スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

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5月17日に、エクセレン・ブロウニングの声優を演じておられた水谷優子さんが、乳癌のためにお亡くなりになられました。謹んでご冥福をお祈りします。
素晴らしい演技の数々に、本当に心掴まれ大好きな声優さんでした。これからのご活躍を楽しみにしていただけに残念でなりません。


第二十二話

『だ、ダサい!?ダサいじゃと!貴様、ワシの考え抜いてデザインしたザ・キングをダサいと言いおったな!!』

『他になんて言えってんだよ!原型の良さが台無しじゃねーか!!』

 

乗機を貶されたことに激怒するアードラーに事実を突きつけるイサム。

 

『それとテメェ。アードラーって言ったな?パイロット養成機関『スクール』にいたのは間違いないな?』

『そうじゃ。それがどうした?』

『そうか。お前がラトを苦しめた元凶の1人か!!』

 

そう言ってレオーネのブレードをザ・キングへと突きつけさせるイサム。その表情はかつてない程の憤怒の色に染まっていた。

 

『テメェのせいで、ラトやどれだけの人間が苦しんだと思ってやがる!』

『フンッ知らんな。スクールにいた奴らなど、ワシの研究のための道具に過ぎんわ。寧ろ使い道を見出してやったのじゃ。感謝こそされど、恨まれる筋合いはないわ!』

『ああ、そうかい。だったら容赦しねぇ。ここで叩き潰す!!』

『やれるものならやってみるがいいわ。ワシの邪魔をする愚か者は死ねぇい!クロスマッシャー!!』

 

ヴァルシオン・ザ・キングが、手にしていた杖の先端をレオーネへと向けると。先端に埋め込まれていた宝石から、赤と青の螺旋状をエネルギーが放たれる。

スラスターを吹かし機体を横に逸らすことで回避すると、攻撃後の硬直を狙って突撃するレオーネ。

 

『おらぁ!』

 

下段に構えていたシシオウブレード改を振り上げ、切りつけようとするも、刃がザ・キングに触れる前に見えない何かによって弾かれてしまう。

 

『何ッ!?』

 

予想外の防がれ方に一瞬戸惑うも。反撃に振るわれた杖を機体を屈めて避けると、一旦距離を取るレオーネ。

 

『この感じ。歪曲フィールドってヤツか!?』

『その通ぉり!このザ・キングは量産性を重視した改型とは違い、オリジナルと同様の機能を搭載しておるのじゃぁ!』

 

ガハハハハと得意げに語るアードラーに、舌打ちするイサム。

歪曲フィールドの強固さは、オリジナルとの戦いで味わっており。ハガネ・ヒリュウ隊の総力を持って、ようやく打ち破ることができたのである。

しかし、今は他の仲間がそれぞれの敵と戦っている状態で、イサムだけで打ち破らなければならないのだ。

 

『四の五の言ってられんってな!』

 

突破口を見つけようと機体を踏み込ませるイサム。それを迎撃しようとザ・キングがクロスマッシャーを放つ。

機体を僅かに横に逸らすことで軽々と回避すると、間合いを詰めてブレードを振るうもやはりフィールドに阻まれてしまう。

それでも相手が特機故の機動性の低さを突き。張り付きながら何度もブレードを振るっていくレオーネ。

 

『ええいネズミがちょろちょろと、鬱陶しいわ!!』

 

ザ・キングがレオーネを引き剥がそうと杖を振るうも、一向に掠る気配もしない。

 

「(動きが素人だな…)」

 

確かに機体性能はオリジナルのヴァルシオンと同等だが、パイロットの技量は雲泥の差であった。

これなら単独でもどうにかなるか?とイサムが考えていると。上空からクロスマッシャーと同様のエネルギーがレオーネとザ・キングの間に降り注いだ。

 

『ぬぉ!?』

『何だ!?』

 

エネルギーが降ってきた方へ視線を向けると。改型やザ・キングでもない、ヴァルシオンタイプそれもPTサイズの機体が、こちらを見下ろしていた。

敵味方の識別信号が出ていないので、警戒していると所属不明のヴァルシオンタイプから戦場全域に通信が入る。

 

『あんた達。ビアン・ゾルダークを倒したハガネ部隊で間違いないね?』

 

声からして、ヴァルシオンタイプに乗っているのは若い女性のようである。

 

『あたしはリューネ・ゾルダーク。ビアン・ゾルダークの娘だ』

 

女性の言葉に通信を聞いていた者達に衝撃が走る。特にビアンに止めを刺すこととなったマサキは人一倍であった。

 

「リューネじゃと?では、あれがヴァルシオーネか。ビアン総帥から行き先が聞いていらなんだが、丁度良い」

 

ザ・キングのコックピット内で、邪な笑みを浮かべたアードラーは、ヴァルシオーネと呼んだ機体に通信を繋いだ。

 

『リューネ・ゾルダーク。いい所に来たわしらと協力してビアン総帥の敵を…』

『黙ってなじじい!』

 

リューネ・ゾルダークを味方に引き込もうとしたアードラーだが、途中で遮られてしまった。

 

『あたしは親父の仇(・・・・)とケジメをつけに来たんだ。DC総帥の仇を討ちに来た訳じゃない。それにヴァルシオンの量産どころか、その悪趣味なのを造らせるとは思えないね。どう言うつもりだい!』

『あ、悪趣味じゃと!?』

 

アードラーがショックを受けている間に、ヴァルシオーネはサイバスターと一騎打ちを始めるのであった。

 

『お、おのれおのれおのれ!どいつもこいつもワシを馬鹿にしおって!このワシへの無礼の報い思い知るがよいわ!ゲイム・システム起動!!』

 

アードラーが何かをしたのかと身構えると、ザ・キングの姿が消えた。

 

『ッ!?』

 

咄嗟にブレードを殺気のした方へ構えると、踏み込んできていたザ・キングの杖とぶつかり合う。

 

『なんだこいつ。急に動きが!?』

『ふはははは!見たか、これがワシが開発したゲイム・システムの力よ!』

 

次々と振るわれる杖をブレードで受け流すレオーネ。隙を見て反撃しようとするも、軽々と防がれ逆に攻撃されてしまう。

先程までとはまるで、別人の様な動きに翻弄されるイサム。ガードを弾かれ、無防備な胴体に膝蹴りを受けて機体を浮かされて、頭部を掴まれてしまう。

 

『クソッこんの!』

『ケケケケたわいもない。このまま捻り潰してくれるわ!』

 

レオーネの頭部がミシミシと悲鳴をあげていく。ザ・キングの手を剥がそうとするも、ビクともしなかった。

 

『無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!』

 

ザ・キングが杖の先端をレオーネの胴体に向けると、クロスマッシャーを放とうとする。

 

『死ねぇイ!!!』

 

エネルギーが放たれようとした瞬間。飛来してきたビームが、ザ・キングのフィールドとぶつかり合う。

その衝撃で拘束が緩んだ瞬間。ブースターを全開にし、拘束を振りほどき機体を離脱させ様とするも。離脱と同時に放たれたクロスマッシャーに左腕が飲み込まれ消し飛んでしまう。

 

『そこまでですアードラー・コッホ』

『リリー・ユンカース。なんのつもりじゃ?』

 

ザ・キングを攻撃したのは、味方である筈の統合軍参謀リリー・ユンカースが搭乗するストーク級であった。

 

『これ以上、あなたにDCを好きにはさせません。マイヤー司令から託された使命を、今こそ果たします!』

『フン。やはり裏切るつもりであったか。しかし貴様如きに、このワシとザ・キングが倒せるものか!』

 

ストーク級が砲撃を加えるも、フィールドに阻まれてしまう。そして、お返しと言わんばかりに放たれた、クロスマッシャーによって大破してしまう。

 

 

 

 

次々と爆発を起こし高度を落としていくストーク級。艦橋で起きた爆発に巻き込まれたリリーは、床に叩きつけられる。

アードラーに攻撃する前に退艦命令を出していたので、艦には彼女1人だけとなっていた。

 

「うぅ…」

 

懸命に顔を上げて、艦橋に備え付けられているモニターを見るリリー。

アードラーと戦っていたPTは左腕こそ失っているも、無事であることに安堵する。

出血が酷く、もはや助からないだろう。それでもマイヤー司令とビアン総帥が託した、希望の1つを守れて死ねるのなら本望であった。

DC戦争末期。コロニー統合軍がハガネ・ヒリュウ隊に敗れた日――

 

『急げリリー。生存者を纏めて脱出せよ。そして使命を果たすのだ』

 

沈みゆく旗艦マハトの艦橋で。リリーを庇って致命傷を負ったマイヤーは、そう言って彼女に希望を託した。

生き延びたリリーは。DCを私物化するであろうアードラーに従うふりをして、彼に合流したのであった。マイヤーとビアンの残した力を悪用する者を止めるために。

 

『ファーーーーハッハッハッハッハッ!愚か者めが。ワシに逆らったことを死んで後悔するがよいわ!』

 

通信機からアードラーの高笑いが響いてきた。

確かに自分はここまでだ。しかし何も問題は無い。『彼ら』とハガネ・ヒリュウの者達が力を合わせれは、あの男ひいてはエアロゲイターからこの母星を守ってくれるだろうと言う確信がリリーにはあった。

 

「最後まで見守ってくれたことを…感謝します…。…後はあなた達に…託します…」

 

『戦を起こしたものの責任』を果たさせてくれた『彼ら』に感謝の念を述べる。もはや思い残すことはなかった。

 

「(ああ…マイヤー様…。今、お傍に…参ります…)」

 

敬愛する者を想いながら。リリーは、爆発の炎に飲み込まれていったのであった。

 

 

 

 

『…後はあなた達に…託します…』

 

通信機から聞こえてきた声を最後に、爆散してしまったストーク級を見ながら唖然としてしまうイサム。

 

『あの人。俺を助けるために…?』

 

自分を庇って死んでいった祖母の姿が思い起こされていく。後悔と己の無力さが怒りとなって、操縦桿を強く握り締める。

 

『フヒヒヒヒヒヒヒ!死ね死ね死ね!ワシに逆らう者には死あるのみじゃぁぁぁぁぁ!!!』

『テメェェェェェェ!!』

 

狂った様に高笑いを上げるアードラーに、怒りのまま機体を突撃させようとするイサム。

そんなレオーネを遮る様に、前方の海面から3つの影が飛び出してきた。

 

『ソニック・スレイヤー!』

 

飛び出してきた影の1つ――ケンの駆るアリオールが、フィールドを纏わせた両手のシシオウブレードを振るい、ザ・キングのフィールドとぶつかり合う。

ダメージこそ与えられなかったが、その衝撃でザ・キングの動きが止まる。

 

『射てトロンベよ!』

『こいつもプレゼントォ!』

 

続いて、エルザムの乗るヒュッケバインMk-II2号機をカスタムした『ヒュッケバインMk-II・トロンベ』が。腰の股間ブロックに接続したキャノン砲から重力弾と、エールの乗るディバイソンが背部の16連装砲から放った大出力ビームがザ・キングへと殺到する。

 

『ぬぅおおう!?』

 

ザ・キングはこれもフィールドで防ぐも。今までのイサムの攻撃によって、負荷がかかっていたこともあってか。流石の歪曲フィールドも限界が近く、発生装置から火花が散る。

 

『グッ!フィールドが!?エルザム、貴様もワシに歯向かうのか!DC総帥…いや、地球圏の覇者たるこのアードラー・コッホに!』

『ハッ。貴様が地球圏の覇者?笑わせるな。ビアンのオッサン達の威を借るだけのクソ野郎が』

 

憤慨しているアードラーを、汚物を見るような目で吐き捨てるケン。

 

『ケン、貴様ァ!!』

『アードラー副総帥。あなたは力を振るう相手を間違えている。今はエアロゲイターの驚異を払うために人類が力を合わせる時なのです』

『だからこそワシが軟弱な連邦の代わりに、地球圏を統一するのじゃ!』

『いたいげな少女を、無理やり戦わせている奴には無理でしょ』

『黙れ小娘がァ!』

 

エールの言葉に反論できないのか、ザ・キングがクロスマッシャーを放った。

散開して回避した間に、アリオールに通信を繋ぐイサム。

 

『ケン!助けられたんじゃないのかお前なら、リリーって人を!?』

『…ああ。できた』

『!だったらなんで…!』

『あの人が…それを望んだ…。それだけだ…』

 

冷徹に振舞おうとしている様だが。自分自身納得しきれていないのか、その声は僅かに震えていた。

 

『俺が仇討ち云々言う権利はないが。それでも奴は放置しておけん。だから力を貸せイサム!』

『ああ、分かった。行くぞケン!』

 

アリオールが先行し、持ち前の機動性を活かしてザ・キングをかく乱すると、その隙に接近したレオーネが正面から切りかかる。

ブレードと機体のスラスターを合わせながら、機体全体を巧みに動かし、片腕だけで長大なブレードを振るうレオーネを、杖を振るって迎撃するザ・キング。

レオーネに気を取られている間に、背後から仕掛けるアリオール。ザ・キングを挟み込んだ2機の一糸乱れぬ連携を、ザ・キングは杖とフィールドで防御する。

 

『カァッ!!』

 

薙ぎ払う様に放たれたクロスマッシャーを避けるために、回避行動を取るレオーネとアリオール。

 

『隙だらけってねぇ!』

『ターゲット・インサイト』

 

ディバイソンがミサイルとガトリングを、Mk-II・トロンベがフォトン・ライフルで牽制し動きを抑える。

その間にレオーネとアリオールが攻め込み、ザ・キングのフィールドに負荷を加えていく。

 

『ぐぅぬああ!』

 

痺れを切らしたのか、ザ・キングがクロスマッシャーを海面に向けて放ち、海水を巻き上げ目くらましをする。

レオーネらが警戒して一瞬動きを止めた隙に、マントを外して背部ユニットを露出させるザ・キング。

 

『死ね死ね死ね死ねぇ!消えてなくなれェエエエエエエイ!!』

 

背部ユニットが展開されると、エネルギーが放出されていき。周囲の大気が乱れ海が荒れていく。

 

『重力兵装!?不味い!』

 

危険を察知して止めに向かおうとするレオーネを、アリオールが手で制した。

 

『フンッ、メガ・グラビトンウェーブか。切り札を使ったな。なら、こちらもジョーカーを切るまでだ』

 

ケンの言葉に合わせる様に、ザ・キングの背後の海面を割って巨大な影が飛び出してきた。

 

『斬艦刀…』

『なッ!?』

 

現れたゼンガーの駆るグルンガスト零式が。零式斬艦刀を構え、重力制御のために、無防備となっているザ・キングへと突撃していく。

 

『疾風怒濤ッ!!!』

 

機体と刀身のブースターを噴射し、神速の速さで振り抜かれた斬艦刀が、ザ・キングのフィールドとぶつかり合いせめぎ合う。

だが、これまでの戦闘による負荷によって、遂に限界を超えたフィールド発生装置が破損する。

これによってフィールドが消失し、阻むものが無くなった斬艦刀が、ザ・キングの背部ユニットを両断した。

 

『ぬァアアアアアア!?』

『我が斬艦刀に、断てぬもの無し!』

 

ユニット爆発によってバランスを崩し、うつぶせで海面に倒れこむザ・キングを背に、残心をするゼンガー。

 

『親分!』

『久しいなイサム。宇宙で刃を交えて以来か…』

 

予期せぬ再開に喜ぶイサムに対して、ゼンガーは敵対したことに、後ろめたさを感じている様であった。

 

『ぐ…ぐぉおおぅ…。ゼンガー、貴様も…貴様もワシに歯向かうのか…。なぜ理解せん…ワシが地球圏を統一せねば、人類に未来が無いことを…』

『黙れアードラー・コッホ!今こそ我らの使命を果たす時!』

『使命、じゃと!?』

 

ゼンガーの言葉に、機体を起き上がらせながら驚愕するアードラー。

 

『そう!我らの使命とは、異星人に対抗しうる戦力を見出し、鍛え上げること!』

『そして、アードラー副総帥。あなたの様に本来の目的を見失い、私欲に走るDC残党を止めること』

『しかる後。見出した者達と力を合わせ、この星を守ることだ』

 

ゼンガー達の言葉に、ぬぅぅと唸り声を上げるアードラー。

 

『親分、それにケン。やっぱり、そうだったのか…』

 

そしてイサムの中での疑惑が、確信へと変わったのであった。

 

『力を合わせると言っても、馴れ合う気は無いがな』

『素直じゃないね~。本当は仲直りしたいくせに』

 

突き放すように言うケンに対して、呆れた様子に言うエールだが。ケンは無視した。

 

『アードラー副総帥。どうか投降を。最早勝負は着きました』

 

エルザムの言う通り。切り札である重力兵装とフィールドを失ったアードラーには、最早勝機は無くなっていた。

 

『ま、まだじゃ…。まだ、ワシは負け、負けておらララララララララ!?!?!?』

 

なおも抵抗しようとしていたアードラーに、突然変化が訪れた。

 

『わ、ワシ…わしが。ワシが、この星の…し、シシシシシシ…しは、支配者しゃしゃしゃしゃしゃしゃ!!!』

『な、なんだ!?何が起こったんだ!?』

 

狂った様に話すアードラーに、不気味さを感じるイサム。

そんなイサムを尻目に、ケンはフンッと鼻を鳴らした。

 

『奴め、ゲイム・システムの限界を迎えたか』

『ゲイム・システム?なんだよそれ?』

 

心当たりがある様子のケンに、問いかけるイサム。

 

『あの糞ジジイが開発していた、パイロットの情報把握能力の拡張を促し、戦闘能力を向上させることを目的としたMMI(マン・マシン・インターフェイス)だ。最も脳への負担が強過ぎるため、使い続ければ廃人になるがな』

『それじゃ、あいつは…』

『ああなったら、手遅れだろうな』

 

自業自得だと哀れむ気も無い様子のケン。

 

『フヒャ、フヒャヒャヒャヒャヒャ!!し、シネ!シネシネシネシネ…シネェエエエエエエエエイ!!!』

 

狂った様に笑いながら、クロスマッシャーをでたらめに放つザ・キング。弾道が不規則なため逆に回避しずらくなっていた。

 

『えぇい、メンドくさいんだよ!』

 

イラついたエールのディバイソンが放った突撃砲が、ザ・キング胴体に直撃し体勢を崩す。

 

『そこだ!』

 

その隙にMk-II・トロンベが放ったライフルの光弾が、ザ・キングの杖を破壊する。

 

『アァアアアア!!!』

 

アードラーが最早言葉にならない叫びを上げて、ザ・キングが両腕を突き出しながら突撃してくる。

 

『往生際が悪いんだよ!』

『滅せよ、アードラー・コッホ!』

 

アリオールと零式がそれぞれのブレードで、ザ・キングの両腕を切り落とした。

 

『これで、終わりだァアアアアアア!!!』

 

レオーネが全てのスラスターを全開にし、ザ・キングへと突撃する。限界まで捻った腰部を戻す反動と、スラスターの推力に機体を回転させた遠心力を用いた一閃が、ザ・キングを左肩から右斜めに両断した。

 

『ば、馬鹿な…。わ、ワシの野望が…こんな所でェエエエエエエ!!!』

 

上半身と下半身が両断されたザ・キングは、最後に正気を取り戻したアードラーの断末魔と共に、爆炎に飲み込まれていった。

 

『この勝負。俺達の勝ちだ!』

 

爆炎を背に、残心するイサムであった。




おまけ

ザ・キング誕生秘話

アフリカ――その広大な大地の地下に建造された地下冬眠施設アースクレイドル。
来るべき異星人の驚異から、人類とその遺伝子を生き延びさせようという『プロジェクト・アーク』に基づいて建造された物であるが。現在はDC残党軍の拠点として使用されていた。

「う~む」

ジュネーブでの戦闘より遡り――アースクレイドル管制室で椅子に座り1枚の用紙を見ながら、何やら唸っているアードラー・コッホ。

「どうしたのじゃ、アードラーよ?」

そんなアードラーに1人の老婆が話しかけた。彼女の名はアギラ・セトメ。かつてアードラーと共に『スクール』に所属しており、組織解体後は生き残りの被験者と共にこのアースクレイドルに身を寄せていた。
自身の研究が一段落したので、気分転換に散歩していると、神妙な顔つきをしているアードラーを見つけたのである。

「アギラか。これを見よ」

そう言って見ていた用紙をアギラに渡すアードラー。

「これは『DCの次期総帥ランキング』?」
「そうじゃ。兵士達が密かにやっているのを入手したのじゃ」

アードラーの言葉にふむ、と唸るアギラ。
DC創設者のビアン・ゾルダークが倒れはしたものの。DC自体の戦力は依然として健在であり、それを率いていく者が誰になるのか、末端の兵士が気にするのも当然と言えた。

「それで、これがどうした?」

一通り目を通してみたが順当な結果であった。アードラーが何故不満そうにしているのかアギラには分からなかった。

「よく見てみるがよい。おかしい部分がある筈じゃ」

そう言われて再び用紙に目を落とすアギラ。

次期DC総帥ランキングベスト100結果発表
第一位シュウ・シラカワ
第二位バン・バ・チュン
第三位エルザム・V・ブランシュタイン



中間ロレンツォ・ディ・モンテニャッコ



最下位手前ケン
最下位アードラー・コッホ

「どうじゃ。おかしいじゃろ?」
「いや、どこがじゃ?」

何度見ても順当な結果である。やはり、おかしい部分は見つけられなかった。

「なぜ、ワシが一位でない?」
「は?」
「なぜ、このワシが最下位なのじゃ!?おかしいじゃろうに!!」

机をドンッと叩きながら勢いよく椅子から立ち上がり、アギラに詰め寄って怒鳴るアードラー。

「知らん。耳元で怒鳴るな」

耳を塞ぎながら、至極どうでもよさそうに答えるアギラ。

「ワシは副総帥じゃぞ!?当然次期総帥はワシとなる!なのに、この低さはおかしいじゃろう!」
「それだけ人望がないのじゃろう。ワシが兵士ならお前が総帥なんて嫌じゃし」

アギラがそう言うと「馬鹿な。そんなことが…」と呟いて、力なく椅子に座り込むアードラー。本気でショックを受けている様である。

「ぐっ一億万歩譲ってこの結果は良しとしよう。しかし、1番気に食わないのはワシよりあの糞餓鬼が上にいることじゃ!!」
「だから、耳元で怒鳴るな」

再び勢いよく椅子から立ち上がり、アギラに詰め寄って怒鳴るアードラー。

「糞餓鬼?ああ、このケンとやらか」
「そうじゃ。15の餓鬼に負けるなどワシのプライドはずたずたじゃ!」

そんなものお前にあったのかと、素直に驚くアギラ。

「お前が総帥になるくらいなら、こやつの方がいいと思われているのじゃろう」
「ありえん。あのクソ生意気な餓鬼がワシより人気だなどと…」

再び力なく椅子に座り込むアードラー。その顔は今にも泣きそうであった。

「ならば…」
「ん?」

ボソリと何か呟いたアードラー。その身体からは、何やら炎が吹き出している様に見えた。

「ならば、ワシが次期総帥にふさわしいことを証明してくれようぞ!!!」
「だから、耳元で怒鳴るなと言っておろうが」

再度勢いよく椅子から立ち上がり、アギラに詰め寄って怒鳴るアードラー。
対して、いい加減に鬱陶しくなってきた様子のアギラ。

「やる気があるのは結構じゃが。どうやって証明するつもりじゃ?」
「ふふふ。それは、今開発中の量産型ヴァルシオンの1体をワシ専用に改造する」
「ふむ」
「そして、次のジュネーブ攻略戦でその機体に乗ったワシが大活躍する」
「ふむ」
「さすればワシの人気が鰻上りとなって、ワシが新たなる総帥となることに誰も反対しなくなる。完璧じゃ。フフフ自身の天才的頭脳が恐ろしくなるわい!」

ファーハッハッハッ!と高笑いをするアードラー。

「しかし、お主機動兵器の操縦などできるのか?」
「そこはこれから特訓をすればよいし、最悪ゲイム・システムを使う」
「あれを使って大丈夫なのか?」

確かにゲイム・システムならば、素人同然の人間でも高い戦闘能力を発揮できるだろうが。反面脳に著しい負担をかけるので、下手をすれば廃人となってしまう。

「なぁに、ゲイム・システムはあくまで奥の手。連邦などワシの手にかかれば使うまでもなく倒せるわい」

ファーハッハッハッ!と再び高笑いをするアードラー。
この時点でアギラにはなんとなく、この男の結末が見えてきていたのであった。

「そうと決まれば、早速ワシ専用の機体の設計に入らねば!」

そう言うと話すだけ話したアギラを置いて、意気揚々と管制室を出て行くアードラー。

「まあ、どうでもいいか」

アギラにとって、アードラーがどうなろうと至極どうでもいいことなので、自分の研究に戻るのであった。
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