スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

30 / 32
第二十八話

『イングラムッ』

 

イングラムと交戦しているSRXチームは、R-GUNを捉えようとするも、合体したことで大型になった機体を上手く操れず翻弄される。

 

『鈍いぞリュウセイ。合体したSRXの機動はR-1とは別物だと教えた筈だがな』

 

両手に持った、実弾とビームを同時に発射できるツイン・マグナライフルで牽制するR-GUN。

 

『少佐ッ私はあなたを…あなたの影から脱してみせます!』

『フ…できるのかアヤ、お前に。妹の顔さえ忘れたお前に?』

『え…』

 

予想外の言葉にアヤに動揺が走る。その間に、バグスの群れに取りつかれ動きを封じられてしまう。

 

『いい子だアウレフ。さあ、そのまま料理してやるよ』

 

ヴァイクルが小型砲台からビームを浴びせていき、SRXは念動フィールドで防ぐ。

 

『いかん、このままでは大尉の負担が』

『ライ!これだ!攻撃系のT-LINKナーヴを俺に!』

 

右腕に張り付いていたバグスを強引に振り払うと、手の平に念の球体を生成していく。

 

『ドミニオン・ボォオル!』

 

放たれた球体は、進路上のバグスを吹き飛ばしながらヴァイクルへ向かっていくも、ヴァイクルが放つビームに阻まれ届かない。

 

『鳥野郎には届かねぇかッ』

『念動兵装?結界兵器か。うッ!?』

 

突如アタッドの脳裏に、見覚えのない場所、人の記憶が浮かび上がってくる。知らない筈なのに、それらがどこか懐かしく感じるのであった。

 

 

 

 

『フッ…。T-LINKシステムに引き寄せられたかアタッド』

 

アタッドに起きた異変に、心当たりのある様子のイングラム。そんな彼の背後からバグスの塊が迫って来た。

 

『クレイモア』

 

塊が弾け飛ぶとベアリング弾が散布され、R-GUNの動きを制限する。そして、塊の内部からアルトアイゼンが襲い掛かる。

 

『初手は譲った。後は早い者勝ちだリュウセイ』

 

リボルビング・ステークを繰り出すも、紙一重で躱される。

 

『フ…。特異能力を持たない個体としては破格の性能だ。だがまだ足りんな。あの女を生きたまま取り戻したことで腑抜けたか?キョウスケ・ナンブ』

 

アルトアイゼンの加速力を活かせないショートレンジを保ちながら、ライフルを浴びせていく。

 

『やはり死体にしなければ、あの女はお前の起爆剤には『黙れ』』

 

言葉を遮えぎりながら、再びステークを繰り出すキョウスケ。

 

『フ…』

 

隠しきれぬ激情を見せるキョウスケを、嘲笑いながら回避するイングラム。だが、ステークの陰から迫る弾丸がR-GUNの頭部アンテナを抉り取る。

弾道の先には、アルトアイゼンの背後に隠れていたヴァイスリッターが、オクスタン・ランチャーの銃口を向けていた。

 

『はぁい♪』

 

狙いを定めるエクセレンは、口調こそ普段のものだが、その目はどこまでも冷え切っていたのだった。

 

 

 

 

『動けるかイサム?』

『…無理させすぎちゃいましたから、暫く冷却させてあげないと』

 

ゼンガーの問いに、機体のコンディションを確認しながら答えるイサム。

これまでの戦闘で負荷がかかり過ぎたため、リミッターが作動しレオーネはセーフティモードに戻ってしまっていた。

 

『今は時間が惜しいですから、俺に構わず皆の所に行って下さい』

『いや、敵地に1人にはしておけん。せめて誰か残るべきだ』

『それなら私が引き受けますカイ少佐』

 

カイの言葉に、合流してきたビルトシュバインのパイロットである女性が答える。

 

『君は確かマオ社の…』

『ヴィレッタ・バディムです。SRXチームらの援護に向かう途中でした。できれば、イサム君もそちらに回ってもらうべきかと…』

『わかった、俺達は敵司令官撃破に向かう。イサムはそれで構わないか?』

『はい、大丈夫ですカイ少佐』

 

ヴィレッタからの提案に賛同するイサム。イングラムとの決着を望む彼からしても、断る理由はなかった。

 

 

 

 

ホワイトスター表面をなぞるように巨体を這わせるジュデッカは、結晶体を生成させる。

 

『第二地獄アンティラノ』

 

結晶体が弾けると、破片が雨のように対峙する一同に襲い掛かる。

 

『チッ!』

 

迫る破片をブレードで斬り払うアリオール。他の機体も回避に専念して耐える。

 

『第一地獄カイーナ』

 

次に、サソリのような形態に変形したジュデッカが前足を振り上げる。

その下には、元トロイエ隊所属でレオナと共に加わったシャマルのガーリオンがいた。

 

『!シャマル回避ッ!』

 

エールが叫ぶも、破片の回避に意識を取られていたシャマルは反応が遅れてしまい。振り下ろされた足に無残に踏み潰されてしまった。

 

『シャマル!』

『テメェ!』

 

友とも呼べる付き合いの長い同僚の死に、激怒したレオナとエールが、機体にフィールドを展開させて突貫する。

 

『クソッたれ!』

『シッ!』

 

タスクとケンもそれに続きシールドとブレードで仕掛けるも、ジュデッカの周囲に展開されたフィールドに弾き返されてしまう。

 

「(念動フィールドか。ホワイトスターに張られていたのはこいつのか…)」

 

ジュデッカからの攻撃を回避しながら、得られたデータを分析するケン。そして、あるファイルを開いた。

ファイルに納められた画像には、レビと同じ顔をした少女が映し出された。

 

「(特脳研被験者…五番マイ・コバヤシ。ビアンのおっさんの読みは当たり、だな)」

 

これまで得られた事象から、予想が確信に変わるのだった。

 

 

 

 

『はッ、何だい今のは…』

『…今視えたのは何だ…誰の記憶だ』

 

突如触れた何者かの記憶に、困惑するアタッドとリュウセイ。

 

『私は今の記憶を、あなたを知ってる…。あなたはジェニファー・フォンダ地球人(・・・)よ』

『嘘だ…あたしが、下等な地球人な筈が…!』

 

アヤの言葉に激しく狼狽するアタッド。自分と言う存在が足元から崩れていきそうな恐怖に、今までの威圧的な姿はなくなっていた。

 

『思い出して特脳研で一緒に居た頃のことを。私や私の妹のマイと一緒に…妹…?私…顔…』

 

妹の顔を思い出そうとして、激しい頭痛に襲われるアヤ。

 

『黙れッ!まやかすなァッ!』

 

錯乱したようにビームを乱射するアタッド。アヤが不調に陥り、満足に動けないSRXは辛うじて防御することしかできない。

すると、ブーメランのように飛来したシシオウブレード改が、小型砲台を斬り裂いていった。

 

『どっせいィ!』

『グぁ!?』

 

レオーネの加速を乗せた蹴りを受け吹き飛ばされるヴァイクル。その先には、ビルトシュバインがサークル・ザンバーを構えて待ち受けていた。

 

『あなたのアレンジ・ペルソナは、もう引き剥がすことができない…。せめて苦しまないように一瞬で送ってあげる』

『ヴェート・バルシェムッ!?』

『デッド・エンド・スラッシュ』

 

振るわれた光輪がコックピットのある頭部を切断し、巻き起こった爆発はアタッドを飲み込んでいった。その表情は事実を受け入れられず、憔悴しきったものであった。

 

『あんたは…』

『リュウセイ、今の内に機体に強制冷却をかけなさい。ライディースはアヤのバイタルチェックを。イサムは私と周囲の警戒を。手遅れになる前に』

 

リュウセイの問いに答えることなく、的確に指示を飛ばすヴィレッタ。何かを知っているのか、どこか焦りのような緊迫さを感じられた。

 

『さっき聞いた、あの人が地球人だって言うのは本当なんですかリュウセイさん?』

『ああ、間違いないと思う。どうなってんだ一体?』

『…これまで倒したエアロゲイターの主要な人物は皆元は地球人でした。もしあのレビって子もそうなら、ホワイトスターにいる人間はイングラム以外は操られていただけってことになるのか?』

「(そうではない、彼もまたジュデッカの枷の犠牲者…。それを解くためにはあなた達の力が必要になる。だから私は…)」

 

イサムの言葉を心の内で否定するヴィレッタ。その目には、悲哀と確かな決意が宿っていた。

 

 

 

 

3連マシンキャノンで牽制しつつ接近しようとするアルトアイゼンを、後退しながらライフルで牽制するR-GUN。

 

『お前は潰す』

『フ…ハハッ。いいぞ、お前等は予想以上の高性能サンプルだ』

 

キョウスケ、エクセレンの技量にイングラムは歓喜するように笑う。

 

『わお、おだてても何もでないわよ少佐?』

 

エクセレンはオクスタン・ランチャーのEモードで狙い撃ち、R-GUNの機動を制限する。

 

『こないだの一軒じゃ私、そりゃもお死んじゃうぐらい恥ずかしい思いしたのよ?だ・か・ら代わりに少佐が死んでね』』

 

すかさずWモードを起動させると、実弾とビームを連射していく。

的確に回避先を潰していき、片足に被弾させ吹き飛ばし動きを止める。

そして、アルトアイゼンが残る脚を掴み両肩のクレイモアを展開させる。

 

『一瞬で死ねるとは思うなよ』

 

撃ち出されたベアリング弾が、R-GUNのボディを削り取っていく。

 

『うッ!?』

 

その瞬間、イングラムの脳内に衝撃は走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――枷を解くんだ。奴に力を利用されるぞ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

誰かは分からないが、どこか聞き覚えのある男の声が響く。

だが、そのことを考える間もなく、ステークとランチャーがR-GUNに突き立てられる。

 

『終われイングラム・プリスケン』

『バイバイ少佐』

 

ステークの連打とBモードの連射が叩きこまれ、R-GUNが粉砕されていく。

 

『フ…ハハハハハッ』

 

突如謎の力によってR-GUNから引き剥がされる両機。

 

R-GUNの周りには、まるで魔法陣のような奇妙な紋様が展開されており。コックピットから出ているイングラムが不敵な笑みを浮かべていた。

 

「お前達の兵器としての成長に敬意を表し。その魂に枷をかける好敵手を用意してやろう」

 

イングラムが手を掲げると。魔法陣がR-GUNを包み込んでいき、卵のような形状を形作っていく。

そんな異常事態を訝しみながらも、キョウスケは攻撃を加えようと構える。

 

『待て!今あの『門』に近づくな!何が起こるか分からんぞ!』

 

だが、駆け付けてきたギリアムによって制止される。彼の声には驚愕と動揺の色が含まれていた。

 

「(間違いない、あれはクロスゲート!ならば奴も俺と同じ、並行世界の放浪者だというのか!?)」

 

魔法陣に亀裂が入ると、中から『何か』が這い出して来る。

それは50mはあろうサイズに各部が禍々しさを感じる異形の人型であり、その頭部にはイングラムとR-GUNが納められていた。

 

『ちょッ、でっかくなっちゃった!?成長期ってレベルじゃないでしょ!?』

「(R-GUNに異界の存在を憑依、変貌させたのかイングラム・プリスケン)」

 

予想外の事態に驚愕するエクセレンと、この事態に心当たりがある様子のギリアム。

 

『この機体の名はR-GUNリヴァーレ。今からお前達を…『喋るな』』

 

イングラムの言葉を遮るように。突貫したアルトアイゼンが、頭部にいるイングラム目がけてステークを打ち込む。

 

『!』

『解き放たれたお前の内なる感情、確かに見せてもらった』

 

満足そうに話すイングラム。ステークは彼の喉元に触れる寸前で止められていた。

 

『ッ』

 

リヴァーレが銃砲と化している両腕から、エネルギー状にの手を発生させる。

キョウスケは本能的に機体を後退させると、振るわれた両腕の爪に両脚を切断されてしまう。

 

『フ…装甲固着前を狙うなどよくもやる』

 

リヴァーレの損傷個所が、まるで何もなかったかのように再生されていく。

 

『もう十分だ。お前達は現レベルのままキブツに保管する』

 

リヴァーレから怪しい光が放たれると、周囲にいた機体に異変が起きる。

 

『機体のモーメントがコントロールできない!?』

『奴が周辺空間を湾曲させているんんだッ』

『…サマ師め。ならばもう2枚コール、だ』

 

他の2人が焦燥感に駆られる中、キョウスケが冷静に呟くと。リヴァーレの頭上かたら、SRXとレオーネが突撃してくる。

 

『『ツイン・クラッシュ・キィイック!』』

 

同時に放たれた蹴りが、リヴァーレへと炸裂する。

 

『フ、来たか』

 

だが、周囲に展開されているフィールドによって、さしたるダメージは与えられていなかった。

 

『イングラムッ!』

『もう逃がさん!ここで決着を着けるッ!』

 

今、鋼の巨神と黒獅子が裏切りの銃口と対峙する。

 

 

 

 

蛇のようにホワイトスター表面を悠々と這うジュデッカ。対するアリオールらは消耗し、追い詰められていた。

 

『…ふむ、もう少し焦燥してもらおうか』

 

突如本隊へと向かっていくジュデッカは、大量のバグスを繰り出す。

 

『劣等サンプルに存在価値は最早ない。第三地獄トロメアに沈め』

 

波のように押し寄せるバグスの群れに飲み込まれていく本隊。これまでの戦闘で疲弊していた艦隊にとって、致命的なまでの損害が出てしまう。

 

『む?』

 

ジュデッカ目がけて無数の拳が迫る。フィールドによって弾かれるも、ジュデッカの動きが止まる。

弾かれた拳は、グルンガスト各機の元へ戻っていく。

 

『大黒落としは城攻めの常道。奴が要塞中枢であるならば、いかに守りが堅かろうと斬り倒すのみ』

『ああ、ここでケリを着けさせてもらおう』

 

ゼンガーの言葉に、ケンも同意する。

 

『ビアンのヴァルシオンと戦った時のフォーメーションだ。ミッションマニュアルの記録はあるなラトゥーニ?』

『!はい、アレンジ可能ですイルム中尉』

『そういうことなら、とっておきを喰らわせてやるぜクロ!シロ!』

『マサキ、それは!』

 

何かをしようとするマサキを、シロが慌てて止めようとする。

 

『るせえ!ここでやるっきゃねえだろうが!!』

『魔装機神!お前は特に面白いサンプルだ。特別に、先に、確実に解体して保管してやろう乗り手も共にな』

 

チャージを始めたサイバスターへと迫っていくジュデッカ。

 

『各機サイバスターを援護しろ、奴を近づかせるな!』

 

カイの指示に、各機がジュデッカの前に立ちはだかりながら攻撃を加えていく。

 

『ハッ!』

 

だが、ジュデッカはフィールドを張りながらものともせず押し寄せるのであった。

 

 

 

 

『ハイフィンガーランチャー!』

 

SRXが両手指からビームを放つと、リヴァーレは回避しながら小型砲台からビームを撃ち反撃する。

そこへ、レオーネが懐に飛び込んでブレードを振るい、腕の爪と交差した。

 

『隙間だらけのお前の心を操るのは実に容易かったぞ。もう一度俺に身も心も預けてみるかアヤ?』

『少…佐…マイは…妹は…』

 

頭痛を堪えながら問いかけるアヤ。その問いに答えたのはギリアムであった。

 

『マイ・コバヤシは特脳研爆発事故で死んだと見せかけ、お前が拉致し『レビ・トーラー』として操心した。そうだな?イングラム・プリスケン』

『…その通りだ、ギリアム・イェーガー』

『そして、ジェニファー・フォンダも同じく。…このホワイトスターにエアロゲイター(・・・・・・・)1人もいない(・・・・・・)そうだな?』

 

その言葉に一同に衝撃が走る。対しイングラムは不敵に嗤っていた。

 

『ならば、お前は(・・・)何者だ?』

『フ…お互い様だ。だがここでお前の放浪も終わる。行けガン・スレイヴ』

 

リヴァーレがタイプRへと小型砲台からビームは放つと、SRXが間に入って防ぐ。

 

『…何者だ?そうだ、お前は一体誰だ?いつからイングラム・プリスケンじゃなくなったんだ』

『ハ!』

 

リュウセイの言葉に、イングラムの中から(・・・)漏れるように不快な声が響く。

リヴァーレが手の形状をサーベルのようにし斬りかかると、レオーネがブレードで弾くと蹴り飛ばした。

 

『その機体に化けてから感じてた気持ち悪い気配。カーウァイ大佐達から感じてたのと同じだッ、お前が全ての元凶か!』

『それは素質開花の片鱗か?それとも幼さ故の直感か?面白い、我が元に来い。お前達の力は我らが先遣に相応しい』

『『断るッ』』

『で、あるか。ならば滅びよ。枷無きまま荒ぶる魂、それはいずれ十重二十重(とえはたえ)の我が計画を妨げる存在になりかねん』

 

不良品を捨てるかのように言い捨てると、腕と小型砲台からビームを浴びせてくるリヴァーレ。

 

『クソッ熱量が!』

『計画だと?お前は一体!?』

 

余りの弾幕に防戦一方になるレオーネとSRX。機体の負荷が増していくことに焦りが募っていく。

 

『リュウ、ライ、イサム君!念動フィールドであの機体の歪曲フィールドを中和するわ。接近して最大出力であの敵を斬って!あれは私達が倒さなければいけない敵よ』

『…大尉』

『了解だアヤ』

『ガッテンだ!』

 

一同が覚悟を決めていると。リヴァーレは自身の前に小型砲台を展開させると胸部から砲身を露出させ、小型砲台は五芒星のような紋様を描く。

『アヤ、ライ!』

『T-LINKフルコンタクト!』

『トロニウム・エンジンフルドライブ!Z・Oソード!刀身形成!』

 

 

対しSRXは、胸部装甲を展させしゾル・オリハルコニウム・ソードを取り出す。

 

『G・テリトリー収束、出力最大!』

 

そして、レオーネはフィールドをブレードに収束させていく。

 

『この一撃で冥府へ堕ちよ。アキシオンバスター、デッド・エンド・シュート』

 

砲身から放たれた閃光は、五芒星を押し出しながら迫って来る。

 

『天上天下ッ無敵剣!』

『グラビティ・スラッシャー!』

 

リヴァーレへと突貫したレオーネとSRXは、紋様へと互いの刃を突き立てる。

最初は拮抗するも、徐々に押されていってしまう。

 

『ぐッ』

『こんのぉぉぉぉおおおお!』

『貴様らには斬れんよ。虚無へと還れ』

 

リヴァーレが更に出力を上げようとした時、アルトアイゼン、タイプR、ビルトシュバインが小型砲台を破壊していく。

 

『歪曲フィールドで、本体には届かなくとも』

『子機が開いているパワーゲートのバランスを崩す』

『イングラム。あなたに託された使命、今果たすわ』

 

紋様に亀裂が入っていくと同時に、突き立てられている刃が押し進んでいき。遂には紋様が砕け散り、刃がリヴァーレの胴体を貫いた。

 

『『おおおッ!!!』』

 

そのままレオーネとSRXは加速していき、リヴァーレをホワイトスター表面に叩きつけた。

リヴァーレはエネルギー状の腕を発生させて振るい、両機を弾き飛ばす。その際にSRXのソードの刀身が折れる。

 

『念動、爆砕!!!』

 

リュウセイが念を送ると、折れた刀身がリヴァーレを巻き込んで大爆発を起こすのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

どことも知れぬ空間にて。死神、あるいは悪魔のような2体の機動兵器がぶつかり合っていた。

 

『お前は俺という存在を拒絶することはできない。俺達は1つになるのだ』

『そして数多の世界を彷徨えというのか。多くの者を失って!』

 

片方の機体に乗るイングラムの言葉に、もう片方の機体に乗る――リヴァーレが出現する直前に、彼に語り掛けていたのと同じ声を持つ青年が拒絶の意を示す。

 

『この運命を拒むというのなら、その呪われた機体を抹消するまでだ!虚無へと帰れ!!』

『ディス・レヴよその力を開放しろ!テトラクテュス・グラマトン!!』

 

それぞれ胸部から魔法陣と砲身を展開させる。

 

『インフィニティ・シリンダー――!』

『デッド・エンド・シュー―ーッ!』

 

放たれた閃光が両者はおろか、空間までをも包み込んでいき――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…ここは…?」

 

次にイングラムが目覚めた時。目の前に広がるのは先程までの何もない神秘的な空間ではなく。様々な機器が置かれた人工的な空間であった。

 

「俺の名は…アウレフ…いや…」

 

記憶が曖昧となり困惑していると。何もなかった空間に、仮面をつけた顔がホログラムで映し出された

 

『緊急非常コードの発信は、誤作動ではなかったようだな』

「お前は…?」

『…今、この時に憑依したか…因縁だな』

 

まるで、イングラム(・・・・・)のことを知っているかのような口調の仮面の者は、声からして男のようである。その声に、おぼろげな記憶から何かが引き出されそうになる。

 

「ガッ!?」

『だが、今なら取り込めるやもしれぬ』

 

まるでそれを遮るように、全身を見えない何かによって拘束されるイングラム。そして、それは徐々に彼の内側に入り込み塗り替えようとしていく。

 

「ぐッ…ぐ…う…』

『お前に枷を与える。今度こそ我が傀儡となるがいい』

 

膝を突き悶絶するイングラムに、男は一方的に話しかける。

 

『禁断の地より踏み出し者がいる。彼らは自ら結界を破ったのだ。これで我らはあの星に干渉できる…』

 

ホログラムに、ヒリュウ改の前身である艦影が映し出された。

 

『だが、愚帝や監察官より先に手を打たねばならぬ。切り札を手に入れるのは、我らゴッゾォであらねばならぬ。任務を遂行せよアウレフ・バルシェム。我らは遠き地よりそれを見守ろう…』

 

ホログラムが消え、残されたイングラムは苦しみに苛まれながら、1つのポッドの元に辿り着く。

 

「俺の…代わりとなる者を…。生成プログラムに修正を…」

 

薄れゆく意識の中で、コンソールを操作していくイングラム。そのポッドにはヴィレッタと同じ姿をした女性が納められていた。

 

「今なら…せめてお前だけでも…枷を…!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『くッ…』

『まだ動くのか…!?』

 

腹部から胴体の大半と片腕が抉り取られても動くリヴァーレに、リュウセイとイサムは強張った声を漏らす。

 

『…よくやったリュウセイ、イサム。これで俺は…枷から解き放たれた…』

『少佐!?』

『イングラム隊長…あんたもやっぱり操られて…』

『少し違う…俺は地球人でもバルマー人でもない。任務遂行のためだけに造られた虚ろな存在に過ぎないからな』

 

そう話す間にも、リヴァーレの全身に亀裂が広がっていく。

 

『生と死の狭間にのみその自我を確立できる宿命…。だが…それも当然の報いか』

 

そして、亀裂は彼自身にまでも及んでいた。

 

『リュウセイ。心のまま進め、お前の母に育てられた心にままにな』

『!』

『ライ、後を頼む。己の能力を疑うな』

『隊長…』

『…アヤ。これからは過去に囚われず、新しい道を歩め』

『…イングラム…少佐…』

 

イングラムの本心は、リュウセイらの心に確かに刻まれていくのであった。

 

『イサム、お前と過ごした時間。あの時だけは、俺は自分として過ごせた礼を言う」

『少佐…。俺も楽しかったです…』

『…この先、何があっても挫けるな。お前なら必ず乗り越えられる』

 

その言葉を最後に、イングラムはリヴァーレ共々砕け散ってしまう。残ったのは大破したR-GUNだけであった。

 

「(イングラム…。後は任せて、安らかに眠って…)」

 

その光景を見守っていたヴィレッタは、涙を流しながら1人黙祷を捧げるのであった。

 

 

 

 

『最終宣告を申し渡す。耐え切れぬ者は死ね』

 

ジュデッカは全ての手からビームを放ち、対峙しているハガネ・ヒリュウ隊に次々と被害が出ていく。

 

『壱式必殺剣ッ』

『弐式必殺剣ッ』

 

ブルックリンの駆るグルンガスト2号機と、クスハの駆るグルンガスト弐式がそれぞれ剣を手にし構える。

 

『『計都羅喉(瞬獄)剣!』』

 

互いに振るった刃は、それぞれ片手に掴まれ止められてしまう。

 

『八方的殺曼事凶(ばんじきょう)天に目叩(またた)凶ツ星(まがつぼし)ッ』

 

その間にイルムガルドの駆るグルンガスト1号機が、上昇しながら剣を構える。

 

『その名も!計都羅喉剣、暗・剣・殺!』

 

降下しながら必殺の刃を振るうも、これも手に掴まれ防がれる。

 

『悪くない。だが、私とジュデッカに魅入られたら終わりだよ?』

 

ジュデッカは変形を始め、その形を変えていく。

 

『最終地獄を見せてやろう』

 

蛇型に変形したジュデッカは縦横無尽に駆け巡り、その巨体を持って押しつぶそうと襲い掛かって来た。

 

『糞ォっ止まれッ。ジガンテ・ウラガーーノッッ!!』

『各機集中砲火!胴体…頭部へ収束させろ!』

『はっはっはっはっ。足掻け!足掻け!』

 

ジガンスクードは質量で押し止めようとし、他の機体は一斉に火器を浴びせるも。ジュデッカの勢いを衰えることはなかった。

 

『マサキ!』

『今ニャ!』

『地獄は手前ェが見てきやがれッ!コ・ス・モ・ノヴァ!!!』

 

シロとクロの合図に、マサキはチャージしていたエネルギーを開放させる。

サイバスターの周囲に展開された4つの魔法陣から放たれたエネルギーが、ジュデッカを挟み込むように光球を生み出し、そこから巨大な爆発を発生し巨体を飲み込む。

 

『カッ、私の念ごと…ズフィルード・クリスタルが…ジュデッカが焼かれる…!?』

 

爆発がまるで檻のようにジュデッカを包んでゆく。

 

『足りんなぁ!』

 

だが、それを突き破り人型に戻ったジュデッカがサイバスターに迫る。

そんなジュデッカへ、零式とアリオール、ヴァルシオーネが立ちはだかる。

 

『やれ、リューネ!』

『どうなっても知らないからね!クロスマッシャー!!』

 

前に並ぶアリオールに、ヴァルシオーネが手から螺旋状のエネルギーを放ち。それをブレイクフィールドで受けると、推進力にして加速するアリオール。

 

『零式斬艦刀、疾風ッ怒涛ッッ!!』

『貫け、ソニック・スマッシャーッ!!』

 

斬艦刀を構え、フルブーストで突撃する零式と。機体を水平にし、横方向に回転しながらフィールドを弾丸状に収束させ両手のブレードを突き出して突撃するアリオール。

 

『『チェストォォォオオオ!!!』』

 

アリオールに胴体を貫かれた上に、零式に両断されたジュデッカは遂に力尽き倒れ伏した。

 

『我らに絶てぬもの無し』

『終わりだな。手こずらせやがって』

 

ジュデッカの装甲が再生しようとするも、すぐに崩れ落ちやがて再生すらされなくなる。

 

『再生が…かからない?ジュデッカの自己修復能力を超過した?』

『マイ!』

 

敗北を受け入れられず唖然とするレビに、駆け付けたSRXからアヤが語り掛ける。

 

『思い出して!あなたの本当の名前はマイ・コバヤシ!私の妹なのよ、地球人なのよ!』

『愚かな…このネビーイームをジュデッカを操る私が地球人だなどと。私はレビ・トーラ―生粋のバルマー人であるぞ…』

『…やはり、他の奴ら同様に手遅れ、だな』

 

アリオールが止めを刺そうとすると、レオーネがそれを制止する。

 

『待てよ!そこまでしなくても…』

『生かしたところで、他の奴らのように『壊れる』だけだ。楽にしてやる方が幸せだろうよ』

『そうと決まった訳じゃない!元に戻れる可能性だって…!』

『ふ、フフ…』

 

イサムとケンが言い争っていると、レビは嘲笑うように声を漏らす。

 

『…本当に愚かだお前達地球人類は。我らが兵器として在ることを拒むならば、このジュデッカを超える野卑な力を持つならば、お前達には滅びだけが与えられる…。そう、最後の審判者(セプタギン)が目覚める』

『セプタギン、だと?』

 

ケンが疑惑の声を漏らすと、ジュデッカが突如浮かび上がり、地球目がけて飛び去ってしまう。

 

『空間転…位?いや違う何かに引き寄せられて…。一体何に…』

 

その光景を見ていたリュウセイが、唖然とした声を漏らすと。地球内から現れた物体に、ジュデッカは取り込まれてしまった。

 

『何だ、あのでっかいのは!?』

『間違いない、あれはメテオ3(・・・・)だッ』

 

仰天するイサムにケンが答える。

そうしている間にも、メテオ3の表面から結晶体が生えていきその姿を変えていった。

そして、メテオ3はその結晶体を一同と本隊へと次々と撃ち出していく。

 

『各機迎撃ッ!』

 

カイが叫ぶと、各々結晶体を迎撃するも。余りの物量に撃ち漏らした結晶体が本隊の艦艇や機体に突き刺さっていく。

 

『ヒッ!?』

『何だ、機体が浸食されて――ッ』

 

突き刺さった結晶体は瞬く間に増殖していき、対象を飲み込んでしまう。

 

『これは、機体も搭乗員も諸共に金属結晶化されている!?一体?』

『エアロゲイターの偵察機には、未知の自立・自覚型金属細胞が組み込まれていたそうよ』

 

ギリアムの疑問に、ヴィレッタが推測を述べる。

 

『レビ・トーラ―が口にしていた、『ズフィルード・クリスタル』というのが恐らくその金属細胞のこと。そしてそのネットワーク中枢であり、収集した情報の集積システムがあの『ジュデッカ』』

『そうか、あのメテオ3そのものも『ズフィルード・クリスタル』の塊…。一切の選別もなく何もかも無差別に取り込む殲滅兵器!』

『…ビアンのおっさんは、アレがただ情報が詰め込まれただけの技術の種ではなく。万が一エアロゲイターにとって、想定外の事態が起きた際に発動するカウンタープログラムも仕込まれていると見ていた。だから監視するために、軍事拠点として不便なアイドネウス島にDCの本拠を構えた。とはいえ、あんなモノでは意味もなかったか…』

 

面積を増大させていくメテオ3に、苦虫を嚙み潰したような顔をするケン。巨大化するにつれ、撃ち出される結晶体の数も増加していた。

そして、遂には地球へも結晶体が撃ち出されてしまう。

 

『不味いよマサキ、あの弾地球にも!』

『くッ!リューネ着いて来い!何とかサイフラッシュで…』

『無理ニャ!この位置からじゃ間に合わないニャ!』

 

サイバスターとヴァルシオーネが慌てて追いかけようとすると、地球へ放たれた結晶体が全て消滅していった。

 

『な…グランゾン!?』

『地表方向への攻撃は私とグランゾンが引き受けましょう。まあ、いつまででもという訳にはいきませんが』

『シュウ!テメェッ…』

『どういうつもりだ…などと、今更言わないで下さいよマサキ。勿論この星を護っているのですよ見ての通り』

『ぐッ』

 

突然現れたシュウに不信感をあらわにするも、正論に何も言い返せなくなるマサキ。

 

「(滅びられては困るのですよ。少なくとも今はまだ)」

 

とはいえ、彼にも何らかも思惑はあるようではあるのだが。

 

『つーても、あんなのどうすんねん?』

『ジュデッカとやらがホワイトスターの中枢――心臓であったのなら、メテオ3にも核となる物がある筈だ。それを叩く』

『でも、質量が大き過ぎて特定のための観測を阻害していて…』

『ど真ん中にあるもんじゃない?そういうのってさ』

『構造的にも機能的にも、その確率は高いけど…』

 

イサムの推測に、自信があまり持てない様子で答えるラトゥーニ。

 

『これまでのことを考えれば、アレを仕向けた奴がここにきて小細工などしまい。遠距離攻撃では埒が明かん、殴り込んで直接叩く。来いイサム、フィールド持ちならある程度結晶体の浸食を抑えられるらしい。俺達の機体なら小回りが利く、突っ込むのに適任だ』

『ああ、分かった』

『エール、ヒリュウに残存戦力全てに援護させるよう要請しろ』

『ん、もうしてる。それでいくってさ』

 

相方の返答に、ケンは満足そうに口角を釣りあげる。

 

『うっしやるか、援護頼むラト』

『うん、信じてるからねイサム』

 

揺るぎない信頼を寄せてくれるパートナーに、通信越しにサムズアップで応えるイサム。

そして、全ての艦艇と機体から集中砲火がが加えられ、メテオ3の一部が削り取られていく。

 

『イサム!』

『いっけぇぇぇぇレオーネェ!』

 

フルブーストで、その箇所目がけて突撃していくレオーネとアリオール。

 

『生きて帰って来いイサム!』

『あんたの人生、これからなんだからね!』

『可愛い弟君のために、お姉さん奮発しちゃうわよォ!』

 

ジャーダとガーネット、それにエクセレンがレオーネを援護していく、

 

『行けケン、兄貴分がケツ持ってやるからよ!』

『頼みます特務大尉!』

 

アリオールにはイルムガルド、リョウトが援護に入り、他のハガネ・ヒリュウ・クロガネ隊の面々もそれに続いていく。

次々と押し寄せる結晶体を粉砕していくと、レオーネとアリオールはメテオ3内部へと突入する。

両機はフィールドを最大出力で展開しながら突き進んでいくと、細胞のように結晶体が張り巡らされた空間へと出る。

 

『核は!?』

『あれだ!』

 

空間の中心にある脳のような物体目がけ突貫すると、両機はブレードにフィールドを収束させる。

 

『砕けろォ!グラビティ・スラッシャー!!』

『終われ、ソニック・スレイヤー!』

 

同時に構えた刃が核に振られる瞬間、核を突き破った()が手をかざすと、見えない何かに弾き飛ばされる両機。

 

『なッ!?』

『歪曲フィールド、だと!?』

 

予想外の展開に、イサムとケンが驚愕していると、核に変化が起こる。まるで、卵が孵化するように核全体に亀裂が走り、左右に割れると中から何かが姿を現す。

 

『…よもや、ここまで至るとは。よかろう、褒美に我自ら絶望を与えよう。この『ズフィルード』でな』

 

リヴァーレと対峙した時、イングラムを介していた声と共に、結晶体と同じ装甲素材で構成された30mサイズの人型の機動兵器が立ちはだかるのであった。




ゲームで出番がなくて非常にがっかりしたので、登場させましたズフィルード。
核の防衛用でセプタギン内部での戦闘を想定し、サイズだけは本来の半分程となっています。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。