スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

32 / 32
エピローグ

ホワイトスター宙域

 

ジュデッカを失ったことでホワイトスターは機能を停止し、それに伴いエアロゲイターの起動兵器の全てがその機能を停止。そして、最終兵器であるメテオ3が崩壊したことで地球人類の勝利でオペレーションSRWが幕を閉じた。

現在は残存戦力による生存者の捜索と救助が行われており、ハガネ・ヒリュウ隊も参加していた。

そんな中、ラトゥーニは自機のコックピットを開放すると、外部へ出る。

傍らには四肢を失い辛うじて原型を留めているレオーネがおり、自機を足場にして蹴ると無重力特有の浮遊感を感じながらコックピット目がけて跳ぶ。

レオーネへ辿り着き、手動開放用のコックを回すとハッチが開かれ、内部を覗き込むラトゥーニ。

内部はモニターの殆どが死んでいるも、生き残っているモニターの光源が搭乗者であるイサムを照らし出していた。

眠っているかのように反応のない彼に身を寄せるラトゥーニ。送られてくるバイタルサインから異常は見られないも、一抹の不安は拭えず恐る恐るといった様子で外傷等を確認していく。

 

『んぅ…』

 

すると、イサムの瞼が薄っすらと開き寝惚け眼がラトゥーニを捉える。

 

「んぁラトおはよ~」

 

のへ~という擬音が聞こえそうな顔をしているイサムを見て、普段と変わらぬ彼にラトゥーニは安堵の余り抱きしめるとあぁ…、と感涙の声を漏らす。

 

『イサムッ良かった…!』

 

突然のことにイサムは何事かと困惑するも、脳が覚醒していくと共に目覚める前のことを徐々に思い出していく。

 

『勝ったんだよね俺達?』

『うん。ジャーダにガーネット、皆無事だよ。それに…』

『――ウォォォよくやったケェン!流石あたしが惚れた男やッ!!!』

『暑苦しいんだよボケッ!おい!勝手にヘルメットを取るな、うむぅ…!?』

 

通信機からケンとエールの愛の語らい()が聞こえてきたのでとりあえず切る2人。

 

『ねえ、ラト』

『何イサム?』

『戦いの最後、もう駄目だって諦めそうになった時聞こえたんだ。ラトの応援してくれる声が。だから頑張れたんだ、ありがとう』

 

そういうとイサムは、ラトゥーニの背中に両腕を回すとそっと抱きしめた。

突然のことにラトゥーニは最初は驚き顔を赤くするも、すぐに受け入れて緊張を解く。

 

『それで気づいたんだ。君がいたから頑張ってこれたんだって。君が俺にとって大切な人なんだってことが』

『それって…』

『イサム・トウゴウはラトゥーニ・スゥボータのことを愛しています。だから、その、これからも君の側にいたいんだ。駄目、かな?』

 

その言葉に感極まったラトゥーニは思わず涙を流す。そのことに嫌われたのかとイサムがギョッとするも、ラトゥーニは慌てて首を横に振る。

 

『ごめん違うの。同じなんだってわかって嬉しくて、だから』

『えっと、じゃあ…』

『私もイサムのことが好き、大好き。ずっと一緒にいたい』

 

イサムの背に両腕を回し抱き着くラトゥーニ。

互いの存在を確かめ合う2人を、地球の陰から顔を出した太陽の光が祝福するように照らすのであった。

 

 

 

 

伊豆基地 食堂

 

ホワイトスター攻略戦から暫しの時が流れ。ハガネ・ヒリュウ隊は解散となり、軍属の者は元居た所属に戻るか、新設される部隊への移動。民間人であった者は皆軍に留り所属していた部隊で活動するか、民間組織へ出向する等それぞれが新たな道を歩みだしていた。

そんな中。イサムもまた、己の道を決めようとしていた。

カイに呼び出されて向かうと。ジャーダ、ガーネット、それにラトゥーニもいた。

 

「妊娠!?」

「うん、そうなんだ。だからあたしとジャーダは軍を離れることにしたの」

 

ガーネットからの告白に素っ頓狂な声をあげるイサム。

作戦後病院送りとなり、退院して早々にこのようなことを言われれば無理もないが。

 

「おめでとうございます!式はいつですか!?」

「とりあえず、落ち着いてからってことでな。皆招待するよ」

「はい!絶対行きます!」

 

我がことのように喜んでくれるイサムに、ジャーダとガーネットは揃って笑みを浮かべる。

 

「あれ?お2人が軍を止めるとしてラトは???」

「私は軍に残るの。オウカ姉様やアラド、ゼオラ。スクールで一緒にいた人達を探したいの。多分、私みたいに機動兵器のパイロットになっているだろうから、軍にいる方が見つけられる確率が高いと思うの…」

 

イサムの隣に座るラトゥーニは俯きながら話す。軍を離れても引き取ってくれると言ってくれたジャーダとガーネットに、罪悪感を感じてしまっているようであった。そんな彼女の手に、イサムは自分の手をそっと重ねた。

 

「そんな顔をしないでラトゥーニ。あなたが自分で生き方を選んでくれてあたし達は嬉しいんだから。例え離れ離れになってもあたし達は家族よ。ね、ジャーダ」

「当たり前さ。お前は俺達の…かけがえのない娘さ」

「ジャーダ、ガーネット。…ありがとう」

 

2人からの暖かい言葉に、思わず涙が流れるラトゥーニ。そのやりとりを見ていたイサムは号泣していた。

そんな彼に、カイが話しかける。

 

「そういうこともあり、ラトゥーニは俺が隊長を務めることになった教導隊で預かることになってな」

「教導隊?再編されるんですか?」

「ああ。エアロゲイターを退けたとはいえ、同じようなことが起きんとも限らんし、未だ抵抗を続けるDC残党もいるからな。TC-OSの更新は必須と上は判断したんだ。それでイサム、お前もウチに来ないか?」

「俺が教導隊に?軍属じゃないですよ?」

「そこはリュウセイらと同様の扱いにするよう、レイカー指令も取り計らってくれるそうだ。お前が構築している近接――特に剣戟モーションはPTの発展に大いに貢献できる。是非とも来てもらいたい。それにお前さんらとしてもその方が都合が良かろう?」

 

な、とカイが意味深な目でラトゥーニを見ると、彼女は顔を赤くして恥ずかしそうに俯いた。

 

「そういうことなら喜んで!よろしくお願いしますッ!」

「イサム。ラトゥーニのこと頼むな。俺達の分まで守ってやってくれ」

「はい、ジャーダさん!ラトは俺が絶対に守ります、いつまでもずっと!」

「~~~~」

 

力強さを感じさせられるイサムの言葉に、茹で上がりそうな程に顔が赤く染まるラトゥーニ。

 

「お願いねイサム。もう、あなたも私達の家族だからね。ラトゥーニと一緒に帰って来るのを待ってるわ」

「ありがとうございます、ガーネットさん!必ず2人で帰ってきます!!」

 

家族という言葉に余程嬉しいのか、今にも飛び跳ねんばかりに満面の笑みをイサムは浮かべるのであった。

 

 

 

 

日本九州

 

イサムはリシュウ、そしてラトゥーニと共に故郷の地にある霊園を訪れていた。

整然と並ぶ墓石の内、稲郷家と刻まれた墓石の前で手を合わせ黙祷を捧げる3人。

 

「あのね、おばあちゃん。俺ねケンに会ったよ。一発ぶん殴ってやるつもりだったけど、あいつなりに色々考え直しておばあちゃんのこと償おうとしているみたいなんだ。だから、全部って訳じゃないけどできる限りは赦そうって思う。…それでいいんだよねおばあちゃん」

「ああ。シノもそうすべきだと言ってくれるさ」

「そういえば、おじいちゃんはクロガネにいた時ケンと話したの?」

「いや、どうにも避けられていたようでの。まあ、時が来れば自ずとそういう機会もあろうよ」

 

顎を撫でながらカッカッカッと笑うリシュウ。

 

「では、儂は住職殿と話すことがあるでの」

「うん、わかった」

 

離れて行く祖父を見送ると、イサムはラトゥーニと共に再び墓石に向き合いながらしゃがむ。

 

「それとねおばあちゃん。俺人生をかけて護りたい大切な人ができたんだ。紹介するね」

「ラトゥーニ・スゥボータです。イサムのおかげで今の自分が好きになれて、こんな私でも生きていていいんだって思えるようになれました。だから、これからずっと彼を支えていきます」

 

語り終わると、どちらともなく手を繋ぎ合うイサムとラトゥーニ。そこにリシュウが戻って来た。

 

「報告は終わったかの2人とも。そろそろ帰ろうか」

「は~い。じゃあ、また来るねおばあちゃん。行こうラト」

「うん、イサム。それではシノさん」

 

立ち上がると、寄り添うようにして歩いていく2人。その姿を見て、リシュウは満足そうに微笑みながら後に続こうとすると、何かに気づき振り返る。

墓石の前に自分と同じように微笑んでいる妻が何かを語り掛ける。

 

「(ああ、そうじゃのシノ…。『あの子達』がどのような人生を送っていくか、楽しみよな。出来る限りそれを見送ってから、儂もそちらに行くでの)」

 

リシュウは、誰もいない木影に視線を向け感慨に耽っていると、孫が自分を呼ぶ声が聞こえ、それに応えると歩み出すのであった。

 

 

 

 

イサムらが霊園を去ろうとしていた時刻。近くにある歩道を2人の男女が歩いていた。

 

「ねえ、花くらい添えても良かったんじゃない?」

「いらん。目的は十分に果たした」

 

両手を頭の後ろで組みながらぼやくエールに、ケンは素っ気なく答える。

 

「こそこそ隠れて立って、お爺様には気づかれてたわよ、あれ」

「だろうな」

「いい加減頭くらい下げに行ったら?」

「やることをやったら斬られに行く。そう長くもかからん」

 

変わらず意地を張る恋人に、エールはやれやれと言いたそうに溜息をつきながら話題を変える。

 

「てか、顔も見せないのに何しに来た訳よ?」

「お前の顔を見せに来ただけだ。あの婆さんなら気づいてるだろうよ」

「にゃ!?」

 

予想外の告白に目を点にして足を止めるエール。そんな彼女に、ケンは呆れたような表情で横顔だけ向ける。

 

「何ボサッとしてやがる。それくらいでいちいち驚くな」

「いやいや無理言うなって、って置いてくな~!」

 

抗議を無視して歩き続けるケンに、エールは慌てて駆けだし、追いつくと勢いよく腕に抱き着いた。

 

「んで、このままバン大佐と合流すんの?」

「ああ。色々と我儘を聞いてもらったからな。何か土産を見繕っていかんとな」

「ふ〇っしー人形とかどうよ?」

「好きだなお前…」

「ええやん!あのずんぐりむっくりした体形で、キビキビ動いて体張るところなんて最高やん!!」

 

拳を握り締めて熱く語る相方の感性に呆れながら、無視すると面倒なので一応聞いておくケン。

 

「あんたが行くならどこでも行くけど。エルザム少佐やクロガネの人達と別れるのは寂しいよねー。ご飯美味しかったし」

「あの人らがDCでやれることはもうないからな。俺はただくだらんプライドを捨てきれんだけだ」

「弟君――ライバルに負けたままでいたくないんでしょ?いいじゃん、男ならそれくらいハングリーでなきゃ」

 

にしし、とにこやかに笑うエールに、釣られるように口角を僅かに吊り上げるケン。

 

「ありがとうな…」

「お?今何つった、ねー何つったよ!!」

「何も」

 

抱き着いていた腕を振り回しながら騒ぎ出す相方を、好きにさせながら、ケンは人々の喧騒に紛れていくのであった。

 

 

 

 

????

 

辺り一面に美しき花が咲き誇る平原を、晴れ渡る空から暖かな日差しが降り注ぎ、様々な動物がのどかに暮らしており。まるで桃源郷を思わせる異世界のような空間、その中心に天高くそびえる山の頂に、数人の男女の姿が見えた。

 

「彼女が目覚めたとな?」

「はい、ほんの僅かな瞬間ではありましたが…」

 

禿頭と蓄えた白い髭が印象的な、いかにもな仙人の格好といった老人の言葉に、狐の尾のような髪と、蓄えた髭の壮年の男が跪きながら答える。

 

「それと同時に、『彼の者』に近しい反応も確認できました」

「…そうか。あの者の血を引く者が生きておったか。それは善哉、善哉」

 

どこか感慨深そうに髭の撫でる老人。すると、中性的な容姿の青年が不快そうに鼻を鳴らす。

 

「禁忌を破り『守り人』の使命を捨て裏切った男の子など、今すぐ処分すべきではないのか?」

「まあ、そう急くこともないんじゃないかい?『アレ』を扱えるのは守り人の血筋だけだからね。上手くこちら側に引き込めればこれ以上ない力になる。禁忌を破って生まれたからこそ、今までにない強力な守り人になってくれそうじゃないか」

 

青年の言葉に、白いスーツを身に纏った紳士然とした青年が、岩場に足を組んで腰かけており、頭にかぶっている白色のシルクハットのつばをいじりながら軽い口調で話す。

仙人を思わせる服装をしており、厳格さを感じさせる威厳を放つ一団の中でも、身に纏う雰囲気も合わせ一際異彩を放っていた。

 

「何を馬鹿な!穢れきった存在を我らの内に入れようと言うのか!?」

「しかし、かつての『大戦』で我らの力が弱まっているのも事実。新たな『巫女』もおらぬ現状、それも一つの手ではあろう」

「しかし…!」

「我らも目覚めたばかり。下界の情勢を見極めながら、暫し様子を見ても良かろう。彼の者が我らが同志に加えるに足るかそれとも断罪すべき者か、な」

「僕達が力を蓄えるまで、この星の守りは暫し下界の者達に委ねないといけないからね。今すぐ処分するより『百邪』なんかと戦わせていた方が有意義だろうさ。その方が我らが『神』への償いになると思うけど?」

 

憤慨する中性的容姿の青年に、老人とシルクハットの青年が諭すように語り掛ける。

 

「…いいだろう、刻が来るまでは待とう。だが、断罪が必要であるならば――」

「無論、その刻は彼の者同様裁きを与えよう」

 

老人の言葉に、中性的容姿の青年は一応は納得した様子であった。

 

「(『友』よ。そなたが命をかけて遺したのは、果たして『希望』か『災厄』か。願わくば――)」

 

老人は瞑想するように目を伏せながら、1人心中で思いを馳せるのであった。

 

 

 

 

????

 

仙人を思わせる集団がいる山の内部。その中心部にある空間に、クリスタル上の六角形の物体が宙に浮いていた。

その内部には1人の女性が眠るように納められ、クリスタルの真下の地面には五芒星が描かれており、壁には同じ模様が描かれた札が無数に張り巡らされていた。その様相はまるで、クリスタルをひいてはその中身を封じ込めているかのようであった。

クリスタルから発せられる、僅かな光だけが照らす薄暗い空間。そこにただ1人存在している女性の容姿は、イサムと瓜二つのものであった――




これにて、OG1は完結となります。
ここまで来れたのは、ひとえに応援して下さった皆様のおかげでございます。誠にありがとうございました。

続編についてはいつになるか不明ですが。ケンがイサムらの元を去り、どのようにビアンと出会いDCに入るかも書きたく。どちらが先になるかも含め気分次第なので、気長にお待ちいただけると幸いです。

それでは、あらためましてここまで目を通して頂き誠にありがとうございました!続編でまたお会いしましょう!!

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10は一言の入力が必須です。また、それぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。