かつて呼ばれていた名は   作:なめこしいたけ

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セントシュタイン3

セントシュタイン城下町。ウォルロ地方の隣に位置するセントシュタイン地方のほぼ中心に位置するセントシュタイン城の下で栄える大きな町だ。大陸の人が足りないものを求めてくるだけでなく、世界各地の人々が情報、商品、仲間、金銭、様々なものを求めてこの街にやってくる。ゆえに昼夜問わず活気づいているこの町はどこの大陸に行っても有名だったりする。城の入り口に続く大通りには屋台や武器屋が並ぶバザールのようなものが常に開かれており、町の中央にある広場では旅芸人であろうか、派手な衣装をまとった美男美女がパフォーマンスを行っているのが見られる。住居地域もきちんとわけられているらしく、城壁に近い方の、少し標高の低いところでは橙色のレンガの屋根が特徴的な家々が並んでいる。ウォルロ村では珍しかった二階建ての家も散見される。

 

「おおきい…ですね」

 

「でしょう?しっかりついてこないと、すぐ迷子になるから気を付けてね。」

 

「はい」

 

マミがきょろきょろしながらあたりを見回していると不意に小さな生き物が顔にぶち当たる。

 

「チョット‼あんた私のはいった袋、馬車の中に置いてきっぱなしにしたデショ‼」

 

桃色の光を身にまといながらサンディがマミに向けて抗議する。モッチィは大通りのにぎやかな方を見つめていて気付いていないようだった。

 

「急に出てこないでくださいよ…。」

 

「あ~、もう最悪!くさいし!暑いし!…でもま、大きな町にちゃんとついたわけだし、いいことにしてあげるワ」

 

わかってんでしょうね?と、サンディがマミの顔を覗き込む。

 

「わかってますよ。動機が不純ですので、あまり気乗りはしませんが…」

 

 

 

サンディとマミは、一度だけ馬車で峠を乗り越える際の休憩中にこっそり箱舟の様子を見に行っていた。サンディのほうも、カギは持っており入ることはできたのだが箱舟を動かす手段がなく困っていたらしい。「天使がいれば、もしかしたら動くかもしれないジャン」という彼女の提案により二人は深夜に人目を憚り箱舟の中に入ったのだった。

 

「………………!!」

 

すると、マミが足を踏み入れた瞬間、箱舟はゴウン…、という重低音を響かせて一瞬だけではあるが大きく振動をしたのである。

その後サンディが操縦桿をいくら触っても、マミが何度乗り降りを繰り返しても箱舟が反応することはなかった。しかし、反応したことは確かだ。それはサンディも認めた。ケド、と彼女は続ける。

 

「あんたがちゃんとした天使だって認められてんならこの箱舟だって動き出すはずなのヨ!と、言うわけで…そうネ…あ!星のオーラを集めまくればいいんじゃね?」

 

星のオーラを大量に発生させることで天使界や神界の人たちにマミのことを認識させれば、箱舟を動かしてくれるかもしれない。これがサンディの言い分だった。

マミのほうも、自分が歴とした天使であるという証明ができない以上、それ以外に方法はないと感じた。むしろ幽霊が見える以外の天使としての特徴を失った現時点においては、最善手なのではないかとさえ思えた。

 

「きまりネ‼それぢゃ、頑張りなさいよ!マミ!」

 

 

 

星のオーラを効率的に集めるなら、人が多いところのほうがいいに決まっている。ということで、マミたちはリッカとともにセントシュタインに来ることを決意し、現在ここにいる。そのことはマミだって忘れてはいない。

 

「任せてください。」

 

とは言ったものの、具体的にどうしたらよいのかマミには見当もつかない。一人ひとり困っている人を手助けしたらよいのだろうか?いや、それではいくら時間があっても足りないだろう。大勢の人が困っているような案件を解決すればよいのだろうが、そんな案件、そうそうあるものではないし、実際あってよいものでもない。

 

「まずは聞き込みから…ですかね。って、あ。」

 

マミが考え込んでいる間に、隣にいたはずのモッチィはどこかに行ってしまっていた。あたりを見回してみても、人、人、人。老若男女、多種多様な人々がせわしなく動いている。いくらマミの耳が優れているといえど、この中からモッチィのことを見つけるのは容易ではない。立ち尽くしているのも邪魔であり、呆けているマミにぶつかってくる人までいる始末である。

 

「おう嬢ちゃん!粗末な剣持ってんナァ!」

 

ぶつかってきた男の一人が大きな声でマミに声をかける。覆面を被った男は大柄で、マミの二倍はあろうかというほどであった。必然的にマミは見上げる形になって彼のほうを向く。

 

「粗末…ですか?」

 

言われてみれば個々の城下町の店に並ぶ武器はどれも整備してあり、どれも村で取り扱っていたものよりよさそうに見えた。

 

「おうともよ!俺の店なら、もっといい剣扱ってるぜ!嬢ちゃん一人でこの辺の敵を倒すってんなら、自分に合ったいい剣使った方がいいってもんよ!!」

 

そういうと、男はにこやかな笑顔を浮かべながらマミの腕を引き歩き始める。剣か、とマミは考える。最後に調達したのはキサゴナ遺跡に向かう前だったような気がする。天使界にいたころは常に天使たちの剣を整備してくれる者がいたため、自分で剣を整備したことなどない。男はこの剣を粗末だといったが、そうなのかどうかさえマミには判別がつかない。ついていけば、いい剣を提供してくれるのだろうか。それは願ったりかなったりだ。マミは腕を引かれるままに男についていくことにした。

 

 

 

 

 

 

 

「さ、この剣なんかどうだい?軽いし、小柄な嬢ちゃんにはぴったりだと思うぜ!」

 

男がマミに渡してきたのは銀色の剣だった。マミにはなんの素材でできているのかわからないが、軽いし、先ほどまで持っていた剣に比べて切れ味もよさそうに見える。はこぼれはしていない。使いやすそうだ。しかし、剣を実際に振ってみると違和感を感じる。手にぴったり収まりはするのだが、どうにも軽すぎはしないだろうか?どのような金属でできているのだろうか?

 

その旨を伝えてみたところ、男は少し口の端をゆがませる。

 

「そりゃあ、嬢ちゃんが…その、力持ちだってことさ」

 

まるでマミが言ってはいけないことを言ったかのように目を逸らす。どうも歯切れが悪い。まずいことでも言ったのだろうか。なんせ無知な身である。粗相をしている可能性が高い。ふ、とマミは目線を上げる。

 

男が何やら口にしているが、マミにその内容は入ってこない。マミの視線は店先に立つ、男の背後で不気味にほほ笑む女性に注がれていた。




剣の描写が---のままになっていたのを訂正
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