スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

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第二十五話

南極から伊豆へ帰還したハガネ・ヒリュウ隊は次の作戦へ備えて補給と整備を受けていた。

キョウスケとブルックリンによって、救出されたエクセレンとクスハは後遺症もなく戦線に復帰し、一同はエアロゲイターとの決戦に備えていた。

 

伊豆基地 格納庫

 

「どうだろう状態は?」

「装甲換装はいつも通りですが、サーボモーターがどうにもいけません」

 

キョウスケの問いに、整備員が難しい顔で答える。

先の戦闘でエクセレンを取り戻すために無理をした結果、アルトアイゼンは中破してしまったのだ。

 

「G系アクチュエータとしちゃ、これ以上のトルクは望めないんですが…」

「ないものねだりしても仕方がない、今の仕様で進めてくれ」

 

DC戦争末期より、キョウスケの技量に機体が追い付かなくなってきているのだが、現状では改善策がなく妥協せざるを得ないのだ。

 

「ないものねだりとは、また消極的だこと」

「あなたは…!」

 

格納庫に現れたのは、ラングレー基地陥落時に行方不明となっていたマリオン・ラドムとリシュウ・トウゴウであった。

マリオンは右足に包帯を巻き、松葉杖を使って歩いており。リシュウは右腕に包帯を巻いているも、以前と変わらず健康そうであった。

 

「ラドム博士!リシュウ先生!」

「わお!こんな昼間から化けて出たの!?」

「失敬なっ!もし死んでも、わたくしわそんなあやふやなものに身をやつすつもりはありませんッ!」

 

足があるか、確かめようとするエクセレンの頭を抑えながら怒鳴るマリオン。

 

「よくもまあ、わたくしのMK-Ⅲをここまで使いつぶしてくれましたこと」

 

アルトアイゼンの様子を一瞥したラドムが、感想を述べる。

 

「すみません」

「誉めているんです。限界まで性能を引き出したからこそ、次の()を目指せるというもの」

「この難儀な口と性格は、ちょっとやそっと寝付いた程度では直らんかったの」

 

相変わらずのラドムに、やれやれといった様子を見せるリシュウ。

 

「先生、その怪我は?」

 

リシュウの右腕に巻かれた包帯について、キョウスケが問いかける。

 

「…グレッグに諭されてな。マリオン達を連れてラングレーから脱出する時の立ち回りでちっとな。その後はクロガネに匿われとったので連絡もできんと不義理をしたな」

「いえ、よく生きていて下さりました。ブリットも喜びます。何より…」

 

キョウスケが言い切る前に、ドドドドドと足音が近づいてくる。

 

「おじいちゃ~~~~~~~~~ん!!!」

 

突進の如き勢いで飛び込んできたイサムを、難なく受け止めるリシュウ。

 

「よかった、よかったよぉ…」

「心配をかけたのイサム。許しておくれ」

「うん、いい。また会えたから…」

 

抱き着きながら胸に顔をうずめ、掠れ声で話すイサムの頭をそっと撫でるリシュウ。

 

「ラドム博士もよかったよぉ…」

「あらあら、この子たら」

 

リシュウから離れると、今度はラドムに抱き着くイサム。そんな彼の頭を、慈愛に満ちた顔で抱きしめるラドム。

 

「うう…よかったわねぇイサム君…」

 

そんな光景を見て号泣するエクセレンは、キョウスケがハンカチを差し出すと、鼻をかむ。

 

「かっかっかっ。まあなお前達に不義理を詫びにゃならんならまずこやつからじゃの」

 

リシュウの言葉に合わせるように姿を現したのは、ゼンガー・ゾンボルトであった。

 

「…隊長」

「俺をまだ隊長と呼ぶか。…再び…お前とこうやって話すことがあるとはな」

 

互いに感慨深そうに向き合うキョウスケとゼンガー。

 

「トウゴウ顧問やラドム博士まで無事だった。出来過ぎと言えば出来過ぎです」

「だが、俺は一度お前達を裏切った男だ。生き恥を晒すことは覚悟の上だが。今少しの間この星を守る力となることを…」

 

ゼンガーが深々と頭を下げると、キョウスケは一歩歩み寄る。

 

「…隊長、失礼します」

「む?」

 

顔を上げたゼンガーの頬に、キョウスケが拳を叩きつけ鈍い音が響いた。

その衝撃で軽く仰け反ったゼンガーの口から、血が僅かに流れ出る。

 

「我々が今必要としているのは、この星を護ると悪を絶つとただひたすらに愚直な男です。過去に迷い弱音を吐く男ではありません。未だに目が覚めないというのなら、覚めるまで叩かせて頂きます」

 

殴った拳を見せつけるように言うキョウスケに、ゼンガーはフッと笑みを浮かべた。

 

「そうか…そうだな、その通りだ。これ(・・)は貸しにしておくぞ」

 

吹っ切れた様に口元の血を指で拭うゼンガーに、キョウスケは満足そうに頷いた。

 

「ちょっと貸しっつったわよあの人。返せんのかしらアレ?」

「殴った方がダメージでかいって、流石親分と言うべきか…」

 

拳を痛めているキョウスケを見て、冷や汗を流すエクセレントイサムであった。

 

 

伊豆基地 格納庫

 

ラドムと共に、SRX計画用のブロックに移動したイサムは辺りを見回す。

伊豆の整備員と共に作業をしているマオ社のスタッフが見えた。

 

「なんか人が増えましたね。あれってマオ社の人かな?」

「ええ、補充物資と共に先程到着したそうです」

 

そんなことを話していると、見知った顔を見つけたイサムは声をかける。

 

「サカエ副指令ー!」

「む、イサム君か」

「もしかして、Rシリーズの凍結が解除されてんですか!」

「ああ、レイカー指令の独断だが。次の作戦は、使えるもの(・・・・・)は全て使わねば活路は拓けんと判断されたのだ。だから、マオ社の協力の元修復作業を行っている」

 

Rシリーズは北京での戦闘の直後に凍結が言い渡されたため、破損したままの状態で保管されていたのである。

 

「でも間に合うんですか?」

「問題ない、私もサポートするからな」

「カークさん!」

 

不安そうなイサムに、ロバートと共にいた男性が声をかける。彼の名はカーク・ハミル。ラドムと共にPT開発第一人者として活躍しているマオ社のスタッフである。

思わぬ再会に喜ぶイサム。

 

「それでカーク、先程の話だが…」

「ああ、パターンOOCは現状ではリスクが高すぎる封印すべきだろう」

「え、合体できないんですか?」

 

カークから放たれた言葉に、イサムは衝撃を受けた。

 

「トロニウム・エンジンのフルドライブ出力が概算でも高すぎる。念動フィールドの補正を入れても、ゾル・オリハルコニウムの装甲が保った所で関節サーボモーターが負荷に耐えられん」

「そんな…」

 

説明を受けたロバートとイサムが落胆していると、成り行きを見ていたラドムがやれやれといった様子で溜息をついた。

 

「みっともない有様ですこと。得体のしれない技術にほいほい興味本位でとびつくからそういう目にあうんです」

「ラドム博士!?生きていいたんですか!」

 

ラドムの存在に気がついたイサム以外の失礼な反応に、どいつもこいつもと言いたそうな顔で端末を見せつけるラドム。

 

「…MK-Ⅲとレオーネ用に改良した新型サーボモーターです。今クロガネから搬出させていますが、念のため多少多めに製造させてあります」

「クロガネから?行方不明の間にこれ造ってたんですか」

「歩くのには難儀しましたが、頭を使う方は支障なかったものですから」

 

ふん、と鼻を鳴らしながら包帯が巻かれた右足を見せるラドム。

 

「こんなこともあろうかと、PT系共通規格のパーツです。これならRシリーズの要求スペックにも十二分応えられる筈です。あなた達がどうしてもと言うのなら、分けてさしあげないこともありません」

「マリー…」

 

カークの呼び方にムッとするラドム。

 

「あなたにマリーと呼ばれる理由はもうない筈ですわよ!この件はあくまでついで(・・・)の話です!さあ、おっしゃいなさい助けて欲しいと!」

「あれが『元夫婦』だってんですから、人間には無限の可能性があるなぁ…」

 

2人のやり取りを見たロバートが、しみじみとした様子で作業に入り。イサムは仲良しだなぁと、微笑ましく見ているのだった。

 

クロガネ 格納庫

 

伊豆基地に秘密裏に駐留しているクロガネの格納庫にて、ケンは自身の機体を見上げながら考えに耽っていた。

そんな彼に歩み寄る人物がいた。

 

「この機体、親父が考えたんだろ?いかにも好きそうなデザインだ」

「リューネ・ゾルダークか」

 

隣に立ったリューネに、ケンは視線だけを向けた。

 

「何か用か?」

「ん、この子があんたに会いたがってさ」

 

彼女の言葉に合わせるように一匹の大型犬がケンに近寄ると、懐くように足へ頭を擦りつける。

ラッシーという名のビアン・ゾルダークの愛犬である。

 

「お前か。もう俺に構うなと言っただろうに」

 

構ってほしそうな顔をしているラッシーに、眉を顰めるケン。

 

「あんたのことが気に入ったのさ。気難しいこの子がここまで懐くのは珍しいよ。それと礼を言いたくてさ、エルザム少佐から聞いたよ。親父が死んじまってから、この子の面倒を見てくれていたってさ」

「勝手に寄って来るから、仕方なく相手してやっただけだ」

 

ヤレヤレといった様子で視線を逸らすケンだが、まるで照れ隠ししているようでもあった。

 

「それで、用はそれだけか?」

「いや、あんたの相方らさ、あんたが親父を守れなかったことを気にしてるって聞いてね」

「……」

「あたしとしては、別にあんたを責める気はないよ。寧ろ親父のワガママにつき合ってくれて感謝してるよ。だいたい死ぬことになったのも自業自得だからね。だから、いつまでも引きずることはないんだよ」

 

リューネの言葉を受けても、納得した様子のないケン。

 

「あんたのこともあったが。…あの人は、もう1人の父のような人だった。だから、例え本人が望んだ結果であったとしてもな…」

「そっか。それなら、あたしとあんたは姉弟ってことになる訳か。ふふ、あたし1人っ子で弟か妹が欲しいって思ったこともあったから、悪くないね」

「ム、それは…」

「よし、今度からあたしのことは姉って呼びなよ」

「いや、待て。勝手に話を進めるな」

 

首に腕を回しながら頭を撫でてくるリューネに、困惑しながらも口元に笑みを浮かべているケンであった。

 

 

 

 

伊豆基地 通路

 

「ん~と次はどこに行こっかなぁ」

 

考え込んだ様子で歩いているイサム。自覚はないが、どこか落ち着きがないようであった。

 

「イサム」

「うんにゃ、ラトどしたの?」

「こっち」

 

背後から声をかけられて振り返ると、ラトゥーニがおり。イサムの手を握ると近くにある休憩スペースに連れていき、椅子に並んで座る。

 

「作戦前で落ち着かないのは分かるけど、休める時に休むことも大事だよ」

「ん~そうなんだけど。エアロゲイターとの決戦だし、元々ジッとしてるのって苦手なんだよねぇ」

 

ラトゥーニの言葉に、頬を掻きながら答えるイサム。

 

「イルム中尉が『あいつは昔からそそっかしい』って言ってた」

「え、何。昔のことを聞いたの?」

「うん、罰ゲームで女装した時の…「いにゃぁあああああああ!?!?!?」とか」

 

笑顔でその時の画像が表示された端末を見せてくるラトゥーニに、イサムは悲鳴を上げながら消そうと端末に手を伸ばすも軽やかに避けられる。

 

「他にも『色々と』貰った」

「…嬉しそうでございますね」

 

ホクホクした様子のラトゥーニに、破棄することを諦め元凶(イルム)をとっちめることを決意するイサム。

 

「えへへ」

「どうしたの?」

「ん~やっぱり、ラトとこうしていると落ち着くなって」

「…うん、私もだよ」

 

笑顔のイサムに、頬を赤らめながらはにかむラトゥーニ。

 

「…ずっと、こんなに日が続けばいいのにね」

「そうだね。きっと、そうなる日がくるよ。そのためにも、できることをしていこう」

「うん、一緒に頑張ろうね」

 

イサムの手に自分の手を重ねるラトゥーニ。そんな彼女の行動に、嬉しさを感じると手を握るイサム。手から伝わる温もりが心地良かった。

突然のことに驚いたのか。ラトゥーニはビクッと体を震わせるも、顔の赤みが増しながらもそっと握り返してくれた。

それからは何も語ることなく、時間の許す限り温もりを感じ合うのであった。。


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