと掴んで絞める。苦しむ一夏は仕返しに一海の首を絞め返した。
「ぐぐぐぐぐ……お前、楯無さんが、引っ越してから、楯無さんと、何しやがった……!」
「何って、振り回されて、ばっかだよ……!」
首を絞め合いつつも会話をする2人の様子はかなり珍妙でシュールなものだった。
「この前楯無さんと弁当食ってただろ!」
「クラスの皆で食べただろ!それに、一海は意地張って食べなかったじゃねぇか!」
「意地なんて張ってねぇよ!てかそれは振り回されたって扱いにならねぇし!」
互いに手を離し合うと、座って睨み合う。周りからの視線は少し引き気味である。
「お前、なんかねぇよかよ……もっと、ほら!」
「具体例……セシリアから噂を聞いてマッサージをせがんできたな」
それを聞いた一海が目を見開いて一夏を睨む。一夏は何か不味い事でも言ったかと冷や汗をかいた。
「お前、それって、ぼ、ぼぼぼぼ、ボディタッチだよな!?俺そんな事頼まれた事1度もねぇぞ!」
「それはお前がマッサージ出来ないからだろ!」
「うるせぇ!楯無さんにベタベタ触りやがって!」
一海は一夏に攻撃をしようと迫るが、一夏は一海の伸ばす手を寸での所で避ける。
「他に言ってみろよ!」
「他は……楯無さんが水着姿でシャワーに侵入してきてーー」
一海がドライバーを取り出す。それを見た三羽ガラスが大慌てで一海に駆け寄ると、3人がかりで羽交い締めにする。
「カシラ、それはアウトですって!」
「嫉妬にしては暴走に振り切れてやがる!」
「皆揃いに揃っていざこざ起こしすぎーっ!」
一海が一夏を潰す気満々で睨んでいると、何者かに後ろから後頭部をトレイで叩かれた。
「ッて、誰だ……貴方は!?」
トレイで一海を叩いたのは美空だった。その表情は怒りが見えており、あからさまに不機嫌と言った感じだった。
「少し様子を見ておこうと思ったら、とんだ体たらく……もう見ていられなるし!」
美空は一海の耳を掴むと、引っ張っていく。
「イデデデデ!痛いっすよみーたん!イッデ!イテテテテ!!」
耳を引っ張られて痛みで顔を顰める一海。しかし、大ファンである美空相手に抵抗は出来ないので、仕方なく連れ去られていく。
「……何だったんだ?」
「さぁ……?」
「と言うか、拗れすぎだろお前らの三角関係」
「何とかしなくちゃねー」
連れ去られていく一海を男子4人は眺めるしか出来なかった。
***
IS学園付近の物陰にて、1人の女がいた。
「クソッ!なんで織斑一夏は隙を見せねぇんだよ!」
女の名は『オータム』。国際テロ組織『亡国企業』の実働部隊の1人である。
今回の狙いは織斑一夏。そして、その専用機・白式である。
「あの女だ……あの女が一々付きまとってやがるから……!」
ロシア代表『更識楯無』が一夏に付きっきりでいたので、奇襲しようにも出来なかったのだ。
『お困りの様だなぁ?』
すると、オータムに渋い声をかけられる。そちらを見ると、ワインレッドのアーマーを来た戦士がいた。
「お前は……!」
『俺かぁ?俺はブラッドスターク。俺もIS学園に用があるからな』
スタークはオータムに近づくが、オータムは警戒し続けている。
『俺も信用されてねぇなぁ。俺達の目的は同じIS学園にあって、どうにかして目的を達成したい……なら、やる事は1つだろ?』
そう言って、スタークは手を伸ばした。オータムはそれを訝しげに見る。
『亡国企業と俺達……手を組む気は無いか?』
「あ?お前みたいな胡散臭さの塊を信じれるかっての」
『そう言うと思ったよ。だったら、行動で示してやる』
スタークは数枚の写真を取り出す。それは、IS学園の生徒……しかも一夏の密接な関係にある人物ばかりだ。
『コイツらを囮にして1人にしてやんよ。楽しみにしときな……』
「おい、勝手に話進めて逃げるな!オイ!」
『さぁて、楽しくなってきたな……Ciao!』
スタークは跳躍すると、その場を立ち去った。
黒い影は、大きな陰謀さえも飲み込もうとしていた。
地味に進展無しです。一海、楯無、一夏でかなり関係が拗れてます。グダグダな感じになってますが、これからちゃんと解決いていく予定です……予定です。
次回、スタークの暗躍が始まります。敵味方関係なく疑われてるスタークさんが暴れますよー
次回 第53話 コブラの企み