『潰れろ、潰れろ虫ケラ共ォ、ヒャハハハハハァ!!』
正気とは思えない様子でビームを乱射してくるゲーザ。その攻撃は味方すら巻き込んでいた。
『お前らは、俺の経験値になるためだけに生まれたモブキャラなんだよォ!』
『ッこいつ無差別に!それにこの言動って…』
『テンザン・ナカジマだろうな。エアロゲイターの奴ら、ジュネーブでの戦いの裏でも暗躍していたんだろう』
DC戦争後、テンザン・ナカジマはアードラー・コッホの元に身を寄せており。ジュネーブでの戦いではヴァルシオン改を駆り参戦していたのだ。
結果として、ゲイム・システムの負荷に耐えられず精神が破壊され、最後はリュウセイの手によって撃墜されることとなった。
『あれでは最早救いようもないな。最もそんな気はないが』
アリオールが小型砲台を切断すると、弾幕に切れ目が生じ。すかさずヴァイクル本体へ肉薄すると、ビーム砲へブレードを突き刺し離脱す。
『ホッ!?』
ビーム砲が爆発しその衝撃で動きが鈍ったところに、ビルドラプターとディバイソンが火器で追撃をかけ
ていく。
度重なるダメージに限界が近いのか、各部から小規模の爆発を繰り返すヴァイクル。全ての小型砲台も落とされ、満身創痍であるのも関わらずゲーザは戦いを止めようとはしない。
『楽しい、楽しいなァこのゲームは!ゲームの中だけは!アヒャッアヒャハハハハハァ!!』
剥き出しになったコックピットから見えるゲーザの体は、至る所から金属のフレームが剥き出しになっており、最早人の身ではないことを告げていた。
『……ッ!』
「おい、まさか助けようなんて言うなよ。奴の場合は自業自得なんだぞ』
そんなゲーザの姿に、思わず攻撃の手を止めてしまうイサムへ、ケンが釘を刺すように話す。
『確かに碌でもない奴だったけど。こんな、こんな人形みたいに扱われて言い訳ないだろッ!ふざけるな、エアロゲイターァ!!』
目の前の理不尽に憤慨するイサム。そんな彼の感情に反応するように、レオーネの出力が高まる。
『プチプチプチプチップチィィィ!』
『オオオォォォ!』
突進してくるヴァイクルへ向け、ブレードを構えながら突撃するレオーネ。
『チェストォォォオオオ!!』
交差する間際に振るわれるブレードは、袈裟切りにヴァイクルを斬り裂いた。
『ひ、ヒは…リセットだ。りせっと、そうさ…俺様は、ム…てき――』
切断面から爆発が起ると。それに続くように各部から小規模の爆発が続き、最後は機体全体を覆う程の大爆発がゲーザごと飲み込んでいくのであった。
『……』
『イサム、大丈夫?』
言いようのないやるせなさに、歯嚙みするイサム。そんな彼に寄り添うように、ラトゥーニは機体を寄せる。
『ありがとう大丈夫だよ。行こう皆、こんな戦い終わらせるんだッ』
『うん、行こう』
『立ち止まる気など元よりない』
『にしし、さ~て何が出てくるかねぇ』
決意を新たにイサムはラトゥーニらと共に、ハガネとヒリュウが切り開いた進入口よりホワイトスター内部へ突入するのであった。
ホワイトスター内部は閑散としており、迎撃を受けるでもなく一同は隔壁を破壊しながら中心部へと進んでいき。いくつかの障壁を破壊すると、開けた空間へと出た。
『何だここ…?』
『中枢エリアではないようだが』
『大気構成は地球と完全に一致している…』
イサムとケンは訝しげに周囲を観察し、ラトゥーニが分析結果に眉をひそめる。
『な~んか牧場って感じがしないでもないわねぇ』
エールがそんな感想を漏らしていると、別の隔壁がいくつか吹き飛び他の面々が姿を現す。
「おめでとう。地球人種の中でも選ばれた者達よ」
突如響いた声に視線を辿ると、空間の中心部にある丘。その上に玉座のような椅子に腰かけた、イサムらと同年代の少女が一同を見下ろしていた。
「お前達はクラス・ギボルたる資格を得た。この園はお前達のための檻である。そのヒトガタから降り、来るべき時まで寛げ。心安らに我が
尊大な態度で語る少女に、一同は困惑や疑念の目を向ける。
『女の、子?』
『随分プリティーな妖精さんだこと』
『何であれ、敵なら潰せば一緒だ』
『君がエアロゲイターの統率者なのか?』
問いかけるイサムに、少女はまるでペットを愛でるかのように視線を向ける。
「いかにも。我が名はレビ・トーラー。この自動惑星ネビーイームを統べる者である」
『…で、手前らは降伏しろと、そうぬかしやがるか』
そんな少女――レビの態度にマサキが不快感を隠さず問う。
「フ…。お前達の性能を評価し、我らの尖兵として闘う場を与えてやろうというのだ」
『性能…』
「そうだ、我らと言葉を交わらせる程度には発達した知性を持ちながら、蟲毒の如くたった一つの惑星上で飽くことなく殺し合い争い発展させてきた旺盛な繁殖能力と闘争本能。そして、我らが与えたお前達には本来オーバーテクノロジーである
『技術の種…メテオ3か…』
レビの言葉に、ラトゥーニは眉を潜ませライディースは思い当たる節を連想する。
「先行収穫したクラス・エヴェッドのサンプルは、そのデータをこの自動惑星ネビーイームの中枢システムジュデッカに記録された後自立兵器用サーキットとして加工されるが。このネビーイームーへの攻略戦という試練をくぐり抜け、この場この私の面前に辿り着いたお前達は、クラス・ギボルとしてその姿のまま我らに仕えることが赦される歓べ」
『地球を狙ったのは侵略のためなんかじゃない、私達を家畜として狩るため…』
『うわ、牧場って表現当たっちゃったよ、適当に言ったのに』
完全に自分達を人として見ていない言葉に、レオナが怒りさえ感じ、エールは自分の勘が当たったことに舌打ちした。
『
「事実だ」
『よもやこの人工惑星が全構成戦力という訳ではあるまい。お前達の属する勢力の規模は?』
「答える必要はない」
『あらん、ヘッドハンティングしようっていうなら、説明責任があるんじゃない?そもそも私達を使って誰と戦おうってのかしら』
「答える必要はない」
「(…何だ?答える気がないのか、答え自体を持っていないのか…?)」
タスク、キョウスケ、エクセレンの問いに答えていくレビだが、途中からこれまでの尊大ない態度でなく、まるで機械のように決められたパターンに従っているかのように淡々と語る様子に。イルムは違和感を覚える。
「貴様達に許されるのは恭順の言葉のみだ。さあ答えよ、我らの軍門に降りその力を我らに捧げるか」
『断るッ。我らはこの星を護り悪を絶つ剣。貴様らに屈する膝は持たぬ!』
レビの勧告をゼンガーが問答無用に両断する。そして、それはこの場に皆の気持ちを代弁するものである。
「フッ…この期に及んでもまだ己らを
そういってレビが立ち上がりローブのような衣服を脱ぎ捨てると、その下からパイロットスーツが露わになる。
それと同時に背後の隔壁が開いていき、R-GUN、タイプS、アタッドのヴァイクル、そしてそれらの背後に上半身が4本腕の人型で、下半身が大蛇を思わせる異形の特機クラスの機体が姿を現す。
「この時を持以て最終審判と成す。なるべく多く生き残ってほしいものだな」
異形の特機が4本の掌からビームを放ち、一同はそれを回避するも、着弾の衝撃で外部まで押し出されてしまう。
『何、だこいつはッ!?』
『一瞬で追い出されたッ』
『『ジュデッカ』この自動惑星ネビーイームーの中枢機関である』
振るわれた腕をレオーネは回避するも、その隙を突いてタイプSがプラズマ・スライサーを突き出してきた。
『させんッ!ブースト・ナックル!』
零式が撃ち出した左腕を、タイプSは攻撃を中断して回避すると、胸部の装甲を展開させブラスターキャノンで反撃しようとする。
『フンッ!』
頭上からカイの駆るM型ゲシュペンストが、ステークを起動させた左腕で殴りかかる。
タイプSは裏拳で軌道を変えて逸らすと、プラズマ・スライサーを振り下ろし、カイ機も片手で軌道を変えて逸らしてその勢いを利用し機体を横回転させながら裏拳を放ち、タイプSはタックルで吹き飛ばして防ぐ。
『このッ!』
そこにレオーネが蹴りを放ち、タイプSは片腕で受け止めるも、態勢が崩れていたこともあり押し出される。
『射抜け、トロンベ!』
ヒュッケバインMk-II・トロンベがフォトン・ライフルで追撃を加え、両腕を交差させて耐えるタイプS。
『ぬうんッッ』
背後から零式が斬艦刀で斬りかかり、迎え撃ったプラズマ・スライサーと交差する。
『!』
零式の背後に隠れていたギリアムが駆るゲシュペンストMk-II・タイプRが迫る。この時機械的に淡々と動いていたタイプSに、初めて動揺らしき人間らしさが見えた。
タイプSはプラズマカッターで迎撃し、タイプRは身を屈めて避け、光刃は手にしていたライフルのみを切断するに留まる。
そして、タイプRは左手に保持していたプラズマカッターをタイプSの胸部へと突き立てた。
だが、寸前でタイプSは上半身を逸らし、タイプRの一撃は胸部を掠れ右肩部に刺さった。
『ッ!浅いか!?』
タイプRを殴り飛ばしたタイプSは、ブラスターキャノンを放とうとし、そうはさせまいとレオーネがブレードを構えながら突進する。
そんなレオーネにタイプSは標的を変え、ブラスターキャノンを放った。
『ぐァッ!?』
G・テリトリー展開し受け止めるも、勢いに押されていくレオーネ。
『負け、るかァァァァ!』
出力を上げて徐々に押し込んでいくレオーネ。それに対抗しようとタイプSも出力を上げようとすると、発射口がスパークしビームの勢いが弱まっていく。先程のタイプRの一撃がエネルギー伝達系にダメージを与えていたのだ。
『!そっこだァァァァアアアア!!』
好機と捉えたイサムは、機体を加速させてビームの奔流を突き進んでいき、ブレードを発射口へと突き刺すと、タイプSの上半身が爆発を起こし吹き飛ぶ。
『…機体、大破…。戦闘、続行…不可能…。――手間、ヲカケタ…皆…』
『!大佐、意識を…!?』
辛うじてコックピットは残っており、発せられたガルインの言葉にギリアムが反応する。
露出したコックピットから見えるガルイン――カーウァイの姿は頭部と胴体以外は人としての姿を残しておらず、埋め込むようにして納められており、完全に機体を動かす部品として扱われていた。
『アリガ、トウ少年…コレデ、私ハ…眠ル、コトガ…デキ、ル』
『カーウァイ大佐ッ!』
スパークが強まり、今にも機体が爆発しそうになり、イサムは彼をコックピットから引き出そうとすると、タイプSは残った片腕でレオーネを突き放す。
『ソ…ノ勇気、アル…心ヲ、忘レズ…アノ、青キ…母、星ヲ…マモッテ、クレ――』
その言葉を残し、カーウァイは機体の爆発に飲み込まれていったのだった。イサムには、彼が最後に穏やかな笑みを受かべていたように見えた。
『く…う…うう…!』』
『カ、カーウァイ大佐!!』
『やはり…この方法しかなかった…なかったが…!』
『…大義のための犠牲…受け入れるしかないというのか…!我が妻の時と同じように…!!』
敬愛する上官の死に、元教導隊の面々は覚悟していたとはいえ、沈痛な面持ちとなる。
『カーウァイ大佐、あなたの分まで戦います。どうか安らかに…』
イサムは戦士の安息を願い黙祷を捧げるのであった。