TOS-R×TOZ(+TOB)   作:柚奈

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 夢シリーズはアリーシャの離脱理由を改編したいがために書いていた話です。
 とりあえずアリーシャ編はここまで。


従士の夢

!オリジナル回(1)

 

 スレイが倒れた。

 

 ロハンの所に行き、強力な憑魔が南西にいる、と知ったあと。ふらついたスレイは立ちくらみかと思いきや、そのまま倒れてしまったのだ。

 もう2日以上、原因不明の高熱に魘されている。

「………アリーシャ、医者は何て?」

 疫病に苦しんでいたマーリンドには、医者も居た。スレイが穢れを祓ったことで回復した医者に、アリーシャが頼んでスレイを診て貰ったのだが………。

「それが、原因は分からない、と………」

「使えないわね。医者の癖に」

 エドナの辛辣な言葉は、一行の代弁でもあった。

「実はマーリンドの民と兵もスレイのお陰で大部分が回復したのですが、一部はスレイと同じように高熱で寝込んでいるそうなのです………まさか、スレイも憑魔に」

「違いますわ。穢れが原因であるなら浄化の力で祓える筈ですもの」

「それに、スレイが穢れに侵されたんなら、スレイを器にしてるワタシたちにも影響が出るはずよ」

 アリーシャの不安は天族たちに口々に否定される。

「………ってことは、本当の病気なんじゃないか?」

 ロイドの言葉に、天族たちが―――特にミクリオがはっとした。

 天族は病気にならない。不調になるとしたらそれは穢れのせいだ。………だから、ついそれを前提にしてしまう。医者がわからない、人間にわからない不調なら穢れによるもの―――そう、はなから決め付けてしまう。

「だが医者が知らない病気なんて」

「………いえ、ミクリオ様。この地方の風土病かもしれません。だとしたらレディレイク出身の医者では」

「! ネイフトさんでしたらなにかご存じなのでは」

「いや、まだ橋の復旧が終わってないらしくてな。ネイフトさんはマーリンドに戻ってないんだ」

 一行の肩が落ちた。が、アリーシャが顔を上げる。

「! マーリンドの図書館なら………」

 

 

 

 マーリンドの書庫から関係がありそうな本を借りてきて、宿に戻ってロビーで、それを片端から読んでいく。

「………どうやら、昔からある病気のようですわね。長雨が続いた後、数人が発症。人から人への感染はありませんが、一週間以上高熱に魘され、最後は………」

「治療法は!?」

 ロイドが食い付くが、ライラが首を振る。

「それは、書かれていません………」

 別の本を読んでいたミクリオが口を挟む。

「………いや、待ってくれライラ。こっちに『サレトーマを与えた所数日で寛解した』という記述が―――」

「サレトーマ? って、まさかあの趣味の悪い花じゃないでしょうね」

「知ってるのかエドナ!」

「うるさいわね座りなさいミボ。高熱によく効く薬草よ。昔は有名だったけど」

 ロイドが立ち上がる。

「よし、ならそのサレトーマを探せばいいんだな。どこにあるんだ?」

 薬草図鑑を持ってきてページを繰っていたアリーシャが。

「………ローランス地方の一部に自生しているらしいが、今では数が減ってほとんど流通していないと書いてある。ましてや近年の異常気象では、咲いているかどうか………」

「ダメか………」

 ロイドは項垂れた。

 スレイのためならローランスだろうがどこにでも行く気があるロイドだが、無いものはどうしようもない。それにローランスは広い。今から向かって取ってきても、それではスレイは間に合わないだろう。

「他に………何か方法はないのか? サレトーマじゃなくても、同じように高熱に効く薬草とか―――」

 と、ふと、アリーシャが開いていた薬草図鑑の一ページがロイドの目に止まった。

「これ………この白い花………“ファンダリア”?」

「ロイド、どうかしたのか? この花が何か?」

 ファンダリア。高熱。オゼット風邪―――。

「昔、俺の仲間が病気になったとき、この花の蜜で良くなったんだ」

「そうなのか? しかし、この図鑑にはそんな記述はどこにも―――」

 アリーシャが顔をしかめた時、宿の女将が飲み物を差し入れに来てくれた。

 暖かそうなミネストローネ。泊まるときには料理は六人分、と頼んであるので、運ばれてきたのは五人分。一人分少ないのはスレイが寝込んでいるからだ。

「あぁ、ありがとう」

「いいえ。マーリンドを救ってくれたのは姫様方ですからね。遠慮なさらず、どうぞ」

「いただきます。―――ん、うまい!」

「お粗末さまでした。………ところでお客さん、さっきファンダリアの話をしてなかったかい?」

「女将さんファンダリアを知ってるのか?」

「ああ、ここらでは熱を出したらファンダリアを煎じて飲ませるのさ。民間療法ってやつだね。若い子はほとんど知らないんだが………あんた、若いのによく知ってるねぇ」

 ロイドは苦笑いした。この世界に来てから成長が止まっているので、ロイドは傍目には二十歳前後に見える。が、実際にはこの世界に来た時点で二十一歳。それからもう十数年経っているので、実はもう三十路を越えているのだが………まぁそんなことを説明するわけにもいかないだろう。

「ファンダリアはこの近くにあるのか?」

「ああ。ここらは霊峰に近いし、昔は山を上れば簡単に見付かったもんさ。………けどねぇ、最近じゃ外は危ないだろう? なかなか取りにも行けなくてねぇ」

 

 

 翌朝。

「………で、アナタがファンダリアを取りに行く、って?」

 エドナの問いに、大真面目にアリーシャは頷いた。

「ファンダリアがあれば、スレイも、マーリンドでいまだ苦しんでいる民たちも治るかもしれません。病み上がりのマーリンドの民と兵に無理をさせるわけには行きませんし、私なら憑魔も―――」

 が、ライラがそれを止める。

「お待ちください。従士の力は、スレイさんを通して与えられるもの。スレイさんの導師としての領域内でのみ振るうことが出来る力です。スレイさんが動けない今、スレイさんを器としている私たち天族は、スレイさんからあまり離れることが出来ません」

「―――つまりアナタが行くってことは、従士の力も使えない、憑魔も見えない、浄化できない状態で行くってことになるのよ」

 普段ならスレイと従士の契りで繋がっているアリーシャは、ある程度は離れていてもその力を使うことが出来る。

 が、高熱で弱ったスレイではおそらく、このマーリンドを離れるとその契りがあっても、従士の力は使えなくなる、と。

「それでも行くの?」

 アリーシャは一瞬戸惑ったが、しっかりとエドナの目を見て答えた。

「行きます。苦しんでいるマーリンドの民を放置はできません。何より、そこに方法があるなら、じっとしているよりもそれを試したい。―――私は騎士だ。騎士は民のために在るもの。私はその務めを果たしたいのです」

「でも―――」

 ミクリオがアリーシャを心配してさらに言葉を重ねようとしたから、………ロイドはその前に口を開く。

「なら、俺が一緒に行くよ」

「ロイドが?」

「ああ。俺ならスレイは関係なく憑魔が視えるし、追い払える。ファンダリアの花を見たこともあるし、アリーシャと二人で行って、花を取ってくるよ。それなら心配要らないだろ?」

 ロイドはスレイと契約していない。つまり浄化の力を持たない。しかしこれまでの旅で、それでも憑魔を退けるほどの実力があることは皆が知っていた。

「確かに、それなら………」

「よし、決まりだな」

 

 そうして、アリーシャとロイドはマーリンドを出発したのだ。

 

 

 

 

 ファンダリアは高山の頂上付近に咲く花だ。

 かつて、ロイドの世界でリフィルがオゼット風邪に罹患したとき、ジーニアスとミトスはフウジ山岳まで花を取りに行った。………あのときはこっそりと二人を追いかけたが。

 アリーシャとロイド、二人の道中は意外にも順調だった。

 憑魔はほとんど現れず、出てきてもそれは獣が憑魔化したもの。それならアリーシャにも見えるし、なによりロイドがいればアリーシャが動く必要もなかったからだ。

「すまない………」

「良いって。憑魔は俺が引き受けるから、アリーシャはファンダリアの花を見過ごさないように辺りをよく見ておいてくれよ」

 花の場所はエドナが知っていた。流石は山に住んでいた地の天族。教えてもらった場所は、マーリンドから程近い山―――グレイブガント盆地の横にある、国境近くの山であった。

 山道を歩くこと、半日。

「………エドナ様に教えていただいた場所は、この辺りの筈だが………」

「あんまり、咲いてないな?」

 山の、八合目辺りだろうか。もうファンダリアが咲いていてもおかしくない標高なのに、辺りには一本も見当たらない。

「仕方ない、もう少し上に行ってみよう。アリーシャ、気分が悪くなったら直ぐに言ってくれよ」

「ああ。ロイドも」

 

 

 山頂付近。

「! ロイド、見てくれ、あそこに白い花が―――」

「よし、行こう」

 かけ上がればそこは小さな窪地になっていて、そこに白い花が密集して咲いていた。

「良かった。これなら」

 アリーシャが花に駆け寄ろうとして―――それをロイドが、制する。

「何を………?」

「―――隠れてないで出てこいよ。居るのは分かってるんだ」

 アリーシャは辺りを見回した。茂みの向こうに………居る。アリーシャが槍を構えようとした時、茂みからあわてて数人の男が立ち上がった。

「ま、待ってくれ! 私たちは怪しいものじゃない!」

 男たちは両手を上げていた。武器も持っていない。が、男たちの腰で揺れる木簡を見て、アリーシャが男たちを睨んだ。

「その手形はローランスのものだ。ハイランド領になぜローランスの者がいる」

「た、確かに我々はローランス人だが、商人だ! 商人は通商条約で往来が保証されているだろう?!」

「ならばハイランドの通行手形を見せろ。正規の手続きで国境を越えたのなら、そのローランスの手形にはハイランドの印章もあるはずだ」

 そこで、商人たちはうっと押し黙った。

「やはり不法入国か………!」

「ひいいっ!」

 腰を抜かした商人たちは、ロイドには悪い奴等には見えなかった。

「まぁ待てよ、アリーシャ。なぁあんたら、どうしてこんなところまで来たんだ? ローランス側から来たんならかなり道が悪い所を抜ける筈だ。そうまでして、なんでここに来た?」

 この辺りはカムランとグレイブガント盆地の間辺り。どの道も険しい山岳地帯だ。

 すると商人たちは互いに顔を見合わせて、ぽつぽつと話し始めた。

 

 

 彼らはローランスの皇都ペンドラゴを中心に活動する商人。セキレイの羽のような大手ではないが、地元の住人には贔屓にされる、そういう商売をしていた。

 だが今、ペンドラゴでは妙な病気が流行っているらしい。

「熱が、下がらないんだ」

 長雨が続き、病気が拡がり、薬が高騰した。

 罹らないものは罹らないらしいのだが、罹れば治療法がない。唯一の特効薬がサレトーマで、それは貴族や高官がとっとと買い占めてしまった。元々の流通量が限られるため、一般市民には手に入れられない。そんな中、地方から出てきた客にファンダリアのことを聞いた彼らは、それをなんとか手に入れられないかと奮闘した。

 幸い、ファンダリアが高熱の病気に効くというのはあまり知られていないため値段はそれほどでもなかったのだが、自生地がハイランドだったのだ。あとは二国の間にある高山地帯。

 そして今は開戦が近いということで、二国間の交流は減ってきている。

 正規のルートで手に入るのは数えるほどで、それではとても足りない。かといってハイランドに入国しようにも、ハイランド側には伝もない。

 だから違法とは知りつつも、ハイランド領に侵入したのだった。

 

 

「―――頼む! 見逃してくれ! ファンダリアの花があれば、大勢の市民が助かる。確かに不法入国したのは悪かったが、ここらは国境が曖昧だし………ああいや、その」

 あわよくば、という魂胆があったことは、否定しなかった。彼らは商人だ。市民を救おうと動いたのも事実だが、儲けを狙ったのもまた事実。

「しかし………」

「よし、わかった」

 言い淀んだアリーシャと、即答したロイド。

「ただ、俺たちもその花が必要なんだ。だからお互い採っていくのは必要な分だけってことで、どうだ?」

「あ、ああ、分かった!」

 不法入国を咎められて捕まるくらいなら、多少儲けが減ろうがものを手に入れられる方がいい。商人の判断は早いのである。

 だが真面目なアリーシャは納得できなかった。

「しかし、騎士として不正を見過ごす訳には―――」

「良いじゃないか。ただ薬草を取りに来て、山のなかだったからここがどこか分からなくなっただけだろ?」

 なぁ? と問い掛けられて、商人たちは振り子細工の如く頷いた。騎士、と聞いたからか弱冠青ざめながら。

 ロイドはバカだが、頭の回転は悪くない。そして規則とかにもさほど頓着しない。………ので、実は結構ずる賢い一面があったりする。ものは考え様と言うやつである。臨機応変、これ大事。

 しばらく葛藤していたアリーシャだが、なんとか彼らをロイドの言う通り『迷子』ということにして、頷く。

「………わかった」

 あからさまにほっとした商人たち。と、アリーシャが眼光鋭く。

「だが、今回だけだ。次からはきちんと手続きを踏むように。でなければ………」

「アリーシャ、そのへんにしとけって。ほら、スレイに早くファンダリアを持って帰ってやろう。な?」

 アリーシャ、という名に商人たちが反応したのには、気付くことなく。

 ロイドに宥められ、本来の目的を思い出したアリーシャは、ファンダリアに手を伸ばしたのだった。

 

 

 商人たちとは山頂で別れ、また二人で山を降りる、帰り道。

 さっきの商人の言葉を思いだし、ロイドが呟く。

「開戦………戦争に、なるのか?」

「かも、知れない」

 アリーシャの声は、かたい。

「もし戦争になったら………真っ先に巻き込まれるのはマーリンドだろうな」

「! なんで! まだ皆起き上がれるようになったばかりだぞ!?」

「ローランスと戦いになれば、戦場はおそらくグレイブガント盆地………マーリンドの目と鼻の先だ。指揮官たちには疫病など関係ないよ。戦えるものは皆徴兵される」

「アリーシャも………戦うのか?」

「私は騎士だ。ハイランドを守るためなら、戦わねば」

 そうしたくないのは、明らかだった。だが仕方ないのだ。兵士は命令に従わなくてはならない。………それをロイドはもう知っている。

 そしてアリーシャがハイランドを守りたいと本心から思っているのも、確かで。

「………なぜ、戦争など起こるのだろう。もっと平和に暮らしたいと、皆願っているはずなのに」

 アリーシャの言葉にロイドは幼馴染みの少女を思い出す。皆仲良くできないかな、と願う優しい神子を。

「俺には、分からない。でも、その気持ちを持ち続けることが大事なんだと思う」

「皆がそう思ってくれるようになれば、穢れも………?」

「それは、どうだろう。ジイジが言ってたんだけど、穢れってのは争いから産まれる訳じゃないんだって。穢れは人の心が産み出すものだから、穢れを無くすことは、人が人である限り、出来ないって」

 だから穢れを産まないスレイやロイドは本当に珍しく、貴重な存在なのだと。

「―――でもさ、俺は思うんだ。嫌いなやつだっている。苦手なやつもいる。それでも、そこにいることを許し会えたら良いんじゃないかって。だって皆生きてるってことに変わりはないだろ?」

「………ふ、あははは! スレイと同じ様な事を言うのだな」

 アリーシャは声を上げて笑い、ふと目を閉じた。

「………そうだな。皆、生きている。ハイランドの民も、ローランスの民も………」

 

 

 

 

 アリーシャ達が持ち帰った薬草でスレイの熱は直ぐに下がった。

 煎じ方を教えてくれたのは宿の女将で、それを騎士と医者に伝えてファンダリアを渡せば、あとは彼等の仕事。

 翌日には伏せていた民もすっかり良くなり、マーリンドはやっと以前の活気を取り戻し始めた。

 スレイも外に出るのは実に三日ぶり。寝込んで固まった筋をほぐすように伸びをする。

「体調は良いようだな、スレイ」

「うん、もうすっかり!」

「それは良かった」

「今回はアリーシャに助けられたね」

「ほんとにね。アリーシャ、ありがとう」

「私は何も。憑魔だってロイドがいなければ」

「俺はちょっと手伝っただけでほとんどなにもしてないって」

「だがファンダリアに気付いたのはロイドだろう?」

「ですが、花を取りに行くと言い出したのはアリーシャさんですわ」

「しかし………!」

 頑ななアリーシャに、エドナがため息を吐いた。

「あーもう、面倒ね。なら今回の手柄はロイドとアリーシャの二人ってことで。はい終わり。良いわね?」

「エドナ様、」

「良いわね?」

「………はい」

 こうまでしなければ自分の手柄を認めようとしないアリーシャに、一行は苦笑する。

 と、そこで。

「あー、ひめさまだー!」

 四、五歳位だろうか。女の子が一人、アリーシャを見て、駆け寄ってきた。見ればこの前高熱で伏せていた子供である。

「ねぇねぇ、ひめさまがびょうきをなおしてくれたんでしょう?」

 きらきらとした瞳で見上げられ、アリーシャは少女と目線を会わせてしゃがみ、首を振った。

「いいや、病気を治してくれたのは、こちらの、導師スレイだよ」

「でも、おくすりとってきてくれたのは、ひめさまだっておかあさんがいってたよ?」

 こてん、と首をかしげ。

 少女はにっこりと笑って、母親の所に駆けていった。と思えば振り返り。

「ひめさま、ありがとー!」

 大きく手を振る少女に、アリーシャは手を振り返した。少女の母親は少女の手を引き、何度も頭を下げて帰っていく。

「皆アリーシャに感謝してるんだ。あの子を助けたのはオレじゃなくて、アリーシャだよ」

「………よかった。本当に」

 住人たちの笑顔を見て、アリーシャはこの笑顔をずっと守りたいと再認識するのだった。

 

 

――――――

 アニメでは契約していようが器のスレイから離れられるとか、契約していれば離れていても声が聞こえるとかそんな設定があります。

 が、何度も言っているようにアニメとは別時空ですので!!

 

 

 ちなみに、「アリーシャが力を入れていた聖剣祭で、アリーシャと知り合いの見知らぬ青年が導師になる」という状況からアリーシャへの疑いは真っ当なものではないかと思います。

 ただそれだけだと「ローランスと密通した」という疑いは強引すぎるだろって事で、エピソード追加しました。

 勿論元ネタはシンフォニアで先生が罹ったあれです。

――――――

 

………………

・セキレイの羽が到着。ネイフトの伝言を受けとる。

・木立の傭兵団を雇い、警護を任せてボールス遺跡へ。

・憑魔戦で従士反動発覚。

・宿でロゼ(デゼル)との問答。スレイは次なる目的地をローランスに決定。ロハンに挨拶にいく。

………………

 

 

 

・従士と導師

 

 ローランスに向かうというスレイに、ロハンの前で、アリーシャは自分から別れを切り出す。

「私は、ここに残るよ」

 え、とスレイが振り返る。アリーシャは笑顔だ。

「マーリンドにはまだ国の支援が必要だ。それにロハン様を祀る人も正式に見つけたほうが良いだろうし………」

「アリーシャ、もしかして」

 聞いていたのか、というミクリオの問いには、曖昧な笑み。

「スレイ、君との旅は楽しかった。色んなものを見ることができたし、本当に貴重な経験をさせてもらったよ。感謝している。………だが、これ以上君に迷惑はかけられない」

「迷惑なんて、そんな―――」

 言いかけてスレイは黙った。黙るしかなかった。いくら迷惑ではないと言っても、目が見えなくなったというのは紛れもない事実だ。

 アリーシャは困ったように笑った。そんな風に、気にさせたいわけではないのに。

「スレイと旅をして、知ったんだ。世界は穢れに溢れている。でも人はそのなかで逞しく生きている。ならば、私はハイランドに生きる民を守りたい。私にできるやり方で。そう思ったんだ」

 従士として“穢れをどうにかする”のではなく、ハイランドの王女として、騎士として、“自分にできることをしてハイランドを守る”こと。

「………そっか。それがアリーシャの―――」

 それは確かな、アリーシャの変わらない夢。

 だからスレイは、笑って、アリーシャに手を差し出した。

「これまでありがとう、アリーシャ」

「旅の無事を祈っているよ」

 

 従士と導師の別れは、笑顔で。

 

 

 

――――――

 ………っていう希望が持てる別れ方が見たかったんだ!

 

 スレイがアリーシャを従士にしたのは、アリーシャの夢がスレイの夢と繋がっていたから。

 スレイがミクリオと喧嘩しても仲直りできたのは、追いかける夢が同じだったから。

 きっと夢の形が変わったのなら、スレイはアリーシャの夢を応援して、笑って別れることが出来ると思うのです………!

 

 ロイドが何度も『一人で頑張らなくていい』『やれることをやればいい』と言い続けたこと。

 アリーシャが、スレイの力を借りずに自分の力で人を助け、感謝されたこと。

 そんな事を経験して、「浄化の力がなくてもやれることはある」という結論に達したアリーシャ。

 以降、政治家として「未然に防ぐ」ということを目標に民のためバルトロたちと真っ向から向き合うようになります。

 

 ふぅ、ここが書きたいがためにハイランド編を細々と書いていたのですよ。

 ってわけで、次から話が飛びます。

――――――

 

 

………………

 開戦の急使がマーリンドに到着。アリーシャにも知らせると、アリーシャは急ぎレディレイクへむかうことに。

 スレイは木立の傭兵団の協力を得てマーリンドの住民を避難させるため動き出す。

 ↓

(アリーシャ、バルトロ達の陰謀もあり、国家反逆罪の容疑で拘束される)

 ↓

 翌日、マーリンドから傭兵団と一緒に住民を避難させている道中、アリーシャ拘束の話を聞いて、戦場に向かうスレイ。

………………

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