『オラオラオラァ!』
ディバイソンが持ち前の火力を、イサム以外のATXチームへ向けて浴びせていく。
『わお!相変わらず豪勢だこと!』
暴風雨の如き弾幕の僅かな切れ目を避けながら、ヴァイスリッターがオクスタン・ランチャーのBモードで反撃するも、放たれた実弾はフィールドに難なく弾かれてしまう。
だが、弾幕が途切れた間隙に、アルトアイゼンが突撃しステークを叩きこもうとする。
『フンがぁ!』
カウンターでフィールドを纏いながらディバイソンが肩から突進し、馬力任せにアルトアイゼンを弾き飛ばす。
『アイドネウス島でのリベンジじゃあ!赤カブトムシィ!』
『ッやはり敵に回すと面倒極まるな』
舌打ちしながら、肉迫してくる相手に左腕のマシンキャノンで牽制すると、一度距離を取るキョウスケ。
『うん?』
再び弾幕を展開していると、エールは相手の動きを見て何かに気づく。
『ラトちん、ラトちんはどこ?弟君…フラれた???』
『別行動しているだけで、健全にお付き合いしとるわァ!!』
ハッとした顔で不謹慎極まることをほざく阿呆に、ケンと斬り結んでいるイサムがキレながらツッコんだ。
『あ、そこまでいけたんだ。おめでと~』
『ありがとうございます――ってああ、もう戦りにくいッ!!』
『挨拶はそれくらいにして真面目にやれ』
呆れた様子の
『…さて、仕切りなおすか』
『ああ』
抜けた空気を入れなおすように、構えながら隙を伺う両者。
そこに割って入るように、アリオール目掛けて砲撃が飛来する。
『わお、本隊が遂に追いついて来たわよ。憎らしい位手堅いわね我が軍は』
防衛線を突破した正規軍が、DCに砲弾やミサイルの雨を降らせていく。
『…流石に都合良くはいかんか。ユウキ少尉、撤退しよう。俺達が殿をする』
『…よろしいので?』
『敗残兵とはいえ軍人だ、公私混同するつもりはない。足止めの役目は十分に果たしたんだ、これ以上留まる理由はなかろう』
ようやく叶った好敵手との再会へ対し気を遣ってくれるユウキに、その必要はないと言外に告げるケン。
『ここで無理をせんでも、どちみち奴らは追ってくるだろうからな。ここで諸君らを死なせたら、バン大佐に合わせる顔がなくなるから早く行ってくれ』
『了解しました。カーラ退くぞ!』
牽制しながら退避行動に入るカルタチュラ小隊に対し、それを阻もうとATXチームが動く。
『キョウスケ中尉、敵が後退していきます!』
『みすみす逃がしてやる道理はない、喰らいつくぞ』
『ラジャー♪』
『うっす!』
追撃しようとするATXチームに、アリオールとディバイソンが立ち塞がる。
『させんよ』
『あやつらのケツ掘りたきゃ、あたしらを掘ってからにしなぁ!』
『下品ですよ特務中尉!』
『あ、ごめぇん!』
カーラら味方の女性からの苦情に、阿呆が素直に謝る。――その感にしっかりと弾幕を張って足止めしてはいるが…。
そんな折、各機のセンサーが警報を鳴らし始める。
『何!?』
モニターに映されたデータに眉を潜ませるキョウスケ。そうしている間に、地響きが起こり戦場全体を揺らし始める。
『キョウスケ!大質量反応、下に何かいるわよ!』
エクセレンらの後方の地面が、まるで内側から爆破されたように真上にいた正規軍ごと吹き飛され、舞い上がる砂塵を先端の尖った巨大な棒状の物体が回転しながら突き破る。
『ドリル!?』
驚愕するイサムらを尻目に。穿たれた地面から、ドリルを両腕にそれぞれ装着した巨大な人影が姿を現していく。
そして、異変はそれだけではなかった――
『ユウ、上!上にも何かいるよ!』
カーラが上空を指すと、まるで空を割るかのように新たな鉄の巨人が戦場に舞い降りるように現出する。
『所属不明の特機が2体だと?』
『天使みたいなのは、テスラ研のじゃないけど、ドリルが付いてるのは――』
イサムは困惑を隠せない声を漏らす。空から現れた女性と天使を掛け合わせような機体には覚えはないも、地中から現れた機体には強い既視感を覚えたからである。
『何だ何だ何だぁ?特別ゲストが来るなんて聞いてないがな』
『俺も知らん』
DC側も何も知らないのか、警戒しながら様子を伺っていた。
『プラチナ1よりアサルト1』
「は、リー中佐」
シロガネより艦長であるリー・リンジュンから直通で通信が入ってくる。
『来援したその友軍機と連携して敵対勢力を駆逐しろ』
「あれが友軍機?しかし…」
『黙れ。考えるな従え』
会話している間に、空から現れた機体の識別が友軍のものに変更されており。説明を求めようとするも、聞く耳を持たずと言わんばかりに一方的に通信を切られてしまう。
『わお、取りつく島も無い見事な上意下達!でも、てことは。あのセクシーダイナマイツは味方ってことでOK??』
エクセレンの言葉に応えるように、天使のような機体が左腕の盾と一体になっている発射口をDC側に向けると、ビームを連射していく。
『撃ってきた!羽根付きは連邦側なの!?』
『ドリル付きの方にはDC紋章がついている。友軍と考えていいのか?特務大尉――』
『わからん。警戒はしておけ少尉』
そして、今度はドリル付きが飛翔を始めると、シロガネのいる方面へ目掛けて突撃していき。それに合わせるように、ユウキにアーチボルトから通信が入る。
『ユウキ君。一五〇秒後に全域に
「――了解」
混乱した様子の見られない手際の良さに、彼だけはこの事態を想定していたのかと勘繰るユウキ。
そんな彼にケンが釘を刺すように話しかける。
『少尉。いらん詮索はせん方がいいぞ』
『ですが…』
『向こうの方が指揮権は上なんだ。俺が知らんことを知っていても不思議ではあるまい。今は生き残ることだけ考えればいいさ』
『了解です。全機、今のうちにサエーナと合流するぞ!』
「アンノウン接近、2時の方向まっすぐ!」
「両舷回避運動急げ!」
ドリル付きが迫るシロガネのブリッジにて、オペレーターからの報告を受けたリーが素早く指示を飛ばす。
「!敵機の攻撃目標は本艦ではありません!」
「!ラバウルか!」
シロガネの両脇を固める随伴艦のストーク級の一隻に視線を向けると、自前の対空砲火と直掩のが迎撃を試みているも、敵機はドリルの装着された腕部を、ロケットパンチのように射出してバレリオン隊を蹴散らすと、勢いを止めずにラバウルに猛進していき。頭部の突起をドリルのように回転させると、そのまま頭部からの体当たりで船体を粉砕してしまうのだった。
『ラバウルがッ!』
ドリル付きを追って本陣まで後退していたATXチームだったが、成すすべもなく友軍艦が爆炎をあげて墜落していくを見ていることしかできなかった。
そんな彼らを尻目に、ドリル付きは早々に上空へ飛び上がると、そのまま戦域を離脱していくのだった。
『撤退していく…』
『あのままシロガネも落とせただろうに?』
「なーんか『見逃してやったぜ』感がありありねー』
『…どうにも釈然とせんな』
言い得ぬ奇妙さに包まれる一同の中、羽付付きのパイロットが機体のカメラをアルトアイゼンへと向けていた。
「……『ベーオウルフ』……」
その者は機体にと言うよりも、乗り手であるキョウスケに対し、感情の伴わない冷徹な目を向けるのであった。