あの事件の後、報告書を書き、学園長と生徒会長に事の次第の報告をし、状況が状況だったため不問となった。
「あ、ちょっといいかしら?織斑君?」
「なんですか?生徒会長?」
「貴方に一言だけ…………お前に家の簪ちゃんは渡さなたわば!?」
「お嬢様、お戯れはそこまでにして、今日の書類を片付けましょう。……織斑さん、ご迷惑をお掛けしました」
「おう……(スゴいな……10㌧ハンマーなんてどこに売ってんだ?)」
そんな一悶着(?)もあったが
「全く、昨日の一件で只でさえ溜まっている案件が多いのです。今日は缶詰です」
「だぁってぇ~簪ちゃんとどんな関係になっているか調査しようと盗聴機仕掛けようとしたら織斑先生がぁ~」
「裸のように見せかけて水着エプロンで盗聴機なんて仕掛けようとするからです。それに今まで、徹底的に無視して避けていた簪様が、毒舌放つようになっただけマシじゃないですか!」
「ひどい!??」
(何か恐ろしい事と、言っているけどちー姉グッジョブ!……それから、簪には悪いけどこれからは接触はなるべく控えておこう。あんな痴嬢様にちょっかいかけられたくないし)
触らぬ神に祟りなしこそ、織斑一夏心の家訓なのだ。
尚この後、目茶苦茶姉妹喧嘩した。尚、その後接触に関しては普通になったとだけ言っておく。
「あ、そうだ。一夏」
「ん?なんだ鈴?」
「そ、その……あのね…………」
「…………」
「あ、あ、あ……」
「あ?」
「有難うって言いたかっただけ。アンタが初期化してくれなかったら私多分死んでたから……それだけ!じゃ!」
「…………そうか」
(あぁ~~!!何で肝心な所でへたれるのよ私!!)
(やれやれ……まだまだ先か……十中八九そうなんだろうけどな……)
こんなやり取りもあった。
そして、変化もあった。まず、早朝。いつも通り、千冬と遭遇した場合立ち会いに発展するのだが
「これからは得物を葵にしないか?」
「いい(ストレス発散になる)な、それ!」
「そうだろう、そうだろう」
最近、半ばストレス発散になっていた打ち合いの得物が竹刀から葵になった。無論、折れるまで本気で打ち合う。死人が出ても可笑しくない状況だが幸いまだ出ていない。最も、ISの整備科の生徒達は放課後、葵の修復とより凶刃な葵にするように勤しんでいるとか。その内、此方で死人が出そうであることは内緒だ。
そして、教室内にも変化があった。
「あ!一夏君おはよう!」
「おはよう。なんか、生徒の数減ったな……」
「うん、どうやら何人か、学園辞めたみたい。まぁ、うちのクラスはまだマシだよ」
「他のクラスなんて三分の一があの事件の恐怖と話を聞いた親の意向での自主退学、残った人の何割かはいまだに部屋から出られない始末だし」
「ふぅん……まぁ、どんな選択をしようがソイツの人生だ。俺がとやかく言える権利はないな」
「一夏君冷たいねぇ~」
「寧ろ辞められるんだから羨ましいけどな。俺なんか辞めたくても辞められねぇんだもん……」
「あ、その……何かごめん」
少女、相川清香は語る。あのときの一夏の背中は煤けていたと。
そして今
「はぁーい、今日は、一年全員、皆でお料理しましょうね~」
家庭科の先生(本来は進路相談の先生らしい)の言葉に全員が思った……
『なぜに家庭科?なぜに今日の午前中これしかないの!?』
否、今日の授業が午前中しかないのは、先の一件のせいというのは理解している。だが、午前中料理するだけとは如何なものかと思ってしまうのは仕方ないだろう。
「まぁまぁ~、先日あんなことがありましたし、気分転換という奴です。生徒のメンタルをケアするのも先生の役目です。それじゃあ、くじ引きで班作りましょうね~あ、まるで入学初日のレクリエーションみたいですねぇ~」
そう言われては、生徒も従うほかない。実際、生徒の中にはあの時の衝撃が残っている者も少なくはない。
「あ、一夏じゃん!」
「あ、一夏君だ!ラッキー!」
「一夏さん!」
「……なんだかんだで見知った連中だな」
一夏と一緒に作ることになったのは鈴と簪と清香だった。いいなぁーとかの周りからの声は無視することにする。
「で、何作んの?」
「取りあえずラーメン食いたい気分だから函館風豚骨魚介ラーメン作るわ」
そう言って、鍋と材料の豚骨を取り出す一夏。
『鍋と豚骨?』
「つかぬことお聞きしますが一夏君、ラーメンはどこから作るのですか?」
「何って……スープ作るんだが?」
『え゛?!まさかのそこから!?」
「いや、麺も自作するが」
『麺も!??あと、聞こえてた?!』
周囲の人間は驚いているが、コアな一夏ファンなら彼が料理できることは周知の事実である。
「あー、なら私、前菜に蒸し鶏と焼豚と酢の物の盛り合わせとそれ以外に炒飯と酢豚作るわ。本格的にはちょっと遠いけどこの時間じゃこれが限界ね」
『フ、凰さん!?』
「じ、じゃあ私、そこに瞬間凍結機あるからデザートにセミフレッド作るね」
『か、簪さんも!?』
「な、なら私は……」
『あ、相川さんは普通だよね!?』
「ピザとか、鰻の蒲焼きとかしか作れないけど……」
「相川、ピザはどこから?」
「生地から」
「……鰻は?」
「捌く所から」
「……鰻の蒲焼き入り和風ピザとか旨そうじゃね?」
「「「採用!」」」
「わかった!こっちは任せて!あ、後肝吸いも作れるわ!」
『普通じゃなかったぁ!!』
「あ、野菜無いな……仕方ないから、筑前煮も作るか」
『何かあの班だけ次元違いすぎるんですけど!?』
「えー、まず、豚骨を下茹でしてから血合いを抜いてよく洗って……その後、沸騰させずに……」
「焼豚は肩ロースでタレは醤油、砂糖、蜂蜜、紹興酒、生姜のすり下ろし、八角……」
「えっとまず、卵黄を……ビスキュイは……」
「……あれ?……あ、あった、自家製鰻包丁」
一夏班……その様相は、最早一つの料理店の風景だったとか。
「「「「完成!」」」」
今日の昼食
前菜、三種盛り合わせ
函館風豚骨魚介ラーメン
炒飯(焼豚、海老、蟹炒飯三種)
酢豚
鰻の蒲焼きピザ
鰻の肝吸い
セミフレッド
「「「「いっただっきまーす!」」」」
「先生も食べていい?」
「どうぞどうぞ」
こんなやり取りがありとても平和だった……この班は。ある班は―――
「もう駄目だぁ~おしまいだぁ……」
「勝てるわけがない!」
「相手は伝説の男性IS操縦者なんだぞ!」
一夏班の女子力に絶望し、またある班は……
「せ、セシリア……これはダメ……ガクッ」
「ブルアァァァァ!!」
「ブッポルギャルピルギャッボッバァーッ!」
地獄絵図となり―――
「おのれ、織斑一夏!簪ちゃんの手作りデザートを食べるだなんて……なんて裏山……もといけしからんことを……これはやはり警告を「お嬢様?」ヒィ!?」
生徒会長は嫉妬の炎に燃え上がり、従者に(ハンマーで)鎮火されていた。
「ダッハハハハハ!!なんだそれ!おもしれー!」
休日、この日は学校もなく、仕事もない一夏からしたら珍しく休日と呼べる日だった。そこで一夏は昔から世話になっている五反田食堂に遊びに来ていた。
「面白かねぇよ……こちとら毎日、スキャンダルに構えてピリピリしてるってのに、KYな女子がこっち狙ってくるし、俺だって珠には、学園内で思いっきり羽伸ばしたいし、食堂の飯食いてぇのに……只でさえ、ネットじゃ既にあらぬ噂が出てくるし……『織斑一夏、IS学園で女侍らせて酒池肉林。これがその証拠wwwwwwwww』とか『織斑一夏が姉と禁断してる証拠見つけたったwwwwwwwww』とか音も葉も無いあからさまなコラ画像出すし、それを真に受けたのか面白がっているのか、外出歩くとマスコミが後つけてくるし、これじゃあオチオチ外出も出来やしない……今日ここ来るまでに、どれだけ遠回りして撒いてきたことか……信じられるか?通常の運賃の五倍だぞ?わざわざ県跨いだんだぞ!?……いかん、頭クラクラしてきた。鬱病発症しそう」
「あ、あははは……大変ですね」
そんなこと言いつつも、弾の妹の蘭は一夏にお茶を渡した。
所でこの三人には実は共通点がある。
「まぁまぁ、そんなこと言わずにこれやろうぜ!『クローザー』!それか『スベリオン』!」
「えー、それより『嵐』か『姫』にしようよお兄」
「いや、ここは『エルナーク』一択だ。百歩譲って、一度だけクリアしたことがある『シーカー』だな」
こいつら全員クソゲーハンターだった。しかも、妹に関しては某サイトで選評書いている始末である。
と、そんなときだった
――――――ピピピピピ
「……電話か、失礼」
そう言って、一夏は部屋の外に出た。
「一夏さん大変みたいだね」
蘭が心配そうに言った。
「ああ、アイツ表面上は何ともないように装ってるがかなりキてるな。相当、ストレスたまってるぞ」
「なんとかって……ならないよねぇ」
「なんとか出来るんなら千冬さんが何とかしてるって、こればっかりはな……下手な同情は反って逆効果だし。まぁ、不幸中の幸いなのは千冬さんがいることか……」
本人はうまく演じているつもり……というより、一夏は完璧に普段の自分を演じていた。見抜けたのは、幼い頃からつるんでいたからこそである。
(未来に重きを置き続けたからなんだろうな……)
一夏は今、かなり不安定だ。自分達だからこそわかる。今まで、少しでも早く自立するために彼は努力し続けていた。天職である俳優を偶然とはいえ手にいれ、他の人に文句を言われぬよう勉学にも手を抜かずに誰にも文句を言わせない環境を作り、将来のための下地を築き上げてきた。そして、その努力がようやく結実するその一歩手前で彼の悲願は遠退いてしまった。しかも、彼の天職に復帰するのはかなり絶望感な状況だ。この世に二人しかいない男性操縦者を国が、世界が見のがしてくれる筈がないのだから……普通なら心が折れても仕方が無い。
「でも、一夏さん。諦めてないよね」
「アイツがそんなタマかよ、まぁなりふり構っていられる状況じゃないんだろうよ。雑誌やテレビの取材でも、『自分は俳優ですので』だからな」
偶々やっていたテレビのワイドショーでは調度、一夏の取材でのコメントが流れていた。実際、彼のファンや彼の言葉を聞いた人は、本人の自由意思に任せるべきだと言う声が出始めている。
が、政府としても、貴重な男性操縦者であることと、何より、他国に所属されるならまだしも怪しい団体や犯罪組織に拉致られでもしたら目も当てられないという事情がある。そのため一概に本人の意見だけを通すわけにもいかないのだ。
そんなことを話していたら、一夏が慌ただしく帰って来た。
「ワリィ、仕事の話し来たからチョッチ行ってくるわ」
「送ろうか?」
「いや、もうすぐこっちくるってよ」
「そうか、また来いよ。俺居るかわかんねーけど」
「また来てください!」
「おう、今度、店手伝うわ」
「約束ですよ」
「お前の今度ほど信用できねぇものはねぇがなっ!」
「ヒデェ!その通りだけど!」
アハハハと、笑いながら変わらない二人に背を押される一夏。そんな、何気ない一時が一夏に英気と活力を与えてくれている。その事に内心感謝しながら五反田家を後にした。
一夏が外に出ると、既に迎えが来ていた。中学のときは電車通勤だったが、男性IS操縦者になってからは安全面や仕事に支障をきたさないようにと、また車に戻っていた。
「おう、つかの間の休息は楽しんだか?」
「ええ、というより仕事している時は俺にとって最高の時間っすよ」
「お前、ワーカーホリックになってねぇか?」
「ハハハ、何を今さら」
そんな談話をしながら目的地に向かう車を付け狙う一台の車。
(我らが女権団の栄光のために織斑一夏を拘束する!)
それは、ISの登場によって女性優遇の世の中になると思っていたのにならなかった事に不満を持つ女。所謂、女尊男卑思考の今時珍しい女だった。
「奴が、一人になったとき身柄を拘束し洗脳す―――」
『お前それさせると思ってんの?』
だが、女より遥か遠くに、それでいて最も一夏の近くに、具体的に言うと一夏の半径十キロ以内を監視している。自称、一夏のファン第一号の兎が見逃すはずもなかった。
『
瞬間、一夏を追いかけ回していた車は無音で爆発し跡形もなく消えていた。不思議なことに、その瞬間を目撃した者もカメラにもその瞬間は捉えられていなかったという……
「証拠は跡形もなく消えた……まったく!いっくんファンの追っかけなら面白いけど、ああいうのはノーセンキューだよ!ねぇー?くーちゃん!」
「彼らファンの執念は時にキンクリを起こしたんじゃないかというくらいに此方の思惑を超えてきますから。さっきのあの汚物もコソコソせずにあれ位の情熱を燃やしてほしいものです。だから負け犬なのですよ」
「あ、ありのままに今起きたことを話すよ!私はファン撃退用、いっくん安全トラップを仕掛け終えたと思ったらいつの間にかファンがいっくんに接触していた!瞬時加速や絶対防御だとかそんなチャチものじゃ断じてない!もっと恐ろしい
「それ、5回目です」
「……所でくーちゃん、その手に持っているCDは何かな?」
「これは織斑一夏のサイン入りファーストアルバムです」
「なんで、世界に50枚しかない束さんも持っていないCDをくーちゃんが持っているのかな?」
「この前、オークションで売っておりましたので1000万で落札しました」
「そんなお金何処にあったのかな?」
「偶然、宝くじで1000万円当選しましたのでそれで買いました」
「ねぇくーちゃん?お願いがあるんだけど」
「だが断る」
「おのれおのれおのれおのれ!」
そんなやり取りがあったとは思わずに、一夏達は目的地にたどり着いていた。都心にある有名なビルだ。そこの一室を今日は借りているらしい。
「本日はようこそおいでくださいました。私、映画監督の安西と申します」
「安西?あの、失礼ですがお名前は?」
「フフフ、私、名字が安で名前が西なのですよ」
なんと目の前の男、安西という字面だけで見れば名字としか見えないがこれでフルネームだというのだ。驚きである、しかも生まれも育ちも生粋の日本人。
「そ、そうですか。これは失礼しました」
「いえいえ、よくあることですのでお気になさらずに、さてそれでお話というのがですね……」
貴方にISを題材とした映画の主演をしていただきたいんですよ。
「……はい?」
「いえ、企画自体は前々からあったのです。ISを娯楽として身近に提供できないかと……そして、男性IS操縦者である貴方に白羽の矢が立ったのです」
ビジュアル的にも映えますしね。と気さくに語る安西。対して一夏の反応は渋い。
「うーん、ISの映画を撮るのは良いとして、一体どんな映画なのですか?」
「そんな、難しいものではありませんよ。まだ企画段階なので確定ではありませんが、史上初の男性IS操縦者である主人公が大会で優勝するありふれたお話ですよ」
本当にありふれた、王道なストーリーだった。だが、ISを実際に用いた映画は史上初だ。そういう意味では変に捻るよりも、分かりやすい展開の物語のほうが観客受けしやすいのかもなと一夏も思った。
「しかし、実際にISバトルをするって……それはいいのですがカメラワークとか大丈夫なんですか?」
「フフフ、実はそれも解決の目処が立っていますので」
最近漸く、技術が追い付いたんですよと愉快げに語る安西監督。
「それでどうでしょうか?」
「他のIS操縦者の問題とか諸々ありますが……そうですね、目処が立てば喜んで」
「おお!本当ですか!?」
「まだ了承しておりませんよ、前向きに検討しておくだけです」
「とんでもない!今の私からしたら、それだけで十分です」
そう言って、握手を交わし、今日は解散となった。
「すまんが、巻紙さん、IS学園に向かってくれ」
その意図が分からない礼子ではない。
「んだよ、渋ってたわりにノリノリじゃねぇか」
「基本的に仕事は断りませんよ?それに、実際にISバトルするというのならちゃんと戦えなきゃ降板どころか笑い者だ」
「ちげぇねぇ」
この日、一夏はついに重い腰をあげた。
「束様、例の女権団ですが居場所と構成員の住所、経歴、家族構成、年齢、血液型、身長、視力、握力、上腕、前腕、血糖値、血圧、尿酸値好きな食べ物、将来の夢の特定完了しました」
「そこまでしなくていいよ!?まぁ、いっか!じゃ、取りあえずそいつらの戸籍消去して、拉致って海外の『いつものところ』に売っといて。あ、家族は除外ね。流石の私もそこまで酷くないから」
「わかりました」
(これで、いっくんの平和は守られ、彼女達はISを信奉して依存してるんだから文字どおり、人生と命すべて捧げてIS開発の礎になれたから本望だよね!それにしてもいっくん主役のIS映画かぁ~)
束さん、いいことしたな~と自画自賛しながら、映画について思いを侍らせるのだった。最もそれで終わってくれると嬉しいのだが……
タバークイーン
束のスタンド(本人談)。普段は第三の爆弾のように一夏にとり憑いており、監視(覗き)をしている。また、笑えない外敵を察知すると相手にナノサイズの爆弾を大量に散布して、爆死させる。その際無音で爆発しその瞬間を本人以外認識できないという特性を持つ。
また、これだけの能力を持ちながら本体(束)もISを生身で相手に出来る圧倒的パワーと精密な動きが出来る。強い。
弱点はシリアスでは全く機能しないという点。
一夏のファン
天災兎曰く、普段は一般人だが一夏が関わるイベント限定で、キンクリとか世界とかD4Cとかオーバーヘヴンを使ってくるらしい。
主人公漸くやる気だす。