吉井明久に憑依してしまったので、原作みたいな扱いにならないよう、頑張る。   作:はやえもんさん

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特別問題/彼と彼女のバレンタイン

本日は2月14日、所謂バレンタインデーという日に当たる。

 

僕こと吉井明久は別段モテているというわけでもないので、とどのつまり、僕には無縁なイベントなのである。

 

近年では逆チョコやホモチョコと言った変わり種も増えてきているが、やっぱり一男子としては女子から貰うチョコが一番なのだ。例えそこに男と女の関係が無かったとしても、嬉しいものは嬉しい。

 

ただ本音を言わせて貰うと―――

 

「なんで今年は一個も貰えないんだーーーーーっ!!!」

 

畜生!!去年は義理チョコやら友チョコやらなんだかんだで結構貰えたのに!!

 

勿論、優子さんからも!!なのになんで!なんで!

 

「くそーーっ!!リア充は爆発しろーー!!!」

 

 

 

 

 

最悪の目覚めだった。朝起きたら身体中が冷や汗だらけである。

 

目覚まし時計特有の、煩わしい朝を告げるやたらと軽快な音を聞きながら僕は息を整える。

 

「なんて夢なんだ…って、今日は何日だ?!」

 

ふとそんな疑問を抱きカレンダーを確認する。

 

「良かった〜。バレンタインは過ぎて無かったよ。……てか今日だったのか」

 

そんなことを考えながら僕はベットから起き上がる。

 

変な夢の所為で早くに起きちゃった。今から二度寝しても眠れそうにないし、シャワーを浴びて学校へ行くことにしようかな。

 

―――

 

一通り身支度がすみ、早めに家を出ると、妙に男子生徒の数が多かった。……心なしか全員が全員、ソワソワしているようにも見受けられた。

 

やっぱり2月14日だからなのかなぁ。みんな早くに登校してるよ……

 

普段から早くに起きて学校に来ればいいのに……

 

そんな僕の想いとは裏腹に、男子生徒達は一斉に下駄箱の確認や、今日のために整えてきたであろう髪型をチェックしていた。

 

朝からチョコをゲットしてガッツポーズをする生徒、慣れた手つきで下駄箱からチョコを取り出す生徒、目当てのものが無かったことに対して絶望する生徒、実に様々である。

 

―そして僕も下駄箱を開ける。しかし、そこにはチョコなど皆無で上履きが入っているのみだった。

 

「あんま期待してたわけじゃないけど、やっぱり無いと寂しいもんだよね……」

 

僕はそんなちょっぴり暗い気持ちで教室へと向かう。

 

 

 

 

6限が終わりHRも終わり、あっという間に放課後になってしまった。

 

僕が貰えたのは教室の備えつけのお菓子だった。……これって貰えたって言うの?

 

結局夢が正夢になってしまった事に、僕は笑うことしかできなくなっていた。

 

そんな僕が暗くなった矢先、僕に声をかけてくる人が居た。

 

「あ、ああ明久くん。ちょ、ちょちょちょちょっといいかな?」

 

優子さんだ。どうしたのだろう、そんなに緊張した面持ちで。

 

はっ!もしや僕にチョコを?!この際義理でもいい!僕の自尊心を守る的な意味でこのチャンスは物にしなくてはならない!

 

「何かな?優子さん」

 

なるべく余裕な感じを出しつつ聞く。

 

「あのね、私……昭久くんにね、その、あの…」

 

僕は確信した。これは確実にチョコを貰える流れだ。優子さんは妙な所で恥ずかしがり屋だから、義理とはいえ、素直にチョコをあげるというのが恥ずかしいのだろう。

 

ここは僕がリードしなくては!

 

「優子さん、もしかして…僕にチョコをくれるの?」

 

「はぅっ!?どうしてわかったの?!」

 

「どうしてって、その、何と無くだけど。でも義理とはいえ、優子さんに貰えるなんてありがたいよ」

 

「………」

 

そう言うと何故か優子さんは黙ってしまった。

 

何か気に障ることを言ってしまったのだろうか。

 

もしかして、僕にそんなことを言われるのが心外だったのだろうか。

 

「あの、優子さん?」

 

「………から」

 

「え?ごめん、優子さん。もう一回言ってもらっていいかな?」

 

「義理じゃないからーっ!!」

 

そう言うと優子さんは足早に帰ってしまった。

 

……クラスのみんなからの視線が痛いです。

 

それよりも義理じゃないって……

 

ってもしかしなくても本命ってこと!?

 

そんなことに気付いた途端、恥ずかしくなり、僕も足早に帰った。

 

 

 

 

家に帰宅し、まだ整理のつかない頭で自分の部屋へと向かう。

 

取り敢えず、優子さんから貰ったチョコを開けて見ることにする。

 

中には一口サイズのチョコが幾つか入っている。

 

普段ズボラな生活を送っている彼女は、料理も余り得意では無いのだろう。

 

形も不揃いで、大きさもバラバラなチョコは、お世辞にも美味しそうとは言い難い。

 

それでも彼女が、他ならぬ僕の為に作ってくれたのかと思うと、そのチョコはとても美味しそうに思えてくる。

 

僕はその中から、ハートの形をしたチョコを取り出し、食べてみる。

 

 

 

 

………優子さんが作ってくれたチョコはどこまでも甘いチョコだった。

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