スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

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第二十四話

南極 コーツランド基地近郊

 

戦闘終了後。ハガネ・ヒリュウ隊はコーツランド基地に留まり、クロガネと接触していた。

 

「……」

「……」

 

互いの艦を挟んだ雪原で、それぞれの代表が対話しており。そこから少し離れた場所で、イサムとケンは互いに向き合う形で立っており、沈黙を保ったまま視線を交わしていた。

 

「…2人だけで話がある」

 

最初に沈黙を破ったのはケンであり、その目には何らかの決意を宿していた。

 

「俺もだ。と言いたいけど…」

 

その目を真っすぐに見返したイサムは頷く――も、手に嵌められた発信機を見た。

現在イサムは、内通者疑惑で情報部の監視下に置かれているのだ。

 

「情報部の人間。こいつを借りるぞ」

「ああ、構わんよ」

 

ケンが側にいたギリアムに向けて言うと、彼はすんなりと了承した。

 

「そんなあっさり、いいんですか?」

「言っただろう。私としては命令でしているだけだからね。個人的には君達は白だと思っているのさ」

 

そういって微笑むギリアムからは、心の底からそう考えていると読み取れた。

 

「では、いくぞ」

「あ!待てよケン!」

 

足早に移動するケンを、イサムは慌てて追いかけるのであった。

 

 

 

 

南極 コーツランド基地近郊

 

基地から少し離れた場所で、氷海を眺めながらイサムとケンは並び立っていた。

互いに黙ったまま景色を眺めていたが、ケンが不意に口を開いた。

 

「…まさかお前とこうして話し合う日が来るとは。人生とは分からんものだ」

 

腕を組んだ状態で感慨深そうに語るケン。

 

「そうだね。…ねえ。どうしてあの時俺達の前からいなくなったの?」

 

当初は祖母を手にかけ家族を捨てた彼を、ただ止めることしか考えていなかった。

だが、DC戦争で剣を交え。その後のエアロゲイターや、DC残党との戦いで共に戦う内に。自分は本当に兄弟のことを理解していたのかと考えるようになった。

だから、今は純粋に彼の気持ちを知りたかったのだ。

 

「俺の親が強盗に殺され、その強盗を俺が殺したのは覚えているか?」

 

ケンの父親は警察官であった。正義感に溢れ誰からも愛される人物で、ケンも大好きであった。

だが、その職業故に恨みを買うこともあったのだ。

ケンが生まれるより前に父が逮捕した1人男が、服役後復讐のために一家の住む家に押し入った。父も母もケンを守ろうとするも、強盗の手によって帰らぬ人となってしまう。

そして最後に残されたケンは、咄嗟に台所にあった包丁を手にし強盗に立ち向かった。

残すは、まだ幼なかったケンだけとなったことで油断もあったのだろう。不意を突かれた強盗は、無我夢中で突き出したケンの包丁が急所に刺さり絶命した。

 

「うん。それで身寄りがないから施設に入ったんだっけ?」

「ああ。だが、そこに俺の居場所はなかった」

 

事件後1人残されたケンを、誰が面倒を見るかが問題となった。

身を守るためとはいえ。人を殺めてしまったケンを、親族は誰も受け入れようとせず。最終的に保護施設で暮らすこととなった。

だが、施設の大人達もケンのことを恐れ気味悪がった。そんな大人の態度は施設で暮らす他の子供にも伝わり、ケンは孤立し邪魔者として扱われたのだ。

 

「施設で暮らす中で、俺は自分の無力さを呪った。あの時俺に力があれば、父も母も死なずに苦しい思いをしなくて済んだとな。そして、俺はお前と出会った」

 

誰も味方のいない施設での暮らしに嫌気がさしたケンは、施設を抜け出しあてもなく彷徨った。

やがて疲れ果てたケンは、とある空き地で身をうずめた。

 

 

 

 

 

 

 

 

『ねえ、君どうしたの?』

 

 

 

 

 

 

 

 

そんなケンに声をかけた同い年の少年が現れる。それがイサムであった。

彼は何も話そうとしないケンの側に寄り添い続けた。やがてケンが帰る場所がないことを知ると、強引に自分の家まで連れていった。

そこでケンはリシュウと彼の妻シノと出会い。ケンの事情を知ると、イサムの願いもあったが、彼を引き取り家族として迎えてくれたのだった。

 

「そして、リシュウの元で剣を学ぶようになって強くなれると思った。だが、そこでお前という壁が立ちはだかった」

「え?」

 

ケンの言葉に驚愕の声が漏れるイサム。彼が自分をそんな風に見ていたことが意外だったのだ。

 

「どれだけ努力してもお前を超えられないことに、次第に焦るようになっていった」

「そんなこと…」

「お前はそう思っていなかっただろうが。当時の俺は、どうしようもない才能の差を感じていたのさ」

 

表情こそ変えないが、自嘲するような様子でケンは空を見上げるた。

 

「でも、あの頃手合わせしても君がよく勝ってたじゃないか?」

「…お前、本気出してなかっただろ?」

「それは…」

 

ケンの問いに言葉を詰まらせるイサム。確かに昔の自分は人を傷つけることに躊躇いがあり、無意識に力を抑えていた。それを、ケンは感じ取っていたのだ。

 

「本気のお前を倒すことで、弱い自分を捨てたかった。だから、どうやってお前に本気を出させるか、ない頭を使った結果があんなことさ。つくづく馬鹿だったよ」

 

そういって、今度こそ自嘲するような笑みを浮かべるケン。

 

「でも、今はなんていうか…。俺が知っている以上に丸くなったよね。あれから何があったのさ?」

 

再会してから感じられていたが。姿を眩ませた時に感じられた危うさは消えており、イサムが知るケンよりも丸くなった印象を与えていた。

 

「……」

 

どこか遠くを見るかのような目をして黙ってしまうケン。初めて見る兄弟の姿に、思わず目が点になるイサム。

 

「…ある奴と共にいる内に、いかに自分が矮小であったか気づいてな。まあ、そこから生き方を変えていくことにしたのさ」

「そっか。その人ってどんな人なの?」

「大馬鹿な女さ。こんな俺にどこまでも着いて来ようとする、な」

 

言い方こそ辛辣だが、その口調はどこか暖かみを感じさせるものであった。

 

「大切な人?」

「そうだな。退屈はせん」

「じゃあ、その人にお礼を言わないとね」

「喧しくなるから止めろ」

 

辟易した様子で釘を刺すケンに、本当に丸くなったと思わず笑みをこぼすイサム。

 

「ねえ。これからは一緒に戦ってくれるの?」

「ビアンのおっさんの依頼が終わるまではな。その後は好きにやらせてもらう」

 

暗に再び敵対する可能性も示唆するケンだが。今だけでも肩を並べて戦えるのなら、イサムにとっては十分であった。

 

「じゃあ、今だけはよろしくね」

 

そう言って閉じたままの右手を、スッと差し出すイサム。

 

「…おう」

 

ケンはその手を気恥ずかしそうな目で暫し見つめると、意を決したように閉じたままの左手を突き合わせるのだった。

 

 

 

 

南極 コーツランド基地近郊

 

「ジー」

「……」

「ジー」

「……」

「ジー」

「…あの、何か?」

 

イサムを探していたラトゥーニは、突然現れた女性にジッと目線を合わせられて見つめられて困惑していた。しかも、わざわざジーという擬音を言いながらである。ハッキリ言って、不審者以外の何者でもなかった。

 

「へー、お嬢ちゃんが弟君のお気に入りかぁ」

「弟、君?」

 

やっと口を開いた女性――エール・エンフェリートの言葉に、疑問符を受かべるラトゥーニ。

 

「ん~。ケンの奴が自分の方が兄だって言ってたけど?」

「ケンって、アリオールのパイロットの?」

 

ラトゥーニは、そう言えばイサムが兄弟同然に育ったという話をしていたことを思い出し。目の前の女性が言いたいことをおおよそは把握した。

それと同時に、彼女の声には聞き覚えがあった。

 

「あの、あなたはガーリオンの重装カスタムタイプのパイロットの?」

「ああ、ごめんごめん。自己紹介してなかったっけ?あたしはエール・エンフェリート。えっと、階級は特務中尉ね。で、あなたラトゥーニ・スゥボータであってる?」

「あ、はい」

 

軍人とは思えない余りの軽さに、困惑の色を深めるラトゥーニ。そんな彼女のことなどお構いなしに迫っていくエール。

 

「いや~にしても、こんな可愛い子が連邦さんにいるとはねぇ。どう、あたしの妹にならない?」

「ええ…」

 

撫でまわされながらの突然過ぎる提案に、完全に置いていかれているラトゥーニ。はたから見ると、酔っ払いに絡まれているようにしか見えなかった。

 

「お、どうしたラトゥーニ。DCの奴にいちゃもんつけられてんのか?」

 

そんな彼女に。たまたま通りがかったカチーナが、どこか嬉しそうに声をかけてきた。

 

「そんな中尉じゃないんですから…あいたぁ!?」

 

共にいたラッセルがツッコミを入れると、カチーナに尻を蹴り上げられる。

 

「ありゃ、そういうお姉さんは。ヒリュウんところの、タコさんズの赤ゲシュさんのパイロットじゃないですか」

「オクトパスだ!てか、テメェはあの弾幕娘か!!」

 

エールの正体に気が付いたカチーナは、これでもかというくらいに威嚇して睨みつける。

 

「落ち着いて下さい中尉!クロガネには何回か助けてもらってるわけですから!」

「だからって、こいつらを信用すんのかよラッセル!」

「ですが、エアロゲイターに対抗するには今は協力するしか…」

 

なにやら2人で口論を始めてしまったカチーナとラッセル。

 

「なんか面白くなってきたねラトちん」

「はぁ…。ってラトちん?」

 

それは自分のことなのか?と問いかけようとすると、別の声がかけられた。

 

「エール!」

「お、レオナじゃ~ん!元気だった?」

「ええ。あなたも…元気そうね」

 

声をかけてきたのは、コロニー統合軍トロイエ隊の生き残りであるレオナであった。

彼女はラトゥーニを後ろから抱きしめているエールを見て、相変わらずといった様子で苦笑する。

そんな彼女らの(主にカチーナらの)喧騒につられ、他の者達も集まってきた。

 

「どったのレオナちゃん?」

「タスク・シングウジ…」

 

興味深々といった様子で話しかけてきたタスクを見たとたん、レオナがそわそわしだす。

そんな彼女を見たエールの目が怪しく輝いたように見えて、ラトゥーニは不穏な気配を感じた。

 

「ほう」

「?」

「ほうほうほう」

 

ニタニタと笑いながらレオナの肩に腕を回すエール。その不気味さに冷や汗が出始めるレオナ。

 

「な、何よエール…」

「Oh,yes!」

「え、何この人?」

 

やたらハイテンションエールに、不審者を見る目を向けるタスク。

 

「少年!」

「え、はい!?」

 

突然タスクの肩をガッチリと掴んで絡みだすエール。だが、その目は真剣そのものであった。

そんな彼女の目を見たタスクは、無意識に背筋を正してしまう。

 

「レオナは料理は非常に残念である。でも、それ以外は文句のつけようはない。大事にしたまえ!」

「は、はぁ…」

「エール!?!?!?」

 

まさかの暴露に、レオナが慌ててエールの肩を掴む。

タスクはエールのテンションに着いていけず、目が点になっていた。

 

「あなた何を!?」

「友の青春を応援して何が悪いかぁあああああ!!!」

「もう少しやり方があるでしょう!?じゃなくて!か、彼とはそういうことではなくってよ!!」

 

肩を激しく揺すりながら捲し立てるレオナ。普段の彼女ではまず見せることのない姿であろう。エールという女性の恐ろしさの一端を垣間見たラトゥーニであった。

 

「で、結局何しに来たんだお前は?」

 

カチーナが腕を組みながら、疑わしそうに睨みつけてくるも。意に介した様子もなく、ラトゥーニを後ろから抱きしめた状態で、彼女の頭に顎を乗せてくるエール。正直そろそろ離してもらいたい。

 

「ケンの奴が弟君と話に言っちゃって暇だから、せっかくなんで遊びに来ました」

「イサムと?」

 

エールの発言に、ラトゥーニは一抹の不安を覚える。これまでの行動から敵対することはないだろうが、彼にどのような意図があるのか読み切れないからだ。

ラトゥーニの不安を感じ取ったのか、優しく語り掛けるエール。

 

「だいじょぶだいじょぶ。仲直りしにいっただけだから」

「仲直り、ですか?」

「そっ。ようやく決心したみたいねぇ、あのツンデレ」

 

やれやれと溜息を吐くエール。何やら色々と苦労したようである。

 

「あの、あなたは彼の…」

「うい?妻です」

「つ、妻!?」

 

予想外の返答に、思わず目を見開いて素っ頓狂な声をあげてしまうラトゥーニ。

 

「Yes!ん?なぜそうなったか知りたい?あれは1億と2千年前…でもなく、4年前に遡って――」

「なんか、勝手に回想に入ろうとしてるッ!?」

「そう。その頃のあたしは清く正しい乙女として――」

 

なにやらよく分からない芝居口調と、手振り身振りで語りだすエールに、タスクのツッコミが入るも。知ったこっちゃないと言わんばかりにスルーされた。

 

「流された、だと!?」

「無駄よ。ああなった彼女は簡単には止まらないわ…」

 

強敵と対峙した時のような戦慄を走らせるタスクに、レオナはヤレヤレといった様子で首を軽く振りながらフォローする。

 

「そしてあたしとケンは、世界の中心で愛を叫んであうち!」

 

周りの者の反応など気にかけず、熱く語り続けていたエールの尻を、いつの間にか背後に立っていたケンが軽く蹴りを入れた。

 

「お、お尻が…お尻が2つに割れる!!」

「元からだ。まず、貴様に愛を叫んだことなどない。それに貴様に清く正しい乙女時代があったのなら、今すぐに真実の口に手を突っ込んでみせろ。そして、噛み千切られろ」

 

ボケかますエールを、冷めきった目で見降ろしながら言葉で責め立てるケン。

 

「……」

「頬を赤らめるな」

 

なぜか嬉しそうにしているエールの尻に再び蹴りを入れるケン。蹴られたエールはあふんッと、少なくとも乙女が発すべきでない声を漏らした。

 

「特務大尉!」

 

騒ぎを聞きつけてきたリョウトがケンの姿を見つけると、嬉しそうに声をかけた。

 

「リョウト・ヒカワか。もうお前はDCではないのだから、その呼び方は止めろ」

「ですが、特務大尉にはお世話になりましたし…」

「俺は何もしていない。ただ、ビアンのオッサンから回された面倒ごとを処理しただけだ」

「ビアン総帥が?」

 

腕を組んで不満そうに話すケンの発言に、引っかかりを覚えるリョウト。

 

「お前は、そっちにいた方が本領を発揮できるだろうって考えたんだろうよ。ま、正解だったようだが」

 

リョウトを見比べるような視線を向けるケン。

 

「なんやねん。せっかく慕ってくれてんだからもっと可愛がってやれよ~、やれよ~」

「はいはい。そうだな」

「あしらうなよー!」

 

エールが背中にもたれかかりながら茶化してくるのを、慣れた様子であしらうケン。

 

「(エクセ姉より凄い人っているんだなぁ…)」

 

ケンと共にやってきていたイサムは、エールの予想以上のインパクトの強さにある意味関心していた。

 

「お、弟君じゃん!ひゃっほぅ!!」

「にゃぁぁぁぁぁぁ!?」

 

イサムの存在に気が付いたエールが肉食獣のような目で跳びかかってきたので、思わず可愛らしい悲鳴をあげてしまうイサム。

 

「シッ!」

「あびゃ!?」

 

イサムを庇うように立ちはだかったケンの放った手刀が、エールの頭部に炸裂しビターンと地面に叩きつけられる。

 

「世話をかけた、ではな」

「あ、うん」

 

倒れ伏しているエールの片足を掴むと、さも当然のように引きずりながら去っていくケン。

 

「あ~弟君モフモフしてないのにィィィィィィィ!!!」

 

エールはジタバタとしながらあがくも、その姿は遠ざかっていく。

 

「なんか。嵐みたいな人だったなぁ」

 

暫く唖然としていた一同だったが。タスクが絞り出すように呟いた言葉に、皆無言で頷くのであった。

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