やろう会   作:A i

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一人と二人

 ホームルーム終了のチャイムが鳴った。

 

 「さて……しゃーねー。行くか」

 

 碧井のところへと向かうべく、荷物をまとめ立ち上がる。

 

 すると、目の前に人影が現れた。

 

 「おい、色無。例の入会書は持ってきたのか?」

 

 強い語調の言葉の主。

 それは三門先生だ。

 

 この言い方からして、俺の事を信頼していないようだ。

 きっと、俺が「やろう会」に入らないかも知れないと心配しているのだろう。

 

 だが、それは杞憂である。

 

 だって、俺まだ「やろう会」が何するかさえ知らないんだもん。

 そんな状態で入会書なんて書けるわけないんだからしょうが無いよね?テヘペロ☆

 

 しかし、これをそのまま先生にやったらおそらく問答無用で殺されてしまうので、できるだけオブラートに包んで話す。

 

 「いや、まだ俺その「やろう会」とやらがなにかすら説明を受けてないんでまた明日でいいですか?」

 

 俺がそう応えると、三門先生は片手で頭を抱えた。

 

 「碧井は何をしとるんだあいつ。なんのためにわざわざこいつを連れて行ったんだか」

 「ホントですよね。なんか昨日はすぐ帰らされちゃいました」

 「そうなのか……」

 

 腰に手を当て、困ったように大きく息を吐いた先生であったが、すぐにその表情は柔らかいものへと変化する。

 

 「じゃあ、また明日かならず持ってくるんだぞ?」

 「はい。じゃあ、俺はこれで……」

 「楽しんできたまえ」

 

 珍しく笑顔の先生に俺は軽く会釈をし、教室を出る。

 

 

 今から向かう第三会議室は、渡り廊下を挟んですぐそこだ。

 

 吹き抜けになった渡り廊下から見下ろす校庭には、練習の準備を行うサッカー部や野球部が見える。

 水道の近くで、無邪気にボトルの水を掛け合っている男子二人組が近づいてきた女子マネにしかりつけられている。

 

 今の俺にとっては、それ以下でもそれ以上でもない光景。

 

 だけど、彼らにとってはその他愛ない一瞬一瞬がかけがえのない青春の一ページなのだろう。

 

 俺には縁無き世界。

 だが、それ故にその光景はたまらなくまぶしい。

 

 俺は訳もなく目を細め、それを眺めた。

 

 突如、風が薙ぐ。

 

 桜吹雪が舞い上がり、青空へと運ばれていく。

 なにげなくそれを目で追っている自分。

 

 「俺はなにを……」 

 「あれ?色無君?」

 「っ…………!?」

 

 すぐ隣からの声に驚き、飛びすさる。

 顔を上げると、そこにいたのは驚き顔の碧井だった。

 

 「なんだ、碧井か。びっくりさせるなよ……」

 「こっちだよ!びっくりしたのは。なんでそんなに驚くかな……」

 「そりゃ驚くだろ!?あんな近くで声がしたら!」

 

 俺が必死でそう言うと、碧井は悪戯っぽい笑みを向ける。

 

 「へぇ~……」

 「な、なんだよ?」

 

 碧井の不気味な笑みに一歩後ずさる。

 だが、その分一歩碧井が踏み出し、俺の胸に人差し指を突きつけて言った。

 

 「もしかして……ユウくん。イヤラシいことでも考えてた?」

 「……はあ!?そ、そそんな訳ないだろう!」

 

 強く否定しようとするが、盛大にかんでしまった。

 

 そして、そんな俺の様子に、碧井は満面の笑みを浮かべる。

 

 「あはは、図星だぁ~。ユウくんのエッチ~」

 「だから、違うって……あ、ちょっと待てこら!」

 

 俺の否定の言葉を待つこともなく、歩き去って行こうとする碧井を慌てて追いかける。

 

 

 こいつと出会ってからの俺は、ホントこんなことばっかりだな……。

 心の中でため息をつく。

 

 だけど、俺は気が付いていた。

 

 もうそのころには、さっきのセンチメンタルな気分など吹き飛んでしまっていることに……。

 

 「ほら、早く!ユウくん!」

 

 それが、あそこで手を振る碧井のおかげ……だとは考えないでおこう。

 

 「今行く」

 

 そう答え、俺は歩き出すのであった。

 

 

 




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