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第一話
テスラ・ライヒ研究所
荒野を駆ける人影が一つ、だが人にしては余りに大きく20mはあるだろう。
その人影の名はパーソナルトルーパー。通称PTと呼ばれる人類が青き星”地球”を守る為に生み出した鋼の巨人である。
疾走するPT”ゲシュペンスト”の量産機をカスタムした、”量産型ゲシュペンストMk-II カスタム”に乗る男に通信が入る。
「こちら管制室、予定通りテストを始めるぞ」
「りょ~かい。所長」
通信に対して軽い口調で返す男の声はまだ、幼さを感じられる。
「今回は最終調整の為のテストだ、軽く目標を撃破してくれ」
「小難しい事をしなくていいから楽チンですね」
「だが今回は実弾だヘタをしたら死ぬぞ」
「今更それくらいでビビりませんよ、爺ちゃんのお陰で何回も死にかけてますし」
「それは頼もしいな。それにしてもかなり加速しているのに良く平気で話せるな…」
「そうですか?まだまだ余裕ですけど」
現在少年が乗っている機体は従来機のスペックを遥かに超えた速度をだしており、余りの振動に並みの人間では前を見ることすら困難であろう。
試しに知り合いの女性パイロットがシミュレーターでテストしてみたが、体調を崩して「こんなの人間が乗る物じゃない」と人外扱いされてしまった。
失敬なと思いながらシミュレーターでは、参考にならないと言ったら周りにドン引きされてしまったが。
「さすが先生に鍛えられているだけあるな、ではターゲットを出す。くれぐれも無理はするなよ」
「了解」
少年は気を引き締めてレバーを握り直した所でターゲットである”71式戦車バルドング”4両を視界に捉える。
「来たか、行くぞ”レオ”!」
機体の愛称を呼び背中にマウントされている機体の身長程の長さの鞘から、日本刀型の”シシオウブレード改”を抜き背面にある二つの大型ブースターが、肩まで迫り上がり進行方向と平行に向きながら火を吹き、一気にバルドングに接近する。
対するバルドングの小隊は主砲で迎撃するが、少年は機体をスケートのように左右に滑らせながら回避する。
「おせぇよ」
先頭の車両をすれ違い様の両断しそのまま突き抜け小隊の背後を取り再び突撃する。
未だに反転中のバルドングの二両をシシオウブレード改で切り裂き、最後の一両は突き刺して撃破した。
「何だもう終わりか?」
「いやまださ、最後はこれだ」
所長の通信と共にレーダーに反応があり、その方向へ機体を向けると空からこちらに向かってくる機影を確認した。
「うげっ戦闘機かよ…」
接近して来る機体は”F-28メッサー”が二機、大気圏内では飛行できないPTにとって航空戦力は天敵なのである。
メッサーからミサイルが放たれるが、頭部のバルカンで撃ち落としながら回避する。
「まっ二機なら問題ねぇけどな!」
そう言ってペダルを限界まで踏み抜くと、ブースターが地面と垂直になるように向きを変え、機体を空へと持ち上げていく。
そのまま突撃するMk-II カスタムにメッサーがバルカン砲で迎撃するも、強固な装甲に阻まれて傷一つつけられない。
メッサーの目前まで迫ったMk-II カスタムが、シシオウブレード改を振り下ろすと、メッサーが綺麗に真っ二つとなり爆散する。
「コイツでラストだ!」
残りのメッサーに向かって機体を回転させながら、シシオウブレード改をぶん投げると刀身や鍔、柄に設置されているスラスターが火を吹き、ブレードがブーメランのように加速しながらメッサーを切り裂く。
投げたシシオウブレードが回転しながら戻ってきて、それを掴むと地面に着地する。
「きまったね完璧だよさすが俺」
自画自賛しながらうんうんと頷いていると通信が入る。
「ご苦労さん、帰ってきていいぞ」
「あ~お腹すきましたよ帰ったら飯にしよっと」
「その前にレポートを提出したらな」
「鬼!悪魔!そんなに俺を働かせたいのか!」
わざとらしく泣き出す少年に所長と呼ばれている男性は、呆れが混じったような溜め息を吐く。
「いや、テストパイロットなら当然の義務だからな」
「そう言うのはロブさんに任せた方がいいですって」
「それでこの前押し付けられてロブの奴おもっきり泣いてたぞ」
「後でちゃんとご飯おごってあげたじゃないですか」
「飯奢られてなんでも喜ぶのはお前さんぐらいだと思うぞ」
「なんですかそれ!まるで俺が飯に簡単に釣られてしまう男みたいじゃないですか!」
「違うのか?」
「否定はしない!!」
「ハァ、もういい早く帰ってこい…」
堂々と胸を張って言うと、もう疲れたといった感じに通信を切られる。
「ふむ、やっぱり所長疲れてるな、今度栄養ドリンクでもプレゼントしよう」
テスラ研所属者に原因はお前だよと、ツッコまれるだろう事を言いながら少年、イサム・トウゴウは機体をテスラ研へと向けて帰還するのであった。
テスラ・ライヒ研究所 管制室
「ハァ、イサムのあのマイペースぶりは少しはどうにかならないもんか…」
ため息を吐く初老の男はテスラ研所長ジョナサン・カザハラでつい先程までイサムと話していた疲れがどっと出ていた。
「所長、お疲れ様です」
そんなジョナサンに対して一緒にいた研究員が労いの言葉をかける。
「まあ、あいつの性格は難が有るが腕は確かだからな実際助かっているよ」
「そうですね。15であそこまでPTを扱える人間なんてそうそういませんよ。特に近接戦闘なら正規軍人を軽く超えていますもんね」
「その代わりに射撃能力は驚異的酷さだけどな」
「ええ、ほぼゼロ距離でやっと命中しましたもんね…」
「本人曰く「もともと人間は殴り合って戦っていたんだから銃が使えなくても問題ない!」だったな」
恥ずかしげも無く言い張った時は逆に清々しさ感じられたものであった。
「お陰で彼の機体を調整するのに苦労して、結局外部の人に協力を要請したんですよね」
「ああ、ラングレー基地のマリオン・ラドム博士かと言うかもはや調整じゃなくて新しく開発したようなもんだな」
「要請していきなり「なら、一気に加速し接近して攻撃すればいいだけですわ」て言って、イサム君と意気投合して勝手に進めていきましたよね」
「まあ、別に構わなかったんだがね」
実に楽しそうに笑いながら図面を引いていた女傑と、それに便乗して勝手に資材を使いまくった少年のことを思い起こし、苦笑いをする二人。
「ただ装甲を厚くして、陸戦機に付けないようなブースターや、スラスターを付けまくったりしたせいで機体バランスが最悪になってしまったよ」
「正真正銘の彼専用機になりましたね。他の人間が乗ったら確実にお陀仏ですよ」
「本当にな…実は試しに乗ってみたんだ」
「えっ」
研究員が信じられない物を見るような目で、ジョナサンを見る。
「好奇心がまさってシミュレーションで乗ってみたんだ。そしたら加速した瞬間意識がブッ飛んだよ」
「正しく「好奇心は身を滅ぼす」ですね…」
「時折アイツが人間か疑うよ、この前なんかテスラ研の壁をよじ登って屋上にたどり着いていたし」
「どこの超人ですかそれ?」
「まあ、ワシに言わせればまだまだだじゃがの」
顔面を蒼白にして話す二人とは別の声がし、そちらを向くと右手に持った杖を使いながら、歩み寄って来る老人リシュウ・トウゴウが見えた。
「これはリシュウ先生、姿が見えませんのでどちらにいらしゃるのかと思いましたよ」
「フォッフォッフォッ、何屋上からしかと見届けていたわ。壁をよじ登ってな」
左手でサムズアップしながら、ドヤッといいそうな表情をするリシュウ。
((ホント何者だよこの人達…))
「どこにでもいる老人とその孫じゃよ」
((いや、そんなこと出来るのあんた達だけだよ…。つーか、心読まれた!?))
ジョナサン達が驚愕していると管制室のドアが開きイサムが入ってくる。
「ただいまー」
「おう、イサムお帰り」
身長は同年代の男子より少し低く、女性寄りの顔立ちをしているためよく女子と間違えられることが多く、その愛らしさで研究所や関わりのある施設の女性から絶大な人気がある(本人は男らしくしようと、努力しているようであるが…)
黒色の髪を腰まで伸ばし、根元から束ねた所謂ポニーテールを(本人は切りたいのだが周りがさせてくれない)揺らしながら駆け寄って来るイサムを、左手を軽く振りながら出迎えるリシュウ。
「あっ爺ちゃん、ねえねえ今日のテストどうだった?」
「ふむ、最初の一太刀は良かったが、刀を無闇にぶん投げてはいかんと言っておろうが」
ワクワクといった感じに感想を求めるイサムに、たしなめるように己の評価を伝えるリシュウ。
「えーだって、戦闘機が相手だしその方が確実に仕留められるもん」
「外したらどうするんじゃ、ただでさえまともな武装がシシオウブレードしかないのに」
両腕を後ろに組みながら特に反省している様子の無いイサムに、頭を掻きながらどうしたものかといった感じのリシュウ。
「そん時はぶん殴る!」
「前向きなのは構わんが、相手が格上だったら確実に詰むぞ」
「つーか親分だって斬艦刀投げてるじゃん」
「零式には他の武装が有るし、あやつはちゃんと考えておるわい」
ここには居ない弟弟子を引き合いに出すがあっさりと切り捨てられる。
「俺だってちゃんと考えてるもん!」
「本当かの~、お前は熱くなるとすぐ何かしら投げたがるからのぅ。
この前レポートが終わらないでイラついて投げたペンがロバートの尻に刺さっておったし」
「((ああ、だからあいつ(あの人)もうお婿に行けないて言ってたのか))」
よく少年によって災難にあっているロバートという男性に同情を禁じ得ないジョナサンと研究員。
「う、うるさいなーもう、お腹すいたからご飯食べに行こうよお爺ちゃん」
「他にも言いたいことがあったが、まあいいお前に伝えねばならんことがあるしの」
「伝えねばならんこと?」
「食事が終わってから話そう。では行こうか」
「うん!」
実に嬉しそうに笑うイサム。
その姿はおあずけをくらう子犬が、許しを得て喜んでいるかようである。
ちなみにその姿を見た周りの女性職員の鼻からは愛が溢れていた。
「では、失礼するぞジョナサン達よ」
「所長も皆さんもまったねー!」
「ええ、私たちはデータを纏めたいのでお二人でどうぞ」
「イサム君またね」
リシュウが一礼してドアへと歩き出し、イサムはジョナサンや他の職員たちにも元気よく、手を振りながらその後を追っていく。
「仲が良いですよね本当に」
「ああ何でも先生が日本にいた頃に親に捨てられていた赤子のイサム君を孫として引き取り育てたそうだ」
「最初に知り合った時は血の繋がった家族にしか見えませんでしたよ」
「血の繋がりが家族に必ず必要ではないと言う事さ。それに比べてアイツは…」
「また、息子さんと喧嘩したんですか?」
頭を抑えて溜め息を吐くジョナサンをまたかよといった目で見る研究員。
「まあな、リン君の事で励ましてやろうと思ったら「うるせぇ、ほっとけ!」と怒り出してな」
「ヘタにからかったんじゃないんですか?」
「ははは、いかにも落ち込んでますオーラが出てたんでついな」
「やれやれ、グルンガストの事は伝えたんですか?」
「ああ、そっちは後は送るだけだから問題はない」
心配無用といった感じのジョナサンだが、正直いまいち安心感が沸かないと思ってしまう研究員。
「さて、”コイツ”を早く仕上げないとな」
「そうですね、ですが”エアロゲイター”に対抗する為とは言え、イサム君のような子供に戦わせなければならないとは、正直辛いです」
自分達大人の不甲斐なさを嘆く研究員。
「あの子が自分で選んだ道さ、ならば我々大人は全力で応援しようじゃないか」
「はいそうですね」
そう言ってジョナサンが、PCを操作するとモニターにイサムが乗っているゲシュペンストに似ているが別の機体のデータが表示されるのであった。
リシュウの話とは何なのか次回をお楽しみに!
※2014/1/9に大幅に書き直させて頂きました。