スーパーロボット大戦OGs~獅子の牙~   作:Mk-Ⅳ

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第七話

???

 

「キィェェェイ!」

「せぇいヤァ!」

 

訓練場と見られる室内にて、防具を纏った十人近くの者達が竹刀で打ち合う中。胴着を着込んだヤイバは、正座し姿勢を正した状態でそれを見守るような視線を向けていたのだった。

 

「精が出るわね」

 

そんな彼に同年代らしき女性が声をかけると、ヤイバはそのままの姿勢で、意識だけをそちらに傾ける。

 

「刃は手入れを怠れば瞬く間にその真価を損なう。それと同じだ」

「流石は我らが切り込み部隊『スサノオ』隊長、頼もしいわね。…でも、寂しくなってしまったのも事実ね」

 

人数に対して広々とした空間にあっても、闘志を滾らせしのぎを削るように竹刀を振るい、見る者を圧巻させんばかりに声を張り上げる彼らに、女性は視線を向ける。

かつては倍以上の人数が今以上の熱気を放ち賑わせていた光景を思い出すと、手にしていた煙管を吹かしながら、懐かしむように目を細める。

 

「人員の補充、しなくていいの?wシリーズの量産も軌道に乗ってきたし、そっちに回す余裕もできたけど」

「気持ちはありがたいが、心を解さぬあれに物にできるほど示現流(・・・)はやわではない」

「それもそうね。w15(ダブリュー・ワン・ファイブ)みたいな試作ロットは量産できないしね」

 

致し方なしといった様子で煙管を吹かす女性に、ヤイバが問いかける。

 

「談義をしに来るほど暇な身ではなかろうレモン。『あやつ』が見つかったのか?」

「そっちじゃないけど、w16がw17を確認したわ。しかも、こちら側(・・・・)の『ベーオウルフ』と接触したわ」

 

運がいいのか悪いのか…、と憂うような顔をするレモンに、ヤイバは気にせず語り掛けた。

 

「こちら側の奴はどうだ?」

「今のところどこにでもいる腕の立つパイロット、って感じね。とりあえずあの子には、監視も兼ねて側に置いておくことにしたわ」

「それがよかろう。――それで、我らが前線指揮官殿はまだ見つからんか」

「そっちは全く手がかりなし。一番最後に跳んだ(・・・)から多少のラグは想定していたけど…。ま、悪運はめっぽう強い人だし大丈夫でしょ」

 

ふふ、と楽し気に話すレモン。そこには話題の人物に対する確かな信頼が見て取れた。

 

「そうだな。金を借りたままで死ぬような男ではないしな」

「あら、またそんなことしていたの彼?悪いわね」

「気にするな。もう慣れている」

「それもそうね」

 

愉快そうに笑いあっていると、レモンが何かに気づいたようにあら?と声を漏らす。

 

「そういえばムラタは?」

 

客将のような立ち位置で、スサノオに記録上だけ身を置いている(・・・・・・・・・・・・・)男の姿がどこにも見られなかったのだ。

 

「奴なら、『退屈だ』『斬らせろ』とうるさくてな。襲い掛かってこられるのも流石に面倒になったので、ヴィンデルに言って外に出してやった」

「…大丈夫なの?」

 

辟易したように話すヤイバに、同情するような目を向けるレモン。

ムラタと呼んだ男は、闘争本能が人の真似をしているような生態をしており、己の欲求を満たすためなら仲間にさえ牙を剥くことに躊躇いがない――いや、アレにとって自分らは都合がいいから利用しているだけで、仲間とさえ思っていないだろう。

 

「ちょうどDCの奴らが陽動作戦をしたいとのことで、あやつに任せた」

「……大丈夫なの?余分に暴れ散らかさないかしら?」

「アレは獣だが、大乱を起こすためなら、それくらいの我慢はできるさ」

 

そこだけは信頼できると語るヤイバに、だといいけど…と、レモンは不安そうに煙管を吹かすのであった。

 

 

 

 

中国 シロガネ

 

ATXチーム用にあてがわれた部屋にて、キョウスケらメンバーとイスルギ重工所属のテストパイロットラミア・ラヴレスが改まって面合わせが行われていた。

 

「イスルギからの要請で、彼女の乗る機体――『アンジェルグ』の実戦テストがシロガネで行われることになった。そのため、イサム同様一時的にだが、俺達ATXチームと行動を共にすることになった」

「わお!マジっすか!へいらっしゃいボインちゃん!」

「セクハラだよエクセ姉ぇ…」

 

目を輝かせて両手をワキワキといかがわしく動かす姉貴分に、冷めた目でツッコミを入れるイサム。

 

「ラミア・ラヴレスでありやんす。皆様どうぞよろしくお願いいたしやがり――失礼、やはり言語に支障が…」

「OK、OK!後にも先にも出てこないだろうキャラで押し出してくるじゃなーい!」

「方言だそうだ。余り構ってやるな。ブリット、ミーティングに集まれ…」

 

変に興奮する相方に釘を刺しながら、責務(ツッコミ)放棄している部下を呼ぶキョウスケ。――その視線の先には冷蔵機能付きの収納機から取り出した水筒を、某猫型ロボットが秘密な道具を取り出す際に流れるBGMを発してそうなテンションで高々と掲げていた。

 

「駄目よ、あの子今パライソ状態だから、何も耳に入んないわよ」

「そういや、クスハさんが手作り健康ドリンクを送るって言ってたやぁ」

「いやぁ、最近激務が続いているってメールしたら、気遣ってくれたんですよ中尉」

「ナマ物がよく軍の検疫を通ったな」

「この艦への転任が急だったから、どさくさに紛れて小荷物届いていたみたい」

 

幸せオーラをばら撒き知らしているブルックリン。そんな彼を尻目に、キョウスケはまあ、いいか、と流して仕切りなおす。

 

「ラミア。俺がキョウスケ・ナンブ中尉。アサルト1…このチームの隊長だ。それと、それ(・・)がアサルト2」

「エクセレン・ブロウニング少尉よ♡」

「それに、こっちは臨時隊員のアサルト4」

「イサム・トウゴウです!よろしくお願いしま~す!」

「――ブロウニング、トウゴウ…」

 

エクセレンとイサムの名を聞いたラミアが、何か引っ掛かるような反応を見せた。

 

「ん?ああ、イサム君が私を姉って呼んでるけど、血のつながりとかはとくにないのよ」

「あ、いえ。そうではないですが、失礼ながらお二方のご家族は?」

「うちは私とパパだけだけど?」

「俺っちは物心つく前に捨てられてたそうで、拾ってくれた養父――というかおじいちゃんなお年ですけど、と絶賛反抗期中の血のつながってない弟がいますねー」

「…それは、お辛いことをお聞きしてしまいやした…」

「いいですよ、もう十年は前の話ですしねぇ。おじいちゃんも探してくれたそうですけど、手がかりもなかったそうなんで」

 

申し訳なさそうにするラミアに、本当に気にしていない様子を見せるイサム。彼にとって養父であるリシュウと、養母であるシノから本当の子も同然に育ててもらえたので、本当の親のことを気にすることは特になかったのである。

 

「にしても、ラミアちゃんうちのパパと知り合いなの?。はッまさか、パパったらこんな若い娘と…」

「親で遊ぶな」

 

しんみりしてしまった空気を払拭するように、おふざけに走る相方の口を、手にしている端末で抑えなるキョウスケ。

――そして、浮かれポンチと化しているブルックリンは、そんなことつゆ知らず、1人の世界に没頭して水筒の中身を飲もうとしていた。

 

「あとあれがアサルト3。ブルックリン・ラックフィールドだ」

「どうです?折角ですから、中尉達も――――のべらッッッッ!?!?!?!?」

 

ドリンクを一口飲んだブルックリンが、唐突に奇声を上げながら膝から崩れ落ちると、そのまま白目を剝いて倒れ伏してしまったではないか。

その手から零れ落ちたカップを拾い上げたキョウスケは、漏れ出る匂いに、…アスファルト?と眉を顰め。エクセレンは形容しがたい状態の部下の姿に爆笑しだす。

 

「ちょ、キョウスケ!耳から煙が!()紫の煙が!おッおもしろ、面白い形にッ、こんな所がッ」

「写真はやめておいてやれ」

 

てんやわんやする2人をよそに、イサムは投げ出された水筒を中身を零さずキャッチしており。中身をコップに注いでぐびぐびと飲んでいた。

 

「美味しい筈なんだけどな~」

「「――――」」

 

おかしいなぁ、と首を傾げているイサムに、脳が理解を拒むかのように顔を向けるキョウスケとエクセレン。

そして、キョウスケが、どういうことだ?と言いたげな顔を向けると、いや、知らん!知らん!と首を猛烈に左右に振るエクセレンであった。

 

「(これがATXチーム…。それと、あの方の…)」

 

残るラミアは、そんな珍妙極まる光景を観察するように見つめながら、2人とはまた違うも、思うところがあるような目でイサムを見ているのであった。

 

 

 

 

アフリカ大陸

 

新生歴となっても、今だに有史以前から続く過酷で広大で自然を残す大地――その地を照らすべく昇り始めた朝日に照らされたことで、辺り一面に飛散していた無数の機械の残骸が次第に浮かび上がっていく。

それらはよく見れば、AMを構成していた物であり、連邦の所属を示すパーソナルマークが刻まれていたのである。

そして、その中心に陣取るように1機のガーリオンが佇んでいたのだった。

 

「――つまらん」

 

そのガーリオンのコックピットハッチは解放されており、パイロットと見られる大柄で無精髭を生やした男は、あぐらをかきながら手にした瓢箪の中身の酒を、昇る朝日を肴にするように眺めながら、煽るように飲んでいた。

この惨劇を起こしたにもかかわらず、その機体には傷こそついていないも、敵機のオイルがまるで返り血のように各部についているが、本来人に好まれない匂いを、男にはまるでそれがパイロットの血(・・・・・)であるかのような感覚で、それさえも肴にするように深々と息を吸って己を慰めていた。

 

「ヴィンデルめ、つまらん仕事を押し付けおって…。もっと喰らいがいのある手練れはおらんものか…」

 

愛機である――両肩に大型のブースターと全身に装甲が追加されたおり、シシオウブレード(・・・・・・・・)と同じ形状のブレードと、小太刀に似せた大振りのコールドメタルナイフを腰に装備したその外見はまるで、日本の戦国時代で活躍した鎧武者を彷彿とさせた奇抜な装備をしたガーリオンから、周囲に散る残骸を面白くなさそうに見下ろしながら、何やら愚痴っている男。その目は獰猛な獣も逃げ出さんばかりに、獲物を求めるように殺意を滾らせていた。

 

「乱よ早く起きよ!血沸き心躍る戦を、このムラタは待ちわびておるぞォ!!」

 

天へと向けて瓢箪を高々と掲げながら男は、地をも震わせんばかりに雄々しく叫ぶのだった。




ケンの登場で、存在自体消える予定だったムラタですが、それももったいないなと思い、こういった形で出番を与えました。
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